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異世界転移 残りものでも充分です〜  作者: 綾瀬 律
第6章 ピュリッツァー帝国

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339.死の森へ

 生命樹の元に行くとさらに光が舞った。そしてさわりと風が頬を撫でるとユーグ様がその姿を現した。


『良く来たね、ロルフ。そして、グライオール様も…』

「お久しぶりです…ユーグ様」

「お初だな、世界樹の精霊殿」

『アイルの件は…想定外だった。巫女の願いは天に届き、聞き届けられた。しかし、その光をアイルの魂はまだ受け止められなかった』


 やはりそうか。あれは祝福。しかし不安定な魂のアイルには耐えられなかった。


『繋ぎ止めたよ…私がこの腕に抱いた。繭に抱かれてあの子はしばし眠った。記憶を手放して…』

「記憶を…」

 そんな、イルはアイルの記憶を?そんな…

『何もかも、だよ…残念ながら余りにも中途半端な状態だった』


 静けさが支配する。

『あの子を救う為には仕方なかった…』


 そう、なのか。でもイルは生きている、繭は閉じていない…?


『繭は閉じていない、あの子は生きる事を望まれた子。ロルフ、あの子を支えて…どうか』


 僕の気持ちは決まっている。()()()()()()()()()()、僕の気持ちは揺るがない。だって僕が好きな人は、彼自身だから。


 記憶がなくても、きっとイルはイルのままだ。ならば、また一から彼との絆を築けばいい。彼を構成する要素が変わっても、きっと彼は何も変わらない。

 だから…大丈夫。


 ふわりとユーグ様を感じた。僕はその腕に抱かれている。なんて温かい…。

『信じて…私を、そしてあの子を…』

 僕は頷く。

「はい」


「僕もいるよ、彼は神聖国に向かうんだね?アーシャが沈黙を守ってるなら、そういう事だね?」

『グライオール様…私が求めたから』

「なるほど。彼の記憶はそこに眠っているんだね」

 ユーグ様は優しく微笑むと生命樹に消えた。

 イルの記憶はユーグ様が繭の中に閉じ込めた?そうやってイルを助けたの、か。

 帝国から神聖国へ。長い旅になりそうだ。


 僕たちは待たせていたサリナスたちの馬車に合流すると、ゼクスに戻った。

 西門で伝言を聞いた。僕は屋敷を置きにいかないといけないから、屋敷に使用人たちと行ってからすぐに向かうと伝えて貴族街に向かった。

 屋敷はそのままの姿で佇んでいた。本当に不思議だ。

 リベラの手を借りて馬車を降りると幻影の屋敷に手を置いて

(戻れ)

 と念じる。すると、屋敷が元に戻った。うん、やっぱりイルは規格外だ。

 そしてリベラたちに屋敷を任せ、探索者ギルドに向かった。


 ギルドに馬車寄せから入るとすぐにイザークが気がついて会議室に案内される。

 バァンと扉が開いてバージニアが飛び込んで来た。

「ロルフ、無事か!」

 イルがいなくなったからか、心配をかけたのか…?

「ここに、いる」

 はぁとため息を吐き、向かいに座った。

「アイルのことは、その、なんだ…」

 僕は頷く。

「探索者、スーザンに紹介を頼んだ。誰かいる?」

 バージニアはまたため息を吐く。


 そして口を開こうとしたら扉が開いた。

 そこには我が国が誇るエリート集団である魔術師団の第1師団長と第3師団のローブを着た若い男性が立っていた。師団はローブの色で、隊長は肩の紋章で分かる。

「お初にお目にかかる!我々は魔術師団の者だ。総長閣下の采配で、カルヴァン侯爵家嫡男のロルフリート殿に助力致す。ダウルグスト隊長である。以後お見知り置きを!」

 僕は驚いた。お父様から話は聞いていたけど、そんなに?

「お初にお目にかかる。カルヴァン侯爵が第一子、ロルフリートと申す。以後お見知り置きを」

「お初にお目にかかります。魔術師団の上級研究員、ハウラルと申します。ロルフリート殿の力になるべく馳せ参じました!」


 ハウラル殿は胸に手を当てて礼をした。確か個人で叙爵されていた筈。男爵だったかな。

「ロルフリート殿、捜索に出向く前に先ずはアレですな?」

 そう、アレだ。彼のローブにはエンブレムが付いている。イルの故郷の文字がデザインされたエンブレム。

 そこには2つの水晶が嵌っている。

 引き合う魔力。

「探す為の魔力を…」


 パンパンと手を打ち鳴らす音。

「おいおい、順番があべこべだ。魔術師団も焦るな!先ずはロルフの話を聞こう。あぁ彼らは魔法契約をしてるから安心しろ」

 バージニアの一声で、僕は順番に話し始める。もちろん、神様のこととかエリアスのことはなるべくぼかして。ティダのことやヒュランのことも。

 ユーグ様についてはもう仕方ない。ここに来る前に寄った時の話をする。


 記憶を手放して…


 その話を聞いてみんなが固まった。そう、イルはどちらの記憶もない。失くしたというよりは思い出せない、だけらしい。少なくとも神聖国の世界樹にはイルの記憶が残ってるみたいだけど。


「それでもな、やる事は決まってる。アイツが、たとえ記憶を無くしてとしても、きっと根本は変わらない」

「そうだな」

「私のイルは、こういう子」

 その言葉にみんなが驚く。僕の口から自然に溢れた言葉。

 そこに商業ギルドからアレスが来た。

 乱暴に会議室の扉を開く。そして僕とバージニアを見ると

「こ、口座が動いた!」

 唾を飛ばしながら言う。珍しい。あのいつも淡々としたアレスが。ってえっ…口座が?

 ガタンッ

 僕は立ち上がってアレスに近づい、その肩を揺する。


「ピュ、ピュリッツァー帝国の、北部の町…レイニアだ!」

「いくら?」

「だ、大銀貨100枚…」

 大金だ。だが

「金貨じゃなく?」

 アレスは頷く。ならば自分の意思で降ろしたんだろう。使う為に。

 バージニアが

「アイルの商業ギルドの口座か?」

「はい!」

「いつ?」

 僕は重ねて聞く。

「1月6日…」


 そんなに前に?もう13日も経ってるなら動いてる筈。霊峰よりも北には大きな町はない。これは道中でグライオール様にも確認した。ならば南に向かってる。

 神聖国を目指すなら王都から東に伸びる街道を進む筈。その町から王都までの距離と、神聖国までの距離は。


 帝国の凡そ頭に入ってる地理だと、レイニアという町から王都までは約2ヶ月。そして、神聖国へはさらに1ヶ月かな。馬車ならば。徒歩だと全く遅いし、途中で何処かに寄ればさらに遅い。


 魔道具の開発に1ヶ月、ここゼクスからは南のアインスまで下って海沿いに東に向かうか、フィーヤから東に向かうか。

 イルが王都に向かっているなら、帝国の南寄りにある王都。季節を考えればやはり南回りだな。そうすると帝国の王都までは2ヶ月か。帝国では追いつけない。ならば…。


 目を開けるとみんなが僕を見ていた。


「何?」

「お前の見立てだと、どうだ?」

 バージニアが聞く。だから考えた事を伝える。そして

「だからイーリスが合流したらすぐにここを立つ」

「いや、待て待て。魔道具の開発はどうするんだ?」

「旅をしながら…」

「はぁ?」

 そうなるか。僕はイルがくれた箱に研究道具を移した。部屋ごと。だから旅をしながらでも大丈夫。

「道具を持って、移動しながら…」

「はぁ?」

 やっぱりそうなる、かな。


「あー俺は実は休暇が溜まってて、いい加減休めって言われてたんだった!よし、ロルフリート様について行くぞ!」

 隣でダウルグスト殿がすごい形相で睨んでいる。

「お、お前は!抜け駆けなど…」

 あれ、そっち?僕は2人を見つめる。すると2人とも恥ずかしそうに

「会いたいだろ?あんなに人のことばっかり考えるやつ。助けたいに決まってる」

 やっぱりイルはそういう子だ。ボクは嬉しくなった。

「ハウラル殿、よろしく頼む」


 と言っても早くて7日後かな?イーリスがフィフスを立つ時に連絡が来る。そしたら死の森の入り口で待ち合わせだ。

 その話をしたらイザークが

「フェルが行きたいと言ってた」

 そうなるか。イーリスがいれば多分、入れる。しかもあそこはミストの父親の縄張りの隣り。ミストの父親はグレイだ。ならば、僕でも入れるかな。

 イーリスは死の森に用が無い。ならば、先にフェリクスを連れて向かってもいいかな。

「ダウルグスト殿とハウラル殿は、ダイヤモンドに興味が?」

 2人は顔を見合わせて

「もちろんだ!」

「そこは聖獣様の縄張り。グレイウルフが見張っている。でも、多分…僕なら入れる。その子もいる」


 もぞもぞと胸元から這い出すミスト。リツとアイリーンと一緒にいたんだ。

 みんなに見せる。

「それは…ただのグレイウルフか?」

「さぁ…」

 ダウルグスト殿の言葉に僕は惚けて返した。頭を抱えている。もう逃げられないよ?


 その後、フェリクスの都合も確認して、2日後に死の森を訪れる事にした。




時系列整理

10月10日 審判の日

アイルやハクたちが魔力を捧げる為に眠る

イグニスが神界でケガをする


10月15日頃

シシラルたちがイグニスを連れて下界に降りる(神界と下界は時間の流れが違う)

アルテノが祈りを捧げる

イザークがペンダントにざわめきを感じる


10月18日頃

ダナンたちが王都を訪れ、謁見と会食

アーシャが神聖の森に伝言をする

若木が根付く?

光の奔流が流れ落ちる アイルが消える


10月19日 ダナンたちが夫人たちと会食に参加


10月20日 アイルが目覚める

イーリスがイグ・ブランカに戻る

旧イグニシアで黒い光が飛んだ

ダナンたちが王都を出発

ハクが帝国で目覚める

ブランが郷で目覚める


10月21日 ライラたちと双子の騎士を助ける 合流

夜中に馬とネズミを助ける

帝国で白い光が駆け抜けた(ハクが駆け抜けた)


10月22日 ライラたちと双子の騎士と馬が合流 山を降りる


10月23日 ライラたちがナビィと出会う

ダナンたちが帰領する

ナビィがアイルと再開する


10月24日 ライラたちがベイクと再会

アイルが向こうの事を思い出す


10月25日 ライラたちが町を出る


1月1日 ロルフたち鎮魂の森を出発

アイルがミュシュランテスを降りて麓の村に着く


1月2日 麓の村をナリスと出発


1月6日 ロルフがフィーヤ着

アイルが町に着く。馬車を買う


1月7日 ロルフがフィーヤ発 イグ・ブランカ着

アイルが布を仕入れて町を出発

ライラたちが襲われる

ゼクスと王都にロルフから手紙が届く


1月8日 ロルフたちがイグ・ブランカを出発

魔術師団がゼクスに出発


1月11日 魔術師団がゼクスに到着


1月18日 ロルフたちがフィフスに到着


1月19日 ロルフたちがゼクスに到着



*読んでくださる皆さんにお願いです*


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