280.イグナシオへ
明日の投稿にエリアスのイラスト載せます…
イラスト投稿久しぶり&エリアスお初ですね
私は覚悟を決めた。この世界で生きる為に、イリィのそばで笑っている為に。
神にケンカを売る!絶対に負けてなんかやらない。
でも私は一度、魂を飛ばすことになる。今の私が残れるのか、愛理としての私になるのかは分からない。
そう言われた。
でも、私はこの世界でまたイリィと出会えたらきっとまたイリィに恋をして好きになる。
だから…待ってて。イリィ…大好きな人。
それにしてもティダは凄いな…運命なんて変えたらいいなんて。カッコいい。このタイミングで会えて良かった。私は本当に周りに助けられている。
そんな事を考えながら、イリィの鼓動を聞きながら…いつしか眠っていたみたいだ。
朝、目が覚めると淡い金髪。うん、昨日はイリィの胸に耳を当てて寝た筈なんだけどな…起きたらやっぱりイリィに抱きしめられている。
でもすごく嬉しい。大好きな色、柔らかな髪…滑らかな肌。そのおでこにキスをして頭に顔を埋める。しばらくお互いの温もりを感じてから、起きた。
イリィは私の頬を両手で包むと
「諦めないで…」
ただそれだけを言ってキスをした。そうだったね…こんなに弱い私でごめん。
少し抱き合ってから、着替えをしてテントに戻った。
ニミとイリィはこうしてイグ・ブランカに帰って行った。
私たちはまたブランに乗って旅を続ける…と思ったら
「我に乗れ…見届けねばなるまい。共に行こう!」
ティダがついて来てくれる事になった。そして今、ティダの背中に乗っている。
凄い安定感。こうしてイグニシアへの旅は再会した。
私の運命に逆らう為に、ハクがいてブランがいて、ナビィがいる。ハル、ナツ、リリそしてリツ。ロリィにエリ、さらにティダ。ブラッドとベルも。
イグ・ブランカで私の道標となるイリィ、ルイ、ミストにミア。
こんなにたくさん、私の周りには私を信じて待ってくれる人たちがいる。私が居なくなって、世界の記憶から私が消えても…私が存在した事実は消えない。
でも私はやっぱり生きたい。ユーグ様が抱いているイリィと私の子供、ブランと私の子供、ナビィと私の子供も…ロリィとの子だって私はまだ見てすらいない。
諦めるなんて出来ない。諦めようと決心しなければならない程度には、私は生きたかった。ならば、ティダの言うように生きのびよう。
例え、アイルとして生きた記憶を無くしたとしても…私はまたきっと出会って、イリィを好きになって、ロリィを変人だと思って、エリを人形みたいだと思うんだろう。
それでいい。忘れたならまた一からやり直そう。
私が私である限り、またきっと…同じように考えて行動するはず。
イグニシアで何が待ち構えてるのか分からないけど、また心が折れそうになるかもしれないけど、その時はみんなに助けられながら…また復活してみせる。
と、カッコ良く考えたけど…うっぷ。大きくて安定感のあるティダの背中でも、やっぱりダメだった。
吐きそう…最後尾に移動しようかな?あ、待てよ…空中にゲロ袋(飛行機に備え付けられてるアレ)を固定してそれに吐いたら、空中でそっと燃やせばいいんじゃない?
ゲロ袋…出来た。空間拡張ポーチから出した紙で作る。
「ゲフホ…グハッ…」
空中に放って着火ーおぉーよく燃えるね。少しだけスッキリした。少し寝よう…。
そんな感じでティダに乗って移動して、予定ではイグニシアに入ってから4日くらいと見込んだ移動がなんと、たったの2日でかつての王都、イグナシオがあったと思われる場所に到着した。
天候にも恵まれたけど、すでに上空はとんでもない寒さだ。下を見れば雪が積もっている。湖と思われる場所は凍っていた。
ティダが慎重に地上に降りると、足元の雪が舞った。
そして、かつての王都であるそこはすでに廃墟と化して、住む人もいない寂れた様子だった。
「イグニシアはどれくらい前に?」
エリに聞くと
「5ヶ月ほど前かな…まだ春で、雪が溶け始めてたから。僕は本格的に国が荒れる前にここを出て、3ヶ月掛けてバナパルト国に入って。それからまだ移動して白の森に着いて…アイルと会った」
たったの5ヶ月?こんなに荒れ果てて…もう何年も前に人が絶えたような様子だ。
家々は傾いたり、壁が壊れている。窓や扉は閉ざされている。そこに雪が降り積もっているのだ。生き物の気配が全く感じられない。その場を支配するのは圧倒的な静寂だった。
豊かではなかったとしても、一国の王都だ。それなりに栄えていた筈なのに。
あまりにも物寂しいその姿に呆然としてしまった。
「僕は外に出ることもなかったから、元の姿と比較は出来ないけど。流石にこんなに荒れているなんて…」
エリは言葉少なく語った。
「イグニシアの王都、イグナシオは壮厳な姿だと文献にはあった。この姿からは想像出来ない…」
ロリィは静かに廃墟を見渡す。その息は白く凍った。
『ひとまず、鎮魂の森に向かおう』
ハクが背中にベビーズを乗せたまま言う。ベビーズは大人しいな。因みにハクはベビーズごと着られるようなもこもこの服を着ている。ベビーズもハクもお互いに温かいからね!
ブランは翼の邪魔にならないように、頭を覆うもこもこの帽子を被っている。もちろん、風圧は風魔法で散らすから問題ない。
ナビィは頭に耳まで覆う帽子、足元までの服、雪でも大丈夫なようにブーツを履いている。
ティダは
『我は寒さなど平気だ!』
と言ってたから大丈夫だろうと思って、ブランにだけ帽子をかぶたら物凄く羨ましそうな顔をしたので
「ティダもかぶる?」
って聞いたら
『わ、我はそんなに弱くは…な、い』
かぶりたいんだね?
「オシャレだと思えばいいよ」
と言ってかぶせたら、凄く嬉しそうにブランと戯れていた。
ロリィ、エリ、ブラッド、ベル、私は頭も手も足も、もちろん体ももこもこだ。お陰で雪が積もっているここでも寒くない。
「ハク、場所は分かるの?」
『ジャジャーン!僕が分かるよぅ!』
ハクが返事をする前に相変わらずのベタな登場のアーシャ様だ。そらそうか、神聖の森の管理者なんだからね、生命樹とは切っても切れない縁だろう。
ふわふわと漂ったあと、なぜか無理やり私の首元に入り込んで小さな顔を半分だけ出した。
『ぬくぬくー』
そもそもアーシャ様って寒さを感じるの?いつも同じ服だけど?
『感じないよー!人と違って暑さ寒さは大丈夫。環境の変化には敏感。だから町中で姿を見せると色々感知しちゃって疲れるんだ』
やっぱ聖なるものだからかな?でも寒くないならそこに入る必要ある?
『正確に言うと、気温を感じないわけじゃ無いんだ。寒いから体を温めようって思わないだけで。寒いは寒い。ぬくぬくは好き…わかった?』
「全然分からない」
『えぇー、うーん…寒いけど平気、なら分かる?』
「それなら分かる。平気だけどぬくぬくは好きなんだね?」
『アーシャはねー、アイリにくっつきたいだけだよ!心地よいんだよねー!』
『そうだよぅ。アイルのぬくぬくが好きなんだよー』
なるほど?まぁ別にいてもいいんだけど?
そんなことを話しながらアーシャ様のあっちー、とか曲がってーの雑な説明を聞きながら進んで行く。
すると目の前に大きな建物だったと思われる今は廃墟が見えて来た。
もしかして、これは元の王宮?エリを見ると立ち止まっていた。なんとも言えない顔でその大きな廃墟を見つめる。
「そんな…」
当たり前に続くもの、突然なくなるなんて考えることすらなかったのかもしれない。その日常が壊れた。これらはその当たり前にあったはずの日常の成れの果て。
エリにとってはいい思い出は少ないかもしれない。それでも、ここは彼にとって確かに故郷だった。
その白い顔はさらに白く、吐く息も白く凍りそうだ。その目から静かに涙が溢れて頬を流れ落ちる。私はエリのそばに行くと、その涙を拭った。涙に濡れたまつ毛が凍り始める。そのままでは頬も凍ってしまうから。凍ったまつ毛に、口元をもふもふの中から出してエリ頭を抱えてそっと口付ける。
エリはそのまま私にしがみつくように泣いた。私は凍らないように、その頬を手袋を嵌めた手で温めることしか出来なかった。
『行こう!』
ハクが歩き始め、私はエリの頬を自分の頬で温めてからエリの手を引いて歩き出した。
「思い出なんて、嫌なものばかりで…だから平気だと思ってたのに」
ポツリとエリが呟く。その声は私たちの雪を踏むザグッという音意外の音がない、シンとするこの廃墟に大きく響いた。まるでエリの悲しみの大きさを物語るかのように…。
「嫌な思い出であっても、確かにエリがここで生きた証だから。何も感じない訳が無いよ…でも今は堪えて。温かい場所じゃ無いと、顔が凍っちゃう」
エリは真っ直ぐに私を見ると
「アイル、ありがとう。君はいつだって僕を肯定してくれる…初めての存在だよ。生きてていいと、生きたいと、そう思えたのはアイルと出会えたからだ」
私はエリを見て淡く微笑んだ。自分と向き合って、素直に認められるエリは本当に真っ直ぐだ。
ひたすらに真っ直ぐで、羨ましいほど。
私たちは色んな思いを胸に、アーシャ様に先導されたハクに付いて、雪の積もったかつての王宮の脇の道を歩いて行った。
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