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異世界転移 残りものでも充分です〜  作者: 綾瀬 律
第5章 イグニシアへ

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249.魔塔

第5章始まります


章の始まりは設定の見直しが必要なかったので…

今までのペースで投稿します


 魔塔、それはこのバナバルト国の王都にある国の機関で、全国から集まった優秀な魔術師たちが働いている塔の事だ。

 正式名称は魔術師団塔。

 軍の位置付けだ。実際に戦争が起きれば、前線へ出る部隊でもある。


 魔術師団には第一から第三まである。

 第一が戦闘部隊。攻撃力の高い魔法を使えるものや、治癒系の魔法が使えるものが多く集まる。

 その戦闘力の高さから、周辺国からは黒の軍隊と恐れられている。


 第二が守備部隊。国の要である王都を中心に魔法を駆使して治安と国の要職にある者たちを守っている。

 隠密も得意な事から、国の影として犯罪者から恐れられている。


 そして第三部隊は研究部隊だ。日用品から武器まで、あらゆる魔法関連の研究と開発を行っている。

 魔塔の花形は第一なので、第三部隊は閑職だと揶揄するものもいる。


 もっとも魔塔に入れる時点で、相当な実力者だ。

 全魔法属性(全ての属性が上級以上使える)である事や、学業においても上位の成績が必要だ。

 学園出身者なら、3年間の成績が10番以内、魔術大会では優勝か準優勝では無いと入れないのだ。

 貴族以外では、学問の試験(学園の卒業試験レベル)を通過し、全魔法属性の上に論文で表彰されることが必要だ。


 なので、第三部隊であろうとも、とにかく優秀なのだ。


 ハウラは第三部隊だと言う。好きなだけ研究が出来ると朗らかに笑う。結果が出なければ予算が付かない。だからハウラもちゃんと結果を残している。

 最近、フィフスでも流通し始めた保冷箱はハウラの研究を元に作ったそうだ。

 僕は驚いた。やっぱりハウラは凄く優秀なんじゃ?


 もっとも、あのアイルはその保冷箱をより大きく、しかもより冷たくした物をごく簡単に作ってしまった。

 保冷箱には大きな魔石が必要で高価だけど、アイルは代わりにと水晶に魔力を込めて、それを冷媒としていた。

 その事は他言するなと言われていたけど、ハウラの役に立てるならと思って、僕は伝える事にした。


「保冷箱なんて凄いな」

「あぁ、知り合いの商人から頼まれてな」

「大きな魔石がいるって」

「そうなんだ、だから高価なんだ」

「もし、魔石意外で冷媒となると物があったら?」

「ないだろ?魔力を込められるのは魔石だけだ」

「出来る、と言ったら?」

「ラル、どいうい意味だ?」

「出来る方法がある」


 ハウラは驚いていた。それはそうだろう。魔力は魔石にしか込められない。常識だ。でもアイルは水晶に魔力を込めている。やり方があるはずだ。

「何に、いやどうやって?なぜラルは知ってる?」

 ハウラが身を乗り出して聞いてくる。


「やり方までは分からない。でも込められるんだ」

「なんだって…そんなこと」

 僕は自分のカバンからアイルがくれたポーチを取り出す。そこには飾りで水晶が付いていて、アイルの魔力が込めてあった。


 ハウラがその飾りを凝視する。

「まさか、いやしかし…間違いない。人の魔力だ」

 僕は頷く。

 どうやって…。水晶を触りながら色々と確認をしている。魔力を流そうとして弾かれている。

「何故だ?」

 ハウラは尚も水晶に触れながら考えている。そして水晶から魔力を少し引き出した。

 あ、そうか…。引き出す事で魔力を流れを見れる。その逆を辿れば魔力が込められるのか?

 さすがハウラだ。


「魔力を取り出して魔石に入れた。その通り道を記憶して込め直したら、入った…ラル、これは革命だ!それに魔力を込めたのは誰だ?」

 あ、どうしよう。ここに来て僕は怖くなった。アイルの事は他言無用。あれだけ言われていたのに。

 魔力を魔石意外に込められる事は、秘密にする事。戦争が変わるからと兄様にも言われていたのに。

 どうしよう…。


 ハウラは真剣な顔で僕を見ている。

「ラル、言ってはいけない事だったのか?」

 僕は青ざめて頷く。そうだ、アイルのそばにはハク様がいる。また怒らせたら…。

「ラル、しかしこれは、国に黙っている訳にはいかない。それだけの発見なんだ」

「兄様が、然るべき時にと…彼の事は言ってはいけないと」

「アイル、だな」

 何故それを?

「言っただろ?ずっと見てたって。あれだけ特徴的な見た目で、あれだけの事をしていたらそりゃ国も目を付ける。近々、ゼクスとフィフスの領主が王都に来るのも…それだな?」


 僕は頷く。バージニアが呼ばれていると言っていた。隠せはしないのだろう。でも、これ以上は僕の口から言えない。


 ふぅとため息が聞こえた。ハウラに嫌われた?

 すると頭を撫でる手が…顔を上げると困ったような顔のハウラがいた。

「困らせたい訳じゃない。聞かなかった事にする。だからそんな顔するな」

 そんな顔?

「今にも泣き出しそうな顔だ」

 僕は首を振る。

「違うよ、完全には違わないけど。それより、ハウラに嫌われたのかと…思って」


 チラッとと見れば驚いた顔をしてからふわり、と笑って僕を抱きしめた。

「嫌いになる訳ないだろう?俺の為に教えてくれたのに。嬉しいだけだよ?ラル…あぁ、俺のラルが可愛すぎる」



 今は魔塔の、ハウラの研究室にいる。魔塔に入る時は身分証を提示して、ハウラが研究の協力者だと言えばあっさりと通された。

 だから今はハウラに与えられた研究室で向き合って、抱き合っているのだ。


「ここでそんな可愛い事を言うのか?しかも震えながら…。ラルはもうそんなに俺を好きになったんだな?」

 僕は赤くなる。あの発言では嫌われたくないと言ってるのと同義だ。

 ハウラはラルが可愛くて辛い…と呟いて体を離した。

「今すぐ濃厚なキスをしたいが、止まらなくなる自信があるからやめておく。クソッ…可愛いぞ」

 よく分からないけど、嫌われてないなら良かった。


 その後は研究をするハウラの真剣な顔を眺めたり、論文を清書したり、書類の整理を手伝ったりした。

 お昼ごろにハウラが立ち上がり

「よし、帰ろう!」

 えっ、もう?

「ラルと過ごせるのもひとまず、今日までだからな」

 あ、そうか…僕はお父様の代理としてゼクスに来ていたんだ。ダナン様ともまた打ち合わせをして、お父様を待たないと。

 引き継ぎをしたら僕は領地に帰る。仕事はお父様が帰るまで、激務だろうし。

 そもそも最近は領地の仕事を手伝えてないから。


 こうしてまた公爵家の離れに帰ると、ハウラの愛情をたくさん受けて、翌日の朝。

 僕はハウラと別れて馬車に揺られている。

 王都からゼクスまでは約三日かかる。そして三日目の朝、早く出たから夜にはゼクスに着けるだろう。

 僕は疲れて目を閉じた。



 *******



 その頃、システィアはフィフスの屋敷で領主の仕事に追われていた。

 突然、公爵家からしばらくラルフを預かると伝書鳥が来た。驚きはしたが、少し前から色々と接触はあったから仕方ないと思った。

 ルシーはいないし、ラルフもいないしで仕事は大変だったが今だけだ。

 そう思っていた。

 ダナン様との打ち合わせ、主にどこまで何を話すか。そのすり合わせがができたら、王都に赴く。もう隠すのは無理だろう。


 彼がこの領にもたらしてくれたものはあまりにも大きい。少しでも報いなくては。

 その日は珍しく午後から雨が降り出した。サッと降ってカラッと晴れる。そんな日が多かったのに、その日の雨は夜明けまで降り続いた。

 風も強くて、久しぶりに荒れるな…そんな事を考えた。ちょうど農作物の収穫がピークになる頃だ。

 なるべく早く止むといいな、と領主として考えていた。




 その頃、ゼクスでは。

 ダナンは王都行きの準備をしていた。旅装などは従者が用意する。だから、献上品の用意と確認、口上の作成、後は領地をの仕事の引き継ぎ。

 キビ関連の産業が加速しているのと、例の判。工房に注文が殺到して捌けていない。

 貴族からの話も引きもきらず、商業ギルドも大忙しだ。ただでさえ、他にも色々と登録をした。

 円外分離機だ。


 発展するのは好ましいが急すぎて追い付けていない。アイルとイーリスがいればごく簡単に捌けただろうに。嬉しい悲鳴ではあるのだが。

 納入について、貴族の介入がある場合はこちらが対応しなくてはならない。

 ファルにはイザークもいるから大丈夫だろう。


 ホッと息を付いた。

 その日は珍しく午後から激しい雨が降り出した。風も強くなり、雷鳴が轟く。

 玄関が開く音がする。イザークが帰って来たようだ。しかし、早いな?


 扉が叩かれる。

「入れ」

 扉が開いてイザークが入って来た。

「ダナン様、急な雨で町の外で川の氾濫や街道の浸水が報告されています。ギルドからも人を出していますが、状況によっては町にも被害が出るかもしれません。軍からも人を出して貰えませんか?」

「分かった。町の外を警戒させよう」

「お願いします。今夜はギルドに泊まり込みになりそうです」

「あぁ、気を付けて…イズ」

 イズは恥ずかしそうに微笑むと

「行って来ます、ダナ…」

 急ぎ足でギルドに戻って行った。


 ダナンは執事のブラウンを呼び、すぐにフェリクスを連れてくるよう伝言する。部屋に入って来たフェリクスに

「この大雨で災害が起こっている。探索者ギルドも動いているが、領軍からも小隊を派遣する。指揮を任せる」

「畏まりました」

 ダナンは領主の顔から父親の顔になり、部屋を出ようとした息子に声をかける。

「あぁファル、イズは今日は帰れないそうだ」

「はい、お父様」

 出ていく息子を見送り、窓の外を眺める。今夜は荒れそうだ。何事もなければいいのだが。


 ダナンはふっと息を吐いた。





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