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異世界転移 残りものでも充分です〜  作者: 綾瀬 律
第1章 異世界転移?

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33.ギルドの呼び出し

 体が重い。目を開けると淡い金色。既視感。でも今日は慌てたりはしない。昨日のことを思い出して恥ずかしくなる。こちらの世界では初めてのキスだった。しかもこんな美形と…。


 男の体になって戸惑うのは体の違い。胸と生理が無いのは単純に楽だけどそのね、分かるでしょ?股に付いてるヤツ。トイレはまぁまだいいんだけど、ほらね?朝とか、夜とかのウズウズムラムラ系よ。あれがきたらどうしようかって思ったけど、全く無反応。


 昨日だってあれだけ密着してたのに最後まで沈黙してた。イリィのはそれはちゃんと反応してたよ?体の反応としてはそれが普通なのかな…経験がないから全く分からない。

 生理反応だから朝は元気になるかとも思ったけどそれもない。いつも通り下を向いている。

 感覚が女だとしても生理現象は心とは関係ないよね?まぁ反応しなくても困らないんだけど。


 私の体に乗り上げているイリィが身じろぐ。心が跳ねるから反応しないのは体だけらしい。反応したらしただけ困るからいいかな。

 胸に頭を擦り付けてギュッと抱きつかれる。受け止めなくていいから受け入れて、か。参ったなぁ。本当に…目の前にある髪の毛に手を入れて軽く梳いていく。サラサラと指から溢れる髪は少し冷たい。


 まぶたが震える。眠たげに開いた目は私を捉えるとほんのりと細まる。おはようの続きはキスだった。私の両頬を押さえて上から…そのまま私に体を預ける。朝から美形は心臓に悪いね。イリィの肩を叩いて抱きつかれたまま体を起こす。そこにノックの音がしたけど、イリィが抱きついたまま離れない。

 仕方なく抱っこして扉を開けるとスーザンが私たちを見て、慌てて部屋の中に食事を置くと邪魔したなと顔を赤くして出て行った。ん?何だ?まいっか。



 スーザンはそうか、昨日は初めてで…アイツらも若いな…ふっ…。盛大な勘違いをしていたのだった。



 イリィをベットに座らせて着替えてから食事を食べる。イリィも着替え終わってテーブルで食べている。そう言えばイリィが着替えてるの見たことないな。いつも気がつくと着替え終わっている。早業かな?





 朝起きるとアイが僕を見ていた。昨日と違って受け入れてくれたからか、距離感を嫌がっていない。体が密着しているのは困惑しているけど、薄いピンクの色は健在だ。こんなに薄いピンクの色を纏う人、初めてだ。他人はだいたいドギツイピンク。それは好意ではなく執着。薄いピンクは純粋な好意だ。嬉しい。キスをしてその胸に顔を埋める。心地の良い朝だな。


 僕をベットに降ろすと着替え始める。見た目以上に筋肉質だ。抱きついていても分かる。無駄のない細い体。まだ成長期だろうに、良く絞れている。もう服を着てしまった。少し名残惜しい。

 自分の裸を見てハァハァする変態の気持ちはまだ分からないけど、誰かの裸を見たいという気持ちは少し分かった気がする。


 さ、今日もまたアクセサリーを作らないと。アイがくれた水晶の欠片はまだある。売れる作品を作らないとね。なんだか宿の主人の目が温かったような?気のせいかな?

 ギルドに行くというアイと一緒に宿を出ると昨日の子供達が迎えに来てくれていた。1人では危ないからとアイが頼んでくれたらしい。本当に優しい。

 宿の前で別れる。アイディアがどんどん湧いてくる。さぁ作業場に行って今日も頑張るぞ。




 宿の前でイリィとレア、ルドと別れる。ギルドに行くのは嫌だけどハクと外に行く約束をしたし、先に終わらせた方がいいだろう。胸のポケットには雛もいるし。

 昨日は宿に帰ってからハクが雛にあの蜜を食べさせればいいと言うので、少しあげた。その後はハクが胸毛の中に抱いて寝た。私もハクの胸毛とか腹毛とかに埋もれたい。おっと思考が逸れた。


 雛を留守番させるわけにもいかないので胸ポケットに入れている。顔だけ出して周りをキョロキョロする様子はとても微笑ましい。

 そうしてギルドに着いた。1日ぶりか。中に入ると右のカウンターにいたイザークさんが手を挙げて、廊下を指す。はい、いつもの会議室ね。カウンターの中を移動して廊下に出たイザークさんに続いて歩く。


「しばらく見なかったが活躍したようだな。後で初級に変更するからカードを出すように」

 と言ってドアを開ける。中にはロルフ様が奥に座っている。私を見ると軽く手を上げて隣の椅子をトントン叩く。あ、はい…そこに座るんですね…ロルフ様の横の椅子の端にちょこんと座る。ハクが飛び乗ってくる。もふもふもふもふ。今日もいい毛ですねーハクさん。


 イザークさんは出て行く。少ししたらドアがバンと勢いよく開いてやっと来たか!と大きな声で叫ぶギルマス。時間のある時にって伝言だったよね?

 首を傾げると

「貴族が関わってるんだからよぉ、普通はすぐ来るんだよ」

 だってさ。普通って何さ、知らんよそんなの。

「アイルらしいな」

 横でロルフ様が呟く。

「魔法契約の件?」

 構わず話を変える。イザークさんが頷くと書類を出して来た。


「内容は洞窟の場所、採掘方法、例の塊の割り方、そして空洞の見つけ方。紫水晶のこともだ。アイルが持っている物は自由に使って構わないが、原則、ギルド経由以外の売買は認めない」

「知り合いに渡してそれを加工販売するのは?」

「それは構わない」

「ギルドを通さない販売の罰は仕事の斡旋停止や級の降格だ。そもそも契約で守秘義務に関することは話すことが出来ない。話そうとした時の罰則はない。ただ話せないだけだ」


 特に問題はないな。イリィに渡した欠片がダメなら困るけど欠片以外も渡せそうだし。頷くと書類に目を通す。イザークさんが教えてくれた内容と同じだ。読み終わると署名をする。紙がぽわわっと光ると消えた。

「これで契約は完了だ」

「お疲れ様、アイル君」

「お疲れ様。あぁ、イザークさんこの子は何か登録がいる?」

 胸のポケットから雛を出す。


 ロルフ様が素早く側に来て雛を見つめる。そして私を見てまた雛を見る。ギルマスもイザークさんも何故か固まっている?首を傾げると

「おいおいおいおい、お前はなんてもん連れてるんだ!」

 ん?白大鷹の雛だけど…?

「間違いないか…この白い毛と青い目は」

「…」

 イザークさん、眉間にシワ寄ってます。

「……」

「登録しとけ。鷹だ」

「取り敢えず、足環はいるな」

 と長い沈黙の後にギルマスとイザークさんが言った。何この雰囲気?


 イザークさんが例の黒板に書き込んで渡してくる。頷くとギルドガードを渡して操作し、返して貰う。

 もう帰っていいよな?

 それではと言って部屋を出ようとするとロルフ様に腕を掴まれる。また依頼だすから、そう言われて軽く頷くと部屋を後にした。はい、断れない案件ですね。


 よし、ギルドの用事は終わったと思ったらイザークさんに見習い終了と初級の手続きをするからとカウンターに呼ばれる。カードを渡すと何か機械でカードに押している。返されたカードを見ると左下に銅色の文字で初級と書かれていた。おぉ〜なんだか嬉しいぞ!

 イザークさんに軽く頭を下げて、今度こそギルドを出て行った。





 アイルが出て行った部屋の中でロルフとギルマスは目を見合わせる。

「おい、あれ…」

「だな…」

「おい、マジかよ?…」

「凄いな」

 ため息を吐く。

「白大鷹の雛。獣に襲われたんだろう」

「匂いが付くと郷から放り出されるらしいな」

「彼が助けた…」

「雛の親が居たはずだ。襲われたのならそれなりに強い獣だろう。あの子に倒せるのか?」

 チラリとギルマスを見る。

「この間の指名依頼の…ブラッグベアに襲われそうになった…」

「あぁ?聞いてないぞ?」

「言ってない…」

「おま…でどうしたんだよ?」

「分からない…彼が囮になって私から離してくれた…私は…彼は帰って来たよ…でも、顔色…悪かった」

 頭をガシガシかく。

「何にしても見かけ通りじゃ無いってことだな…全く。目が離せないぜ」

「また指名するから…しばらく他の依頼はやめた方がいい」


 ギルマスは頷く。白大鷹…聖獣だ。白くて大きな鷹でその胸元には逆三角形の銀色の毛が生えている。その目は鮮やかな青。歴代王族の絵の、その肩に止まっているその大鷹はこの国でも良く知られている聖獣なのだ。

 本当になんてもん連れてんだよ…。




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