337.それぞれの年明け3
僕とナリスは町を出て馬車を走らせる。因みに僕は馬車の中。荷馬車じゃなくて普通の馬車だからね!コムギとナビィとビクトルにバクセルと寛いでる。
荷物は馬車の後ろ。そこに荷物を詰める空間がある。結構広いんだよ?
僕たちは荷物もそんなに無いからね!座席にも積んで進む。
小さな村は点在していて、寄りながら行商。そして泊めてもらう。これだと野営が無くて楽なんだって。僕はフードを深く被っている。どうやら銀髪は目立つらしいから。で、ナリスと兄弟って事にして進む。
何故か?
「あらまぁ、弟さんはまだ小さいのになぁ」
とか言われてね?品物も売れるしいいんだけど。解せない。
ちょうど出発した日の夕方、なんか魔力が揺れた。何だろう?まいっか。細かいことを気にしてたら疲れるしな。その日は近くの村で泊まって翌日出発した。
この時期は天候が不安定で、今日は雨。でも馬たちは元気でナリスも平気そう。
僕は馬車の中でうだうだしていた。
何故か分からないけどソワソワする。何だろう?知ってる魔力かな?
理由は分からないけどソワソワソワソワ。それを見たナビィもビクトルも何も言わない。コムギだけは心配そうに
『パパ?』
声を掛けてくれる。どうやら元僕案件かな?思い出せない元僕に関係する。だからナビィもビクトルも何も言わない。
そうして雨の中を進んで行った。
その頃…バナバルト王国 ゼクスにて
家族で迎える初めての年越し。
大人の魅力溢れるダナと、可愛いフェル。2人に挟まれて幸せな年越しをし、新年を迎えた。
朝から2人は魅力的で、大変な時期ではあるが幸せを堪能した。
そして数日が経ち、ロルフ様から手紙が来た。やはり、森人の巫女の件か。私は手紙を読むとダナに渡す。ダナも読んで難しいしていた。
「ロルフを待って、だな」
俺は頷く。
ロルフ様からの手紙はアイル作成の箱に入れると時間差無しで届く。ラルフ様救出時に荷物を届けるのに時間が掛かったことを気にして、アイルが作った。
小さな物ならこれで運べる。
ロルフ様はイグ・ブランカをすぐに立つと書いてあった。とは言え、馬車で2週間はかかる。
ゆっくり待つしか無いな。
ダナは俺を抱き寄せる。
「大丈夫だ、アイルにはあり得ないくらいの防御と…たくさんの聖なるものが付いている」
その通りだ。俺はダナの胸に体を預けて力を抜いた。
そうしてしばし、ダナに寄り添ってから、屋敷を出た。いつも通り探索者ギルドに入る。裏で用意をして時間が来たのでギルドを開ける。
すると
ダンッ
凄い勢いで扉が開いた。腕にウールリアを抱えたスーザンだ。俺は目を丸くした。え、どうした…?
すると俺めがけて来ると低い声で
「ジニーを呼べ、今すぐ、だ!」
その勢いに頷く。何だ…?嫌な予感がする。俺はジニーの部屋の扉を一応、叩いてから開ける。
「おい、叩きながら開けたら意味ねぇだろ?」
「叩いた事実はあるが?」
ため息を吐いたギルマス。
「何だ?」
「スーザンがウールリアを抱えて飛び込んで来たぞ?」
嫌そうな顔をするジニー。
「何処からかバレたか?」
ジニーは立ち上がると会議室に向かった。
何処からだ?と考えて、分かった。なるほどな、それは仕方ないか。でもスーザンは引退してるよな?
俺もジニーの後を追う。
会議室ではスーザンとジニーが睨み合っていた。
「どいういうことだ?」
「何がだ?」
「惚けるな!アイルの事だ」
バァンと机を叩くスーザン。
「赤の他人に教えることなどない!」
同じくバァンと机を叩くジニー。
「赤の他人にじゃない!一つ屋根の下に何ヶ月も一緒に住んでたんだ。ならもう俺の息子だ!」
いや、スーザンは宿だろ…それは無理があるのでは?
「あぁ?俺こそ王都まで息子の尻拭いに行ったんだ!俺の方こそ息子だろう」
なんの掛け合いだ、これ。
ウールリアがスーザンの腕を引く。そうだ、少しは宥めてくれ。
「僕とアイルは3つしか違わないよ?」
スーザンはキリッとした顔で
「俺の連れ子だ!」
おい、余計にややこしいわ!
「お、俺の連れ子だ!」
だからジニー、何言ってるんだよ!
そこに会議室の扉が開く。
「何々?楽しそうだね?誰の隠し子のことかな」
フェルだ。
「ぐっ…」
「いや…」
流石だな。
「まぁ座って?整理しようよ」
こうして話を整理すると、やはりロルフ様だった。
アイルを探す旅に行きたい。
護衛がいる。
スーザンに探索者を紹介して貰いたい。
と言うことだ。それを聞いてスーザンが駆け込んで来たって訳だ。
ジニーとスーザンが睨み合う。そしてスーザンが、スッと手を出した。
ため息を吐いたジニーは懐から金色のギルドカードを出した。
「ほらよ!いつかそんなことになるかと、俺が預かっておいた。分かってたんだろう?」
「あぁ恩にきる」
どうやらスーザン自ら、アイル探しの旅に出るようだ。ならばウールリアもか?
「もちろん!もう僕のスージィだからね」
驚いた。宿を守るよ、そう言うと思っていた。それが伴侶となった故なのか。
「宿は例の黒髪の子たちに任せる」
ウールリアも探索者を引退していない。最近は宿の休みに依頼を受けていた。上級の腕を持つ2人は心強いだろう。
サリナスとブラッドもロルフ様の依頼で帝国に向かうことを了承した。あの2人は金より内容で選ぶからな。楽しそうで何よりだ。
他人事のように見ていると
「イズ、ギルドの出張で帝国に行くんだってね?」
「はっ?」
「僕も視察で、ちょうど帝国で行く予定なんだ!奇遇だね?」
いや、待て。聞いてないぞ?ジニーを見るとニヤニヤしている。
「僕にとっても、いい社交になると思うんだ!キビの生産を広めたいし、ね」
やられたか。まぁフェルが一緒ならそれもいいのかな。
「新婚旅行だね!」
耳元でフェルが囁く。俺は不覚にも真っ赤になった。そして、目の前では同じように真っ赤になったスーザン。ウールリアは目を細めてスーザンを見ている。
くっ、同じこと言われたな、アレは。全く敵わない。
「探し出そうな!」
「うん」
フェルの実力も上級並みだ。実戦にはそこまで慣れていないが、俺がいれば大丈夫だろう。何よりもアイルの防御がある。
上級探索者のサリナス、ブラッド、スーザン、ウールリア、フェルと俺。
充分な戦力だ。あちらは多分、イーリスとロルフ様。
例えハク様がいなくても、戦える。
この時の俺はそう思っていた。
その頃、王都では。
魔術師団総長閣下の元にハヤブサが来た。特急の伝書鳥で、国に属さない貴重な鳥だ。
閣下が驚くくらい貴重な鳥。その鳥が悠々と閣下の部屋の窓を嘴で叩いた。
そこに集まっていた各師団の団長とハウラルは目を丸くしたら。
ハヤブサ、だと?
慌てて第2師団長のロスナイトが窓を開ける。するとハヤブサは閣下の元に来て手紙を置くと颯爽と去っていった。
ポカンと口を開けて見送る面々。俺、魔術第1師団長のダウルグストも同じく、だ。
我に帰ったロスナイトが窓を閉め、閣下が手紙を読む。そして難しい顔をした。
それを俺に渡す。読んで驚いた、それは…。閣下を見れば頷くのでハウラルに渡す。読んでからまた読み直している。その手は震えていた。
「なんと…」
その手紙は第3師団長のアウグストに渡り、ロスナイトと渡った。
閣下が重々しく口を開く。
「由々しき事態であるな」
「「「「はっ!」」」」
「各師団より数人、先行してゼクスへ迎え!ダウルグストとハウラルは先行し、他のものは我らの行軍に参加だ!行け!必ずや我らの息子を、取り戻すぞ!」
「「「「はっ!?」」」」
閣下の部屋を出る。ん?息子って言ったか?我らって待て、俺はまだ未婚だ!
今まさに、王の視察という名の魔術師団の演習にどの師団から何人出すかで揉めていた。
第1はもちろん演習の基本部隊だ。
そして第2は王族と王都を守る護衛部隊。ここも譲れない。
第3は魔道具の実験という名目で参加を希望。場は荒れた。誰もがあのアイルのエンブレムを試したくて仕方ないのだ。
そんな所に悠然と飛び込んで来たぞハヤブサ。
場が静まるのも頷ける。
そして、ハウラルは権利を勝ち取った。内容は喜べるようなものでは無いが、ロルフ様より直々の依頼だ。あの才媛が自分に助けを求める。やってやるぞ!という気持ちが俺にまで伝わって来る。
きっとラルフ殿にもカッコいいところを見せたいのだろう。それに何よりも魔力を込める水晶。その原理…知りたくて当然だ。
きっとロルフ様は知っている。
大人気なくワクワクした気持ちで野営の準備をしようとして、必要ないと気が付いた。
エンブレムに快適に暮らせる野営道具は全て揃っているのだ。
必ずや探し出すぞ!ダウルグストはそう心に誓った。
時系列整理
10月10日 審判の日
アイルやハクたちが魔力を捧げる為に眠る
イグニスが神界でケガをする
10月15日頃
シシラルたちがイグニスを連れて下界に降りる(神界と下界は時間の流れが違う)
アルテノが祈りを捧げる
イザークがペンダントにざわめきを感じる
10月18日頃
ダナンたちが王都を訪れ、謁見と会食
アーシャが神聖の森に伝言をする
若木が根付く?
光の奔流が流れ落ちる アイルが消える
10月19日 ダナンたちが夫人たちと会食に参加
10月20日 アイルが目覚める
イーリスがイグ・ブランカに戻る
旧イグニシアで黒い光が飛んだ
ダナンたちが王都を出発
ハクが帝国で目覚める
ブランが郷で目覚める
10月21日 ライラたちと双子の騎士を助ける 合流
夜中に馬とネズミを助ける
帝国で白い光が駆け抜けた(ハクが駆け抜けた)
10月22日 ライラたちと双子の騎士と馬が合流 山を降りる
10月23日 ライラたちがナビィと出会う
ダナンたちが帰領する
ナビィがアイルと再開する
10月24日 ライラたちがベイクと再会
アイルが向こうの事を思い出す
10月25日 ライラたちが町を出る
1月1日 ロルフたち鎮魂の森を出発
アイルがミュシュランテスを降りて麓の村に着く
1月2日 麓の村をナリスと出発
1月6日 ロルフがフィーヤ着
アイルが町に着く。馬車を買う
1月7日 ロルフがフィーヤ発 イグ・ブランカ着
アイルが布を仕入れて町を出発
ライラたちが襲われる
ゼクスと王都にロルフから手紙が届く
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