336.それぞれの年明け2
ようやく時系列が追いつきました…
我々は15人に増え、王都に向かう。
そして、長かった年が明けた。新しい一年が始まる。
我々はさらに進む。全員が一緒だと不自然だからと5人ずつ3組に分かれて動く。
日銭を稼ぐ為に魔獣を狩って途中の町で売る。それを繰り返してようやく馬車を買えた。
近衛はいわゆるエリートたちだ。実戦経験は少なかったが、王都を出てから3ヶ月。彼らも逞しくなった。
だからめきめきと力を付けた。町で依頼を受けて、報酬を貰って。
再会した時は疲弊していた彼らも、私の無事を知って喜んだ。副隊長と隊長以外はまだ若い騎士が多い。だから余計に回復も気持ちの切り替えも早かった。
そうして、迎えた1月7日。私たちは全力で逃げていた。馬車はやむを得ず置いてきた。
帝国軍と魔獣の挟み撃ちにあったのだ。多分、偶然だ。とは言え、乗り切らねば。
アイルと別れ、同胞と合流するごとに彼との繋がりが薄まっていった。私が安全に過ごせるように、と配慮したアイル。ならば、安全が確保されれば彼の防御が薄まるのも必然だ。
そんな時に、よりに寄ってだ。
帝国軍は王が動かしたのか?それにしては数が微妙だ。
私はライラに乗って逃げる。
しかし回り込まれた。ついて来たのはタウリン、カイゼルとナイゼルにベイクだ。
「切り開きますぞ!」
「ミュゼ様は突破してくだされ」
「嫌だ!みんなで逃げるんだ…」
後ろからも追っ手が追い付いてきた。ダメだ。私は身体が動かなかった。
ここまでか…アイル、一度でいいから会いたかった。
「捨て身で進むぞ!」
私はライラを走らせた。
少し時間は遡り1月1日
僕は空を飛んでいる。気持ちがいい。でもやっぱりご主人のそばがいいなぁ。
ん、あれ…は?白い光が高速で移動してる。
僕は急降下する。
『ハク!』
白い光に見えたものはハクだった。光は立ち止まると僕を見て
『ブランか?』
『そうだよー!』
『アルは?』
『分からない、魔力が追えない』
『でも北に』
『北に!』
やっぱりか。
『一緒に行こう!』
僕はハクを背中に乗せて飛んだ。高く高くそして早く。
まだご主人の魔力は追えないけど、だいたいの場所は分かった。ボクが飛べばすぐに着く。と言っても10日はかかるかな?
もうすぐ、会える。だから大丈夫。ハクにも会えたし。僕は悠々と羽ばたく。待っててねーご主人。
順調に進む僕とハク。時々、ハクが駆けて魔獣を狩ったり、飛びながら飛獣を狩ったりして進む。3日程進んだら空の上で何やら鳴き声が聞こえた。
「ギャアギャア」
「キュウ」
「ギャアギャア」
なんか白い子がイジメられてる。あっ…落ちる。ぼくは降下して落ちた子を背中に乗せる。ハクが落ちないように首元を咥えた。
弱いものイジメはダメだよ!
きっとご主人ならそう言う。だから僕は急上昇してその群れに突っ込んだ。
嘴と脚の爪でヤツラを引っ掻く。
ザシュ
バシュ
僕に続いてハクも引っ掻く。それは風の刃のようにヤツラの翼を傷付けた。錐揉みしながら堕ちていく。さすがはハクだ。
僕は彼らを追って急降下する。なんとか羽ばたこうとするヤツラの頭を脚で押さえ付ける。
3匹はそのまま下の岩場に落下した。それでも死んで無い。とどめを!
『やめて!』
白い子が懇願する。むう、仕方ないな。彼らはもう戦意を失っている。
白い子は僕の背から飛び降りるとヤツラに駆け寄って嘴で突く。するとヤツラのケガが治った。折れた翼は再生し、血を流していた体も元通り。
この子は特殊個体か。
助けられたヤツラは平伏している。
『助けたのはその子だよ!』
『はい、申し訳有りません』
顔を上げて白い子に謝る。
『兄さん、顔を上げて!』
あれ、兄弟なのか?
『僕たちはミニドラゴンです』
『兄弟で、でもコイツは亜種で…』
ミニドラゴン自体がドラゴンの亜種だよね?亜種の亜種?
『あの…僕を連れていって下さい』
えっと何で?ハクを見ると何故かしたり顔だ。
『優しい魔力を感じる!だから僕なんかでも…』
『なんかでは無いぞ、小僧』
ハクが答える。えっと、ハクだってまだ子供だよね?
(ふん、我には子がおる)
う、それを言われると。
『我らの主は心優しき人だ。お前を見捨てたりしない。良いぞ!飛べるのだろう?』
『うん!ありがとう。体は小さいけど飛べるよ!』
そう、この白い子は他の子が3メルあるのにほんの1メルほど。特殊な子だからか?
『僕に付いて来れるなら一緒に飛ぼう』
こうして仲間が増えた。ハクの背中には緑の精霊がいる。やっぱりご主人の優しい魔力に引き寄せられるんだ。全く、相変わらず節操がないなぁ。
こうして、その日はもう少し飛んだ所で眠った。
それからも順調に飛行してる。何故か?ご主人の魔力が感知できたから。少し薄いけど間違い無い。
ハクも感じたらしくどんどんと速度を上げた。
『待ってー』
気が逸って白い子を置き去りにする所だった。僕は口に咥えると背中に放り投げた。
ハクが掴む。白い子は僕の背中で落ち着いた。それから数日飛んで、見えた!ご主人の魔力だ!!
あれ、ご主人はどこ?なんか沢山いて邪魔で見えないな?
するとハクが
『低空を飛べ』
と言うから邪魔なものを蹴散らしながら低空を飛んだ。ハクはすたっと地上に降りて、そのまま何やら固まった辺りに突っ込んでいた。
白い子も何やら背中から降りた。
僕はご主人を探す。いないなぁ。あ、魔力は感じる。あそこか!
少し離れた所にいた人たちに突っ込む。ご主人の魔力を纏った人に何するんだー!
バサッ
蹴散らした後に、咥えて飛び去る。全く…薄れかけてるけど間違いなくご主人の魔力だ。他にも感じたご主人の魔力はハクが追ってる。
よし、蹴散らしたかな?
******
後ろからも追っ手が追い付いてきた。ダメだ。私は身体が動かなかった。
ここまでか…アイル、一度でいいから会いたかった。
「捨て身で進むぞ!」
私は勇気を振り絞ってライラを走らせた。
迎える騎士たちにライラごと突っ込む。カイゼルとナイゼル、タウリンも続く。後ろでカイゼルの
「ぐっ… 」
と言う声や、ナイゼルの
「ぐわっ…」
と言う声、タウリンの
「まだまだー」
と言う声。そして、行きなされ…。掠れる声に倒れる音。そんな、私は何のためにここまで。涙が滲む。そしてライラが崩れ落ちた。脚をやられたか!
放り出される。即座に起き上がったが首元には槍が突き付けられた。
ここまでか…疲れた。もうこれでいい。私は目を瞑ってその時を待った。
「ぐはっ…」「何が、ぐっ」「逃げろ!」「うゎ」
ん、あれ…?何が…。私は目開いてを擦った。それくらい非現実的な光景が広がっていた。そして槍を突きつけた者は槍ごと切り裂かれると私は何かに咥えられた。
はっ、何が…?
空を、空を飛んでる…
呆然と眼下を見る。倒れている騎士たち。カイゼルにナイゼル、タウリンやベイクも。助けられなかった。私のせいで…。
目に涙が滲む。
いつの間にか私は地面に降ろされていた。涙が出て止まらない。すると何かが頭に触れる。これは?
柔らかな光が私を包み、癒した。癒しの魔力、なんて優しい。
そっと目を開ける。逃げちゃダメだ。ちゃんと結末を見届けなくては。私は涙を乱暴に殴って目を開けた。そこには凄惨な光景が広がっていた。
もう私には立ち上がる気力も無かった。
時系列整理
10月10日 審判の日
アイルやハクたちが魔力を捧げる為に眠る
イグニスが神界でケガをする
10月15日頃
シシラルたちがイグニスを連れて下界に降りる(神界と下界は時間の流れが違う)
アルテノが祈りを捧げる
イザークがペンダントにざわめきを感じる
10月18日頃
ダナンたちが王都を訪れ、謁見と会食
アーシャが神聖の森に伝言をする
若木が根付く?
光の奔流が流れ落ちる アイルが消える
10月19日 ダナンたちが夫人たちと会食に参加
10月20日 アイルが目覚める
イーリスがイグ・ブランカに戻る
旧イグニシアで黒い光が飛んだ
ダナンたちが王都を出発
ハクが帝国で目覚める
ブランが郷で目覚める
10月21日 ライラたちと双子の騎士を助ける 合流
夜中に馬とネズミを助ける
帝国で白い光が駆け抜けた(ハクが駆け抜けた)
10月22日 ライラたちと双子の騎士と馬が合流 山を降りる
10月23日 ライラたちがナビィと出会う
ダナンたちが帰領する
ナビィがアイルと再開する
10月24日 ライラたちがベイクと再会
アイルが向こうの事を思い出す
10月25日 ライラたちが町を出る
1月1日 ロルフたち鎮魂の森を出発
アイルがミュシュランテスを降りて麓の村に着く
1月2日 麓の村をナリスと出発
1月6日 ロルフがフィーヤ着
アイルが町に着く。馬車を買う
1月7日 ロルフがフィーヤ発 イグ・ブランカ着
アイルが布を仕入れて町を出発
ライラたちが襲われる
ゼクスと王都にロルフから手紙が届く
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