261.ゼクス復興の影で
更新が不定期というか不定時間ですみません…
ボチボチ見直しに入りますのでまた不定期になるかもです
ゼクスに戻ってからは魔術師団の助けもあり、被害状況の確認が速やかに進んだ。
住む場所を失った人には当面、町の外で住んで貰う。仕事ならたくさんあるからな。
ウールリアの売店は大人気でレオとルドだけでは回らず、感謝祭で屋台を手伝った黒髪の探索者2名を加えてさらに営業時間を伸ばした。
黒髪の探索者は旅人を助けて大怪我を負い、また探索者としての実績も無かったから薬草採取などをしていた。
しかし計算もできるし頭の回転も早い事から屋台の手伝いに参加した。
すると門の近くにも出店して欲しいとの要望が多数領主に寄せられ、黒髪の探索者が孤児院で働く知り合いに声をかけた。孤児院の年長組の子はもう働ける。レオとルドだってまだ7才と5才。それならばとその知り合いも呼んで話をしてみれば、あの窓口で騒いでいた女性だった。
計算は得意だと聞いたので、試しに任せてみれば確かに得意だ。
なので、門近くの店を黒髪の探索者と孤児院に任せる事とした。
取り分などの調整も済み、出店したその店は門の外からも買えるとあって大人気だった。
孤児院の子も奮闘して新たな産業となった。
こうしてゼクスは少しずつ平穏を取り戻して行ったのだった。
ラルフリートはハウラルが派遣任務を終えて王都に帰るのに合わせ、フィフスに帰ることにした。この災害の処理が落ち着いたら年が明ける前に、ダナン様とお父様が王都に行く。
その引き継ぎなどもあってだ。ハウラとの時間はとで貴重な時間で、色々と整理したい事もある。
でも今は急いでいない。兄様の気持ちも分かったから。それまでに気持ちを整理しよう。
こうしてラルフリートも、魔術師団もゼクスからそれぞれの本拠地へと帰還した。
ダナンの屋敷にて。
居間のソファで、イザークはダナとフェルと寛いでいた。
「フェル、イズ2人ともお疲れだったな」
「お父様、幸いにも最小限の被害で済みました。それに復興も順調です」
「そうだね、フェル」
「全てがたった1人の発案によるなんて誰も思わない」
「イズ、本当だよ。彼は…今どうしているんだろうね」
「北の町でも色々としていたようです。きっと元気でしょう」
「そうだな」
「彼が戻ったらまた会いたいな」
「そうですね…あの森にも行かなければ」
「ふむ、なかなか不思議な予言?なのかな。必ずや、だね。イズ」
「はい、託された物もありますし」
そんな話をして久しぶりの穏やかな夜は更けていった。
*******
「うわぁ…凄い!」
『わーい』
『きゃー楽しいよ!アイリー』
『ご主人〜見てる〜』
『アルパパ〜』
「ゲプッ…無理…」
「イル、大丈夫?」
「アイル、もたれていいよ」
カオスだった。はしゃぐハクにナビィとベビーズ、淡々としているロリィとエリ。そして完全にダウンしている私。ブラッドとベルは平然としている。
快適な旅だと思ったのに、下を見る余裕も無い。
ゲロっていいかな?うぷっ…気持ち悪い。
まさかブランに乗って酔うとはね。
あまり揺れないブランの背中。風だってそんなに来ないし快適なはずなんだけど…ダメだ。
胃がひっくり返りそう。エリにもたれ、ロリィに背を撫でて貰いハクとナビィが両側からよりそう。なのに、だ。
はぁ、乗り物酔いなんて小学生以来かな?キツッ。
私たちはイグ・ブランカを出て順調に旅をしている。馬車で1ヶ月の距離をブランは5日で飛べる。それがどういう事か…初日に思い知った。
いくら風魔法で正面から風を浴びないといっても、そもそもの速度がとんでもない。
優雅に羽ばたいているだけなのに…めちゃくちゃ早い。体感としては新幹線の上に防御無しで座ってる感じ。もちろんブランも風魔法を展開してるから、風はそこまで感じない。ただね、揺れる。
ほんの少しの揺れがぐわんってね。水平に飛んでくれてるけどそれでも当たり前だけど揺れる。
柔らかな揺れだから余計にぐわんったわんっとして胃が…。
で、朝早く出て高度を上げてスピードも上がってからもうずっと無理。1人で半泣きになりながらお昼の休憩に。でももちろん食べられない。スープだけかろうじて食べたんだけど。それでも辛い。
日程に余裕があるとはいえ、なるべくブランが飛べる内に距離を稼ぎたい。だからとにかく私の事はいいからと最速で飛んで貰っている。
その日の夜はもうただ横になるだけだった。お風呂に入る元気もなく体を洗浄して終わり。
でも余りにも私が辛そうだからか、ロリィが早速イリィを箱庭経由で連れて来てくれた。私はイリィによしよしされてその胸に抱きついて泣きながら寝た。そばにイリィがいてくれたら…って考えながら。
朝になっても体調は良くならず、でもイリィに甘えまくって名残惜しいけどイリィと別れて出発。で、さっきの会話。
私は見る余裕が無いんだけど、バナパルト王国のかなり北を飛んでいる。だから空気も相当冷たいみたいだ。私たちはすでも分厚いローブを羽織っているから寒さは無い。
景色が変わって来て森が緑から白になってるようだ。広葉樹から針葉樹になり、その幹の色が白くなるらしい。
その景色を見てみんながはしゃいでいるのだろう。いや、みんなっていっても主に聖獣ズだけど。
ブランによると行程のほとんどはブランが飛べそうだって。まだ初冬になってないからかな。
余裕があるのはいい事だ。なんてね、こういうのはフラグだったりするから考えないよ。
それにそもそも吐きそうだから、余裕がない。空から降ってくるチョメチョメ…ホラーだ。鳥のフンの方が何百倍もマシだろう。
絶対にリバース禁止だよね…そもそも下っていうか横に流れるから漏れなく誰かに当たる。ダメだホラーだ。耐えなきゃ。
ぐぷっ…危険。あ、空気に包む?吐いた方が楽になりそう。外から吐いたものが見えるのは嫌だから黒い空気の膜に包んで、オエッーーー。
はぁ、すっきりした。これどうしよう。ここから落としたらもう蒸発するかな?ほーい、と投げてみた。
良い子はマネしちゃいけません…ごめんなさい。
少しだけすっきりしたけど気分はまだ悪いまま。ダメなんだよね…こういう微妙な揺れ。
なまじブランが水平に飛んでくれるから余計にね。その内に慣れる事を期待して、ハクとベビーズのもふもふに倒れ込んだ。
ブランの背中は艶々の毛でとても触り心地がいい。ハクとベビーズはお馴染みのもふもふだし、ナビィはふわもふだ。これを楽園と言わずして何が楽園だ。
楽しむ余裕が無いのが辛い。はぁ、キツイ。
ロリィはやはりスキルのお陰なのか、まったく動じる事なく背筋を伸ばして姿勢良く座っている。
エリもなんてなんでも無さそうに大人しく座っている。
ブラッドなんかもう無双?胡座を組んで目を瞑ってる。五右衛門か、五右衛門なのか…?ベルは、いつも通り緩く微笑んでる。
何が違うんだろう?ハクの首毛をもふもふしながら考えつつ、少し眠ったようだ。
2日目にはイグ・ブランカと国の北端のちょうど真ん中まで来た。馬車だと10日はかかる距離がたったの2日。そう考えると私の体調不良程度で済んでるのだから有り難い。
ブランは地上に降りるとしきりに私に謝る。謝る必要なんてないのに。本当に控えめで可愛い子だ。
私は小さなブランを両手に包んで頬ずりする。
「大丈夫だよ、ブランは私の為に頑張って飛んでくれてるんだから。謝らないで?大好きだよ…」
小さな体で精一杯甘えてくる。ハクにもたれてベビーズを膝にのせてブランを両手に包んでまったりと休憩をする。
ナビィは何処かしらに出掛けては何やら獲物を咥えて戻ってくる。
ナビィちゃん?それは鳥さんかな。鳥さんは飛んでるのにどうやって取ったの?えっ…空を駆けた。そうだったね。ナビィは飛べるんだった。
でも大きいね?鳥さん…ただの鳥さんでいいのかな。
「それはドラゴンの亜種…ワイバーンかな」
ロリィが呟く。えっそうなの?ナビィがうんうんしてる。可愛い。
「ワイバーン…軍隊が動くレベルの災害級魔獣…」
でもね?こんなに可愛いナビィが取ってくるくらいだし?
(軍隊の大隊が対応するレベルの魔獣
その個体はさらに二回りは大きくて危険だった…もう大丈夫)
ビクトル?そんなに?
(災害級ではなく厄災級…)
厄災級ってどんな?
(例え 災害級:ミスリル 厄災級:ヒヒイロカネ)
…厄災だな、それは。いや、ヒヒイロカネって知らないけどオリハルコンよかヤバそうな気がする。
「イル?」
「特殊な個体でヤバかったみたいだよ?」
「ナビィだから…」
そうだな。結果良かったんだよね?狩って。
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