308.出会い
昨日投稿予定だった分です…
本日2話投稿します
僕は山の頂上付近に向かって歩いている。どうしたらいいかってビクトルに聞いて、歩こうって言われたから。
どちらにしても、この山から出るのか…しばらく留まるのか。僕には分からないことばかりだから。ビクトルだけが頼りだ。
ビクトルはスキルであって命のあるものじゃない。
でも人格ならぬスキル格がある。
しかも、今は進化?して精神体として僕の髪の毛付近にいる。
さわりと頬を撫でるその風はビクトルだ。なんかそれだけで嬉しくなる。足元には小熊。託されたからね!
生まれたばかりなのにもう自分の脚で歩ける。凄いなぁ。僕のことをどう思ってるのか分からないけど、後ろをちょこちょこ付いてくる様はとても微笑ましい。
僕だってまだ小さいけどね。
そう、僕は自分の手を見る。それは小さい。小さいって分かるのは何故か?ただ分かる。
きっと思い出せない記憶で、この手より大きな手を見たんだろう。
小さいのは多分、手だけじゃない。背も低そうだ。体だって細い。ガリガリでは無いけど、細いと思う。
さらに、小さな体にはこれでもか、とアクセサリーが付いている。
耳に合わせて6個。左耳は柔らかな手触りのタッセル…見えないけどそのタッセル付きロングピアス。あとは耳たぶと軟骨にポストピアス。
右耳はポストピアス2つと軟骨の上の方にイヤーカフ。
触ってみるとなにやら色々と魔法?が付いてる。
防御と防御と治癒と結界と隠蔽かな…後はイヤーカフに色々。そう、色々。
いや、思い出せないけどさ…自分で入れたと言われるそれらはもうおかしい。
だって、何でこんな小さな耳飾りに家が入ってるの?
中身はこんな感じ。
家 1LDK 家具家電付き庭付き
家の中には2ヶ月は暮らせるだけの服や食事、食材や調味料
普通の傷薬(死にかけの高熱や骨折も治る)
傷薬(体内に侵入した菌を追跡して死滅)
解毒剤(呪いも解呪可)
完全解毒剤(蘇生も可)
鎮痛剤(あらゆる痛みを取る 骨折も治る)
消毒薬(あらゆる菌を死滅)
液体薬(あらゆる病気を一瞬で治癒)
以下略…
この子って自分だけど、何を目指したのかな?風邪薬で骨折が治るとか、解毒剤で呪いが解けるとか。
で、そうアクセサリー。
他にも左手の人差し指、右手の中指と小指には指輪。シンプルだけど、繊細な模様があって。
しかも表や裏には多分、宝石とか石。ターコイズにダイヤモンド、サファイアに紫水晶。ビクトルが教えてくれた。
裏側には何か文字も彫ってある。読めないけど。そしてこっちにも防御と治癒と隠蔽…何がしたかったのかな?
さらには足の指と足首、手首にはバングルかな?左腕にもバングルっぽい。後は多分、おへそ。見てないけど…なんか魔力を感じる。
そうそう、首にもネックレス。なんだかとても肌触りのいいものがトップに付いてるみたいだ。とても気持ちが良くて安心する匂い。
はぁ、とため息を吐く。なんか良く分からないけど、すごく安全な気がする。防御が増し増しだ。
それにしてもまだ子どもみたいなのにピアスとか、僕ってば不良だった?
あれ、不良って何?良くないってことか。もう分からないことだらけだ。そのままもくもくと歩く。
しばらく歩くとそこには岩の割れ目があった。割れ目は細いな…。
(ここに入ろう!)
ビクトルが言う。入れるか…体を横にしたら、行けた!でも小熊はもこもこしてる。入れるかな?見てたらするんと通り抜けた。もしや殆どが毛なのか?後でもふろう。
その割れ目の中は何故か明るかった。どうやら周りにはたくさんの水晶がある。それが少ない光を屈折して反射している。
でも、それだけじゃ無いか。何だろう…ふわふわと光るものがある。
えっと…オバケ?いや無理無理。そっち系は本当に苦手なんだよ!
(来たよ)
(来たね)
(きれいな魔力)
(優しい魔力)
(おいでおいで)
(奥においで)
(待ってたよ)
えっと、これは?
いつの間にか怖さは消えた。だって凄く嬉しそうな気持ちが伝わって来たから。
なんだか楽しそう。ふわふわほわほわ…
(奥に…大丈夫 彼らは聖なるもの)
ビクトルが言う。聖なるもの、が何かは分からないけど奥に進む。割れ目の先は少し広くなってる。腕を広げても届かないくらいの幅の通路。そこを進むと…うわぁ、凄いや!
そこは広い空間で、天井も高い。小さな穴?が開いてて空気も澄んでいる。
しかも、大きな木がそこから生えて…穴を突き抜けて上へ伸びてる。白い幹に裏側が銀色の透けるような葉っぱ。太い幹は堂々としていて、凛とそこに生えていた。
へーきれいな空間だな。
しかも、ふわふわほわほわな光がさらに増えた。空気がきれいだから、かな。
なんだか深呼吸したくなる。
すぅーふぅーはぁー。
うん、澄んでる。ここは何だろう。周りはやっぱり水晶で足元は土。下草も生えててここだけ違う世界みたいだ。
何となく、コロンと寝転がる。銀色のふさふさとした苔に覆われたそこは、寝心地が良かった。しっとりしてるのに湿ってない。
ベルベットのような不思議な感触。
僕の隣に小熊も丸まって、顎をぼくのお腹に乗せる。僕はその頭を撫でる。銀色のまだふわふわした柔らかな毛。小熊は目を瞑る。
しばらく撫でていると、目を開けて
「くぅん…」
と鳴いた。何だろう…?するとまた
「くぅん…」
「どうした?小熊…あ、名前…」
小熊って呼ぶのは少し違うかな。
「くぅくぅ!」
あ、名前付けて、か。でも名前…というか、この子の種族は?
(シルバーベア)
そんまんまだな。銀色の毛皮にお腹の辺りは真っ白で、胸元に金色のVの模様。
まん丸な目は金色でとても可愛い。うーん、名前か。やっぱり銀色だけに銀とか?
( …)
ビクトル、何か言いたいなら言って!沈黙は困るよ。
(安直かと…)
ぐっ…それを言われるとさ。金色からとって黄金、でも違うなぁ。金色…稲穂、銀はシルバーか。シバとか?うーん違うな。
もこもこだしもこ、とか。もかもか、ふわふわ、もふもふ…。よし、決めてもらおう。
「どれがいいかな?シルバ、ギン、コガネ、もこ、もか、ふわ、もふん…」
最後まで言う前に
「ぐわぁっ!」
拒絶された。困ったな。あ、黄金からの発想でムギは?いや、まだ小さいからコムギ!
「コムギは?」
「くぅん…」
嬉しそうに頭を擦り付けてくる。よし!良かった。
「君の名はコムギだよ!」
その途端、ピカンとコムギが光った。えっ…コムギ!慌てて起き上がる。そこにはちゃんとコムギが触れる。良かった。光が収まると、そこには金色の目の中に透けるような銀色が入ったコムギがいた。
えっと…すごくきれいだよ!コムギ。その頭を撫でる。
『パパ!』
…はい?喋った?熊が…。
『パパ!』
…えっと僕はまだ子供だと思うんだけど、パパになったの?それに何で喋ってるの。
え、えぇ…色々と衝撃。ま、いっか。なんだか考えても答えのないことばかり。ならば受け入れるだけだ。
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