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異世界転移 残りものでも充分です〜  作者: 綾瀬 律
第6章 ピュリッツァー帝国

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305.アイルがくれたもの

体調不良で投稿飛びました…

 僕は凍った森を見る。静かに、凍っているその森。自由になりたくて森を出たいと願い…予想とは違う形で放り出された。

 もう半年以上前の話。いや、まだ半年か。色々な事があった今年を振り返る。

 初めて外の世界に触れた。


 活気のある町、たくさんの人。賑わう市場にあって売れない作品。静かな店。

 家族が迎えに来るまで、なんとかがんばろうと思ったけど…減っていくお金。

 先行きの不安。

 外に出て初めて、自分がいかに守られていたかを知った。何もできない自分。

 料理や洗濯すら自分ではできない。

 そのすべてをマルクスに頼り、なんとか現金だけでも稼がなくては。そう思ったのに…どうしていいか分からず、途方に暮れているときに君は現れた。


 僕の存在を当たり前のように受け止めてくれた人。

 僕自身を、家族とマルクス以外で初めて僕自身に価値があると分からせてくれた人。

 自分でも恥ずかしくなるくらい必死に迫って、強引に君の側に居座った。

 戸惑っていたけど、僕の思いを受け止めてくれた君は僕にとってなくてはならない人になった。


 君のいない世界はあまりにも空虚で、僕はもうこのまま死んでもいいと思った。

 生命樹に取り込まれて、死んでいる筈の僕を生かしてくれたのは君で。その君がいない。なら僕の生きている意味もないから。



 眠りにつく前、君が渡してくれた分厚い本。

 それは本ではなく君から僕への贈り物…そんなことまで考えていたの?

 僕が後を追って自ら命を絶つことが無いように、この想いを渡してくれた。

 それが僕の生きる意味になると信じて。

 やっぱり君はどこまでも優しくて、温かい。その温もりは感じられなくても、僕の心は温かくなる。

 それでも…君の温もりを感じられない時間は、あまりに寂しいよ…アイ。



 僕は本をめくる

 もう何度も読んだこれを。

 汚さないように気を付けて読んでたら、ロルフが状態保存の魔法が掛けてあるという。

 何度も読み返すことまで想定してるなんて。

 しかもロルフがアイの魔力と香りも込めてあるという。そういえばアイが昔、ナビィの匂いは昔から変わらない大好きで懐かしい匂いだと言っていた。


「匂いとか味覚の記憶は視覚の記憶なんかよりも長く、記憶に残るんだよ」

 そう言っていた。

 だからか、この本を触ると凄く安心する。それはアイの魔力と匂いが込めてあるから。

 本当に、そんなところまで…。




 イリィ、こうしてイリィに何かを書くのは初めてだね。

 いつも近くにいたから、必要もなかったし。

 イグニシアに向かってからイリィと離れて、なんだか自分の半身を置いてきたみたいで心許なかったよ。

 でもなんだかんだでちょこちょこ会えて、嬉しかった。


 イリィ、君に会えてよかったよ。私はそう思っている。

 でもやっぱりイリィは自分だけを見てくれる人を選んだ方が良かったんじゃないかって思ってしまう。

 私は、私だってイリィとハクやブラン、ミストにミア、ナビィに子供たちと笑いあって生きていきたかった。

 生命樹なんて知らんぷりして、イリィだけを。

 でも私にはそれが出来なかった。


 私はね、前にも話をしたけどあちらの世界でも安定した安全な国に暮らしていたんだ。

 もちろん貧しい人だっていたけど、少数で。

 食べることに困らない人が大多数で。

 教育も受けられて、医療も発達していて。

 生きることは必死にするべきことではなかったんだ。


 だからかな、人の死は凄く特別って言う感覚がある。

 簡単に見捨てられなくて、助けられるのなら助けたいって思ってしまう。

 それが他人であっても。

 だから、親友だったらなおさら助けたいと思ってしまった。

 それがイリィとの平穏な生活を失くすかもしれなくても。だからごめんね。私のせいでたくさん泣かせた。



 ニミもアーシャ様もイグニス様も大丈夫って言うけど…絶対なんてない。

 絶対に戻れる保障がないなら、後悔しないように…私の想いを伝えようと思って今、これを書いているよ。

 私が消えると、私の存在ごとなかったことになる。これの扱いは分からないけど。

 だから確実に残るように空間魔法で保存したよ。

 この本はここにあるけど、別次元に存在するから。私が消えても残ると思う。


 私を忘れても、私の匂いを魔力を覚えていてほしくて…。色々と頑張ったよ。

 イリィの魔力と結び付けて。

 独占欲の塊みたいになっちゃったけど。それも私の想いだと思ってほしい。


 ナビィにはイリィの側にいてって頼んだよ。だから一人にはならない筈。

 ロリィだって側にいる。二人が結ばれて良かった。私がいなくてもイリィとロリィはお互いに支えあえる。

 そこに私がいないのは残念だけど、仕方ないね。

 と回想はそんなところで。


 私がイリィに残せるものを考えたんだ。物理的なものだよ?

 やっぱり防御とか防御とか防御かな?

 後は物だね。具体的なもの。

 凄く考えたんだ。だって大抵のものはもう渡してあるから。


 でね、まずは産まれてくる子供に向けて。

 洋服とかおむつとか子供用を乗せる小さな移動用の籠とか。

 もちろん小さなベットにふかふかの毛布はもちろん、柔しい肌触りの布も作った。

 小さな子の肌は繊細だからね。


 後はね、絵を描いたんだ。イリィみたいに上手じゃないけど。

 未来の絵。私とイリィと子供とハクとブランとナビィと…みんな一緒の絵。

 未来予想図…。これなら後でも見られるし、忘れても誰か分からない誰かとしてこの本に残るから。


 私とイリィは並んで立っていて、私の腕には産まれたばかりの子がいる。

 イリィは1歳くらいの子供を抱いてて、足元には2歳と3歳くらいの子供たち。私たちのズボンを握って立っているんだ。

 ハクとナビィ、ミスト、ミアはその子たちに寄り添っていて。

 ハクとナビィの足元には私とハク、ナビィとの子供がいるんだ。

 ブランは大きな姿で凛と立っていてその翼の中には小さな鷹がいる。私との子供。


 大家族だよ?ほら、絵を描いてるからじっとしててって私が言って。

 でも子供たちはわちゃわちゃしちゃうんだ。

 それをハクとナビィが鼻で相手して、そしたら今度は私が抱いてる赤ちゃんが泣いちゃって。

 イリィが抱いてる子も一緒に泣き出しちゃって。

 あーもう、なんで泣くの?って私とイリィも涙目で。

 それを見て後ろでニミが笑うんだ。


 もしかしたら叶わないかもしれない未来予想図。

 考えただけで幸せな家族の絵。願ってやまない光景。せめて絵だけでも残したくて。

 幸せな家族の幸せな時間を想って描いたよ。

 考えただけで幸せな家族の図。やっぱり覚えていて欲しいから。

 それが現実になることを願って。


 でね、話しが長くなっちゃった。えっとまずはその絵だね。家族の未来の絵。

 あとは私が大好きなイリィの絵。たくさん描いたよ。どんな顔だって可愛いイリィ。寝起きのイリィ、寝癖のついたイリィ。拗ねたイリィ、笑ったイリィ、泣き顔のイリィ。

 他にも絵は描いていて、だから後でゆっくり見てね!


 そうそう、イリィがこの絵を見たらきっとどうやって色を付けたの?って聞くんだろうね。

 だからお絵描き道具も一式、揃えておいたよ。

 子供たちが遊べるような、お絵描き道具も。イリィに似たら絵心のある子になりそうだし。



 次は普通の日用品。

 本当は箱庭ごと残せたらよかったけど、それは無理だったから。

 イリィが入れるような箱庭を別で作れないかなって思って。

 空間魔法とか?って考えたけど…亜空間は個人の空間だから無理だった。

 それなら普通の空間魔法を駆使したらいいのか?って思ったけど、それも無理で。

 だから凄く考えて…転移の空間魔法で、凄く離れた人の住まない場所に飛べばいいって思い付いたんだ。



 ビクトルが南の島で、誰も住んでない離島がある教えてくれて。そこはどの国にも属してないくらい遠いんだ。

 だからちょっとハクに連れて行ってもらってね。

 なかなか原始的な島だったけど…そこはハクやブラン、ナビィも手伝ってくれて、住みやすい島になったよ!


 島ごと隠蔽してあるから、誰かに見つかることもないし。島ごと結界で覆ったから快適な温度だし、嵐も来ない。ここならイリィの箱庭に相応しいと思ってね。

 整備しておいたよ!

 私の箱庭と同じように作ってあるから。

 もしかしたら忘れちゃってるかも知らないけど、その風景の中で過ごして貰えたら嬉しいよ。


 私の故郷の食材も植えてある。誰かに料理してもらわないとダメだけど。

 スーザンなら美味しい料理作ってくれそうだね!

 そこには生活に必要なもの全てを揃えてあるから。現実に疲れたら癒しに向かってね。移動は…私の魔力を追いかけるあの魔道具が使えるよ!

 ニミに頼んでもいいしね。イリィの好きに使ってくれたら。イリィが入っていいと思う人しか入れないから。



 後、イリィに残したかったのは洞察力(ビクトル)かな。

 あると便利だからね。あこそまでの人格を付与できるか、と考えて…確かビクトルの思考を組み込んだ魔道具を作ったなって。なら魔道具として残せばいいんじゃない?と思い付き、試行錯誤。

 で、鑑定の魔道具を作ったよ!その名もビクトル。それはウエラブル端末、いわゆる装着型魔道具?

 身につけていれば、ビクトルの思考が反映されて便利かなって。


 知りたい情報とか、選択に迷った時に助言をくれるよ!イリィが何か困ったらビクトルを頼ってね。

 私の生まれた世界のことも、私を通して知ってるから。きっとイリィの役に立つと思うんだ。

 後はひたすら私のイリィに対する想いをね。書き綴っておくね。何かに迷ったら辛くなったら読んで。少しは…イリィの気持ちを楽にしてあげられると思うから。



 私がイリィに貰ったものは沢山あるんだけど、1番は人を好きになることかなぁ。こんなに誰かのことを想えた自分を大切にしてあげたいと思って。だからね、ありがとう。大好きだよ、イリィ。

 愛してる、も間違ってないしその通りなんだけど、、やっぱり大好き、の方がしっくり来るから。


 笑ったイリィが好き。

 照れてるイリィが好き。

 驚いたイリィが好き。

 困ったイリィが好き。

 泣かしたくないけど、泣いてるイリィも好き。

 寝顔も、熱った顔も、綻んだ顔も、怒った顔も、呆れた顔も…イリィを構成する全ての要素が堪らなく好き。



 あぁ、帰りたいなぁ。イリィのところに。








 アイ…どうして…





時系列が分かりにくいので…


10月10日 審判の日

アイルやハクたちが魔力を捧げる為に眠る

イグニスが神界でケガをする


10月15日頃

シシラルたちがイグニスを連れて下界に降りる(神界と下界は時間の流れが違う)

アルテノが祈りを捧げる

イザークがペンダントにざわめきを感じる


10月18日頃

ダナンたちが王都を訪れ、会食

アーシャが神聖の森に伝言をする

若木が根付く?

アイルが透け始める



※読んでくださる皆さんにお願い※


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