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異世界転移 残りものでも充分です〜  作者: 綾瀬 律
第5章 イグニシアへ

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260.森人の集落

 そしてあの屋敷に着いた。テトを先頭に中に入る。

 見られている?あの美しい瞳を思い出す。どこまでも澄んだ銀色の目を。

 そしてあの部屋の前に着いた。

「イザークとお仲間たちです」

「入って貰え」

 扉が開くと、祭壇の前にやはり目を瞑って座る美しい女性。頬が熱くなった。

「よう参ったのぉ…ふふっそう警戒せずとも。のう?イザークの婿殿」

「あなたは、誰?」

「我は森人の巫女じゃな。知っての通り、森人は人よりちと長生き。巫女はその中でも特別長生きじゃな…」


 俺も、そしてみんなも驚いた。本当に巫女はいたのか?

「ふふっいたのじゃなぁ、それが。現にここにおる。さて、集落の様子を見たかの…人手が欲しい」

 そう言ってその目を開けた。息を呑む音がする。明るい場所で見た彼女はまた圧倒的な美しさだった。

「我らを…助けて欲しい」


「具体的にどうしろと?」

 ダウルグスト殿が聞く。

「ほう、この国の中枢におる魔術師かの。家屋に修復、それのみじゃな」

「それはそうだが…それだけで良いと?」

「そうなるのぉ。我らは外のものを中に入れたがらぬからの」

「それぐらいなら訳もない」

「頼もしいな。森人は美形ぞろいじゃからな?目の保養になる…」 


 お願いの内容は難しくはないが、明らかにライムールドやハウラルはソワソワしている。俺はフェルを見た。

 俺を見ている。

「イズ?」

「もちろん一緒に手伝おう」

 嬉しそうに頷く。

 しばらくして

「ふっ…良き出会いに感謝じゃな。彼にお礼を言わねばの」

 彼は…そういう事か…。


 テトの案内で部屋を出て行った。

 集落はなかなか酷い有様だった。俺はあまり役に立てそうに無い。

 主にダウルグスト殿とハウラル殿が魔法で家屋の修復をしていた。凄いな。俺たちには無理だ。

 廃材などを集めて燃やすのがせいぜいだ。もともと大きな集落では無かったからか、昼前には家屋の修復は終わった。

 テトが

「オババさまがいらっしゃる。ここで待て」

 と言うので集落の中程で立っていた。

 するとメルラに連れられてオババ様がやって来た。目は瞑ったままだ。


「ほぉ、これは…感謝する」

 と肘を両手で待って頭を軽く下げた。

 テトもメルラも驚いて

「オババ様が最大限の敬意を示された…」

 と呟いた。

 頭を上げると

「ご案内しようぞ。主たちの…慕う者の為になるであろうよ」

 歩き出したオババに着いていく。

 集落の奥に向かい、途中何かを通り抜けた。これは…結界か?

 そしてその奥には驚く光景があった。生命樹だ。とても大きい。そしてその葉は大きく青々と繁っている。なんて立派な…。


「連れて参りましたぞ」

『アルテノ、ご苦労様だった。良く来たね…かの者たちよ。私の愛し子をどうか守って欲しい』  


 生命樹から人型のそれは美しい半透明の精霊がふわりと顕現する。

 愛し子とは?

 ラルフが

「あっ…ユーグ様?えっ…」

『あぁ、あちらで会った子だね。分かるね?そっちの子も話は聞いてるだろう?アーシャから』

 あちらで会った子でラルフ様を、そっちの子では俺を見た。アーシャ様がってアイルに祝福を与えた?


『そう、アーシャだよ…愛し子と共にいる。あの子が戻ったら必ずここに…連れて来て。必ず、だよ』

 俺は訳が分からなかったが、昨日の話で困難に合うと言っていた。それと関係が?

 するとラルフ様が

「はい、今度こそは必ずお守りします。心無い言葉で傷付けてしまいました。ですから必ず…」


『あの子の心はまだ脆い。どんなに周りに人がいても、どんなに愛する者に囲まれても…あの子の心はあまりにも脆く儚い。それでも誰かの事を考えて行動してしまう。そんな子だから…あの子は望まれた。だからどうか…私は見守る事しか出来ない。どうか…どうか…』


 胸に手を当てて切な気にアイルを思っているユーグ様。心だけは簡単に鍛えられない。孤独と戦うのはいつだって自分だけだ。

 彼がどんな孤独と戦っているのかは分からない。でも家族と離れて飛ばされた、あの言葉は…彼の孤独をひしひしと伝えて来た。

 ならば、俺たちは、あれだけの恩を受けた俺たちは出来ることをしよう。


「必ず…彼を連れて来ましょう」

「私も…誓います」

 儚気に微笑むと

『頼んだよ…』

 そう言葉を残して消えて行った。


「長い眠りから目覚めたばかりさ。余程その愛し子が大切なんだね」

「あの、ユーグ様は…その、他にも?」

「ん?あぁあちらと言ってたね、分身さ。何ヶ所かにね…本体は神聖国にある。アーシャ様もその愛し子様に寄り添ってるなんてね…」

 俺はアーシャ様が高位の精霊という事しか知らない。

「アーシャ様を知ってるのか?」

「もちろんさ、神聖の森の管理者さね」

 みんなが驚いている。それもそうか…神聖国にある生命樹、その周りに広がる神聖の森。認められた者しか立ち入れないというその森の管理者。

 高位精霊どころか神にも近しい。フェルも俺もびっくりだ。


「眠っている間にたくさんの生命樹が枯れたと憂いておった。命の源であるからの…」

 ダウルグスト殿もハウラル殿も固まっている。ライムールドなんて真っ青だ。普通に聞いていい話ではない。

「さて、戻るかの。ささやかなお礼でもしよう。しての、我もキビサンドが食してみたいの。ふっふっ」

 何故知ってる?というか、お礼をされてキビサンド出すならお礼になってないような?

「お礼は食べ物ではないからの」

 みんなでまた屋敷の方に戻って行く。


 例の部屋にまた集まると、香りの高いお茶が振る舞われた。そしてパンとたくさんの果物のジャムも。

 だからこちらもキビサンドにサバサンド、お湯で溶かすキビスープを出した。

 オババ様改めアルテノは嬉しそうに食べていた。俺たちもパンとジャムを食べて満足だ。

「町に帰るならそろそろ出た方が良いの…メルラとテトを森の出口まで案内させよう」

「帰り方なら分かるが?」

「近道、じゃな」

「馬車がある」

「大丈夫じゃ。さて、では土産を渡そう。テト、持って参れ」

「はっ!」

 テトはトレイに何かを載せてきた。


 アルテノはそれを取るとさわりと撫でた。すると緑にふわりと光る。

「各自に一つ、そして残りの一つは愛し子に…必ず首にかけておくれ」

 それはペンダントだった。先端には透明な葉っぱ。葉脈が透けている。でも触っても硬い?

「特殊な加工をしておる。生命樹の葉っぱじゃな。お主たちを守ってくれる」

 それは大変貴重なのでは?

「貴重どころか、値段がつかぬな。そなたたちの物となった故、奪われる事はない。少しおしゃれなアクセサリーだと思っておれば良いさ」

 

 そうなのか?ダウルグスト殿が震えている。ハウラル殿も、だ。そう震えるほど濃い魔力を感じるのだ。

 これをおしゃれなアクセサリーだと?

 アルテノを見るとニヤリと笑った。してやられた気もするが大変貴重な物だろう。有り難く貰って首にかけた。

 ダウルグスト殿の手が震えているので、手伝ってやる。ハウラル殿はラルフ様が、ライムールドにはフェルが手を貸した。

 まぁ震えるよな?普通は。


「ではの…息災にな」

 アルテノに見送られてテトと屋敷を出た。そこには昨日、矢を打って来たメルラがいた。そして睨まれた。仕方ないだろ、狙われてたしな。

 俺とフェル以外はメルラを見て驚いて頬を染めた。森人だからその整った顔は確かに美しい。俺は矢をいかけられたから、フェルはそもそも女にはトラウマがある。その違いだ。

 テトを先頭にしんりがメルラだ。俺はテトに話しかける。

「テトはどこまで知っている?」

「オババの予言なら内容は分からない。いつものことだ。()()()()()()()()()()()()()。それこそが予言だ」


 なるほどな。分かるもの、あの場では確実に分かったのはフェルとラルフ様と俺だな。ダウルグスト殿とハウラル殿はゼクスの救世主(アイルの名は出していない)と話をした。結びつけているだろうから半分は分かったかもな。ライムールドは何のことか分からなかっただろう。


「それにしてもまた凄いものを…」

「やはりか?」

 胸のペンダントを指して言う。

「それもだが…最後の一つ。イザークに託した方だ」

「同じではないのか?」

「似てるが違う…」

 見た目には分からないな?ま、アイルに渡すのだし気にする事もないか。

 それが後に大きな意味を持つことをイザークはまだ知らない。


 ラルフたちが遭難?していた場所とは違う方向へ歩いているがもう森の外が見えている。土砂崩れは?

 そのまま森の外に出た。

 あ…昨日入った森の入り口か、少し遠い場所に出た。土砂崩れの切れ目辺りだ。確かに半分くらいの時間で出れたぞ?流石だな。

「森人だからな。森と共に生きて来た我らだから出来る」

「あぁ、凄いな…」

 後ろから付いて来たフェルも

「へぇ、早かったな」

「もう着いたのか?」

 ダウルグスト殿も驚いている。

 しかもあの濃厚な生命樹の気配は完全に捉えられない。結界に守られた大きな生命樹。

 何となく、そう遠くない内にまたここに来るのだろうとそう思った。


「助かった」

 テトとメルラに例を言う。

「助けて貰ったのはこちらだ」

「その通りだ」

 そんな訳がない。だって()()()()()()()()()()()()()

 ケガ人だって重症ではあったが重体では無かった。つまり、そういう事だ。

 どこまで視えていたのだろうな、アルテノは。

「また来る事になるだろう」

「あぁ、必ずや」


 そこでテトとメルラとは別れて馬車に向かう。ロザーナは近くでテントを張って周囲を確認したりしながら過ごしていたようだ。

「旦那方、お貴族様も無事で何よりでした」

 そう迎えてくれた。労いの言葉と待たせた詫びをいれてから、馬車でゼクスに向かった。ちなみに馬車は6人乗れるが、流石に狭いのと体が鈍ったとダウルグスト殿とハウラル殿は元気に馬車と並走している。

 といっても風魔法で体を浮かせながらだから、飛んでる?感じで楽しそうだ。


 こうしてラルフ様救出劇は幕を閉じた。




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