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異世界転移 残りものでも充分です〜  作者: 綾瀬 律
第5章 イグニシアへ

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265.順調だよね?

 目が覚めると淡い金髪。大好きな人の色。優しくて温かい色。キスをしてまたその胸に頬を寄せる。

 耳元でイリィがおはようと囁く。私もおはようと返す。

「ねぇ、僕が凄く凄く我慢してるのに…アイはどうして煽るの?朝からそんなに体を密着させて」


 えっと…イリィの目が妖しく細まる。そっと離れて起きようかなと思ったけど

「昨日は妖精の安らぎで体調も整ってるよね?寝れてたし?大丈夫だよね…」

 その唇が降って来て…そうだった、健全な男子の体は朝に強いんだった。


「ふふっ目の前に好きにできる相手がいるのにね、我慢するのは辛いんだよ?しかもこんなに体をぴったりとくっつけてさ…無防備にすやすや寝られた僕の気持ち、分かる?」

「だって…凄く温かくて安心出来たから」

「…アイ、また煽るの?」

 第二ラウンドに突入…した。


 起きて体を洗浄すると外に出た。箱庭は寒くならずに過ごしやすい。お米も沢山植えたし、なんと魔鳥もいる。たまたま同族に追い立てられていた魔鳥を見つけて、その子を保護。

 他の子も同様に捕獲してお持ち帰りした。


 保護した子は自ら箱庭に移住?した。契約はしてないんだけどね、助けたからか契約扱いで入れたみたい。

 そこで毎日卵を産んでくれる。しかも契約扱いになったからか、力が増して体の大きさを変えられるようになった。


 因みに捕獲した子にイリィとロリィ、エリにお父様が名前をつけた。

 ワール、ツール、スール、フォールだ。この国の古語で1.2.3.4らしい。

 そうしたらやっぱり知能が上がって体の大きさを変えられるようになった。


 そして交互に卵を産む。箱庭の子は毎日産んでるけど?


(同族が周りにいると交代で産む 箱庭の子は1匹だから毎日産む)


 そうなんだ?それならと1匹はダナン様へ、残りの子は1匹をソマリに、もう1匹はお父様に預けた。

 産んだ卵は何個かずつ残して子が産まれたら育てて、増やそう。卵は貴重な栄養。冬になれば余計に。

 ナルダの町で高く売れるからね。


 で箱庭に魔鳥がいる。何故か魔牛も。その子は弱って動けなくなったからか、群れから置いてかれてた(ビクトルの解説による)ので保護した。

 だってさ、良質な乳が出るってあったから。それはね、期待するでしょ?牛乳。


 そしたらね、なんと妊婦さんで…やっぱり自ら箱庭に移住。程なく2匹の子牛を産んだ。子牛が飲んだ後にお乳を分けて貰う。どうや、牛は母乳を飲むらしい。

 甘くて濃くて本当に美味しいんだよ。ビクトルの解説は…秘密。知らない方がいい事もある。

 子牛はまだ小さいから箱庭で母牛と一緒に過ごしてる。


 名残惜しいけどイリィとはここでお別れ。

 朝ごはんは魔鳥の卵を使ったふわふわなオムレツに魔牛乳のスープ、箱庭で育てている野菜を使った採れたて野菜のサラダ。

 一緒に食べられないけど、イリィ用に包んで渡す。イリィは私をしっかりと抱きしめて濃厚なキスをするとイグ・ブランカに帰って行った。


 朝食を終えるとテントに戻る。うわぁ、少し寒い。外はすごく寒いだろうから、すぐにもこもこなローブを着てフードを被る。

 外に出ると息が白い。ハクもナビィもベビーズたちですら寒さを感じないのかはしゃいで走り回っている。

 まぁ見るからに毛皮はもこもこだもんな…。


 テントを畳んで出発だ。ブランの背中に乗ってフィーヤを目指す。

 フィーヤは所要な町の一つで国から見ると北の大きな町だ。と言っても国境はさらに北。フィーヤからブランが1日飛んで国を出る。


 バナパルト王国のすぐ北は自由地帯と呼ばれる緩衝地帯で、そこからさらに北に進むと旧イグニシアの首都、イグナシオに到着だ。

 馬車だと白の森からフィーヤまで1ヶ月、自由地帯を抜けるのに1ヶ月、そして旧イグニシアに入ってからイグナシオに着くまでが1ヶ月だ。


 ブランの高速飛行なら馬車で1ヶ月の距離を約5日。4日目の今日、ファーヤに着いたらそこで2泊する。イリィとお出かけもだし、この先はもうあっても小さな村だから。最後の買い出し。

 春まで帰れないなら3ヶ月分の諸々が必要だ。私は自分である程度は作れるけど、材料はいるしね。

 何よりイリィと過ごせる時間を大切にしたいから。


 で、順調だよ?全て…私の体調不良も含めてね。

 この国を出たら、箱庭経由でももう移動は控えてとニミから言われている。だから箱庭から温泉に行けるのも後2日だけ。

 そんな事を考えながら、地上に降り立ったブランの背からハクの背に乗って降りる。


 私は町が見える所までハクの背中だ。そのもふもふな背中に体をしがみつかせている私。情けない。ロリィは私の背中にそっと手を置いて優しく撫でてくれる。首元にはベビーズと小さくなったブラン。

 もふもふとふかふか。幸せなんだけど、気持ち悪くて無理。


 町が近づいて来たのでハクから降りてロリィに手を引かれながら歩く。風魔法で体を浮かせてるから実際には歩いてないんだけどね。ちらほらと町に向かう街道を歩く人や馬車が見えた。


 同じ方向に向かって歩いているとあれ?遠近法…?さっきから見えている馬車が近づいて来た。

 どうしたんだろう?みんな街を早足で目指してるからか、その馬車には気が付かない。

 私はそこでどうやら馬が足を痛めたらしい事に気がつく。


 足を痛めた馬は起き上がれなくなると体を圧迫されて死んでしまう。気になって見ているとおじさんが泣きながら馬の首を優しく撫でている。

 歩けないなら置いていくしか無い。街道とはいえ、夜は獣が活発になるから危険だ。

 馬はもうここでお別れだと分かっているのか、まん丸な目で飼い主を見る。穏やかで死を悟った目。


(魔獣から逃げた時に痛めた 無理をしてここまで進み、歩けなくなった)


 頑張って大切な人をここまで運んだんだね?その荷馬車は見るからに沢山の荷物を積んでいる。

 私はその馬に近寄る。イリィ曰く、私は癒しの魔力を常時発動(垂れ流してはいない)しているらしい。だから、私が近くに行けば少しは楽になるはず。


 せめてあの町まで、どうかこの優しい子を運んで。そう願いながらゆっくりと近づく。

 するとふわりと水色の光がその馬を覆う。えっ?私は何もしてないよ…?

 馬は一瞬あれ?って顔をして足元に目をやる。そしてそっと怪我した前脚を地面に着ける。何度か繰り返すと力強く足踏みをした。

 ん?良く分からないけど、大丈夫みたいだね。


 おじさんもえっという顔をして馬を見て足を見て馬を見て泣き出した。良かった…お前、良かったと言って。

 馬は私を見ている。まん丸な大きな目で。横でハクとナビィがドヤ顔をしている。

 そしてわんとかうわん、とか言った。

 馬はひひーーーんと鳴いた。

 わんわん、わうわう、ひひーーーん。


 何度かそのやり取りがあって

『助けてくれてありがとうだって』

『死ぬ覚悟で、最後のお努めだとここまで頑張ったって…ありがとう、まだヤレる』

 ハクとナビィが話しかけてくるけど、私は何もしてないよ?

『願ったでしょ?あの子を助けてって』

『願いが精霊に聞き届けられたんだよ』


 マジですか…?いや、確かに願った。こんなに頑張った子を、見捨てるなんて出来ない。でもそれで?

『それで充分』

『頑張り屋なこの子を精霊たちも救いたかった』

 良く分からないけど良かったんだよね?


 私はさも今通りかかった体でおじさんに話しかける。

「大丈夫?お馬さんケガしたの?」

 と。

 おじさんは顔を上げて涙を拭うと

「あぁ、ケガをしてたのに無理させて…俺のせいで」

「でも、もう大丈夫だね?良かった」

「なぁ、坊主がその…何か?」

「ただの通りすがりだよ?おじさん、門閉まっちゃうよ。行こう」


 おじさんは怪訝な顔をしつつもそうだなと言って御者台に乗った。周りにいた護衛の人たちもホッとした顔で歩き始める。

 私は馬に近寄ってその首を撫でた。馬は頭を私に向かって下げて擦り付けてくる。よろけそうになって後からロリィが支えてくれた。

 良かったな、と呟いてその額におでこを付ける。君に精霊の祝福がありますように…。




 またイルがやらかした。でもこれは仕方ない。だってイルだから。ケガをおして主人の為に頑張って動けなくなった馬。助けたかったイルの願いを精霊が聞き届けた。

 今、イルは馬とおでこを合わせている。きっと何かを願ったんだろう…その馬は水色にふわんと光っていたから。本当にイルは、人だけじゃなくて動物にまで好かれるんだね。



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