31.精油作りの準備
さて、いよいよ採取に出発だ。ワクワクする。レオとルドも目がキラキラしている。
廃墟を振り返る。イリィと自分たち3人とハク以外が立ち入らないように保護結界を掛けておこう。これで一安心だ。こんなことも出来るんだよね…ジョブが優秀。
今日は近場の森だから東門に向かう。レオとルドは軽装だ。もっともそんなに服を持っていないのだろう。私はこの間購入した探索者用の服だ。今日は軽めの採取だからこれでいいだろう。
採取がうまく行ったら報酬を弾んであげよう。そしたらその内に服も買えるだろう。古着を買って直して上げてもいいかも。
門が見えてきた。いつも通り通過して森に向かう。人も少なくて快適だ。30分ほどで森に着く。入る前に休憩をする。レオもルドもまだ大丈夫だと言ったが無理は禁物。まだ小さい子だからね。
さて、行きますか!私が先頭で歩く。道から外れないようにして薬草を探す。ホロホロ草とリンリン草、後は洞察力さんにお願いする。
この辺りは人も良く入るからいい薬草はないかな?
左右を見ながら進んでいると目の端に紫の花が映った。なんだろ?じっと見る。
(リル草 甘い蜜が取れる)
甘い蜜?レオとルドについて来るよう言うと道を逸れてリル草の方に行く。道から見えたリル草のさらに奥には一面のリル草が群生していた。奥に向かって斜面になっていて道からは見えない。
群生地に近づいてさらにじっと見る。
(花ごと取って裏側から蜜を吸う。美味しい。採取したら花を上に向けて瓶に入れると蜜が簡単に集められる)
ツツジみたいな感じかな?
これは欲しい。まずは吸ってみよう。花を取って裏に口をつけて吸う。甘い!ほのかに香る匂いが鼻を抜けていく。これは美味しいな。レオとルドにも同じように花の蜜を吸わせる。2人は目を見開いて夢中で何度も吸っている。普段、甘いものなんて食べる機会もないのだろう。好きにさせておく。自分は早速採取だ。
しばらくすると2人は気まずそうにごめんと言う。笑って首を振る。2人に瓶を渡して採取を頼む。嬉々として採取し始める。取り過ぎないよう注意して採り進めていく。瓶が足りないかな?少し離れたところで土に手を当てて瓶を作る。地中にあるケイ素でね。
2人も1瓶分終わったが、まだまだ採れそうだ。新しい瓶を2人に渡して自分もまた採っていく。ふぅ、大量だ!これは今回の目的とは違うけど嬉しい誤算。
よし、道に戻ろう。そこからまた進んでいくと、道沿いにホロホロ草とリンリン草を見つけた。2人に採取方法を教えて袋を渡す。私はその近くにあった別の薬草を取る。バジルだ。柔らかそうな葉っぱを摘んでいく。ん?あそこにあるのはもしかして…その黒い小さな粒を見る。あえてじっと見ずに匂いをかいで奥歯で割る。やっぱり。そこでじっと見ると
(黒胡椒 野生)
ミルがないと使いづらいけど割ってもいいし、これも採取。
ホロホロ草とリンリン草を袋いっぱいにした2人と合流してまた進む。すると少し先にキノコが生えていた。形は松茸風。屈んで匂いを嗅ぐ。なんと…じっと見れば
(松茸 焼いて岩塩で食べると超美味)
見回すとポツポツとある。少しだけ採ってこう。2人には待つように言って適度な大きさの物を採取。とここでお昼ご飯かな。その近くに開けたところがあったので座って2人にお水を渡す。自分も飲んでお昼の包みを取り出し、2人にも渡す。
包みを開けると、パンにお肉と野菜、チーズが挟んであった。前にお願いしたように使ってくれたんだ。
スーザンのご飯は美味しいから助かる。そうして満足なお昼を食べ終えて少し休憩する。
「2人とも疲れてないか?」
口々にまだ大丈夫だと言う。それならもう少し進もうかな。また道に沿って進んで行く。やがて目の前にたくさんの実をつけた木を見つける。
(オリーブ 絞るとオイルが取れる キャリアオイルとしても使える)
来た来たーーー!たくさん採るぞ。スルスルと木に登ると、上から実を落とす。レオとルドはそれを拾っていく。オリーブの木は何本かあって青い実と熟れた実をそれぞれ収穫。それなりの量が集まったので終了。
レオとルドは甘い果物だと思ったようで期待に満ちた目でこちらを見る。これは甘くないんだよな。
「残念だけど果物じゃないよ」
あからさまにしょんぼりする。仕方ないだろ…食べて美味しいもんでもないし。
帰ったらおやつを作ってやると言うと笑顔になって早く早くと急かされながら帰路に着いた。
しかし、私は平和に何事か終わるということが無いらしい…帰る道すがら鳴き声が聞こえた。きゅい…気のせいかと思って進もうとしたら、ぐるぅわぁと別の唸り声がする。きゅい…か細い声は助けを呼んでいるようだ。どうするかな、と考える間もなくレオとルドが音の方に走り出してしまった。
「危ないから戻れ!」
言いながら後を追うが遅かった。2人が止まった先には大きなイノシシ。その先には横たわっている鳥。かなり大きいな。鷹みたいだ。
イノシシは手負いの鷹にロックオンしている。そして見つけてしまった。鷹の足元にいる小鳥を。いや、雛か。イノシシの狙いは雛か!飛びかかるイノシシと翼を広げて子供を庇う鷹。
大きなイノシシが大きな鳥に向かって行った。鳥は翼を広げて…でもイノシシの口が開いて噛みつかれる!思わず目を瞑った。ぐがぁ…がふぅ。
恐る恐る目を開けるとそこには…首から血を流して死んでいるイノシシと、広げた翼を畳んで足元の小鳥を舐める鳥がいた。兄ちゃんが鳥に駆け寄る。小鳥にそっと手を当てる。
水色の光がぽわんとして小鳥がむくっと起き上がった。横たわっている鳥にも同じように手を当ててやはりぽわんと光る。鳥は起き上がってバサリと羽を広げた。そして兄ちゃんに向かって頭を下げる。
凄げー。兄ちゃんはやっぱり最高に強くて優しいんだ!
ケガをしながらも必死に翼を広げて雛を守ろうとしている。その健気な姿に助けなきゃと思ったら、魔法を発動していた。過たずにイノシシを絶命させる。今度は自分の意思で仕留めた。大丈夫、体は震えていない。少し気分は悪いけど、大丈夫…。
鷹が足元の雛を舐める。雛は動かない。慌てて近づいてそっと手をかざす。治れ!すると雛はキョトンとした風に起き上がる。次は親の方だ。同じように手をかざす。良く頑張ったな、治れ!鷹のケガも治る。
すると親は体を起こして頭を下げた。
『人の子や、礼を言う。私と子供を助けてくれてありがとう』
はい…?喋った??じっと鷹を見る。
(白大鷹 聖獣の鳥 白大鷹の雛 まだ話せない)
聖獣ですとな…?遠い目をしてしまった。
『この子にはイノシシの匂いが付いてしまった。郷には帰れない。主の元で育ててはくれないか?』
ん?
(動物の匂いが付いた雛は郷の大鷹から迫害される。雛はアイルに拾って欲しそう)
おぅ…洞察力さん、またしても気持ちまで読むのね。これ断ったら生きていけないってことだよね?断れないよ…
大鷹を見て頷く。一声きゅいと鳴くと飛び上がる。すると立派な羽根が数枚落ちてきた。その羽根を持っていれば、危機の時には助けに行く。そう言って力強く羽ばたき、山の方へ去って行った。
足元の雛はちょんちょんと飛ぶようにこちらに来ると、最後に大きく飛んで私の手の中に着地した。きゅいきゅい。これはよろしく、かな?手の中のふわふわな雛にようこそと言って立ち上がる。
「兄ちゃん、スゲー!懐かれてるよ」
「あのおっきな鳥が頭下げてた!」
「何が起きたか分かんねーけどとにかくスゲー!」
2人が落ち着くのを待ってイノシシを空間拡張ポーチのアリーナにしまう。それを見た2人は唖然としている。3人の秘密な?と言うとコクコクと頷いた。
そこからは順調に町まで帰って行った。
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