313.また出会った2
私は寝袋(分厚いマット付き)に枕と毛布を敷いて、そこにジョブでブーツとローブ、上着を脱がせた女の子を運ぶ。その体にそっと毛布を掛けるとおでこにキスをして、ガラスのポットに聖水をたっぷり注ぐ。
近くにコップと、お皿にも聖水を入れる。ポーチから果物をだしていくつかお皿に載せるとテントを出た。
女の子がいるテントに年下とはいえ男がいるのはダメだろうから。
ふぅ、と息を吐いた。せっかく外に出たのに何も出来ていない。
(ビクトル、外に出たい)
『分かった!』
コムギの時もだけど、ビクトルは確信犯だな。今度は平穏なお外歩きにして欲しい。
『えへっごめん』
(もう女の子とか要らないよ?)
ハーレムとか鈍感系ヒーローとかは要らない。何か、あまり人と深く知り合うのは良くないと感じるから。理由は分からないけど。
で、次の散策は普通に楽しかった。
山の恵みを採ったり、コムギと走ったり(完敗した)魔獣を仕留めたり、魔樹に襲われたり(何でやねん!)しながら散策を楽しんだ。
お昼ご飯は外でね!肉サンドとサバサンドを食べた。コムギとビクトルたちも同じものを食べて。
うん、美味しいね。
食後のデザートに昨日取ったゴールデンピーチを食べる。
短剣で櫛形に切ってコムギにまず渡す。ビクトルとバクセルにも渡して自分は残りを飾る。
果汁が溢れ出す、そして甘い!あっさりとしてるのに濃厚でとにかく甘い。
真ん中は大きな種だ。これを箱庭に埋めよう。洗浄してポーチに仕舞う。
ん、箱庭?どこそれ。また知らない単語だ。植えられるなら植えたい。だって、凄く美味しかったから。イリィにも食べさせてあげたい。
あ、まただ。イリィはイリスかな?イリィ、イリィ…懐かしい名前。なのに、懐かしいことしか思い出せない。誰なんだろう?僕は思い出せないイリィを想った。
お昼ご飯の後も散策。
そういえばさっきキノコ取ったけど、ここは瘴気毒があるって言ってなかったか?
毒キノコになってないの?ビクトルは美味としか教えてくれないけど。
『木や土から離れれば大丈夫。毒は常に排出している』
吸って吐くのか?まぁ食べられればいいけど。
採れたのは
キノコ
山芋
山菜
木の実
果物
コショウ
コヒの実
倒した魔獣はオークと言うらしい。ゾンビ化していたのもオークだ。黒いモヤが抜けたら死にたてみたいになって、ビクトルに持って帰ろうと言われてポーチに収納した。そしてら素材などに使える牙や爪、皮と肉、何にも使えない内臓に分けられた(何でやねん!)
どうやら骨も使い道があるらしい。で、なんで分かれるかって言うと、前の自分が便利だしって使ってるうちに進化したらしい。
ほんと何やってんだよ…元僕は。
って事で持って帰って来た。現金が必要な時には売ればいいとビクトルに言われたから。
無事というか、まぁそれなりに色々とあったけど。ビクトルの言うままに歩いてて瘴気毒の範囲を抜けた、とかね。でもまぁ平穏な感じで終わった。
コムギもたくさん走り回って疲れたのか、帰りは僕の腕の中でスヤスヤだ。可愛い。
本来ならまだお母さんに甘えてる頃だろう。お乳も貰って。なのにな…寂しいよな。
せめて僕がパパになるから。そのふわふわな毛に頬ずりする。
それにしてもポーチにはどれくらい入るんだろう?オークは2度目の散策で2匹と会って殺した。だってさ、向かってくるから。
いい気分じゃ無いけど殺される訳にはいかないからな。
オークはだいたい3メルほど。それが3体入ってる。
他にも諸々入ってるから…かなりの量が入る筈。たかがポーチに。はぁ何が普通か分からないけど、骨折が治る傷薬が普通って言うなら、元僕の普通は普通じゃない。
ここは重要だと思う。ずっと1人ってのは嫌だし、何よりイリィを探したい。
もっともその名前すら怪しい上に、顔も年齢も住んでる場所すら知らない。
取り敢えず、普通が何かを知りながら…どうにか人探しをするしか無いかな。後はそうだな、持ち物で身分が分かるものがないか探す。くらいかな。
考えながら歩いて岩窟に着いた。コムギを抱っこしたまま横向きで通り抜ける。
通路を通って広い空間に出るとライラが座っていた。
僕を見て立ち上がると
『まだ目が覚めない…』
あれから半日以上は経ったな。どうしたもんか…女の子だし、あまり関わりたくないけど。
『大丈夫だよ!助けてあげて』
ん?ビクトル…助けるって、もう助けたよ。
『解毒剤を投与してあげて!』
バクセルまで。
『頼む』
まだ治りきってなかったのか?ライラも首を下げる。
(でも投与ってどうするの?)
ビクトルを手に乗せて聞く。
するとビクトルが答えるより早くライラが
シュンッ
人型になった。幻獣って凄いんだな。ライラは銀色の髪に金色の目、体は透けるほど白い美少年だった。あれ、女子じゃ無いのか?
ライラって名前から勝手に女子認定してたよ…。
切れ長の二重の目、スッキリとした鼻、薄い唇。整いすぎてて人形みたいだ。
ボーッと見てたからか、変な顔をされた。
「人型、なのか…」
「そうだ。力を使うからな…呪い明けではあまりもたん。解毒剤をくれ!」
なんか分からないけど、取り敢えずポーチから解毒剤を出して渡す。
呪い明けね…って、呪い?毒じゃ無いのか?
『アイルの解毒剤は呪いにも効くからね!』
ビクトルのドヤ顔が可愛い!
じゃなくってさ、毒と呪いは違う分野だよな?何でそうなるんだ…元自分。ほんと何やってんだよぉ。
だいたい、ライラは呪いを受けてて…呪い明けってことは解呪済み。誰が…と考えたところでやめた。また何かしらしてそうだし。知らぬが仏だ!
ライラはテントに入って行った。ま、これで治るなら良かった。お別れだろうな。僕はもう少しここで気持ちの整理をしたいから。
足元のコムギを見る。ここは例え過酷な環境でも、コムギの故郷だから。僕もまだ子どもみたいだし、ここでしばらく暮らしてもいいのかな。
コムギとわちゃわちゃしながら戯れていたら、ライラがテントから出て来た。
「助かったぞ!ありがとな」
ライラの人型の声は絶妙な掠れ具合で、なかなか渋い声だった。
その後、僕たちは家に入って少しソファで休んでいた。
いつの間にか寝てたようだ。コムギのもふもふと高い体温がここちよくてな。
ビクトルが目の前に来て
『ライラが世話になったって!』
「帰ったのか?」
『うん!体が元に戻ったからね。今ならこの付近、瘴気毒の範囲から安全に出られるって』
「なら良かった。女の子も大丈夫なのか?瘴気毒は」
『ライラが結界を維持するから大丈夫ってさ』
バクセルも飛んできたので、手を出すと2人とも手の上に立つ。
『だからね、アイルの食べ物を少し分けたよ!』
彼らの食事は基本、私が垂れ流して…おほん、撒き散らして、いや、展開している魔力だ。それでも僕から離れることがあるかもしれない、と小さな2人に合わせた小さなブレスレットを作って渡してあった。そこには食料も入っている。
ビクトルが言うには、幻獣であるライラも理りに関する内容は守秘義務があって話が出来ないのだと。僕のことはその理りに関わるらしい。
だからライラにも耳標を付けた。その中に解毒剤や普通の傷薬を入れてあったのだ。
なので、ビクトルたちは自分たちのブレスレットに入ってた食事を分けたと言うことだ。耳標は空間魔法で容量が広げてあったから。
まぁそれくらいは問題ない。ならビクトルたちの分も補充しておこう。
『もう補充されてるよ!』
…何で?まだ何もしてない。
『考えたでしょ?無くなっても自動で補充出来たらいいのにって』
確かにね、無くなるたびに足すのもね?
『だからね、アイルのポーチから自動で補充される仕組み』
そんな機能付いてたんだ。あれ、ならライラのも?
『ライラの耳標には付いてないよ!』
そうか、それは良かった。いや、いいのか…。はぁぁ、僕はもう何度目か分からない、元僕にため息を吐いた。
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