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異世界転移 残りものでも充分です〜  作者: 綾瀬 律
第6章 ピュリッツァー帝国

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322.イグ・ブランカへ

 僕は身支度を整えて、侯爵家の食堂に向かう。執事が案内をしてくれた。ジークの配慮だろう。女性はまったく見かけなかった。

 確か、ジークには妹がいた筈。きっとお母様やその妹が顔を出さないのは、そういうことだろう。

 僕が女性は苦手だから…。


 食堂にはジークとジェラルミン殿、エリアスとイグニス様にグライオール様、ブラッドがすでに座っていた。

「おはよう…」

「あぁ、ロルフリート殿、おはよう。良く眠れたかな?」

「はい、お陰様で。野営が多かったので」

 実際にはふかふかのマットにふわふわの毛布。温度調整もバッチリで快適なんだが。


「それは良かった。もう発つのかな?」

「はい、急いで帰りたいので」

 そこにジオラルト侯爵が入って来た。

「みんなおはよう」

「「おはよう」」

 口々に返す。

「顔色はいいようだな、始めよう」

 静かに朝食が始まった。


 堅パンほどは堅くないけど柔らかくないパン、あっさりとしたオムレツ、塩味のスープ、生野菜。

 充分豪華で、美味しい食事。でも、エリアスもイグニス様もグライオール様も、ブラッドでさえ黙々と食べている。

 そうなのだ、イルの作る食事に慣れてしまうと味気なく感じてしまう。


 日常の様々な場面で、こうしてイルを感じる。こんなにも僕の心に入り込んでいた君。ちゃんと責任を取って。僕は諦めが悪いんだ。

 そう決意を新たにした朝食だった。


 部屋に戻ると身支度をする。と言っても、イルがくれたポーチに全て入る。ベットの枕元に置いていたポーチ。その中にいるアイリーンとリツを撫でる。リツにはイルの魔力が籠った水晶を渡す。ちゅうちゅう吸ってる姿は愛らしい。

 眉間を撫でるとお腹を見せた。可愛い。

 リツは父親たちがいなくなって、不安ではないのか…?

『ぴぃ(ロルフがいる…パパは帰ってくる)』

 そうか、分かるのか。リツ。

 ポーチを付けてアイリーンを撫でローブを羽織る。


 僕は部屋を見回してから扉を開けた。

 玄関にはもうみんなが集まっていた。ジークが僕を熱い眼差しで見る。僕は静かにジークを見た。

「世話になった」

「それはこちらの台詞だろ。早く見つかるといいな!」

 ニカッと笑う。たとえ強がりでも、それが彼の矜持なら…。

「見つける、よ…必ず」

 侯爵家の人たちは驚いていた。貴族であれば、必ずという言葉を容易には使わない。

 でも、僕は必ず見つける。それは意思でもあり、間違いのない事実。


「気を付けて、良い報告を待っている」

 僕は頷くと屋敷を辞した。

 ジークが馬車寄せで待っている。イグニス様とグライオール様、エリアスはもう乗り込んでいた。僕はジークの手を借りて馬車に乗る。僕の手に触れたジークの手は一瞬、強く握ってから離れた。

 僕は表情を変えない。僕の気持ちはイルだけに向かっているから。

 ジークが隣に乗り込む。

「なぁ、聞いていいのかアレだが、どうやって移動してる?」

「ティダに乗って…」


「…はっ?」

「ティダに乗ってじゃな。早いぞ?」

「誰かに見られないのか?」

「隠蔽してるに決まってるだろ?目立つしな」

 グライオール様が言う。そう、見られたら騒動になるし。

「なぁキウリラでワイバーン狩ったか?」

「ナビィがね…」

 ジークは頭を抱えた。

「聞かなきゃ良かった。マジか…」

「ナビィは空を翔けるから、簡単に狩ったみたいだ。調子が悪かったイルに、美味しい鶏肉を、食べさせたくて…」

「美味しい鶏肉…」


「ぶわっはっはっ、それはまた愉快じゃな」

 吹き出すイグニス様。

「ナビィが口に咥えて嬉しそうに走って来た時は、みんな唖然とした」

「アイルの反応は?」

「大きな鳥さんかな?ナビィ。危なくなかった?ん、美味しいの…?ありがとう、ナビィ。夕食に食べようね。って言って、ナビィを撫でてた」

「ぐはっ、アイル、くくっ…」

「さすがアイルじゃな。ワイバーンを見て大きな鳥さんか…ふはっ全く色々と斜め上じゃな」

「それがイル。結局、キウリラを救った…イルが」

「まったく敵わないな…」

「イルと並ぼうなんて、無謀…完全に無自覚」

「そう、無自覚天然人たらし…」

「神も、だな」

「生き物も、かな」


「「「…ふふっ」くふぅっ」くすっ」

 ジークも晴れやかに笑っている。イルはそういう子。僕が好きな人はそういう子、だよ。

 馬車は門まで着いた。

「ロルフ…」

「ここでいい、元気で」

 ジークの手を借りて馬車を降りる。ジークは僕の手を離すと背中をバンバン叩いた。

「アイルによろしくな!」

「イルが覚えていたら、伝える」

 こうして僕たちは貴重な情報を手に、フィーヤの町を出た。しばらく進んでからティダに乗り、イグ・ブランカを目指す。


 そして、その日の夜…

 イグ・ブランカが遠くに見えた。早いよね?チラッとイグニス様を見ればそっと目を逸らす。何かしたか…。

「ちとな、空気を薄くして速度をな?」

 それだけ?

「う、ほんの少し空間を繋げてな?」

 グライオール様まで何してるんですか。

「いやいや、ニミもだぞ?時を操ってな?」

「神様たち、やり過ぎ…嬉しいけど」

「それは、早くユーグに会いたいであろう?」

 それは確かにそう。

 そうか、みんなイルのことを気にして…。

「ありがとう」

「ロルフ、気持ちはみんな同じだ…」

 エリアスに頷く。みるみる内に近付くイグ・ブランカ。


 ニミが知らせたのか、みんなが待っていた。そう、若木は僕のポーチに入っている。

 白の森に根付かせるのは森人の役目。僕はイルの代わりに渡して、終わり。

 イーリスは根付くのを確認してからゼクスを目指してもらう。僕はリベラとソマリと共に先行する。ダーナムとシグナスは僕と、サリナスとブラッドはイーリスとゼクスを目指して貰おう。

 出発は明日。ティダに運んでもらうわけにはいかないから、僕は侯爵家の馬車で、まずはフィフスに。

 それから死の森を目指して、ゼクスへ戻る。ユーグ様と会えたなら、その先どうするかを決める。

 で、お母様の了承を貰って…帝国に行こう。


 ティダがイグ・ブランカに降り立つ。そこにはイーリス、ニミ、リベラにソマリ、ダーナムとシグナスにサリナス、森人一家とヤンダルが待っていた。

 イズワットの民はキリウスとヨナ、アールとガロンが待っていた。イアンたちもいる。

 イーリスのそばにはミストとミア、ルイがいた。

 僕は屈んだティダから降りる。

 イーリスが飛びついて来た。

「ロルフ、貴重な情報って…」

 僕の肩を揺する。

「イーリス、ここでは…」

 ハッとして俯く。僕は肩を軽く叩く。


「「ロルフリート様、お帰りなさいませ」」

「ん、ただ今。変わりはない?」

「はい、ございません。旦那様と奥様からお手紙を預かっております」

「はい、魔鳥が順調に増えております」

「そう、良かった。手紙は後で読む、よ。サリナス、変わりはない?」

「「はっ、報告は後ほど」」

「ん、ダーナムとシグナス。変わりはない?」

「「はっ!」」

「イザーク様とダナン様から書状が来ております」

「分かった、後で返事を」


 エリアスがヨナとキリウス、アールとガロンに声を掛けている。そして、4人はイグニス様とヒュランをみて固まっている。王宮に飾られた絵に出てくるイグニス様とヒュラン。それが目の前にいたら驚くだろう。

 彼らは全員、王宮で働いていたそうだから。


 


時系列整理

10月10日 審判の日

アイルやハクたちが魔力を捧げる為に眠る

イグニスが神界でケガをする


10月15日頃

シシラルたちがイグニスを連れて下界に降りる(神界と下界は時間の流れが違う)

アルテノが祈りを捧げる

イザークがペンダントにざわめきを感じる


10月18日頃

ダナンたちが王都を訪れ、謁見と会食

アーシャが神聖の森に伝言をする

若木が根付く?

光の奔流が流れ落ちる アイルが消える


10月19日 ダナンたちが会食に参加

10月20日 アイルが目覚める

イーリスがイグ・ブランカに戻る

旧イグニシアで黒い光が飛んだ(多分ナビィ)


10月21日 ライラたちと双子の騎士を助ける

帝国で白い光が駆け抜けた(多分ハク)


10月22日 ライラたちが双子の騎士と合流 山を降りる


1月1日 ロルフたち鎮魂の森を出発

1月6日 フィーヤ着

1月7日 フィーヤ発 イグ・ブランカ着

 


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