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異世界転移 残りものでも充分です〜  作者: 綾瀬 律
第6章 ピュリッツァー帝国

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328.帝国の隠された姫3

 そして、安全な平原で快適な野営をしたのだった。

 いや、そもそも野営って危険で大変なものでは無かったか…?

「ほっほっほ…」

「考えたら負けですな」

 確かに。私はそのふわふわの毛布を撫でる。ほのかに花の匂いがする?いい匂いだ。

 その毛布に顔をうずめる。その優しい匂いを嗅ぐ。何か心の底から優しい気持ちになれる。

 頬が熱くなる。なんだ?このそわそわした気持ちは。


「朝ごはんが出来ましたぞ!」

 慌てて毛布から顔を上げる。顔が赤い?首を振ってテントを出る。

 うっ外はけっこう寒いのだな。なのにテントは快適な温度に保たれてる。不思議な少年だ。

 温かいスープとパンに猪の肉を挟んでだものを食べる。果物付きだ。これは野営なのか…?

 ここに辿り着くまでの野営は何だったのか、と思わずにはいられない。


 こうして進んで行く。なんとかタウリンと探したいな。

 進んで行くが、そろそろタウリンと別れた付近だ。あれから時間も経ってる。どうか無事で。

 街道沿いに進んでそろそろ陽が落ちる、と思った頃に魔獣の群れに当たった。

 私は殆ど戦えない。足手まといだ。悔しいが、何も出来ない。だからライラも私を背に乗せて待機だ。

 しかし、数が多い。ハラハラするが見ていることしか出来ない。歯がゆい。

 あ、後から狙われてる。カイゼルの馬が…危ない!


 ピカン


 あれ?無傷だ。なんだ、あれは?目を擦る。馬の頭にネズミがいる。そしてネズミごと淡い水色の膜に覆われている。あれは、結界…?

 馬ごと?しかし傷は負わなくても傷を負わせられない。

 ゴブリンはその数が多い。これではジリ貧だ。

 その時

『アイリー!』

 黒い光が駆け抜けた。そして、あんなに沢山いたゴブリンが全滅していた。

 …何が?


『あれ?アイリーどこー?おかしいなぁ』


 そこにいたのは大きな黒い犬。頭から背中、しっぽまでが黒。そして口元とお腹側からしっぽまでと脚元が金色の大きな犬。そして特徴的な体型。そう、少し胴が長くて脚が短い可愛らしい姿だった。

 えっ?


 それからゴブリンを見てしっぽを振る。次の瞬間には何も無くなっていた。もちろん、血や匂いもだ。

 えっ…?

 カイゼルとナイゼルも固まっている。

 しかしその頭にいたネズミは

『お初だよー』

『お初だー』

 元気に挨拶していた。


 ライラが

『そなたが助けてくれたのか?礼を言う』

『うーん助けたって言うか…アイリを探してただけー。おかしいなぁ、妖精たちがこの付近だって言うから来たんだけど…そしたらアイリの魔力を感じで』

『妖精たち?お主は黒曜犬か…伝説の存在だな。われはライラと言う。ユニコーンの血を引く幻獣だ』

『ライラ?よろしくー、黒曜犬のナビィだよー!ユニコーンなら友達にいるよー』


 犬は歩いてカイルとナイルの頭にいるネズミの匂いを嗅ぐ。

『やっぱりアイリの魔力だ!ライラの耳標からも、おじさん達からもアイリの魔力を感じるよー』

『アイリとは?』

『私の契約者ー』

「お初にお目にかかります、ナビィ様。助けてくださりありがとうございます」

「助かりましてございます」

 カイゼルとナイゼルが跪く。

「カイゼルとナイゼルにございます」

『うん、よろしくー!ねぇ、同じ匂いがする人が…魔獣に襲われてるよー!助ける?』


 私はハッとした。タウリンだ!

「私はミュジークと申します。馬上から失礼する。助けて欲しい」

『ならおじさん達は私に乗ってー!お馬さんは空を翔けてねー』

『僕たちが手伝うよー!』

 ネズミが前脚を上げた。

『ライラも空を翔けて!』

 ライラが困惑する。本来ならユニコーンの末裔であるライラは空を翔ける。しかし、それ術を知らずに人の郷に来てしまった。だから飛べないのだ。


 ナビィはそのまん丸な目でライラを見ると

『大丈夫、道標は私のしっぽ。君なら飛べるよ!行くよー』

『おー』

『やー』

 カイゼルとナイゼルを背中に載せてナビィ様は悠々と暗くなり始めた空を翔ける。その姿はとても優美で、目を奪われる。

 続けてカイルとナイルが空を翔ける。ネズミを中心に水色に光りながら。何故だ?いや、考えちゃダメだ。

 そして覚悟を決めたのか、ライラが助走をして…そして飛んだ。ライラが空を翔ける。

 翔けた…ライラがやっと。何度も練習していることを知っていた。良かった、本当に良かった。


 ナビィ様の金色のしっぽは道標。ゆらゆらと揺れるそれは、暗い空で確かな道標であった。

 空を翔けたのはほんの5分ほどか、森の中にナビィ様が降りた。そして、背中に2人を乗せたまま走る。

 木々をすり抜けて、どんどん進む。

 あ、見えた…でも今まさにブラックベアの爪がタウリンを引き裂こうとしている。

 ダメだ、間に合わない!


 ヒュン…


 ナビィ様が金色のしっぽを一振りすると、ブラックベアが血を流して倒れた。

 倒れた…?一撃で、しかも遠隔から?

『何と…』

 カイルとナイルの頭に座っているネズミは

『ひぉー!』

『カッケー!』

 ノリノリだった。

 流石のライラも固まっている。


『おじさん大丈夫ー?』

 ナビィ様は緩くしっぽを振ってタウリンに近づくと、首に付けたポーチから器用に薬を口で取り出して、タウリンの顔に押し付けた。

 そこでようやくカイゼルとナイゼルがナビィ様の背中から降りて

「タウリン!間に合ったか」

「その薬を飲め!」

 よく見れば、片手をだらんと下げて足も投げ出して座っている。腹にも血の跡が見える。重症ではないか。


 私は青くなってライラから飛び降り、そばによる。

「ミュジーク様、ご無事で!」

『早く飲んでー!』

 ナビィ様がさらに顔に薬を押し付ける。タウリンは驚きながらも蓋を開けてそれを飲み干す。すると体が水色に光った。

 光が収まるとそこには破れた服も治ったタウリンが唖然としていた。

 体を触って顔も触っている。

「何が…?」

『アイリの()()の傷薬だよー、骨折ぐらいならすぐに治るのー』


 いや、待て待て。傷薬で骨折は治らないぞ?

「治ってる…確かに腕が折れていたが」

 治ってるのか?そのアイリとは誰だ…?

『アイリはアイリだよー、今はアイルだね!』

 アイル、それはあの少年か?

『知ってるの?アイリを探してるの!どこ?』

『分からぬのか?』

 ライラが聞く。

『うーん魔力が追えなくて』


 あ…そうか、かれは霊峰のさらに山頂付近にいる。ならば魔力を追えなくて当然か。霊峰は外部と魔力を遮断すると言われるから。

『俺たちなら案内できる!』

『僕たちは契約したから!』

『えーまた増えたの?相変わらずだな。ねぇ、私のこととか聞いてない?』

『聞いてないよ!』

『そっか…どっちでもないのかな。でもいい!教えてー』

『俺はトム』

『僕はジェリー』

『もう大丈夫だよねー?なら私はもう行くよ!』

 そう言って倒れたブラックベアに前脚でちょんと触れると消えた。


「待ってくれ!」

 思わず呼び止めてしまった。何処にブラックベアをしまったのとか、色々聞きたいことはあるが。

「その、我らも会いたいのだ」

 カイゼルもナイゼルもニコニコしている。意味が分かっていないタウリンもなにやらしたり顔だ。

 頬が熱い。彼に会いたい。

『あーまたかぁ。全く相変わらず無自覚人たらしなんだから…』

 ラルラも、カイゼルもナイゼルも、トムとジェリーまで頷いていた。

 そうかもしれない。でも、ナビィ様が探そうとした。それは探さなければならなかったことになる。


 それがどうしても気になる。

『んー急ぎたいから…ダメ!』

 アッサリと否定された。

『会いたければまた何処かで、ね!』

 そう言って白ネズミたちを背中に乗せると颯爽と走り去った。

 ナビィ様は、まるで嵐のようだった。救世主という名の。また会えるだろうか。


 その後はタウリンから別れた後の話を聞いた。どうやら追っ手はタウリンが森に誘い込んで上手く巻いたらしい。しばらく様子を見ている内に、追っ手が魔獣に殺されたのを発見したとか。

 妹の近衛だったと。私はため息を吐いた。




時系列整理

10月10日 審判の日

アイルやハクたちが魔力を捧げる為に眠る

イグニスが神界でケガをする


10月15日頃

シシラルたちがイグニスを連れて下界に降りる(神界と下界は時間の流れが違う)

アルテノが祈りを捧げる

イザークがペンダントにざわめきを感じる


10月18日頃

ダナンたちが王都を訪れ、謁見と会食

アーシャが神聖の森に伝言をする

若木が根付く?

光の奔流が流れ落ちる アイルが消える


10月19日 ダナンたちが夫人たちと会食に参加


10月20日 アイルが目覚める

イーリスがイグ・ブランカに戻る

旧イグニシアで黒い光が飛んだ

ダナンたちが王都を出発


10月21日 ライラたちと双子の騎士を助ける 合流

夜中に馬とネズミを助ける

帝国で白い光が駆け抜けた


10月22日 ライラたちと双子の騎士と馬が合流 山を降りる


10月23日 ライラたちがナビィと出会う

ダナンたちが帰領する

ナビィがアイルと再開する


1月1日 ロルフたち鎮魂の森を出発

1月6日 フィーヤ着

1月7日 フィーヤ発 イグ・ブランカ着




*読んでくださる皆さんにお願いです*


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