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異世界転移 残りものでも充分です〜  作者: 綾瀬 律
第5章 イグニシアへ

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259.集落

 テトに付いて歩いていく。集落の中ほどに大きな屋敷があった。

 その中にテトが入って行き、俺も続いた。敵意は感じなかったし、何より俺には過剰な防御がある。

 テトはある部屋の前で立ち止まると扉を叩く。

「連れて参りました」

「中へ」

 キリッとした声が応える。テトの後ろに付いて入るとそこは祭壇のようなものがあり、その前に一人の女性が座っていた。

 目が覚めるような美しい女性だ。俺は不覚にも息を呑んだ。


「この者がイザークにございます」

「ほぉ、お主には面白い魔力が…防御かの?母親の祝福もあるの」

 驚いた。見た訳では無いのに。何故なら彼女は目を瞑っていたからだ。

「見えるぞ?我ならばな。視力は生まれながらに持ち合わせておらなんだが…代わりの目を備えておる。して、この嵐で被害を受けた者たちを救ってくれるかの?」

「もちろんです」

「ふふっふっ…愉快よな。そなたの耳にある飾りは。その()()とうたった()()()()()()傷薬があれば、助かる命もあるであろう」

「ケガ人はどこに?」

「テトに案内させよう」

 テトは頷くと俺の手を引いて部屋を出た。


 突き当たりの部屋に入ると10人ほどか?ケガ人が横たわっていた。

 俺はテトに傷薬を渡す。

「ごく少量でいい」

 テトは頷くと彼らに歩み寄り、傷薬を掛けた。

 胸や腕にえぐれたようなキズがあり、眠っているというよりは気を失っているようだ。

 そこにテトが傷薬をかける。ふわりと水色に光るとキズが何処にあったか分からないほどきれいに治っていた。

 テトは驚きにしばし固まった。それから慌てて他の者たちにも薬をかける。

 本当にな、一体何処が普通なのやら。服まで元通りだぞ?


 10分もかからずに手当を終えた。元ケガ人たちも何が起きたのか理解出来ていない。

 えっ、とかはぁ?とか言っている。だろうな、俺ですらそう思う。

 ケガの治った森人たちはそれが俺によってもたらされた事に気が付き胸に両手を当てて頭を下げた。

「治って良かった。それはある人から俺が貰った薬だ。俺のおかげでは無い」

 彼らは一様に驚きながらも比較的年上の男性が

「それでも、彼方がここを訪れなければ我らは救われなかった。感謝を…」


「メルラの矢を手で掴んで投げ返した御仁だ。お強い」

「なんと…」「それはまた…」

 声が上がる。

「俺などたいした事はない」

 そう、アイルが本気で来たら勝てる気がしない。聖獣様無しでも勝てないだろう。

 それなりに使えると自負していたが、ハク様やブラン様を従えながらもその力をあてにすることのないアイル。この国どころか世界すらその手中に納められるのに。彼はいつだって誰かが喜ぶことを喜ぶ。


「体力は落ちたままだろうからまだ休んでいろ」

 テトが言うが必要無さそうだ。魔力体力知力を回復させるからな。普通の傷薬なのにだぞ?

「力が漲っています!」

 だろうな。俺は遠い目をした。

「ならば復興の手伝いを」

「「はいっ!」」

 駆け出して行った。何処が普通なんだよ?アイル。


「イザーク殿。助かった。オババ様の元へ」

 ん?誰だ、オババ様って。

 向かったのは先ほどの盲目の女性がいた部屋だ。あんなに若くて美しいのに?

 部屋に入る。やはり圧倒的な美しさでそこに佇む女性がいた。

「同胞を助けてくれた事、礼を言う」

「貰い物の横流しだ」

「くっくっ、そうであったな。その子はこの後、困難に見舞われる。いや、今まさに困難の最中かの。どれ、私から助言を賜ろう。お主にも関係するからの。彼が戻ったなら…()()()()()()()()()、ここにに連れて来るが良い。ここに答えがある」

「どいうい…?」

「これ以上は言えぬな」

「…そうか。この村はどうするのだ?」

「任せようぞ。言うも言わぬも、な」

「手伝わせてもらえないか?」

「随意にせよ、礼は尽くすぞ?」

「ではそのように…」


 女性は座ったままで杖を振った。見るともなしに見ていた俺は睡魔に襲われて…。


 気がつくと横になっている。慌てて体を起こそうとして腰に回された腕に気が付く。それはたおやかな女性の手で、背中には柔らかな肌の感触。自分が裸である事を確認して焦った。

「くっくっ…焦っておるの?慌てずとも良い。どうじゃな?女の体も悪くなかろう」

 さらに慌てる。どういう事だ。

「森人の血が濃くなりすぎての、他者の血が必要なのじゃな」

「俺には関係ない」

「そうでもないの。知る事は必要じゃ。知った上で選べば良い。()()()()()()()()()()()()()()

 なんだと?何処にも気配を感じなかった。

「村の復興は急務じゃ。頼んだぞ?イザーク」


 俺はようやく体を起こした。女性を見れば相変わらず美しい顔でこちらを見ている。その目が開いた。銀色の美しい目だ。何かを見通すように真っ直ぐと虚空を見つめる目。なんと美しい。ごく自然に身体が動き、その唇に唇を重ねた。

 その柔らかな手が俺の頬を撫で、そして…圧倒的な魔力に包み込まれた。

「ふふっお仲間も待っておるぞ。人手は欲しいからの」

 その頬にキスをして

「また来る」

 何かに導かれるように俺はここに辿り着いた。彼女の力だろうか?


 そのままテトに見送られて集落を出る。

 不思議な心待ちだ。

 テントに戻るとフェルが起きていた。

「イズ?」

 驚いた顔で僕を見る。

「誰かいたの?」

 どうして分かった?

「魔力が…誰?」

「森の奥に森人の集落がある」

「えっ?ここに?」 

 驚くのも無理はない。誰にも知られずにひっそりと暮らしていたのか?

「あぁ、間違いなく森人の集落だ。多分、隠れ里」

「何を…」

 フェルはそこで言葉を切った。感じ取ったものを飲み込むように。

「みんなは?」

「分からない」

「食事の用意をする」


 テントの外に出た。フェルは後ろから着いてきてそっと抱き付いてきた。腰に回されたその手に自分の手を重ねる。震えている?

 振り向くと正面からフェルを見る。揺れている瞳に不安が伺える。キスをして抱きしめる。

「フェルが不安に思う事などない。俺の想いは変わらない」

 頷いてしがみ付いてくる。俺は笑ってその頭を撫でた。

「さあ、甘えたさん。ご飯の準備をしていいかな?」

 フェルは顔を赤くして口を尖らす。

「小さな子供じゃない」

「くすっ今も昔も可愛いよ」

 頭にキスをして腕を緩めるとフェルも体を離した。知った上で選べか…。


 俺は朝ごはんの準備を始めた。組み立て式の調理台に魔力を流す。網の上にフライパンを置くと溶いた魔鳥の卵をオムレツにした。オムレツを後にはベーコンを焼く。網の上ではパンを焼き、その隣に鍋を置いてスープを温める。

 土魔法で椅子と机を作って、出来たものから皿に盛る。こんなもんかな。

 匂いに誘われるように他のテントからみんなが出て来た。

「おはようイザーク。早くから出掛けていたな」

「ダウルグスト殿。おはよう。その事で話がある。食べ終わった後にでも」

「分かった」

「ラルフ様たちもおはよう。食べられるか?」

「イザークおはよう。あぁ頂こう」


 椅子に座って食べ始める。

「んっ?これはなんて濃厚な…」

「美味しい…」

 ダウルグスト殿とライムールドだ。

「濃いね…」

「美味いな、沁みる。イザーク殿が?上手だな」

「俺は元々流れだったからな」

「そうなのか?だとしても…なかなか、だな。魔法も剣もかなりの腕前だろうに」

「生きる事と直結だったからな、必死にもなる」

「そうであったか…いや、満足な食事をありがとう」


 みんなが食べ終わった所で話をきり出す。

「ここよりもそれなりに奥に、森人の集落があった。家屋の被害がかなりあって人手が欲しいと。御者を待たせているから、ラルフ様とライムールド、ハウラル殿は先に町は帰還してくれ」

「なるほど…そうだな」

 ラルフ様とハウラル殿が頷いて

「私なら大丈夫だ。手伝わせてもらえないか?」

「俺もな、腑抜けてばかりはいられない」

「わ、私も大丈夫です!」

 ライムールドまで。それならはばいいのか?

「分かった。ではここを撤収だ」


 テントを片付けて(袋に近付けたら勝手に収納された)出発する。

 なぜかフェルが俺の手を離さない。俺はその手をしっかりと握りしめて大丈夫というように振った。

 フェルは少し恥ずかしそうに、でも嬉しそうに笑う。

 やがて集落に着くという所でテトが待っていた。

「イザーク、さっそく来てくれたんだな」

「あぁ、連れて来た」

「ようこそ…皆様方。ご案内します」

 恭しく礼をして歩き出した。

 テトを見てざわつく。まあな。テトもかなりの美形だ。金髪に緑の目。森人らしい中性的な美形だ。

 そしてあの屋敷に着いた。




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