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異世界転移 残りものでも充分です〜  作者: 綾瀬 律
第5章 イグニシアへ

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301/428

296.王宮にて

予約投稿の日を間違えました…昨日の分です

 そこは外から見れば荘厳な佇まいの、そして中は煌びやかな場所だった。

 大きな部屋のその奥、数段高くなった場所には豪華な椅子が1つ、据えられている。

 骨組みとなる木は磨かれて艶があり、なだらかな、そして複雑な曲線を描いている。

 座面は真紅のビロード貼り。豪華で、この部屋唯一の家具だ。


 部屋の床はピカピカに磨かれた石の床。

 そして、入り口からその椅子に至るまでの床には真紅の絨毯か敷かれている。

 片方の側壁面はガラス張りで、明るく陽射しが差し込んでいた。

 もう片方の側壁面は白く、金色の細い装飾が人の頭の高さほどにぐるりと回してある。


 天井には高く、光輝く照明…複雑な意匠の繊細な作りをしている、シャンデリアが…部屋の真ん中に付けられていた。

 中央に行くほど天井が高く、金色の装飾か豪華に…しかし品良く配置されている。

 豪華な椅子の奥側の壁面は、やはり白く…門のような繊細な装飾が金色で施されていた。


 ここは、バナパルト王国の王宮。その中にある王の間。豪華な椅子は玉座…この国の最高権力者が座る椅子である。



 今、その椅子に現国王であるバナパルト28世が座っていた。




 バナパルト王国があるこの大陸には現在、8つの国がある。ほんの数ヶ月前までは9つだった。

 バナパルトはその大陸にあって、南西側に位置する大国だ。

 その歴史は古く、1300年の歴史がある。同じく東側の大国であるピュリッツァー帝国も、ほぼ同じ頃に建国された。

 バナパルト王国に北西側には小国であるヴァルカン公国があり、南西側にはサグラダ共和国がある。

 どちらもまだ歴史が浅く若い国だ。


 バナパルトとピュリッツァー帝国の北側に跨る広大な土地は、少し前までこの大陸最古の国があった。

 そう、旧イグニシア王国だ。広大な土地ではあるが、大半は1年中氷に覆われる過酷な土地だった。

 その国は、3000年の歴史に幕を引き、崩壊した。今は占領する者すらいない、荒涼とした土地となっている。


 バナパルト王国とピュリッツァー帝国の間には霊山と呼ばれるオソレシアがあり、隣り合ってはいるが接してはいない。国と国を遮るように、その山は聳え立つ。実際には建国前から存在している為、山脈を避けるように国が創られたのだ。


 その帝国のさらに北東にロレンシア公国がある。大国ではないが、技術の発展が著しく勢いのある国だ。

 特に、魔道具の発達が目覚ましく帝国すら一目置く存在だ。

 帝国の南東には周囲の小国郡をまとめた国がある。そこはユピテル共和国と呼ばれている。海に浮かぶ島国などを取りまとめ、和平と交易を行う為に作られた共和国だ。


 そして、北東端にあるのは神聖国。この国にはこの世界の命の源となる世界樹があり、その周囲数キロルに渡って神聖の森が広がっている。

 神聖の森には認められたごく一部の、神聖騎士団と一部の王族、管理者として認められた守護一族である守り人のみが立ち入る事が出来る場所だ。

 その森を管理するのは最高位精霊であるアーシャ様だ。創世神より世界樹の管理を任された精霊であり、至高神の眷属でもある。


 そして、大陸の最後の1つの国は魔導公国。旧イグニシアを挟んだ北西端に角のように出っ張った場所にある。

 永久凍土に覆われた旧イグニシアの北西部を隔てたさらに北。

 大陸からは未踏の地と呼ばれている。住んでいる種族は魔族とも魔人族とも言われるが、行き来がない為に詳細は不明だ。

 ヴァルカン公国やザグラダ公国から海側を通って辿り着けそうに思うが、その辺りは複雑な海流により渦を巻く魔境であり、熟練の船乗りをも飲み込む。

 海側は全て…そなような様相で、陸からしか入れない。なので、その国がある事は認識していても…誰も確たる事を知らない。そんな場所だ。



 その大陸の大国であるバナパルト王国。

 その玉座にはこの国の王が座っていた。

 一段下がった入り口から見て左側には宰相が、右側には国務大臣が立っている。

 そしてそのさらに下、床がある場所の左側には数人の国の中枢を担う外務大臣や魔術師団のトップである魔術師団長、国軍を束ねる軍務大臣など錚々たる面子が揃っていた。

 そして、その王の間の扉が開かれ、そこに3人の人間が入って来た。


 前に2人、そして後ろに1人。

 前の2人は明らかに高位貴族と分かる。洗練された仕草に質の良い着衣。

 第一礼装で身を固めた30代後半と思しき男性2人。


 第一礼装は国王への謁見などに使用される、貴族が着用する最上級の礼装だ。白い立ち襟のシャツに黒いモーニングコート、聖なる色である銀色のタイ、黒のスラックスだ。

 華美になりすぎず、貧相でもないその装いは、一見すると質素である為に、その品質と着る人を際立たせる。


 その2人の服の生地は艶がありながらも控えめで、一目見て非常に高価な生地を使っている事が分かる。

 しかも()()()()()()なめらかさ。

 光の加減で輝くそれは、2人の品格を表していた。

 着ている2人ともに、知性と確かな品位を纏って…一部の隙もない完璧な装いだった。


 後ろの1人は、前の2人とは異質だった。大きな体をスーツに包む。襟のたったシャツに銀色のネクタイ、濃紺のスーツにベスト。その生地も、前の2人に負けずに大変高品質であった。

 そして、左肩から斜めに掛けるサッシュには剣と盾の紋様。それは探索者ギルドの紋様であり、青のサッシュは主要都市のギルドマスターの権威を表している。

 ちなみに主要都市以外は緑、そして王都のグランドマスターは紫だ。


 そう、前の2人はアフロシア侯爵家当主のダナン・アフロシアとカルヴァン侯爵家当主のシスティア・カルヴァン。

 そして後ろの1人はアフロシア侯爵領の領都ゼクスの探索者ギルドのマスターであるバージニア・ダフタス。


 彼らは災害の後始末が一段落した9月の末に、王都を訪れたのだ。

 アイルのやらかした諸々の報告の為に。



 玉座に座るのは威風堂々とした壮年の男性。

 目の覚めるような眩い金髪に青い眼の、ガッチリとした体型をした男性だ。

 服装は詰襟の膝下まである紫紺のジャケットに、足首ですぼまる白いパンツ、そして右肩からは幅の広いサッシュが左腰まで斜めに掛かっている。

 そのサッシュにはこの国の紋章と、28の数字。さらには国王のみに許されるミドルネームが刺繍されている。

 国王は男性ならサー、女性ならサーシャがミドルネームとなる。


 サッシュは上からサー、28、国の紋章の順番で刺繍され、金色に紫の刺繍がある。サーの文字のみ、銀色の刺繍だ。

 聖なる色である銀色を王族が纏うのは、神に対する冒涜とされる。故に不敬にならないよう、僅かにサーの文字のみにその色を使っているのだ。


 バナパルト王国第28代の国王、エシュタリル・サー・バナパルト。1300年の歴史を持つ大国の現国王だ。



 進み出た3人は玉座の5メルほど手前で立ち止まる。前の2人は腰を折り右手を左胸に添えて頭を下げる。

 後の1人はさらに深く腰を折り、膝も軽く曲げて頭を下げる。

 貴族と高位の職に着いている者の違いだ。



 空気がピリリと張り詰める。


 少しの時間の後


「面を上げよ!」


 玉座から声がかかる。


 3つ数えた後に、そろってその頭を上げて背を伸ばす。


「「「我らの偉大なる国王にご挨拶申し上げます」」」


「良く来たな。アフロシア侯爵、カルヴァン侯爵、そしてバージニアよ」


「「「はっ!」」」


「堅苦しいぞ?久しぶりではないか…」


 突然砕けた物言いをする王に顔を顰めた宰相は


「うおっほん」


 わざとらしい咳払いをする。


「良いであろう?わざわざ()()()()()()()()()


 宰相は諦めたのか、苦々しい顔をしながらも何も言わなかった。


「この度の災害では思いの外、被害が出たな。見舞いを申す」

「「「ありがとうございます」」」

「何、金も出さずに言葉だけならいくらでもな、はっはっは」

 また宰相は苦笑いをする。

「魔塔より報告は受けておる。何やら活況のようだな」

「運の良い事に、()()()()実用化出来た様々な道具などがございまして…それが役立ったのです」 

 澄ました顔でアフロシア侯爵が答える。

「たまたま、とな?」

「仰せの通りにございます」

 またもやしれっと返す。


 国王の目が細まる。その鋭い眼差しを受けても、両侯爵ともに涼しい顔をしている。

 2人からすれば、警告に訪れたハクの迫力の方が遥かに強く、そして怖かったのだ。国王と言えど人。聖獣の脅威には比べるべくもない。


「そうであるか…。何やら新しい食べ物も盛況のようであるな?」

「はい、()()()()感謝祭で新しい食べ方が流行りまして」

 今度はカルヴァン侯爵が済まして答える。

「また、たまたまなのか?」

「仰せの通りにございます」

 またもやしれっと答えた。

「…何やら珍しい鉱物も見つかったと報告にはあったようだが?」

「「はっ!」」


 王が宰相に頷くと、控えていた従者が部屋の奥から真紅のビロードに乗った何かを運んできた。

 そして、玉座の手前で掲げる。

 宰相がそれを持って王の元へと運んだ。王は一瞥するとその目を開いた。

「これは…」

「色付きのダイヤモンドにございます」


 シーンと静まり返ってから、部屋が騒めく。

「色付き、だと?」

「ダイヤモンドに色付きなどない」

「新発見か?」

「なんという輝き…」

「どこから採掘したのだ?」


「鎮まれ!」

 宰相の一声でまたシーンとする。


「説明を…」

 厳かに王が告げた。




ついに王様が登場しました…


※読んでくださる皆さんにお願い※


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