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異世界転移 残りものでも充分です〜  作者: 綾瀬 律
第6章 ピュリッツァー帝国

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309.新たな出会い2

『パパ!』

 …はい?喋った?熊が…。

『パパ!』

 …えっと僕はまだ子供だと思うんだけど、パパになったの?それに何で喋ってるの。

 え、えぇ…色々と衝撃。ま、いっか。なんだか考えても答えのないことばかり。ならば受け入れるだけだ。


 またひっくり返る。仰向けで寝て天井を見る。キラキラきれいだ。それに気がついたコムギが光を追いかけて遊ぶ。そう言えばさっき声が聞こえたよな。あれは何だったんだろう。

 ぼんやりと見ていると一際強い光がやって来た。そばにある光は弱々しい。今にも消えそうな儚い光だ。寄り添うように漂う。

 強い光が点滅し、さわりと空気が頬を撫でる。これは、ビクトル?

 弱々しかった光がピカンと水色に光って、瞬いた。そして、その光は力強く…大きくなる。

 何かあったの…?魔力が動いたけど。


『アイカ…実体が持てたよう!』


 目の前の2つの光はやがて形を変えて…小さな人型になった。その背中には透明な虹色に輝く一対の羽。

 その小さな体は白いローブにパンツで腰に青いサッシュ、足元は白いブーツで髪の毛も目も水色だ。

 1人はくるくるした癖毛、もう1人はさらさらストレート。

 うわぁ、めっちゃ可愛いやん!


 あれ、今のは何?なんか、違う言語を喋ったような…

 でも目の前の、手の平に乗るくらいの羽付き小人に目が釘付けだ。

 片方はビクトル…かな。何が?

「ビクトル?」

 話しかけると、サラサラストレートな髪の子が手を挙げる。

『はーい、アイカ!ビクトルだよ』

 うわぁ、目の前を飛んでる。可愛いなぁ。手を出せば、そこに立つ。


「何かあった?」

『それは私が説明を!初めまして、アイカ殿。僕は妖精!さっきはもうね、消えてしまう子がいたから…そしたらビクトルを感じて。その子は思念だから、体がいると思って。体が消えないためには精神がいる。その子の体にいた精神はもう体から抜けて昇華しちゃったから。僕の弟なんだ!だから悲しくて。それで思念を見つけたから入って貰ったんだ。これで弟の体はまだ生きられる!』


「その、弟さんはもう?」

『精神はね。ただ、体に記憶が残ってるから。ビクトルがその記憶を継承してくれたら嬉しい』

 私はその弟さんの冥福を願った。

 ビクトルはふわりと瞬くと

『お兄ちゃん!』

『ビクトル!』

 ひしっと抱き合う2人…そうか弟さんはもう。でもビクトルに記憶は引き継がれたんだね。

『今はビクトルが弟だよ!』

「えっと…君の名前は?」

 首を振る。

『無いよ…ただの妖精に名前なんてない!そもそもビクトルが弟の体に入ったから人型になれた。僕はビクトルに引き摺られてね!ただの光は力の弱い存在…すぐに消えてしまうんだ』


 でも凄く強い光だったよ?

『そう、お兄ちゃんは強いから…だから僕と一緒に人型になれた!』

 うん、そうだね。ビクトル。さて、それなら名前を…。ビクトルと似た感じの、かな。

 バクセル…とかはどうだろう。

『それがいい!僕はバクセル!!』

 またピカンと水色に光った。あれ…?目を擦る。なんか本当に少しだけ、大きくなった?

『うん!成長したよ』

 なんか分からないけど…ビクトルが実体化した。それが凄く嬉しい。


「ビクトル…」

 その小さな頭を指でなでる。ビクトルはその指を掴むと頭をすりすりしてくる。か、可愛い…。近くではバクセルがそわそわと飛んでいる。

「バクセル、おいで!」

 ビクトルを乗せている左手を差し出すと、そこに溜まった。なんか期待に満ちた目だ。

 バクセルの小さな頭を指で撫でる。ビクトルと同じように指につかまって頭をすりすり。

 う…か、可愛い。


 1人で寂しいと思ったらすぐに小熊のコムギに出会い、ビクトルは実体化して、瓜二つのバクセルにも出会えた。小さな幸せだなぁ。

 さてと、起き上がる。今日はどうやって寝ようか?もうすぐ陽がくれそうだ。家はポーチに入ってるけど、ここには出せないよな。


『だせるよ!空間魔法だから、狭い空間でも大丈夫』


 色々とアレだけど、もう考えないぞ?よし、えっと家だな。ポーチから家を取り出したいと考える。


 ドンッ


 そこには箱型の小さな家が…水晶に埋まっていた。だからなんでやねん!

 もう色々と諦めようって思ったよ?確かに。でもさ、これは無い。無いよ…これを入れた自分、やり過ぎ!

 はぁぁ…いかにも入り口ですって風の扉がある。これを開けるんだろうな。

 はぁ、とまたため息を吐いて立ち上がる。

「みんな、行くよ!」

 ぞろぞろとその扉の前に移動する。取っ手に手をかけるとアッサリと開いた。いやまあね、当たり前だけど。

 入り口から入るとそれなりに広い玄関。

 ブーツを脱いでローブを外す。ローブ掛け?があるからそこに掛けて、中に入る。


 廊下を進むと左手に扉が見えた。開けるとそこは居間だ。ソファがLに配置されて、低い机が置いてある。その奥には多分、キッチン。全体的に広い。

 なんだろう、懐かしい。

 その後も家を散策。うん、家だね?普通に暮らせるな、ここで。

 遭難することを想定してたのかね。ま、何にせよ有難い。


 ソファに座る。あれ、そう言えばこの子たちの食事は?そのことに気がついて青ざめる。

「みんなはその、食事…どうしたらいい?食材なら色々とあるけど…」

 そもそもコムギはまだ赤ちゃんだった。お乳なんてもちろん出ない。そもそも男だし。

『パパの魔力…』

 パパの魔力でいいの?

「どうやって?」

 コムギはとことことやって来て僕の足に前脚をかける。ちゃんと爪は隠してるね、偉い!


 重いかな?抱き上げられるかな…ドキドキしながらコムギの脇に手を入れて抱っこする。持ち上げられた!意外に軽い。コムギは僕の手を掴むと指に吸い付いた。

 お膝抱っこのもこもこな小熊が僕の指を吸ってる。うん、パパ頑張るよ!

 で…えっと、これは?


『魔力を吸ってる』


 ビクトルが教えてくれる。へーこんな感じでいいんだ?

 チュパチュパと吸って、満足したのか指を離す。軽くその指を洗浄して、コムギの口周りもきれいにする。

 あれ、今のは洗浄?なんか思ったら出来た。自分はなんだか色々と出来るみたいだ。

 便利だしいっか?


「ビクトルとバクセルは?」

『僕たちもアイカ殿の魔力がご飯だよ、自然と取り込めるから気にしないで!』

 自然と取り込む?

『アイカは癒しの魔力を無意識に垂れ流してるんだ』

 こら、ビクトル…言い方!メッだよ?垂れ流すとか、言わない。

『昔からだし』

 昔から?やっぱり僕はなんか、痛い子なのかな。いや、もういいんだ。知らないし、覚えてないし。


「バクセルもアイカって呼んでな」

『うん、アイカだねー』

 そうだよ、ふふっ可愛い。ちっちゃな羽がパタパタと高速で動いている。


 さて、お腹空いたな。色々とポーチに入ってたし、それを食べよう。

 僕はポーチの中からクリームシチューとパンを取り出すとそれを食べた。そして聖水を飲んで…食事は終わり。

 その後はお風呂(いつでも適温になってる)に入ってサッパリした。コムギも、ビクトルとバクセルもお風呂に入ったよ。コムギは全身洗って、ビクトルとバクセルも裸になってね。ちっちゃな姿は男の子だった。ふふっ色々小さくて本当にかわいい。


 そして、予想通り…僕のおへそにはアクセサリーが付いていた。足の指と腕にもね。

 浴室には鏡があったから、顔を見た。なんか、不思議な感じ。何才くらいかな…多分13とかそんな感じ。

 髪の色と目の色はどちらも銀色。やたらとキラキラしい。そして目は虹彩の縁がぐるりと薄い水色。なんか、自分で言うのもだけど…とてもきれいだ。ガラスみたい。

 色は目立つけど、顔立ちは地味。不細工じゃ無いけど、印象が薄い。色白の頬に少しだけ赤みがさしている。まだ幼い顔。子どもってほど幼くはないけど、明らかに大人じゃない。線の細い少年…って感じか。


 体はやっぱり白くて細い。胸も薄いし腰も細い。股のナニもこぢんまりとしてる。

 成長途中、だよね?多分。


 そして、そうピアスとネックレス。やっぱりタッセルみたいなふさっとしたチャームだ。

 その色は淡い金色、すごくきれいな色。それに多分、これは魔力。自分のではない魔力。懐かしくて温かい。

 知らずにお湯をかけちゃったけど大丈夫だった。

 どうやら状態保存の魔法が掛けてあるとはビクトル談だ。何それ?


 ネックレスはやっぱり淡い金色とくすんだ銀色の2色使い。何だろう、こっちのくすんだ銀色は凄く馴染む。いや、これって僕の魔力…?でも髪の毛の色が違う。


 と色々な発見をしたお風呂だったよ!




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