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異世界転移 残りものでも充分です〜  作者: 綾瀬 律
第6章 ピュリッツァー帝国

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310.割れ目の中の家

 お風呂から上がると何か飲みたくなった。身体が温まったからな。

 外していたポーチを見て、何か飲み物は…と考える。


 聖水

 普通の水

 紅茶

 緑茶

 牛乳

 フルーツ牛乳

 ブランデー


 …僕って大人なの?お酒あるけど。自分の小さな手を見つめる。飲める気がしない。うん、やめとこ。無難にフルーツ牛乳かな。

 何となく腰に手を当ててぐびぐび飲む。ぷはぁ、美味しい。

 足元ではコムギがやっぱりフルーツ牛乳を飲んでいた。せがまれたんだよ、でも動物だしって思ったら

『彼らは大丈夫』 

 ってビクトルが言うから。そしたらビクトルにバクセルまで飲みたいって。小さなお皿に入れたら、お皿の淵からごくごく飲んでたよ。


 ふう、と息を吐く。なんだか凄く疲れたな。色々とあり過ぎて。しかも、その殆どが元自分のやらかしだ。

 うん、寝ようか…。

 寝室に向かってベットにぽすりと転ぶ。うん…もぞもぞと毛布に潜り込んで、即落ちした。

 朧げな記憶で、布団の中にまふまふなコムギが入って来たような気がした。

 すやぁ…



 あれ、僕はあの家の中で寝たよね?ここは何処だろう?

 見たことのない風景、なのにとても懐かしい。たくさんの木があって勾配は無い。

 ここは森かな?

 僕は誰かと歩いている。足元には多分、犬かな?白くて大きな犬がご機嫌でしっぽを振っている。

 僕は隣の誰かと話をしている。嬉しそうに、楽しそうに。

 そう、これは僕だ。記憶はなくても分かる。間違いなく僕の姿。


 楽しそうに笑い合って進むと、ピロティのような…屋根はあるのに開けた開放的な空間に出た。

 入り口に壁はなくて、でも高い屋根が掛かっている。その奥には外壁が見えるから、外部的な空間だな。

 そこには沢山の光があった。いや、舞っていた。今日、僕が家を出したあの岩の割れ目の奥。

 そこにも光はたくさんあったけど、数が比較にならないほど多い。

 楽しそうに飛び交っている。時々、点滅したりしながらふわふわと。

 その中には人型も少数いる。木が植っていて、そこに光が止まっていた。


 良く見れば、木々には蜘蛛や蝶なども沢山いる。とってもきれいな色をしている。

 柔らかな日差しが差し込んで…まるで大きな温室だ。

 凄く幸せな気分になる。知らないのに知ってる。いや、知っていたのに今は知らない、かな。

 ここは何処だろう?この場所に行けば、ぼくは何かを思い出すのかな?

 一緒に歩いてたあの人を思い出すのかな…とても懐かしくて温かい記憶。思い出せないのに…覚えてる。体や心が。その記憶を懐かしんでいる。

 なのに、思い出せない。

 モヤモヤとしながら、今はそんな自分を受け入れるしか無い。だって、何を思い出せないのかすら、分からないから。


 ふっと体が軽くなって…目が覚めた。

 あれ…瞬きをする。そして、手を見る。うん、今のは夢か、深層心理か…。何にせよ、思い出せないうちはどうすることも出来ない。

 ただ、気になることはある。一緒にいた人と僕は多分、親しかったと思う。なぜ離れてしまったのか、自分は記憶を無くしたのか分からないけど。

 あの人は困っていないだろうか?それとも喧嘩別れしたのだろうか。


 会いたいな…


 誰とも分からない夢の中の人。凄く会いたいと、そう思った。

 もぞもぞのコムギが動いた。毛布から這い出ると

『パパ!』

 口元を舐める。うん、可愛いな。朝からもこもこだよ。その体を撫でてあげる。

「おはよう、コムギ」

 寝ている僕の体によじ登って来ると指を咥えて吸う。これで魔力が取り込めるんだね。うん、必死に指に吸い付くコムギが可愛い。

 頬にさわりと風を感じた。首元にビクトルとバクセルだ。何やら耳を齧ってる。痛くは無いけどな。


『ぷはぁ、美味しい!おはよーアイカ』

『うまうまーおはようアイカ』

「おはよう」

 なんで耳を齧ってるのかね?この子たちは。さて、起きるか。今日はどうするんだろう。

 コムギを抱っこしてベットから出る。

 ここは寝室。自分用の部屋だって分かったから、ここで寝た。凄く寝心地のいいベットだった。


 部屋を出て廊下を進み、居間に入る。キッチンはアイランド型で、鍋とかカトラリー、お皿なんかも揃っている。特にこのカトラリーがね、とても優美な曲線で。何処ぞのブランド品かな?ってくらい。

 素材はステンレスだし。色といい艶といい。使うのが勿体無いくらいきれいだ。

 鍋でお湯を沸かそうとしたら

『何してる?』

 ビクトルに聞かれた。

「ん?お湯を沸かそうかと…」

『魔法でお湯を出せるよ!』

 なんですと!それは便利だ。でもどうやって…?


 ジャー


 紅茶ポットにお湯が満タンだよ。魔法って便利だなぁ、

『それは魔法じゃ無い…』

「…違うの?」

『アイカのジョブ』

 私のジョブ?何だろう、それ。思わず自分の手を見る。すると



 名前 アイル

 年齢 13

 ジョブ 生産者

 スキル 洞察力ビクトル、魔力回復超

 魔法 全属性(特級)

 加護 精霊王の加護 創世神の加護、戦神の加護、大地神の加護、豊穣神の加護

 祝福 精霊の祝福 妖精の祝福 高位精霊の祝福



 これって僕の事?スキルの名は洞察力か。って事はこれもビクトルの力なんだな。

 で名前、アイルだったのか!思い出せないけど、納得だ。やっぱり近い名前を選んでたんだなぁ。

「ビクトルは僕の名前、知ってたの?」

『うん!でもね…理りに触れるから』

 なんか、思い出せてないんだけど…この自分の能力には違和感がある。これって本当に僕の情報なのかな?色々足りないような…

 ジョブってさっきビクトルが言ったのはこの「生産者」

 だね。

 魔法だと火魔法と水魔法の複合かな?それが僕はジョブで()()()()()()()。そう言うことなんだろう。


 便利だし良いんだろうな、うんうん。

 紅茶ポットから紅茶をカップに淹れる。ふぅふぅ、コクン。ん、美味しい。前の僕は美食家なのかな。食材なんかは結構拘ってそうだ。

 特に調味料が豊富。味噌とか醤油まであった。日本人の心だからね!

 日本人…って何だろう?はぁ、何か考えるたびに分からない単語が出て来るよ。

 紅茶を飲み終わる。さて、朝ごはんだな。作ろうかなぁ?何を作れるのかも分からないんだけど。

 まぁ身体が覚えてるかも知れないし。作ってみよう。


 ポーチから食材を出す。

 まずはパン。手の平より少し大きな丸いパンだ。横半分に切ってチーズとベーコンを挟む。それを温める魔道具に入れる。いかにも押したって風に付いてるボタンを押したら動き出した。

 次はシャキシャキした野菜と卵。魔鳥の卵ってのもあったけど、ずいぶんと大きいから。普通の大きさの卵を2つ取り出す。ボウルに卵を割り入れて、少しの牛乳と塩を入れて…泡立たないようにしっかりと混ぜる。

 温めたフライパンに流し込み、少し待つ。縁が固まって来たら菜箸でくるくる混ぜて、徐々に手元に寄せるとフライパンの柄をトントンと叩きながら形を整える。

 きれいな形になったところです火を止める。


 これも多分、魔道具。なにやら押してって風に付いてるボタンを押したら火が付いた。実際に火が見えるわけじゃ無いけど。電磁機みたいな感じで。

 お皿にオムレツを載せるとソース作り。トマティをサイコロ状に切ってフライパンで温める。塩と胡椒で簡単に味付けをしたらオムレツにかける。

 ちょうどパンもいい色に焼けた。飲み物は粉末スープ。カップに入れてお湯で溶かした。よし、出来た!


 ダイニングテーブルに座って手を合わせて食べ始める。まずはオムレツ。フォークに切ると中がトロリと半熟。口に運べばふわりと溶けた。うまぁ。トマトの酸味もなかなか乙だね!

 次にパン。はむっおぉ、チーズが溶けて程よい塩味。ベーコンの味わいと油にとても合う。

 最後にスープ。コクン、ふぅ。朝から温かいものを飲めるって幸せだ。

 結構な量があったけど、食べちゃった。

 もっとも足元と首元で何やら視線を感じたからね。同じものをみんなにもお裾分けしたよ。


 食べ終わった食器は洗えばいいのかな?立ち上がってシンクに運んだところで

『どうした?』

 ビクトルだ。

「使った食器を洗おうと思って」

『洗浄できれいになる』

 洗浄?

『昨日使ってたよ!』

 あ、そういえばコムギが指を吸った後に自分の指とコムギの口周りを洗浄したな。今朝もだ。無意識に使えてる時があるから。

 ならば、目の前の食器を洗浄しよう。

 …どうやらジョブが働いてまっさらツルツルピカピカになったお皿とカップがあった。なんだかなぁ…



 


はい、ようやく登場しました…



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