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異世界転移 残りものでも充分です〜  作者: 綾瀬 律
第5章 イグニシアへ

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286.戦神のシシラル

 ドンッ



 どちら様?

 そこには歴戦の勇者も真っ青な筋骨隆々の男性が立っていた。キラキラした銀の髪に、金色の目。色合いはイグニス様と一緒だ。

 凛々しい眉毛に高い鼻、大きな口。いかにも男性って感じの美形な神様だ。

 服は…鎧じゃなくて、なんて言うの?あの金属のガチャガチャしたヤツね。

 プレートアーマー?逞しい体にフィットしてて、とても似合う。神様に似合うとかどうかとも思うけど。


『シシラル様ーおひさー』


 アーシャ様、戦神の人にも馴れ馴れしいな。こういう()()()()()()場所でもブレないアーシャ様になんかほっこりしちゃったよ。


『久しいの、イグニス。そしてアーシャよ』


『久しいのぉ』


『して、アレとは何だ?』


『アレはねぇーアレだよ…』


 …アーシャ様は説明する気ありませんね?


『はぁい、シシラルぅ。あ、た、し、もいるわよーん』


 ブレない馬?がここにも。


『ユニオではないか!地上に降りてから戻らないから心配したぞ?』


『厄介払いの間違いでしょ!』


『いや、あの時は致し方なかったんだ。すぐに戻るだろうと思っておったのだがなぁ。あれからだいぶ経った。心配しておったぞ』


『ふん!追い出された場所に私が帰るわけ無いわ』


 えっと、お取り込み中だけど…アレって何かな?


「ふふっ」

「くふぅ…」

「アイル…」


 イリィ、ロリィ、エリは三者三様の反応。だってね?出してって言われてもさ、何を、が分からないと困るんだよね。


『アレはアレじゃ。美味いものじゃ』


 あぁ、食事か。うーん、何がいいかな。

「丸いお肉…」

 ロリィが呟く。ハンバーグね!


『よく分からんが、それを出すのじゃな』


 イリィもエリも頷いている。ハクとナビィは目をキラキラさせてる。まだ食べる気なの?

 あ、うん…分かったから、泣かないで。食べていいからね。



 ドンッ



 …机が何処かから飛んで来たよ?

 あ、はい、ここに出すんですね。ただ今。

 こんな感じですが、今、盛り付けますよ。えっ、要らない?とにかく早く食わせろと。

 では…どうぞ。

 こちらの丸いのがお肉…もう食べてますね?解説はいりませんね。

 はい、おかわりはこちらに…。


 机の上にハンバーグを出したらもうね、シシラル様の目がキラーンってね。金色に光ったんだよ。

 芋を揚げたものとかキビを炒めたものを添えようとしたら、早くよこせって言われてね。

 だからお皿に5個盛って渡したんだ。他のは大皿に盛って、何ヶ所かに置いたよ!

 好きなだけ食べてね。


 足元をハクとナビィがウロウロする。分かってるよ。

 さぁ、ハクたちのはこっちね。

 ここに置くからね。仲良く食べてね。

 さあどうぞ。


『もぐもぐもぐもぐ…美味い!もぐもぐもぐもぐもぐもぐ…』

『うん、これももぐもぐ、なかなか…もぐもぐ』

 …神様って食事いるの?

『要らんな、もぐもぐ』

『もぐもぐ、要らん』

 …なら何故、食べてるの?

『まあ、楽しみだな?もぐもぐ』

『娯楽?もぐもぐ』

 …なるほど。まいいか、ってかどんだけ食べるの?


 気が付けば私以外は全員食べてるよ。

 あ、イリィは可愛いからいいよ、うんうん。頬を染めて食べてるのが可愛いね。

 ロリィはこんな時でも上品だね、それはマイフォークとナイフかな?上品なのに、早いね。

 エリは、緊張してるみたいだけど…たくさん食べてるね。うんうん、どうぞ食べてな。


 ブラッドはまぁ体が資本?だしね。沢山食べてな!

 ベルは白い頬を染めて、美形はお得だね!ご馳走様です。

 ハクたちは、あ、ベビーズまで食べてるのね。


 と何人前あったかなぁ、かなりたくさん合ったんだけどな。無くなってるね…全部。また作り置きしないと。

 呆然とその光景を眺めていたよ。



『ふぅ、美味かったぞ…我の加護ではなく豊穣神の加護が良く無いか?イグニスよ』

『今でも充分だろ。自ら戦う力は必要だ』

『まあ確かにな、よし、特大の加護を授けてやろう』

 シシラル様は立ち上がると私のそばに来て、抱き上げた。

 えっと?

『ふむ、なるほど。戦いを忌避しておるか、いかんな。下界にいるならば、戦わねばならぬ』

 そう言って私の頭を撫でる。そして、私の唇にキスした。

 …加護ってなんでキスなのかな、少しだけ遠い目をしてしまった。


 目の前には俳優さんも真っ青な美丈夫。逞しくて凛々しいお顔がある。ひたすら美しいイリィとは違うけど、この方もまた大変な美形だ。

 その方が目を瞑って私と唇を合わせている。柔らかくて暖かくて…あれ、これは魔力?

 えっと、長いな。加護って授けるのにこんなに長くかかるのかな。ユーグ様の祝福やアーシャ様の祝福は一瞬だったのに。

 だんだんと恥ずかしくなってくる。だって、魔力が心地良くて…眠いよう。寝ちゃダメだ、寝ちゃ…。




 久しぶりにイグニス様が神界に来て、シシラル様と話をした。戦神と言っても、ただ戦うことだけを司るのでは無い。物理以外の戦いもシシラル様の管理下だ。

 アイルに必要な戦う力は、歪められた運命に抗う力を授けてくれる筈。こちらに戻るのもそれなりに大変なのだから。その力は有難い。

 イグニス様もそれを期待したんだろう。


 シシラル様は眠ったアイルを腕に抱いてイグニス様を見た。

『なんと残酷なことを…アリステラめ、下級神の分際で!』

『そうじゃな、許せんの。しかしな、我は自分が一番許せんな…あやつに踊らさせれて、好きにさせてしまった。我の責任でもある…シシラルよ、加護を授け、また御印まで。世話をかけたな』

『良い。美味いものをたらふく食わせてもらったからな。で、お前はどうするのだ?』

『後始末を付けたら、神界(ここ)に戻る。この体はもう限界じゃ…このまま、若木と共に眠らそう』


『しかし、この子は良く耐えたな…この細い体で』

『ほんにのう、そこの伴侶と契約者たち、子もおるしな。心から慕うものたちの願い、じゃな』

『聖なるものに囲まれる人なぞ初めて見たぞ』

『ふふっ、我も驚いた。さてと、その子が寝ている間に我の小さき加護も付けようかの。キスはダメらしいからの』


 イグニス様はアイルの髪の毛を梳くとその唇にキスをした。柔らかな光が包む。僕はアイルの左目からそれを眺める。

 体を起こして優しい顔でアイルの頬を撫でると

『我らの子を救ってくれて、ありがとう』

『ん、お前も印を付けたのか?』

『目印は多い方が良いからな』

『くくっ、分かるな。我らを見ても、食事って必要だった?と真剣に考えておったぞ?』

『ふふん、そうじゃろ。目覚める前の会話もな…』


 イグニス様は目覚めの為に何をするか、でヒュランとアイルのやり取りを妖精から聞いたようだ。

 それを聞いてシシラル様が爆笑して、ついには膝をついた。

『なんと、愉快な。くくくっ、我に戦わずして膝をつかせるとはな。ある意味、大物だな』

『そうだろ?なかなか面白い上に、料理上手で大変な無自覚じゃな』

『どことなくイグニシアに似ておるな』

『あぁ、我も思ったぞ。縁あって加護を授けたのじゃ…もう我の子じゃ』

『下界に憂いの無いように、カタを付けて参れ』


 久方振りの神々は会話が弾んでいるな!

 それにしてもアイルってば

『2人の神にキスされて髪を撫でられてるなんてね』

 独り言を呟く。僕は楽しくなった。さすが、僕が見込んで祝福をしただけはある。

 後で教えてあげよう。ユーグ様も喜ぶな!




 僕はビックリしてこの光景を眺めている。僕のアイは神様の加護を貰った。あの美丈夫な戦神様に、だ。

 そしたらイグニス様まで…。

 でも、シシラル様はいつまでアイを抱いてるのかな…僕のアイなのに。

 じーっと見てたからか、目が合った。うわ、どうしよう…こっちに来る。体を硬くしていると


(大丈夫、イーリス。とても優しい目をしている)


 ロルフ、ありがとう。少し落ち着いたよ。ドキドキはしてるけど。


『ふん、お主がこの子の楔か…良い顔をしておる。この子を守りたいか?』

 僕はハッキリとはい、と応えた。シシラル様は頷くと

『ならば、同じように加護が必要だな。守るためには力がいる』

「お願いします!アイを、守りたいんです。どんな悪意からも…」

『うぬ、この子もそれを望むであろう』

 そう言ってアイを抱えたまま、僕のおでこにキスをした。なんて温かい…。でもおでこ?

「ありがとうございます」

『ふっ、良い』


 次にロルフに目を移す。そりゃね、横で目を輝かせて見上げてるんだからね。横ってまさに真横。

 顔を動かしたら当たるような超至近距離で見てたんだ。さすがは研究者。

 シシラル様は

『お主は…転生の魂を?』

「はい、そうです」

『知っておったのか?』

「グレイの事は…記憶の中に見ました」

『前世持ちとは、また珍しい。お主もまた、望まれて選ばれた魂か。お主には尊い者としての覚悟があるな。その身に受け止める覚悟が。ならば、普通の加護を付けよう。この子の為に、その身を挺して戦え』


 シシラル様はロルフの頬にキスをした。

「確かに、受け取りました。ありがとうございます…」

『良い。その覚悟に、な』

 最後にエリアスを見た。そして優しく微笑んだ。

『イグニスの子孫だな。かなり血は薄まってるがな…それに、血の呪いか。それをなんとまあ鮮やかに断ち切ったな。良きことだ。アリステラとの繋がりが絶えておる。お主には加護とは違う力を授けるぞ!』

 そう言ってエリアスを抱きしめて、その首にキスをした。


『これはな、分かるな?国を統べる為に必要な戦いの力だ。お主の血は高貴なる血。呪いを断ち切ったその強き心に宿る兵法論だ。しかと努めよ…。お主が慕うこの子が、健やかに過ごせるようにな』

「はい、ありがとうございます。私の命は彼に捧げると誓います」

『くくっこの子はこれほどまでに慕われておるのじゃな。愉快よ』

 そう言ってアイを優しく見ながら笑った。


 ベル兄様とブラッドには力強い握手をした。

「加護ではないが、印だ。守るべき者のために戦え!」

「はっ!」

「はいっ!」

 心を鼓舞する様な強い言葉は、2人にしっかりと届いた様だ。




※読んでくださる皆さんにお願いです※


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