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異世界転移 残りものでも充分です〜  作者: 綾瀬 律
第6章 ピュリッツァー帝国
325/339

319.その頃のロルフリート

 その少し後、バナパルト王国では…



 僕はフィーヤの町に着いた。ブランも消えてしまったから、ティダに乗って。ブランだって早かったけど、種族長であるティダはまたとても早い。

 そして僕は目を覚ましてからの事を思い出す。イルが消えたことが分かって、ナビィが僕を見つけてくれた。

 僅かな記憶の中で、誰かが


「強すぎる…」

 と叫んだ気がする。自分の声のようにも思うし、違うかもしれない。

 あれは間違いなく祝福。強すぎる、があの光の奔流だとしたら?

 エリアスから聞いた一瞬離れた繋がり。その隙間をうめるような森人の巫女の祈り。

 そして光。繋がる、な。魂が彷徨っていたイルを迎える光。でもそれは定着していないイルには強すぎだ。

 だから防御が働いて…。

 僕はスキルとイルの防御があるから、近くに飛ばされた。いや、弾かれたかな。


 ハク様やブランは聖なるもの。ならば、イルを追いかけて?分からないけど、イルが生きていることは間違いない。僕に出来ることは何だろう?

 僕の役割は…そうだ。ユーグ様に会ったら、サリナスたちに依頼を出そう。

 きっとイルは東にいる。ピュリッツァー帝国か神聖国。どちらかだと思う。ただの勘、でもアイルの防御がアイルを窮地に立たすとは思えない。アーシャ様もいる。ならば、間違いないだろう。

 それから、イルの魔力と自分を繋げる魔道具の開発かな。ラルフを助けてくれた人が、確か魔術師団の上級研究員だ。


 多分、王都で父上が会ってるはず。イルがラルフが助かったお礼にってエンブレムを作ってたから。

 それならば()()()の装備も入れ込んだ筈。僕も頼みやすい。

 それにイルは自分の魔力を込めた水晶で目印の魔力を探し出せるようにした。ならば、同じように探すことが出来るのでは?

 こちらは僕が研究しよう。

 フィフスに戻ったら伝書鳥を飛ばそう。

 その魔道具が出来たら、そうだな…国外視察にでも出よう。ちょうど貿易の相手を開拓したかったんだ。

 名案だな。



 この名案が後に大変な騒動となる事をロルフはまだ知らない。



 ティダから降りると伝書鳥を飛ばす。ジークリフに連絡する為に。何かイルの情報が無いか知りたい。

 ダナフォスター侯爵家は国境の町フィーヤを治める。厳しい気候の町を維持するのは難しい。

 自由地帯に接することから、移民対策も必要だ。そんな難しい町を治める侯爵家は情報を大事にする。

 何かあれば身を挺して戦わなければならないのだから、国の動向だけでなく、国外の情勢にも敏感だ。

 だから、何か知らないか…聞きたい。


 エリアスと、ブラッド、小さくなったティダ、そして…何故かイグニス様とグライオールさまにヒュランまで一緒だ。ベビーズはナビィと待っていたのに、ナビィが消えてしまった。だからいまはヒュランの背中に捕まってる。

 なぜこうなった…ロルフにも分からなかったが、いるものは仕方ない。

 ジークリフには宿の手配と、商業と探索者ギルドのギルマスに面会を頼んだのだ。

 エラスノもリバーテイルもイルのお陰で忙しいかな?

 新年明けたばかりだし大丈夫かな?

 フィーヤに向かって歩きながら考える。



 結局、エリアスは王宮と育った離れを何度か訪れて、持っていきたいものを探した。そして、王族の成人した男子しか入れない場所、宝物庫と図書館の非開示の部屋に入った。

 手付かずのそこには、イグニシアの残した武器や書物、宝石や文献、魔道具や鉱物までたくさん残されていた。

 エリアスは迷っていたが

「歴史は失われれば、もう復元は出来ない。王族として、持ち帰るのはエリアスの責務」

 と諭した。もちろん、調べたいと言う気持ちもすごくあったけど。失ってしまえば2度と取り戻せないのも本当。

 だからエリアスのバックにはかなりのイグニシア由来のものが入っている。


 イグ・ブランカで小さな飛地とした場所は白地地帯。ならば独立国とすることも叶う。

 元イグニシアのそれらのものはきっと必要になる。

 僕も研究し放題だ。

 で、年明けまで旧イグニシアで滞在し、フィーヤにもうすぐ着く。

 1月1日に旧イグニシアを出発し、自由地帯を抜けてここまでたったの5日。

 ティダはとにかく早い。僕たちの気持ちも分かってるのかも。有り難い。でも、それすらイルの力。温かいテントに美味しい食事。ふわふわの毛布にぬくぬくの服。早いティダ。可愛いベビーズ。そしてアイリーンとリツ。

 僕はこんなにも君に、君の作ったものに囲まれてるんだよ…イル。必ず見つけるからね。待ってて。


 町の門が見える頃に、何やら馬車が向かって来た。みるみる内に大きくなり、目の前5メルで止まった。


 ダーンッ


 馬車の扉が勢いよく開くと人が飛び降りて来た。

「ロルフ!良く来たな!!」

 走ってくると僕の背中をバンバン叩く。懲りないな、ジークは。

「痛いよ?」

 全く痛くなさそうに言うと、笑いながら

「悪いな?迎えに来た。馬車に…」

 僕の後ろを見て固まった。分かるよ…エリアスとその隣には儚げな美女のイグニス様、そして優しい風貌ながら只者では無い風格のグライオール様。

 前はイルが辛うじて一般人だったけど、今回はイグニス様もグライオール様も見るからに高貴。しかも小さくなったヒュランもまた如何にも、って感じだ。僕を除けばブラッドだけかな、普通なのは。

 これはジークに同情する、僕でも。


「馬車に乗せてくれるの?助かる」

 多分、4人乗りかな?ブラッドとジークは御者席だね。と思ったけど

「我はエリィの膝で良い」

 さっさと乗り込むとエリアスの膝に座るイグニス様、やっぱりさっさと乗り込むグライオール様。

 僕はジークの手を借りて乗り込み、最後にジークが乗ってきた。ブラッドは御者台だ。

 チラチラとイグニス様を見ている。

 銀色の髪に金色の目のイグニス様はとてもきれいだ。エリアスとは色が違うけど、息子のイグニシア様にそっくりだと言うエリアスはやっぱり顔立ちが似ている。


「えらく若い母上だな…」

 僕の耳元でジークが囁く。

「ん、そういう種族」

 然もありなんか、と呟いてジークは頷いた。馬車は侯爵家のもので、問答無用で侯爵家に向かう。

 今回はイルがいないから構わない。心がチクリとした。守りたいと、家族以外で初めて守りたいと思った人を守れなかった。

 その思いが胸をつく。

 横からジークの手が伸びて、頭を撫でる。親しくない者には絶対にしてはいけない仕草だ。

 頭を触れるのは相手を下に見る行為だから。今のジークのこれは親愛の証、そして…慰め、かな。隣にイルがいないことの。


 馬車は10分ほどで侯爵家に着いた。

 その間、イグニス様はエリの首に抱きついて外を眺め、グライオール様も珍しそうに馬車の中や外をの町並みを見ていた。


 馬車寄せに着くと、外から扉が開く。ジークが降りると僕に手を差し出す。僕はジークの手を借りて馬車を降りる。

 貴族の子が手を差し伸べている、これは侯爵家が僕たちを歓待している証拠。

 格下ならば御者が、通常ならば執事がこの役目を果たす。

 ジークの、そしてダナフォスター侯爵家の意志。エバルデル伯爵一行をもてなすという。


 玄関の前では扉が開かれ、執事や使用人たちが程よく並んでいた。大騒ぎにはしてない、いわば極秘の歓待という趣。

 一斉に頭を下げて

「「ようこそいらっしゃいました!」」

 しっかりと統制されているようだ。軽く頷いてジークに続いて屋敷に入る。

 執事と思しき細身の男性が進み出る。

「ようこそお越し下さいました。エバルデル伯爵様。ダナフォスター侯爵家の執事をしておりますライオネルと申します。旦那様がお会いになります。ご案内致します」

 そう言って恭しく頭を下げると案内をする為に歩き始めた。


「ジーク、僕は面会を求めてない」

「我らの想いだ、受け取れ!」

 僕はジークを静かに見る。

「ふふっ学院きっての秀才を招くことが出来る家など、少しだけだろう?我が家の誇りだ」

「そこまでじゃ、ない。全てはイルが…」

「それだけな訳あるか!お前が色々と前面に立って登録をしてるんだろ?彼1人で出来ることも出来ないこともある。領地の発展に寄与する力はロルフがいてこそだ」

「ジーク、たまにはいいこと言う」

「たまにかよ…ったくアイルが居なくなった途端に塩対応だな」


 アイルが居なくなった、その言葉に僕は、僕の心は悲鳴をあげる。

 その僕に気が付いたジークは

「いや、ごめん。その…そんなつもりでは」

 表面的には何も変わらない筈なのに…ジークは変に鋭い。僅かな揺らぎを感じ取る。

「…多分、お前の力になれる。頼れ!1人で出来ることなどしれてる。お前や、アイルの為に動きたいやつならたくさんいるぞ!」

「…やっぱりたまにいいこと、言う」

 そうだった。僕たちが散々イルに言った言葉。それが自分に返ってくる。僕はイルみたいにみんなに好かれないから。そう思ったけど、だからジークの言葉が胸に響いた。


 執事がある部屋の前で止まり、扉を叩く。訪いを告げ扉が開いた。

 促されて入った部屋は居間で、賓客をもてなす為の最上級の部屋。

 ソファに座っていた男性2人が立ち上がって迎えてくれる。

「ようこそ我が侯爵家へ、エバルデル伯爵。私が当主のジオラルト・ダナフォスターだ」

「エバルデル伯爵、次期領主のジェラルミン・ダナフォスターだ。お見知り置きを」

「歓待痛みいる。ロルフリート・エバルデル。南部ノインスに領地を持つ伯爵家の当主を継いだ。こちらこそよろしく」




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