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異世界転移 残りものでも充分です〜  作者: 綾瀬 律
第4章 転移の真実

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248.いよいよ出発

 それからの日々は怒涛の様に過ぎていった。

 ソマリにレシピの伝授。

 ホットドッグ、の前にウインナーとケチャップ作り。廃棄予定の羊の小腸を貰ってたからね。それを使って。

 ケチャップはトマティから何となく?で。

 それから大豆を箱庭で作って麹菌を作って…お味噌。

 醤油は良くわからなくてジョブでゴリ押し。 


 オイスターソースと後は卵でマヨネーズ。

 新鮮な卵は魔鳥の雛(弱ってる子)を取ってきて育てた。そこから有精卵で増やして、卵を収穫。

 新鮮な卵なら安全だからね!

 そんな感じでソマリが奮闘してくれて、イリィに私の故郷の味をたくさん楽しんで貰えるように。


 でもね、イリィはアイが作ってくれたものが一番美味しいって泣いてしまって。嬉しくて切なくて。

 だから私作のお菓子とか料理をたくさん作って渡したよ?

 思い出して食べて。

 転移で会えるけど、長い時間はやめた方がいいって言われた。転移する側には負担もあるし、週に1回か2回までとニミに言われたからね。

 イリィはまたたくさん泣いて、私も悲しかった。


 だから少しでも私を感じられるように…。たくさんイリィの為に作ったりしたよ。

 いつでも一緒だからね!


 イアンにも坑道を頼んできた。宝石とかオリハルコンはイリィ意外には渡さないよう伝えてある。

 もっとも自分の箱庭に入れてるから、私が帰るまでは保管しとくだって。

 それからイアンと魔力循環をした。箱庭でイアンを膝に抱いておでこを合わせる。魔力をイアンに渡して、イアンからも魔力が流れてくる。

 溶け合うような時間をしばらく過ごす。

「アイル様、ありがとうございます。また戻ったら交わって。種族を増やしたい」

 私はイアンの頭にキスをして頷いた。


 留守番組のミスト、ミア、ルイとはたくさん触れ合ったよ。ミストがあんなに甘えん坊とは知らなかった。我慢させてたのかな?

 帰って来たらまたたくさん撫でてあげるよ。

 ミアはツンデレさんでね?近寄ると離れるくせにミストを撫でてると擦り寄ってくる。

 その気ままなところがたまらなく可愛い。

 ルイはいつでもぽけっとしてる。お腹や眉間を撫でると溶ける…可愛い子だ。


 ニミは素直じゃないけどとても寂しがりやだ。いつも一緒に寝ていたハクたちがいなくなるのが寂しそうだったから。ならば、イリィとって言ったら嬉しそうにイリィに突撃してたよ?


 お父様とシア兄様、キャルさんは控えめに別れを惜しんでくれた。

 ベルは私たちとイイグニシアを目指すから、イリィを沢山抱きしめてキスをしていた。


 サリナスとダーナムにシグナスは待ってるぞと言って拳を合わせた。ブラッドは一緒に行くからね。

 地味に痛かったのは楽しい記憶だ。

 いや、嘘です…普通に痛かったです。


 ヨナにも膝に乗られてガチ泣きされて大変だった。小さい子の涙は…弱いんだよ。泣き止んで離れる時にチュッとされた。僕の初めてだよ?だって。

 くぅ、可愛いぞ。


 みんなとは前日の夕方に別れを済ませた。夜はイリィたちと死の森の温泉で大お風呂大会。

 もちろんハクたちも全員だよ?賑やかで楽しい夜だった。

 ロリィとエリは屋敷に帰って、イリィとハクたちはここでお泊まり。

 私はイリィを抱きしめて、イリィに抱きしめられて目を瞑った。

 最後の夜はただ抱き合って寝ようねって話し合って決めてたから。その温もりと匂いを全身で感じながら、眠りについた。




 隣で眠るアイを見る。帰ってくるよね?泣かないって決めたのに、また涙が溢れてくる。

 どうしてアイなの?もう何度したか分からないその疑問を口にする。神様は意地悪だ。

 僕に生まれながら18で死ぬ運命を課しておきながら、アイと、運命の番と出会わせて。なのに、アイは…。

 どうしてこんな事に。ただ、穏やかに愛する人と笑って歳を重ねたいだけなのに。


 でも、アイはもっと辛いよね?誰にも頼れずに独りで頑張って。誰かに代わって貰えない役割を背負って。

 だから僕はここで君がちゃんと帰ってくる為の道標として待ってるよ。

 その唇にキスをする。少し冷たくて柔らかい。ただ一緒に生きたいだけなのに…。

 うぐっ、うぅ…。声を殺して泣く。今だけだから、思い切り泣かせて。

 きっと帰って来て、無事で。


 希望を持った後の絶望は僕から生きる気力を奪うだろう。だからね、僕はを生かすために必ず帰って来て…。




 声を殺して泣くイリィを抱きしめたい衝動を抑える。これはイリィが乗り越えなければならない事。私のいない時間を独りで耐える為に。

 ごめんね、そしてありがとう。大切な人。待ってて。

 負けないから…誰よりも何よりも愛してるよ、イリィ。


 そう心の中で呟いて、私はゆっくりと眠りに落ちて行った。



 その夜は、それぞれの想いを抱えて過ぎていった。




 翌朝、私は目を覚ます。いつもと同じ淡い金髪。その髪を梳く。サラサラと手からこぼれ落ちる大好きな金髪を眺める。そして軽くキスをした。

 イリィの匂い、温もり、大好きな色を記憶に止める。

「イリィ」

 その頭にキスをして頬を撫でる。

 知ってるよ?イリィ。とっくに起きてるよね。

 今のこの温もりを手放したくなくて、私にしがみ付いているイリィはあまりにも可愛くて。

 でももう起きなきゃ。


「イリィ、おはよう。起きてるよね?」

 目を赤くしたイリィが私を見る。目が赤くても髪の毛先が少し跳ねててもやっぱり可愛い。

 私の大好きな旦那さんだ。その顎に手を掛けてキスをする。目を閉じてキスを受けたイリィのまつ毛が震えていた。

 温めるようにまぶたにもキスをする。

 正面から見つめ合ってまたキスをする。想いをぶつけるような激しく濃いキスをした。


 離れる時におでこにキスをして

「起きようか?私のイリィ」

「うん、僕のアイ」

 微笑み合って体を起こす。その細くてきれいな体を見る。少し恥ずかしそうにしている。可愛い。

 また軽くキスをして着替えた。

 あまり必要は感じないけど、一応、胸当てとか籠手もあるからね。馬車の旅じゃないから装備はしっかりと。

 なんか探索者っぽいな。


 用意を終えるとイリィに向き合う。

「イリィ、渡すものがあるから」

 ポーチから出した転移装置になっている足の指輪。再確認で一度預かってたから。

 食料はもう渡してあるからね。後は…。

「イリィ、渡したアクセサリーにキスをするよ。私の魔力を付与をするから」

 イリィは驚いてまた少し泣きそうな顔になる。


 まずは、足の指に転送装置を嵌めてキスをする。

 そして足首から順に、だね。

 その細い足首には皮で編んだアンクレットがある。ミサンガみたいなヤツね。そこに穴を開けた水晶と紫水晶を通してある。その石にキスする。

 イリィを守って、と願って。そして自分の魔力を籠める。

 次はおへそ。シャツをまくって腰を抱き寄せ、その可愛いおへそにキスをする。大好きだよ、イリィ。

 次は指。小指と薬指にそれぞれキスをする。


 次は腕。シャツをはだけさせて腕輪にキスをする。イリィを隠して。

 シャツを直して最後は耳。今あるピアスとイヤーカフにキスをすると、左耳のピアスを外した。そして自分が付けていた輪のピアスにポーチから取り出したチャームを取り付けてイリィの耳に付けた。

 自分にもイリィのピアスにチャームを付けて左耳に付ける。

 その耳にキスをする。決して外れないように。


「アイの、魔力が…凄く濃い、よ?」

 自分の耳に付けたピアスを見せる。

「これだよ」

 あっという顔をするイリィ。

「髪の毛…アイと僕の」

 そう、2人の髪の毛を混ぜてチャームにしたんだ。

「いつでもイリィのそばにいたくて…」

「アイ、だから…」

 みるみるイリィの目に涙が盛り上がる。

「我慢してたのに…こんなの、嬉しすぎる」

 私はイリィを抱きしめて

「側にいたいのは一緒。だから、ここではいつも一緒だよ?」

 ピアス指してそう言う。見つめ合って長いキスをして少し抱き合う。


 イリィは離れると、

「僕からはこれを」

 それはネックレスだ。シャツの下に入って見えない場所。そこにイリィと私の髪の毛を編み込んだ輪が付いている。うわぁ凄い。金と銀が織りなすその模様はとても繊細で、私は見惚れた。

「森人の愛の証。必ず身に付けてて。変わり身のお守りなんだ」

「ありがとう。いつでもイリィを感じられるね!」

 イリィはそのお守りをおでこに当てて何かを唱えた。そしてキスをして

「アイを守って…」


 凄く嬉しかった。とても複雑な模様だからきっと凄く時間がかかったと思う。嬉しいよ。

 見つめ合って微笑み合う。

 私たちはこんなにも想いあってる。だからきっと大丈夫。出会ってくれてありがとう。

 愛してくれてありがとう。


 もう一度しっかりと抱きしめる。

 そして手を繋いで箱庭経由でロリィの屋敷に戻った。もちろんハクたちも一緒だよ。


 ロリィの屋敷の、自分たちの部屋に着く。

「イリィの洋服と私のをいくつか交換したからね」

「えっ、僕も…」

 もしや…カバンを確認する。

「くすっ、取り替えられる服は全部入れ替わってるよ」

 顔を見合わせて笑った。

「同じ事考えてたんだね」

「嬉しいよ」


 私は最後にもう一度しっかりとイリィを抱きしめてキスをする。そしてなんて事ないように

「行ってくるね」

 と言った。

 イリィもなんて事無さそうに

「行ってらっしゃい」

 と応えてくれる。それでいい。

 私は軽く手を挙げて部屋を出て行った。部屋を出る前に見たイリィは優しく微笑んでいた。私も笑顔で部屋を後にする。


 良かった、ちゃんと笑えた。イリィの記憶に残る私は笑っていて欲しいから。

 私と入れ替わりにミスト、ミア、ミストの背中にルイそしてニミが部屋に入って行く。

 ミストはしっぽで私の太ももを叩く。

 ミアはすれ違い様に頭を足に擦り付ける。

 ニミはしっぽで私の顔をふぁさと撫でる。

 そしてルイはミストの背中で…寝ていた。

 でも私にはちゃんと見えたよ?そのまだ短いしっぽがパタパタ揺れているのを。


 みんな、イリィをお願いね。私の大切な人だから。


 外で待ってたハク、ブラン、ナビィとハクの背中にハル、ナツ、リリ。

 一緒に玄関に向かう。

 そこにはいつも通りにキチッと執事服を着こなしたリベラとコック服のソマリが待っていた。

 そしてこれもいつも通り

「おはようございます、アイル様」

 リベラが声を掛ける。口もとには緩く微笑みをたたえたリベラ。真っ直ぐ伸びた背筋。

「行ってらっしゃいませ。必ずや、ロルフ様と共にここにお戻り下さい」

「おはよう、リベラ。リベラの大切なご主人は必ず無事に帰すよ」

「はい、お待ちしております。ロルフ様のご無事を確認しなければ死ねませんからな」


「死なれたら困るよ、リベラ。アイリーンの世話も頼むつもりだから…」

 私の後ろから声がかかる。ロリィだ。

「ほっほっ、これは長生きせねばなりませんな。その為にもまずはお子の顔を拝ませて貰いませんと」

「無事に帰るよ、待ってて…じぃ」

 一瞬固まったリベラはその目をわずかに潤ませ

「じぃはまだまだ頑張りますぞ!」

 胸に手を当てて深く頭を下げた。


 ソマリはもう号泣しながら言葉にならず、リベラに合わせて帽子を脱いで深々と頭を下げた。

「行ってくる。ここを頼む。体を大事に…」

「「行ってらっしゃいませ」」


 屋敷を出る。エリは先に屋敷を出て、キリウスと共にイズワットたちと別れを惜しんでいた。

 泣き腫らした目をしてヨナがキリウスに抱っこされている。

 エリの目も赤い。

「行ってくる」

 静かに告げるとエリがこちらに合流した。



 私たちは楽園のそばに行く。

 そこでブラッドとベルが待っていた。2人ともしっかりと装備を身につけて頷いた。

 


(帰って来て)

(待ってるよ)

(守るから)

(安心して)

(またね…)



 煌めきながら、たくさんの光が舞った。待ってて…みんなをどうか守って。

 そう呟いて楽園を後にした。



 さぁ、行こう!

 北へ、イグニシアへ…





ここまでお読みくださりありがとうございます

第4章終わりです

旅は続きます…


ちょっと設定で間違いが見つかりまして…手直しに時間がかかるので、しばらくお休みします


連載中の

「長生き魔法使いは暇を持て余す」も宜しければ…



※読んでくださる皆さんにお願いです※


面白い、続きが読みたいと思って貰えましたらいいね、やブックマーク、↓の☆から評価をよろしくお願いします♪


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