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異世界転移 残りものでも充分です〜  作者: 綾瀬 律
第5章 イグニシアへ

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267.兵士がやって来た

 しばらく待っていると門から兵士が数人走って来た。どうしたんだろう?ボケッと見てるとなんか私たちに向かってる?

 ロリィはさり気なく私を後ろに庇う。エリもだ。両隣はハクとナビィが固める。

 ブラッドは背後で成り行きを見守る。剣に手を掛けて。ベルは魔力をねる。

 町で何かあったの?


 彼らは私たちの2メルほど手前で止まる。3人で、1人は肩に色々と紋章?が付いてる。お偉いさんかな。

 そしてビシッと敬礼すると

「エバルデル伯爵とお見受け致します」

 多分偉い人がそう話し掛ける。大きな声では無い、落ち着いた声。

 でもね、注目を浴びてるんだよ。凄く。


 私は白い犬耳付きのフードを被ったローブ、エリは灰色の足元まで覆うやっぱりフード付きのローブ、ロリィは紺色のフード付きローブ姿だ。

 顔は良く見えない筈なのに、ロリィとエリは圧倒的に高貴なんだよね。

 姿かな?


「君は?」


 ロリィは応えず聞き返す。

「フィーヤ領軍の隊長を勤めております、マックラーと申します。ダナフォスター侯爵様の使いとして参りました」

「あぁ、ジークリフの家だったね。そう、カルヴァン侯爵家のロルフリート。今はエバルデル伯爵…」


 ロリィってやっぱり凄いの?マジマジと見ていると私を見たロリィは私のフードの中の頬に手を当てて

「僕は僕だよ…」

 と小さな声で囁いた。

 私はその手に手を重ねて緩く微笑んだ。そうだね…ロリィはロリィだ。

 私が笑ったのが分かったのか、手が離れていく。優しく頬を撫でながら。


「お待ちしておりました。私に着いて来て下さい。周りもその方が良いでしょう」

 私はロリィを見る。

「彼に宿を紹介してもらうから…」

 マックラーさんはエルを見て

「エルか…?」

「お久しぶりでやす…」

 知り合いみたいだ。


 ふむと頷くと

「エルたちも来い」

 一緒でいいんだ?エルは凄く恐縮してたけど、確かに周りの目線がね。だから大人しく彼らに付いて行く。

 閉まっていた近くの門を開けて馬車が通された。

 そこは豪華な門の中で、屋根の付いた空間だ。ソファまである。

「こちらで少しだけお待ち下さい。あぁ、身分証の提示だけお願いします」

 

 そう言えば、今まではロリィと馬車で一緒だったり、キウリラではフリーパスだったからロリィが身分証を提示するのを見るのは初めてだ。

 胸元から取り出した(アイリーンとリツの下辺り)身分証はなんかキラキラしてる。横から覗き込むと見せてくれた。


 それは探索者ギルドのカードで金色だ。左下にはSの文字。特級だからスペシャルだよね?凄いなぁ。

 ロリィはそれをマックラーさんに渡した。私もカードを取り出して渡す。エリもだ。

 それらを機械に読み込ませてから返して貰った。

 そして何故か私を見て

「探索者ギルドと商業ギルドから呼び出しがある。顔を出して欲しい」


 えっなんで?明日はイリィとお出かけだから嫌だよ。

 察したロリィが

「2日後の早朝に出発…明日は予定がある。今から行く」


 行っていい?ではなくて決定事項だね。やっぱりロリィだ。

「はい、もちろんです。宿は…エル?」

「あぁ、剣と翼亭の予定だが」

「連絡しておくエルはもういいぞ?宿にはこちらからも使いをやるからな」

 エルは私たちも頭を下げると町に入って行った。


 なんだか紅茶が出されてソファを勧められる。何の時間?

(イル、多分…ジークリフ待ち)

(誰?)

(侯爵家の次男…僕の学院の同期)

(仲良し?)

(…それなり、かな)


 察するにロリィのそれなり、はかなりだな。だって見るからに交友範囲が狭そう。悪気はなくても研究者肌なロリィは時々、会話も飛んだりする。

 まともに付き合えるなら、かなり理解のある人だろう。


(ファーヤ特産のジンジャー紅茶 身体が温まるが少し渋みがある 毒なし)


 ビクトル…毒なしとか要らないからね?ロリィも鑑定出来るし。


(リル草の花の蜜を入れたら美味しい…)


 ビクトル!それだよ、それ。

 口に運ぼうとしたロリィとエリを止める。私はポーチから花の蜜を出す。手で少し温めて(火魔法でそっと蜜を温め)一雫紅茶に垂らす。

 ロリィは私と手元の蜜を見つめると、上品な仕草で紅茶を飲んだ。本当に躊躇しないね?


 そしてほんの少し口角を上げた。あ、喜んでる。エリを見る。彫刻のような整った顔が、紅茶を飲んでごく僅かに頬が緩む。美味しいんだね。

 私も一口飲む。うん、渋みが緩和されてまろかやになり生姜の辛味があとからほんのりと感じられて美味しい。胸の中からポカポカする。

 箱庭でリル草も育ててるからね、また花の蜜を作っておこう。


 馬車が止まる音がして扉がバーンと開く。

 バーン?

 シュタッと音がすると

「ロルフ!」

 大きな声が響いた。


 色々と豪快だね?

 馬車から降りた(飛び降りた?)その人はロリィを見つけると走って来てその背中をバンバン叩いた。

 周りが青い顔をして

「ジグ様…何してるんですか!」

 周りの兵士が止めようとするが、間に合っていない。

 背中をかなりの勢いで叩かれたロリィは…全く姿勢を崩さずに

「相変わらず…騒がしい」

 やっぱりロリィだった。


 その人は豪快に笑うと

「ぐはははっ、ロルフも変わらんな?しかし、お前がこんな北の果てまで来るとはな?引きこもりの…ふははっ」

 なにがおかしいのか嬉しそうに笑っている。


 ロリィは顔色一つ変えずに

「何か用?」

 ブレない。

「あぁ、もちろん用がある。話は馬車の中で、時は金なり…だからな」

 私は驚いた。それはあちらの世界のことわざ。


 驚くと同時に懐かしさが押し寄せてくる。忘れられない故郷。もう帰れない故郷。胸が苦しくなる…。

 フードを被っているのに私の変化に気が付いたロリィがすぐに私の背中に手を当てる。

 ハクは膝に頭を乗せ、ナビィは背中にお尻を付ける。


 目を閉じて耐える。帰りたい気持ちを溢れ出させないように…。ロリィの手が頬を撫でた。ふわりと抱きしめられる。

 周りが息を詰めたように固まっているのが分かる。でもどうする事も出来ない。しばらくそのままロリィの腕に抱かれて、ようやく落ち着いた。

 不意打ちはキツイ。

 顔を上げてフードの中からロリィを見る。


(イル…僕はここにいる)

(ありがとう、ロリィ。大丈夫だよ…)


「あ、その…大丈夫か。気分悪そうだな」

「ん、移動が堪えててね、大丈夫」

「そうか、なら馬車へ」

 ソファから立ちあがろうとすると

「あの…」

 マックラーさんが声を掛ける。

「その、紅茶に入れた…」

 それを聞くとジークリフさんはロリィの飲みかけの紅茶をグビッと飲み干す。そして驚いた顔をする。

 それを見たマックラーさんは私の飲み掛けの紅茶を手に取ろうとしてロリィに阻止されてた。

 ブレないな?

 で、エリがカップを差し出すとそれを飲む。目を開いて驚いている。


「馬車に行くぞ!」

 ジークリフさんの乗ってきた馬車に乗り込む。

「おい、ロルフ。何を紅茶に入れた?」

 射るような鋭い目つきだ。ロリィは瞬きして

「後で、ね…」

 と応えている。

 しばらくお互いに見つめ合ってからジークリフさんが目を逸らした。ロリィは強いな。


(イルに関わる事で僕が引く事は無い)

(…ありがとう、ロリィ。さっきも…)

(当然だよ…守りたい者を守るのは)

(ロリィは…素敵だね)


 そっと見上げたロリィは白い頬を僅かに染めて前を向いていた。その肩に頭を寄せる。さらに頬が染まったのを私は見ていた。


(イル、煽らないで…)

(ん?)

(無自覚…?)

(えっ…?)


 ロリィが窓の外を向いた。耳はほんのりと赤くなっていた。




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