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異世界転移 残りものでも充分です〜  作者: 綾瀬 律
第5章 イグニシアへ

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291.箱庭の神様たち

 目が覚めると淡い金髪。抱きしめられてるね…。その髪を梳く。サラサラとこぼれ落ちる髪が気持ち良い。

 ほんの少し癖のある、柔らかいきれいな淡い金色。大好きな色…覚えていられるのだろうか。

 決して忘れたく無いその色を心にしっかりと刻む。

 その温もりも肌の柔らかさも、全て…記憶に留められますように。


 願いを込めてそっとその髪にキスをする。

 もし、私が忘れてしまっても…きっとまた好きになるよね。大好きだよ、イリィ。

 後何回、こんな風に寄り添えるのだろう。清々しい朝、物思いに耽る。

 イリィが顔を上げる。その目は涙を湛えていて。


「イリィ、どうしたの?」

 慌てて聞けば

「アイ…必ずアイルで戻って」

 目をパチパチさせる。そうか、そうだよな…不安なのはイリィだって同じだ。だから笑おう。大好きな人に、笑顔で待っててもらう為に。

「うん、そうだね…。イリィ、笑って?」

「アイ、もう…くすっ」

 イリィだって分かってる。絶対なんて無いって。でも、笑ってくれた。その目に涙が溜まっていても、今にも泣き出しそうでも。


 後7日。後たったの7日。イリィは一旦、ニミとイグ・ブランカに帰る。そして、審判の日の前日にここに来る。当日はここにいない。私が関連深いバナパルト王国で、イリィは私の帰りを待つ為に。

 より深く関わった場所に、最愛の人がいた方が魂が回帰しやすい。そうニミやアーシャ様、イグニス様に言われたから。

 その役目はイリィにしか出来ないから。


 イリィは食事を食べずにニミと帰って行った。

 私が作った日本食と、味噌やしょうゆをたくさん持って。ソマリにはレシピを。もし、私が帰れなくても…私が生きた証が残るように。

 食材を渡したら、またイリィを泣かせてしまったけど。


『しばらくここで記憶の継承に努めるぞ!よって、我のお世話はアイルがするのじゃ』

 え、嫌だよ…。思わず顔を顰めたのも仕方ないと思う。

『むっ、嫌なのか…?』

 素直に頷く。

『イグニはわがままだからねー』

 ルートヴィー様…人のこと言えます?

 とにかく、神様たちは自由奔放なのだ。相手をするのは疲れる。なぜ神様たちは帰らず箱庭(ここ)に全員いるんだか。

 ロリィは研究、エリは勉強と言って逃げるしさ。大変なんだよ、神様の相手を1人でするのはさ、もう。


 1日で7食くらい食べるんだから。ほぼ、何か料理を作ってるよ、私。作りたいものがあるのにさ。

 だから、作り置きをたくさんしてね、勝手に食べてって渡したよ。

 大事な時間なんだよ?もう。

 で、自分の部屋に籠ってね、色々と作ったり書いたり。自分の時間を楽しんだよ。


 そして、数日が経った。

 今日は10月8日。審判の日、若木を根付かせる為に色々とする日まで2日となった。

 イグニス様は記憶の継承を終えて、何やら考えていることが増えた。

 他の神様たちもなぜか箱庭で色々とやってるみたいだ。神界と箱庭(ここ)は繋がってるみたいで、ちょくちょく外に出てはまた戻ってくる。いや、何で?

 神界(あちら)の方たちだよね?

 ヒュランも鎮魂の森に帰るでもなく、

『我はイグニスの守りだからな!』

 とヒゲをそよがせながら、ご飯をバクバク食べていた。


 そんなこんながありつつ、2日前だ。

 その日はロリィとエリが私にベッタリだった。なんでも、明日はまたイリィが朝から来るから、私とゆっくり過ごせるのが今日だけらしい。私は除外してイリィとロリィとそしてエリで決めたとか。私は当事者だよね?決定権は無いんだね。

 イリィはロリィを同志と認めて、諸々の関係を許容した。エリの事は、あくまでも助けた責任として…だったんだけど。いつの間にかエリも同志認定されたようで。


 イリィ曰く、見守る人は多い方がいいとか。もちろん、これ以上は増やさないよって言われたけど。どう言う事かな?

「アイは無自覚に人をたらし込むからね。抑止力だよ」

 …監視なの?憮然としたら

「ん、イルは無自覚にやらかすから…」

「気をつけないと…神様すら籠絡したし」

 みんな酷くない?


 なんて事があって、取り決め?でロリィとエリが今日は私と過ごすらしいよ。

 だから2人には私が作ったあれこれをね、渡しておくよ。

 まずはカバンだね。これはもう分かってると思うけど、私の故郷の味が詰まってるよ。たくさん食べて、時々思い出して欲しいから。例え、私が消えてその記憶すら無くなっても。

 もちろん、薬も沢山あるから。


「ロリィ、この腰に付けるポーチはね…アイリーンに渡して欲しいものが詰めてあるよ!たがら、私がもし…」

「ダメ、だよ…。これはイルが持ってて」

 私は首を振る。

「戻ってこれても、眠ってるかもしれない。だから…」

 ロリィはその目に涙を溜めて

「なら、半分ずつ…」

 ロリィ、分かったよ。私は頷いて、半分は自分のポーチに仕舞う。

「泣かないで、ロリィ…」

 その目から流れ出した涙を拭う。

「一緒にアイリーンを、育てて…」

 私は曖昧に笑う。

「努力するよ…」


 次はやっぱりアクセサリー。

 足の指に嵌めるものと、足首用のアンクレット、右手の小指用の指輪と左手の中指の指輪、ブレスレット。

 チューカーも。

 それ以外だと

「白蜘蛛の糸で織った布から作った服が入ってるよ。大きさは自動で調整するから。後は色々…」

 たくさん入れたからね!自分でも忘れちゃったんだ。

 シャンプーとかボディーソープはもちろん、入れてあるよ。他にはボディークリームとかハンドクリームとかも。小さな家も、ね。家具付きだよ。


 そしたらロリィが私の耳にそっと触れて

「イル、これが欲しい」

 これはピアスだよ。穴を開けないとだけど。ロリィの耳には穴が開いていない。

「ロリィ、これは穴を開けないとダメなんだよ」

「いいよ、開けて」

「同じデザインの?」

「違う、イルのしてるやつが欲しい」

 これはイリィがくれたものだから。

「これは上げられない」

 ロリィが悲しそうな顔をする。それなら、あれにしようか。

「ロリィ、私があちらの世界からしていたピアスなら?その代わり、片方だけ。もう片方は私の宝物だから…。それならお揃いだよ?」

「ありがとう、イル」


 私はポーチから大切にしまってあったそれを取り出す。

 先端を少し尖らせて

「少し痛いよ?」

 ロリィが頷いたのを確認してその耳たぶに突き刺した。私に抱きついて痛みに耐えたロリィは留め具を留めた私を見て、優しく微笑んだ。

「ありがとう、お揃い?」

「お揃いだよ」


 そんな私たちをエリが寂しそうに隣で見ている。

「エリ、あちらから持って来たピアスは他にもあるんだ」

 そう、左耳には2つの穴が開けてあったから。でも、もう一つはロングピアスで。男になったから外したままにしてた。エリなら、似合うだろうから。ポーチからそれを取り出す。

「こっちでは付ける機会が無くて…どう?ロングピアスなんだ」

 エリはその繊細なチェーンが揺れるピアスを見る。

「きれい…それを僕に?」

「良ければ、付けて欲しい。私が気に入って使ってたものだから…」

 エリは涙目で頷く。エリの耳にはピアスホールが開いていた。そこにはかつて…エリを虐げた王妃が、自分のものだと誇示する為にピアスを付けていたらしい。

 そこにはてめいいのかな?


 エリは

「ここがいい…アイルの、アイルが…全て、嫌な記憶を幸せな記憶に上書きして…」

 そういう考え方もあるんだな。分かったよ。

 その左耳にフックを掛ける。取れないようにキャッチ付きだ。

 その透明な肌に銀色の華奢なチェーンはとても良く似合った。

「きれいだよ…エリ。とても似合う」

 エリはその透明な、避けるような目でふわりと笑った。その目には涙が光っていたけど。例え記憶が消えても、ここに私がいるから。


 渡すものはこれくらいかなぁ。後は最後の最後に、でいいや。

 その日はハク、ブラン、ナビィ、ハル、ナツ、リリ、ルイ、リツとたくさん触れ合って遊んだ。

 ロリィもエリも笑顔で。

 夜は手を繋いで寄り添いあって寝たよ。もちろんハクたちもね!

 幸せな時間だった。私を忘れてもいいから、今この想いを、感じた想いを忘れないで。


 こうして、審判の日の前日にニミとイリィがやって来た。





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