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異世界転移 残りものでも充分です〜  作者: 綾瀬 律
第5章 イグニシアへ

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269.アイスブルーストーン

 あれ…更に面倒になった?困ってロリィを見るとため息をつかれた。

 どうしてこうなった?


「きれいだよね?」

「新種だよ…名前」

 名前付けるの?だって加工品だし。

「鉱物としてではなくて製品として、だね」

 あぁ、製品名か。うーん。チラッとエリを見る。首を傾げて見るエリ。もうそのまんまで良くない?

「アイスエリー」


 エリが驚いた。その名前の由来が分かったのだろう。

「ん、いいね」

「おう、きれいな響きだな」

「登録を!」

 でもこの後が大変だった。だってね、この製法。私以外誰で実現出来なかったから。永久凍土とか知らなければね?難しいよね。

 ロリィには後で共有しよう。むしろエリの方が想像しやすいかな?


 ジークリフさんはシャツをまくったまま固まった。

「こ、これは…」

 もうジークリフさんのでいいんじゃない?

「ジークが使えばいい…イルが作った物は価値が高い…家宝になる」

 ならないでしょ?


(アイルが作ったアイスエリーの記念すべき最初の作品 高純度の銀とアイスエリーの組み合わせ サファイアもびっくり…)


 …ジークリフさん、使ってね?

 割れた腹筋が揺れてる。シャツを降ろすと

「ありがとな、特産品としてなんとか作れるように努力する」

「侯爵家の依頼だとしても、色々と集めて貰ったし。いる間に作品を作って納入する。後はアイスエリーへの加工かな。ある程度なら作っていくし、作れるようにジークリフさんに教えるから。それと、さっきのミーソとあとは紅茶に入れたヤツ。色々と教えるよ。ミーソは製法レシピ登録するけど、ここは免除するから好きに使って」

「…助かる。ここらは冬になると産業がなくてな。実際に生活は苦しいんだ」

「アルミの話は聞いてる…?」

 ロリィがジークリフさんに聞く。

「ん?いや、何だそれ」


 やっぱりまだ広まって無いのか。登録したのがナルダだからな。ナルダも宣伝するより自分たち用に作るのに忙しいだろう。

 ロリィがポーチから塊を出す。ジークリフさんは渡されたそれを持って驚いている。

「軽い…?」

「新しい金属、軽くて加工がしやすい」

「なん、だと…?」

「扉とか窓枠に使う。機密性が上がって隙間風が防げる…」

「どこで採れる?」

「イグ・ブランカ…白の森周辺の空白地帯に、小さな町が出来た。そこでしか採れない」

「まとまった量が欲しいが無理か…遠い」


 寒さの厳しい地域ほど欲しいよね。うーん…。


(イアン、聞こえる?)

(はーい、ご主人…聞こえるよぅ)

(アルミをね、フィーヤって言う北の町まで運ぶ方法ある?)

(地中で繋がってるから、僕なら何とでも出来る!)

(どうやるの?)

(僕の眷属がその辺りにもいるよ。消滅寸前で生き延びたんだ!だからその近くにアルミを輸送出来る)

(良く分からないけど、そっちのアルミをこちらに移せるんだね?)

(そうだよーまだまだたくさんあるし、ご主人の復元があるからほぼ無限だよ!)

(…復元て何?)

(ご主人様の回復魔法だね…)

(採った鉱物が復元するの?)

(そうだよー)

(…分かった…イアン、また呼んだらアルミをこっちにお願いな)

(はーい)


 さてと…ロリィがこちらをじっと見ている。

「少し休憩…5人にして」

「おう、そうだな。気がつかなくて。夕飯は?」

「良かったらさっきの香辛料を使った食事を作るけど、用意できたら一緒に」

「それは助かるな!調理道具は?」

「後でどこかの厨房を借りたい」

「なら試作室のを使ってくれ。後で案内する」

 こうしてみんなが部屋を出て行った。


「イル、アルミの事をイアンと話したの…?」

 何で分かるの?

「彼らのために、アルミを輸送出来ないかと考えたよね?言ったよ?考えてることがなんとなく分かるって」

 考えたよ。

「で?」

「イアンの眷属がここら辺にもいるから、運べるって。なんか地中は繋がってるからとか?」

「なるほど…輸送の常識が変わるね…イル」

「…」

「まぁ、彼らの為にそこは仕方ないね…。で、アイスエリーは?」

「ビクトルがね?水分が多くて脆いって言うから。凍らせた?」

「溶けない…」

「溶けない氷だよ…」

「ロルフ、イグニシアの北部は氷だ。夏でも溶けない。アイルはそれを再現したんだと思う」

 やっぱりエリは分かるのか。


「ロリィ、溶けないんだ。氷の周りは溶けない温度で固定する。だから永久凍結…出来るよね?」

 ロリィはアイスブルーストーンを手にとって目を瞑る。口元が僅かに動いて、長いまつ毛が揺れる。

 ピシッと僅かに音がして…出来た。やっぱりロリィは凄いや。

 隣でエリも同じように凍らせた。

「ほら、出来たよ?」

「…考えつくのがね?」

 それはビクトルだからさ。

「アルミの件は僕からジークに伝える」


 それを横で見ていたブラッドも一発で出来た。ベルも同様に、だ。

「魔法はそれなりに、使える」

「僕もそれなりに…ね」

 ロリィがほんの少し拗ねてて可愛いかった。


 しばらくして部屋に戻って来たみんなに、ロリィが伝える。

「方法は言えない、色々と。でもアルミはかなりの量をこの町に渡せる」

 ジークリフさんはロリィを見て私を見て、くしゃりと笑った。

「色々な?承った。恩にきる…ロルフ」

「僕じゃない…」

 私でもないよ?


 ジークリフさんはロリィを見て

「お前、変わったな。人になんて一片の興味も無かったのによ」

「何故か、分かるよね?」

 ジークリフさんは私を見て頷いた。

「全くだな…」

 さて、なんの事やら。そっと目を逸らした。


「厨房…」

 うん、そうだったねロリィ。試作室と言う名の部屋に移動する。その名前の通り、新しいレシピなんかを作るための部屋だって。

 早速ミーソを貰う。白味噌も用意して貰ったよ?


 でね、ここで使うのはオークのモツ。ビクトルによると凄く美味しいらしい。

 臭みを取るための下茹では必須だけどね。

 私は赤味噌と白味噌を大胆に混ぜ合わせた。風魔法で満遍なく。

 で、下茹で前のモツを取り出す。

 ロリィとエリ以外の3人は顔を顰めた。分かるよ、気持ち悪いもんね。


「オークの胃…洗浄してある。これをぶつ切りにしてお湯でゆがく。塩を入れて臭みを取る」

 ツヤツヤふっくらしたモツの出来上がり。

 で、ミーソを沸騰したお湯に出汁を入れて少し冷まして土鍋に入れる。キャベチは投入済み。

 箱庭で作った大豆から作ったお豆腐も投入。そしてモツ。

 グツグツと煮込む。煮込みすぎると固くなるから味が染みるくらいで火を止める。


 器によそって配った。

「オークの胃と豆から作ったものとミーソ、それに自家製の調味料で作ったお鍋」

 簡単に解説して実食。私は猫舌なので、冷めるのを待つ。3人はグロい見た目に躊躇してるのか、固まってる。ロリィとエリにブラッドとベルは全く躊躇なく口に運んだ。初めてなのにな?


 ロリィとエリの頬が僅かに色付く。美味しかったみたい。良かった。ブラッドとベルも顔が綻んだ。

 4人はパクパクと食べると器に残ったスープもスプーンで飲み干した。私はやっとふうふうしながらモツを口に運ぶ。

 うん、プリッとしてて美味しいね。キャベチは甘いしお豆腐はなめらか。合わせミーソもいい味だ。


 ロリィとエリ、ブラッドとベルが揃って器を差し出すので、おかわりをよそう。やっと3人も意を決して口にいれる。

 パクリ…ガツガツ。


 えっと…熱くないの?凄い勢いで食べてる。あ、だから…むせるよそりゃ。落ち着いて食べて?

 スープまで飲み干すと

「「「美味い!」」」

 ふふっ味噌もつ鍋さ…。白味噌だけでも美味しいよ?

 ただね、出汁がないとこの味にはならないけど。


 みんなが何度もお代わりをして具がなくなった。そこにうどんを投入。シメだよ?普通の卵でとじて出来上がり。そちらもロリィとエリ、ブラッドとベルはどんどん食べる。3人は迷いながらもパクリ。

「「「美味しい!」」」

 良かった。私はまだ気分がね?でたくさんは食べられなかった。


 食べ終わるとみんながため息をついた。

「こりゃ凄いな」

「この鍋?は冷えないんだな」

「ミーソがここまで美味しくなるとは」

「鍋は製法登録済み…で、白い麺もね。ミーソのスープはね、秘密な調味料が入ってる…」

 ロリィが説明する。

「鍋とその白い麺の製法は買いだな…で、ふわふわした白いのは?」

 お豆腐だね、あれは新作。

 ロリィは私を見て

「登録してない…欲しい?」

 でもお豆さんが無いと出来ないよ?あ、ミーソがあるから大丈夫なのか?


「いいよ、登録」

「後な、あのプリッとしたヤツ。あれは胃、なんだな?」

「うん、洗浄して使う。製法登録する?ここのギルドだけ特例に、するよ…」

 ロリィの提案に食いついた。

「頼む!」

「なぁ、アイル…あのミーソに入れた調味料は?」

 あれは登録してないよ。ソマリしか知らないし。でも味噌鍋には欠かせないよね。うん、よし…ここ以外には非開示にして製法登録しよう。あ、もちろんダナン様とシスティア様には教えるよ?


「非開示で登録を…ここは特例で開示する」

「助かる!あれがあったら寒い冬も乗り越えられる…それから、紅茶に入れたのは?」

「これ…」

 私がポーチから出した瓶を見つめる。ジークリフさんたちみんなが鑑定待ちかな?

「リル草…この辺には無いな」

「ゼクス周辺にしか生えていない」

「そうか…」

 明らかに落胆している。温室なら育つのでは?


(ロリィ、温室なら育つよ?)

(温室?)

(あったかい箱?囲うだけじゃなくて、火魔法で温めれば)

(イル、それも新しい発想…植物の冬用の家、だね?)

(そうだよ…)


「ジーク、方法がある」

 イリィが声をかける。私はポーチから取り出したアルミから温室の骨組みである枠を作って、そこに綿と不織布を重ね貼りした物で覆う。簡易温室だ。

 3人は私の手元を凝視した。

「この中に植えれば、冬でも育つ。中の温度は25度に保って…」

「どうやって?」

「火魔法で熱だけ…常駐で」

「いや、意味が分からん」

「燃やさないで、熱だけ…。こう」

 火魔法で熱だけを閉じ込めたアルミの箱を作る。ほんのりと暖かい。

 ジークリフさんに渡そうと手を出したらロリィが奪った。観察してからジークリフさんに渡す。

「これは!」





※読んでくださる皆さんにお願いです※


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