270.温室
誤字報告ありがとうございます…汗
あり過ぎて…順番に確認していきます┏○ペコ
「この中に植えれば、冬でも育つ。中の温度は25度に保って…」
火魔法で熱だけを閉じ込めたアルミの箱を作る。ほんのりと暖かい。
ジークリフさんに渡そうと手を出したらロリィが奪った。観察してからジークリフさんに渡す。
「これは!!」
エラスノさんとリバーテイルさんにも渡して
「「これは!!」」
おんなじ反応だ。しみじみと見てからロリィを見るジークリフさん。
「これが救世主の力か…」
「そう、僕のイルはそういう子」
「参ったな…こりゃ。もう、ゼクスに足向けて寝られないぞ?」
何でそうなるの?
「で、出来る?」
「それだな…」
「火魔法の火を熱と光に分かればいいんだよ」
「熱と光…」
ロリィが目を瞑って手に火を灯す。そしてやがてそれが分離した。おっ、流石はロリィだね。
「うん、完璧だよ…ロリィ」
その私の声を聞いてジークリフさんが固まった。
「ロ、ロリィ?」
ん?
「そう、僕が頼んだ」
「…そうか、いや、うん。なるほどな」
えっ?ロリィを見るとふわっと笑った。その笑顔を見てジークリフさんがまた固まった。
ロルフが笑った…と呟いて。
「ん、んん…俺も挑戦だ!」
…ジークリフさん魔法下手なの?何回やっても失敗してる。思わず彼の手を握って一緒に魔力を流す。分離するイメージが伝わるように。するとあっさりと出来た。
「1人でやってみて?」
何故か顔を赤くしたジークリフさんが目を瞑って魔法を発動し…分かれた。
「こりゃ凄いな…教えながら触り放題」
「美女に?」
「もちろんだ!っていや、違う…」
しどろもどろだ。思わず半目で見たよ。その前に私の手を握ってしっかりとくるんで洗浄してるんだけど?ロリィが。
「そ、そのアルミの箱は?」
ロリィを見る。首を振る。出来ないの…?どうしよう。あ、そうだ!イアンに頼もう。
「色々とやっておくよ」
多分、察したロリィが応えてくれた。
話は戻って紅茶にリル草の花の蜜を垂らす。みんなで飲んでみる。渋みが消えて美味しいよね、これ。
みんなも飲んでほぉって言ってた。
「しかし、救世主とはこれほどなのだなぁ」
「そう、そして…その知識をこうやって惜しみなく伝えてくれる…」
「あぁ、権利だ何だと主張しないからな」
「きっと温室の登録もしたく無いって思ってる筈。熱と光の分離は原理登録もいる」
えーそうなの?明日は忙しいのに…。しょんぼりしてると
「ぐわっはっはっ」
「くふぅっ…」
「くすっ…」
「「ぶはっ」」
ジークリフさんにロリィ、エリ、まさかのブラッドとベルまで?
「これはまた…これだけやらかして、ぐふっ…被害者みたいな顔してるぞ」
「それが、イル…」
だってね?膝の上のハクとその背中のベビーズをもふる。さわさわ撫で撫で、可愛い。
「そりぁ、お前も興味が沸くか…いやはや。しかし、アイルよ…ありがとうな。これで冬も暖かく美味し物も食べられて過ごせる」
「僕の薬も少し置いて行く」
「ロルフもな、お前の薬でどれだけの命が救われたか…ありがとな」
そう言って胸に手を当てて頭を下げた。その言葉に、たくさんの想いを込めて。
もうそれなりに遅い時間だけど、原理とか調味料(出汁)、豆腐は私しか分からないからね。頑張って登録したよ?
ふぅ、疲れた…。
で、エルさんがお勧めと紹介してくれた剣と翼亭に馬車で移動することにした。もう疲れたし、気分は相変わらずだしね…そこでいいよね?
私の無言の訴えにロリィも頷く。
「いい宿だぞ?この町では貴族が泊まるなら間違いない。宿代は領主持ちだからな」
でも悪いような?ロリィを見ると軽く頷く。
「なら遠慮なく…明日にはアルミとアルミの箱の引き渡しだね。場所を指定して」
「明日、ここに来る。アイルは?」
「彼は用事があるから…僕とエリが」
「そうか、遅くまでありがとうな」
「あ、アイル…1つアルロシア侯爵からの頼みがあったんだ」
何だろ?
「それ、そのローブだ。フードに付いてる耳。その製法登録をして欲しいと。非開示で。で、特例でゼクスとフィフスには開示して欲しいって。なぁ、フィーヤにも特例で頼む!」
ロリィを見れば頷いた。
「可愛いからね…」
って事で、耳の作り方を登録。
「アイルの耳はすごく手触りがいいな…」
私のフードに付いた耳を触るジークリフさん。
さり気なくロリィがその手を叩いた。
「素材は?」
ん?これはね。
「蜘蛛シルクを何重にも重ねて作った耳毛だよ!」
「…はぁ?蜘蛛シルクで犬耳…」
絶句したジークリフさん。
何故かロリィがドヤ顔で
「当たり前、僕のイルだから」
「いや、蜘蛛シルクなんて無理だろ」
「大丈夫だよ!登録したのは羊毛を使った作り方だから」
「だよな?焦った…」
今度こそ宿に向かう。
宿に着いた。ジークリフさんとはここでお別れ。
宿の前には連絡が行ってたのか、エルさんと宿の人と思われる男性が待っていた。
「ようこそお越しくださいました」
頭を下げた男性の横でエルさんが
「遅かったな?大丈夫か」
と気遣ってくれる。
「うん、なんとか」
「すぐお部屋へ、夕食は不要と聞きました。朝食はお部屋にお持ちします」
「そうして…」
エルさんともここで別れた。本当にいい人だった。まあね、あのリアが一緒に旅するくらいだし。
部屋は当然貴賓室。なんと、5部屋も寝室があるんだよ?凄いよね。ロリィに聞いたら従者とか用の部屋なんだって。
私は夜は箱庭で寝るから、ここのベットは使わないんだけど。ロリィとエリは宿で寝るって。
ブラッドとベルも部屋があるから従者用の部屋で寝るそうだ。
多分、ロリィとエリは私とイリィに気を遣ってくれたんだ。
もうイリィは待ってるよね?私もくたくただよ。
ロリィとエリと一緒に箱庭に転移して、そこで待ってた月の女神のごとく美しいイリィを見て泣きそうになる。
弱ってるな…色々と。駆け寄ってきたイリィに抱きしめられて、私も縋るように抱き付く。
イリィ、イリィ…。しばらくそうしていると頭にキスをされた。
顔を上げると唇にキスをされる、優しくて情熱的な。イリィは体を離すと
「辛そうだね…」
うん、色々とね。命が削られていくような感じ。
手を引かれて家に入り、みんなで脱衣室へ。イリィにされるまま服を脱がされて浴室に入る。頭と体を洗われて、私もイリィの白くてきれいな体を洗って流して。
シャワーで流す時にやっぱり頬を染めるんだよね?可愛い私のイリィ。お湯につかってホッと一息。のぼせる前に上がって。
お風呂から上がるといつものフルーツ牛乳。で、ロリィとエリは宿に帰って行った。
私は居間でロリィの膝枕中。そこでイグ・ブランカの話を聞く。
ニミとイアンで鉱物をガンガン掘ってる事とか、楽園にニミが足を踏み入れて精霊や妖精たちが乱舞したとか、私が頼んだ花が順調に育ってるとか、ナルダの町との取引が順調な事とか。
私がいなくて寂しい事も…涙目で語るイリィに私も泣きそうになる。
置いていかれる辛さは私には分からない。でも私が生きる為に必要だと。頭では理解してるけど、無事に帰れる未来は想像できない。それはもう確信だ。イリィはそれを分かっている。
分かっているからこそ、そばにいられない事が悔しいのだろう。
ただ、イリィがそばにいたら私は生きることすら出来ないんだと思う。悲しませてごめんね、でも…ハクやナビィ、ロリィがきっと何かを見つけてくれる。
それを信じて…イリィ、待ってて。
私は涙を隠して、キウリラとフィーヤでの話をする。イリィはナビィはやっぱりアイの子だね?と笑った。
一通り話が終わるとイリィと私の部屋に向かう。浴衣に着替えてお布団に一緒に入った。
私の調子は相変わらずなんだけど、でもどうしてもイリィとの時間を味わいたくて…たくさんたくさんその温もりを感じて寝た。
目が覚めると淡い金髪。イリィ、大好きな人。大好きな…抱きしめてキスをする。目を開けて私を見るイリィの目は赤い。眠れなかったかな。キスをして、キスをされて…また温めあった。
ようやく体を起こす。イリィの体温を感じた体は思ったより楽になっていた。
「ワイバーンのお肉、帰る時に持って帰って。雑炊とかも作ったし、ミーソもつ鍋もね。みんなで食べて?ソマリに渡すレシピも書いたから」
「うん、ありがとう」
「今日は一日中一緒だよ?ご飯作るね」
イリィも付いてきて厨房に立つ私の後ろから私を抱きしめた。その手を軽く撫でてご飯を作る。
ミーソスープとお米、そして焼き魚。和食だよ。
「出来たよ?離れて」
「嫌だよ…」
イリィの膝の上で一緒にご飯を食べた。凄く凄く色々とご馳走様…。
着替えて耳付きのフードを被ったイリィを見てそのあまりの可愛さに家に駆け戻って部屋で押し倒しちゃったよ…だってな、凄く可愛くて。
ローブの下の服を脱がせてね?ローブから除く白い肌がもう。無理だった。理性は大きく羽ばたいて飛んで行ったよ、遥か彼方へ。
「ごめん…」
イリィはクスッと笑うと嬉しいよ、だって。にこやかに笑うとまた服を着て今度こそ、宿に行った。
居間に入るとロリィとエリが朝食を食べていた。
「おはよう」
お互いに挨拶。私とイリィを見て2人は納得したように頷く。
「2人とも目が赤い…」
「大丈夫…もう市場は始まってるかな?」
「朝から開いてる…エルももう出たらしいよ」
「2人は?」
「エルのお店まで一緒に行く。そこからは僕はギルドに昨日の続き。アルミと箱のね…」
そう、イアンの眷属たちに頼んだアルミを移して貰って箱もたくさん作って貰った。
「ロリィ、いつもありがとう」
「くすっ慣れてるからね…」
食べ終わった2人と一緒に宿を出る。
ブラッドはもう外に出たらしい。剣を振らないと体が鈍るんだってさ。ベルは1人で観光だってさ。2度と来ないかもだしね?分かるよ!
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