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異世界転移 残りものでも充分です〜  作者: 綾瀬 律
第6章 ピュリッツァー帝国

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337/429

331.部下との再会

 はぐれた場合の集合場所は中央広場と呼ばれる公園と決めていた。

 そこに着く。端の方に木が植っている。そこ辺りで待とうと歩いて行くと、木の後ろに人がいる。咄嗟にカイゼルが私を後ろに庇う。

 それは投げ出された足。倒れてるのか?それにこのブーツの留め具は。

 同時に気が付いた私たちは木の裏に回る。そこには木根元に横たわる汚れた男性がいた。

 服はボロボロで、顔も汚れ目が片方潰れている。服にはあちこちに血の後があった。乾いているから、ケガしてから時間が経っているようだ。

 胸が浅く上下しているからまだ生きている。


 汚れたその顔は見覚えがある。ベイクライト…私の近衛騎士だ。

 思わず駆け寄る

「ベイク、ベイク!」

 カイゼルがカバンからアイルの薬を取り出す。体を起こして飲まそうとするが、飲み込まない。

 どうしたら…


(かけるんだ)

(かけるの)

(目と体に数滴)

(かけて)


 淡い光がふわふわとやって来る。

 これは…じいを見る。頷くと言われたら通り、目と肩、胸と腰、そして足全体に数滴、薬を垂らした。するとベイクの体が水色に強く光った。その光に誘われるように沢山の光がほわほわとやって来た。


(癒しの光)

(癒しの魔力)

(温かい)

(優しい)


 光が収まると、塞がった目も服もキズも元通りのベイクがそこにいた。胸はゆったりと規則正しく上下している。

 しかし、目を覚さない。不安に思って見ていると、目の前に小さな人型を見つけた。

 水色の長い髪と目、白い服で腰には水色のサッシュ、白いブーツ。白い羽の子。これは妖精か…?


(違うよー森の精霊だよ!)

 そう言って自分の手を見て、服を見て羽を見て

(やったー!人型になれたー。癒しの魔力のお陰だよ)


 大喜びだ。ふわふわと沢山の光が舞っている。その子はベイクの頭に止まると軽く手を振った。その手から水色の光が溢れて…ベイクは目を覚ました。

「こ、ここは…」

 茫然と私と精霊を見ている。

「ここは、天国か?ミュジーク様と妖精?が見える…」

 私は思わず

「ベイク!」

 抱きつこうとして、カイゼルに止められた。

「少し匂いますので…」

 ベイクはあれっという顔をして

「親父殿?」

「現実じゃぞ?しっかりせい!」


「目が、目が見える!」

 カイゼルはベイクを抱きしめる。そう、ベイクはカイゼルの3男だ。

(匂うのーきれいにするね!)

 また精霊が手を振るとベイクはふわりと光ってきれいになっていた。しかも何やら爽やかな匂いがする。

(ご主人の力を少し借りたのー)

「浄化、か…」

(違うよ!洗浄だよー服も体の汚れもきれいにするのー)

 いや、それはもう洗浄ではなく浄化だ。洗浄は水で濡らすだけだ、普通は。

(ご主人の洗浄なのー)


「そのご主人とは?」

(アイルなのー!)

 やっぱりか。

(アイルの癒しの魔力で人型に進化したの!)

「そのアイル殿とは?」

「救世主じゃな」

(ふふふっ、関わりたくないのにぃー心配してる!だからしばらく一緒にいるの!)

「それは、有り難い。アイルの力を少し使えるのか?」

(うん、ほんの少しだけ…みんなからご主人の魔力を感じる)

「よろしく頼みますぞ」

(頼まれたー!私は普通の人には見えないから。念話で話しかけて!)


 念話?どうすれば…。

(それでいいよー聞こえるから)

 そう、なのか…?

(うん、ご主人様のこと…好きなんだねーふふっ分かるよ!)

 えっ…ぶわっと顔が赤くなる。待て、それはどういう。いや、違う。うわ…。

 ニヤつくカイゼルと唖然とするベイク。居た堪れない。


「ここにおったか…ん、ベイクか?」

「叔父上、はい!」

 ナイゼルは涙目でベイクを見て上から下まで確認した。

「無事だったのか?」

「いえ、危なかったですが…ぐぅ…」

 ベイクの腹が鳴った。みんなで笑うと

「屋台で何か買ってくる」

 タウリンとナイゼルが屋台に向かった。私たちは近くのテーブルに座って待つ。

 スープとパン、串焼きを沢山買ってきた。

「一度に沢山は食べるなよ?」

 カイゼルがベイクに言う。

「はい!」

 返事は良かったが、たくさん食べていた。アイルの薬で快癒したようだ。むしろ、今までで1番調子がいいだとか。本当に彼は。胸が温かくなった。


 食べ終わると宿に向かった。タウリンとナイゼルの部屋にベットを入れて貰えることになり、ひとまず寝る場所は確保出来た。

 それぞれの持ち物を確認する。

 タウリンは剣と軽鎧、ローブに空間拡張カバン。

 カイゼルとナイゼルは同じく剣と軽鎧、ローブに空間拡張カバン。テントに食べ物と各種薬に服、きれい玉。

 ベイクは剣と軽鎧に空間拡張カバン。

 タウリンとベイクはカバンには干し肉すら残っていなかった。予備の剣と短剣と薬草が少し。それが全てだ。


 それぞれに替えの服と薬、食料を買い出すことにした。

 服屋は商店で、各自数着を購入。私は杖と胸当てを買った。後は食材。小麦粉に干し肉、調味料に野菜と果物も少し。アイルがくれたテントの中の箱は時間遅延。

 果物が持ち歩けるのは有り難い。

 こうして買い物を終えて、夕食を食べることにする。

 探索者に人気の食べ放題の店があると言う。

 そこに繰り出し、大いに食べた。久しぶりに量を気にせず食べた。アイルの食事に比べれば、味気ないが。


 その日は夕食後に宿に戻り、順番に湯を使って体を拭き、寝た。

 翌朝、目を覚ますと体が痛かった。固いベットで少し固まったようだ。体を動かす。カイゼルはもう部屋にいなかった。

 昨日のアレを見ても分かる通り、私にはアイルの防御があるようだ。

 精霊によれば

(ご主人のごく簡易な結界)

 だそうだ。人を首までバキバキに凍らせるのが簡易なのか?いや、まあアイルだからな。


 部屋を出るとナイゼルが扉の前に立っていた。

「おはようございます」

「あぁおはよう」

「カイゼルはベイクと朝食を買いに行きましたぞ」

 そうか、宿の食事は頼まなかったからな。なるべく人と関わらない方がいいという判断だ。

 ナイゼルの部屋で待つことにした。

「しかし、彼の普通の傷薬は…凄いですな」

「普通じゃない方は一体どんな?」

 …考えちゃダメな気がする。

 そこで扉が叩かれた。


「ベイクだ!」

 開ければ両手にたくさん抱えたベイクがいた。

「たくさん買ったな」

「しばらくほとんど食べられなくて」

 ベイクとはもう少し手前の街近くで別れた。揺動だ。数人の騎士と迎え打ち、撃破したもののベイク以外は負傷。そこで別れて単身、私たちを追ったのだそうだ。

 途中、他の追っ手と乱戦となり、なんとか逃げたものの目を負傷。馬とも離れ、なんとかこの町に辿り着いたとか。しかし負傷していたので、探索者(ギルドに登録済みの中級)として討伐の依頼がこなせる状況ではなく。

 細々と簡単な依頼を受けながら食い繋いでいたと言う。


「いやーそろそろ空腹でヤバかった」

 だそうだ。目は片方が潰れて見えず、私のたちを追うことも出来ず。

 そんなところで()()()()我々がベイクを見つけた。

 本当にたまたまなのだろうか。タウリンの馬にしてもそう。不思議なたまたまが続く。それがアイルの意思のような気がして心が温かくなる。



 実際にはアイルのことが大好きな精霊や妖精が()()()()()力を貸したに過ぎない。アイルの知らないところで。



 その日、朝食を食べたら町を出発した。

 ベイクが別れたほかの騎士たちを探す為に。どうか生きていてくれ、そう願いながら。




時系列整理

10月10日 審判の日

アイルやハクたちが魔力を捧げる為に眠る

イグニスが神界でケガをする


10月15日頃

シシラルたちがイグニスを連れて下界に降りる(神界と下界は時間の流れが違う)

アルテノが祈りを捧げる

イザークがペンダントにざわめきを感じる


10月18日頃

ダナンたちが王都を訪れ、謁見と会食

アーシャが神聖の森に伝言をする

若木が根付く?

光の奔流が流れ落ちる アイルが消える


10月19日 ダナンたちが夫人たちと会食に参加


10月20日 アイルが目覚める

イーリスがイグ・ブランカに戻る

旧イグニシアで黒い光が飛んだ

ダナンたちが王都を出発


10月21日 ライラたちと双子の騎士を助ける 合流

夜中に馬とネズミを助ける

帝国で白い光が駆け抜けた


10月22日 ライラたちと双子の騎士と馬が合流 山を降りる


10月23日 ライラたちがナビィと出会う

ダナンたちが帰領する

ナビィがアイルと再開する


10月24日 ライラたちがベイクと再会


1月1日 ロルフたち鎮魂の森を出発

1月6日 フィーヤ着

1月7日 フィーヤ発 イグ・ブランカ着




*読んでくださる皆さんにお願いです*


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