3.宿と石鹸
案内してくれると言うのでそれならばと体と髪を洗うように言った。散乱したゴミから成分を抽出して石鹸を作り、布の切れ端からタオルを作る。
さらにホースも作れば簡易シャワーの完成だ。排水は床を一部低くしてその先に溝を作り床下へと流す。地中には石を集めて天然の浄化槽にする。そうすれば水脈には影響しない。
子供達の服を脱がして頭から水をかける。後は石鹸が泡立つまでその細くて小さな体と頭を何回も洗って流してを繰り返す。苦節6回、やっと泡が立った。最後に泡を洗い流してタオルで拭いてやる。
その間に服も洗い、絞ってから水分を飛ばす。それにはジョブの生産、服から水分を分離して水玉を想像していけー。出来た!汚れた水玉は廃水槽に落として洗濯終了。いや、ジョブが優秀過ぎる。
こうして身ぎれいになった2人の案内で宿に向かった。その宿は大きな通りから脇道に入った所にあった。小ぢんまりとして静かだ。
レオとルドに連れられて入ると受付の奥からのっそりと人が出てきた。
デカ!背も高いし体の厚みもある。宿屋の店員にしてはゴツい。そう思っていると
「主人お客連れて来た」
…まさかの主人だったよ。
「おう」と短く答えると奥に行って食べ物を持って来た。
「ほらよ」そう言うとレオ達に食べ物を渡した。それを見てなるほど、こうやって食べ物を貰ってるんだと感心した。
「兄ちゃん、また何かあったら声かけて!」
そう言うと彼らは帰って行った。
「おいくらですか?」
と聞くと少し眉を顰めて
「1泊2食事付きで銀貨5枚。シャワーとトイレは共同だ」と言う。初期装備のお金は大銀貨30枚。しばらくは大丈夫そうだ。ひとまず10日お願いした。すると銀貨48枚に負けてくれた。その場で払って鍵を貰う。
食堂とシャワーの場所を聞いてから部屋を上がる。2階建ての2階、奥の部屋だ。
中に入るとホテルのシングルくらいの狭さで机と椅子にベットが置いてある。意外に清潔でこれなら大丈夫そうと思った。しかし衛生観念は日本より遥かに劣るだろう。ジョブで汚れを想像し集めて…すると部屋の汚れが玉になってまとまる。それを窓の外から溝に捨てた。良し!やはりこのジョブ最高だ。
それから少しベットに横になるとやはり疲れていたのか眠ってしまった。
目を覚ましてここはどこだろうと考える。自分の部屋ではないし、居間でもない。ゆっくり起き上がりあぁと思った。そうだ、異世界転移したんだった。
外は薄らと暗くなっていてお腹が空いている。食堂に降りてみよう。部屋の扉を開けると少しざわざわとした音が階下から聞こえた。
階段を降りて食堂に入ると4人ほど食事を取っていた。空いている席に座ると筋骨隆々の主人が夕食を運んで来てくれる。サラダとスープに焼いた肉とパンだ。いい匂いがする。
「スープとパンは1回おかわり出来る」
と言って厨房に戻って行く。さっそくサラダを食べる。見た感じはレタスのようだ。洞察力で見ると
(グリーンリーフ、新鮮な生野菜、美味しい)
と出た。食べれるシャキとした歯触りで臭みもなく美味しい。次にスープ。
(塩味のキャベチ入りスープ、そこそこ)
と出た。少し飲んでみる。うん、まぁ味はただの塩味だけどキャベチの旨み?なのかまろやかでまぁまぁ。次はパン。
(キビのパン、薄くて硬い)
と出た。少し千切って食べる。うん、少しクセがあって固い。これはスープにつけるのだな。
そして最後にお肉。
(塩味の豚肉、少し臭みがあるがそこそこ美味)
と出た。うん、固いけど意外と淡白で美味しい。
おかわり出来ると言われたけどかなり多かった。満腹だ。食べ終わったのを見て主人が
「おかわりは?」
と聞いてくれたが断ってシャワーを浴びに行く。
さっきの廃屋で自分用にも石鹸を作っておいた。着替えは一揃えだけあったので体を洗って着替えると早々に部屋に入った。
取り敢えず、ジョブで何が出来るか検証しよう。無から作ることは出来ないが、例えば呼吸から出る二酸化炭素から炭酸ガスを分離出来るのか、とか。灯から光を分離出来るか、とか。気体も液体も生産して作り替えられるなら無限に様々なことが出来る。
まずは二酸化炭素。呼吸から分離した泡に閉じ込める。難しい。泡に閉じ込めた物が二酸化炭素であることは液体に溶かさないと分からない。
次に光とは思ったが分離してどうするのか?という問題がある。ランプとかあれば使えるかも知れないが、ひとまずこれは無し。
他にないかと考えたかまひとまずここまでにして寝ることにする。流石に疲れた。安心したこともあってもう瞼が重い。ベッドに入ると多分、秒で落ちた。多分なのは記憶がないからだ。
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