254.その行方は?
昨日飛ばしたので、今日は昼と夜に2話投稿します
誤字報告ありがとうございます…多分かなりあるかと
直してる余裕がなくて、助かります
ラルフ様はどこに?
「ハウラルという、魔術師団のヤツがな。ラルフ殿を知っている。ここに来る途中で、そのラルフ殿の上着や靴を見つけた」
「上着と靴だけか?」
「あぁ。上着には血が付いていたと」
イザークとバージニアは顔を見合わせる。
「それがラルフ様とは限らないが、その辺りにいる可能性はあるな」
「探すのなら手伝わせてくれ。気になる事もある」
「気になる事とは?」
「水晶に魔力が込めてあった」
「そうか…」
アイルだからな。そりゃ魔力くらい込めるだろう。
「とにかく、明日から捜索だな。事が事だけに探索者からは人を出せない。俺も動けないから」
「おい、ロザーナを出せ。ラルフの事なら知ってるはずだ」
「そうだな、彼ならギルドの馬車を使える」
ダウルグスト殿に向かって
「明日、7時にそちらの野営地に行く。人を選抜して欲しい。こちらからは御者兼探索者を出す」
「分かった。公爵家も関わっている事案だ。頼む」
彼は帰って行った。
俺とジニーはギルマスの部屋で向かい合った。
「どう思う?」
「分からないが、推測するとしたら。ロルフが嵐の最中に誰かを助けようとして、その隙に馬車が奪われたか…助けた誰かに上着を掛けて…」
「上着の血は多分、ラルフじゃ無い。誰かを助けて…その際に上着が奪われた、か。そんな所だな。だとしたらラルフも恐らく、御者も生きてる。ただ、何処にいるかだな」
「アイルが色々と渡していれば、テントや食料はある程度ある。ただ、もう6日だ。そろそろ見つけないと」
「そうだな。まずはその上着が見つかった付近の捜索だな」
その日はそこまでにして、帰宅した。帰るとダナとフェルに呼ばれて居間に行く。部屋に入ると2人は向かい合って話をしていた。
「「イズ、お帰り」」
「ただいま」
「ラルフの事だが、大変なことになったな」
「はい…何処にいるのやら」
「命に関わることは無いだろうが」
「アイルが色々渡してたからな」
そうなんだよ。誰もがアイルならやり過ぎなくらいだと分かっているから。
「ただ、早く見つけてやらないとな」
「でも、彼が渡してくれた傷薬をケガした軍のヤツに試しで使ったら」
「使ったら?」
「骨折が治ってて」
「えっ?」
「何で傷薬で?」
「いや、俺が知りたい」
「まぁ、彼らしいよね?」
「「うん」」
「ともかく、動かないことには様子が分からないからな」
そんな会話をして、疲れていた俺はシャワーを浴びて早々に寝た。
翌朝からラルフ様の捜索が魔術師団も加わって始まったが、行方は捜索から5日経っても見つからなかった。
******
あっ…これはラルフ様かな?魔力が…。
「ロリィ、ラルフ様に何かあったみたい」
「イル、どういう事?」
「町を出る時にゼクスに色々送った、あの中にラルフ様用のイヤーカフがあったんだ。後ね、おへそに付けるアクセサリーも。で、防御の仕組みに、魔力とか体?に異変があったら私が感知出来るようにしてて。それが反応したから」
「ラルフに何が?」
「うーん、そこまでは分からないけど。危機って感じでは無いんだけど…困ってる?」
「イル、少し分かりにくい」
「ラルフ様が、では無くて誰か?かな。一緒にいる。魔力を使ってるけど、これは何のためのだろう?流石にそこまでは分からない」
「何処にいるか分かる?」
「?もちろん。自分の魔力だし…」
「何処が近い?」
「うーんと、ゼクスかな。ここなら」
「場所を教えて…バージニアとフェリクスに連絡する」
「教えるのは無理かな。感覚では分かるけど、どの辺りとかは私も分からない」
ロリィは聞き方を変えてきた。
「どうやったらその場所に行ける?」
私は少し考えて
「ねぇ、伝書鳥は物を運べる?」
「小さい物なら…」
「じゃあ私の魔力を込めたサファイアに、私の魔力を探す機能を付けるから。それを持たせて。念の為、何個か作るよ」
イリィのアイサーチの魔力版だね?小指の先くらいの小さなサファイアのカケラに魔力を込めて、同じ魔力を探してもらう。
感知したら引き寄せられる仕組み。3個でいいかな?
「ロリィ、出来たよ?後ね、念の為に食料もこっちの飾りに入れて置いたから」
その飾りは例の羊毛のエンブレムだ。こんな薄っぺらい物に食料を入れた?相変わらずやる事が凄いな。とロルフは思った。
そして伝書鳥を飛ばそうとして
「あ、待って」
イルが鳥に何かをしたら光った。えっ?
「早く着けるように、ね?」
鳥は飛び出すと少しして消えた。はい…?
イルを見る。
「空間魔法の応用?一度だけね。イグ・ブランカまで飛ぶよ」
そういう問題じゃ無いけど、ラルフの為にだよね?ありがとう。
伝書鳥は普通の鳥だ。飛ぶ速度がブランのように早いわけでも、特殊な魔法が使える訳でも無い。
過たずに決められた町から町へ、人から人へ飛べるだけ。だからアイルは遠いゼクスまでの時間を短縮する為にイグ・ブランカまで空間魔法で鳥を飛ばしたのだ。
そこから馬車で2週間ほどかかるのだから、順調に飛んでもまだ10日はかかる。
アイルが異変を感知したのが嵐の翌日。そこから10日、嵐の二日目からは11日、嵐が収まってからは10日掛けてゼクスに鳥が到着した。
それはラルフの捜索を始めて5日、まだ行方を掴めずに焦り始めたまさにその時だった。
フェルが部屋に入って来た。ん?まだ朝早いぞ…。
「イズ、起きて!アイルからまたとんでもない物が!」
こんなに慌てているフェルは珍しい。目を擦りながら起き上がる。
「おはよう、イズ」
頭にキスをされる。
「おはようフェル」
「お父様が呼んでる。執務室に…」
俺をチラッと見ると
「一緒に…」
「分かった」
俺もキスを返すと着替えて、フェルと部屋を出た。
ダナの執務室に入る。まだ朝早いが、ダナは着替えてソファに座っていた。
「あぁ、イズ。早く起こして済まない。これを読んで」
渡されたのは鳥が運んで来た手紙だ。アイルの字では無いな。この流れるような字は、ロルフ様か。
―ゼクスから遠くにいる。アイルがラルフの魔力が動いた、と。組み込んだ魔力の揺れを感知した。困っているみたいだ。このサファイヤに探す為の魔力。これを持ってラルフを。頼む―
何だこれは?魔力が動く?感知?探す為の魔力…?
驚きすぎて訳がわからない。
「文をかなり省略しているのは分かる。が、余りにも…」
「意味不明だよね?」
ダナの言葉を次いでフェルが言う。
「アイル君だから、何かをしていたんだろうな」
俺は考える。動く魔力を感知…
「アイルが渡したアクセサリーに、何か…ラルフの危機とか大きく魔力が動くような場面に…それを感知出来るようにした、かな」
「うん。あり得るね。それが前半の組み込んだ魔力の揺れを感知した。と困っている、に繋がる」
「で、次の…は、サファイアに探す為の魔力。これはどう読む?」
「サファイアに魔力を込める時点でね、もうあり得ない」
フェルが応える。そうだ、魔力は魔石にしか込められない。常識だ。今までは…それをアクセサリーに付けた石に込めるとは。
「そうだな。しかも、探す為の魔力ってこれは一体…」
「アイルが何かしらの機能を付加しているのか…」
「まぁそうとしか思えないのだが、余りにも常識から逸脱していてね」
「アイルだから」
フェルの言葉に俺も頷く。
「これを持ってラルフを頼む、はこれを使えばラルフの元に導くという事か?」
「多分…」
「3個もあるが?」
「予備と」
「予備の予備…」
全く、アイルらしい。
「これは魔術師団の隊長には?」
「あぁ、彼にはもうバレてるから。水晶に魔力が籠ってたと。見つけたらしい」
「後、ラルフを探している公爵家の…」
「ハウラル、だね」
「純粋にラルフ様を心配している。その2人だけに教えて、明日は俺が行く」
「なら、僕も行くよ。サファイヤに探す為の魔力、気になるよね?」
「念の為、彼らには魔法契約を課そう。それが条件だ」
ダナが言う。あぁ、やっぱりダナは素敵だ。アイルを全力で守ろうとしている。俺は真面目な話の最中にも関わらず、不覚にも顔が赤くなってしまった。
それを見たダナはふわりと笑う。
「イズ、もういいよ。アイル君が探す為の魔力を込めた。もう大丈夫だ…ふふっ赤くなって、可愛いなイズは」
俺はさらに赤くなる。
「疲れてるだろう?今日は私と寝よう。ふふっ久しぶりだね…イズ」
「ラルフが見つかったら、僕とも寝ようね?イズ。ふふっ癒してあげるよ?」
2人に挟まれてホッと体の力を抜いた。
「それにしても、やっぱりアイル君はアイル君だね」
「魔力の揺れって何?なんだけど、彼ならって思えるよね」
「確かにな…しかも、安心感がな、半端ない」
みんなで頷いた。まだ見つかってはいないが、もう大丈夫。その日はダナの胸に抱かれてその温もりに安心してすぐに眠りに落ちて行った。
離れていても…アイルのやらかしは健在
※読んでくださる皆さんにお願いです※
面白い、続きが読みたいと思って貰えましたらいいね、やブックマーク、↓の☆から評価をよろしくお願いします♪




