245.お出かけは危険な香り
どうしてこうなった。改めて考える。何処かに出かけると何かが起きている、気がする。お出かけは危険なのでは?
『アル、楽しかったねー』
「ハク、酷いよ…置いてくなんて」
『えへへっ』
「ねぇ、ハク。どうしてここに来たかったの?」
『うん、な、何となく?』
「ハク?」
『…』
「ハク?こっち見て」
あからさまに耳が下を向いてしっぽが股に入り込む。
「ハク、怒らないから」
こちらをチラッと見る。
『ほんと?』
頷く。こちらを向くとゆっくりとしっぽを振る。
『あのね、気配がした…助けを呼んでる声も』
「助けたかったの?」
首を振る。
『分からない。だって気配だけでは。禍々しい雰囲気だったし』
助けを求められてるのは分かった。でも助ける必要があるかまでは判断出来なかった。だから私と出掛けることにしたって事か。
「ハクたちだけで様子を見に行けたよな?」
『だって…アルとお出かけしたかったから』
それはやっぱりそうなんだな。もう、怒らないよ。
実際にユニミは普通に心の優しいユニコーンだったし。仲間が助けを呼ぶ声に反応したくらいだから。
呪いを解く時に反射も付けたから、相手が呪われてるだろうな。
自業自得だ。
「ハク、最初に言ってくれたらいいのに」
『ごめんなさい…』
「怒ってないよ。ハクは優しい子だから。ほおっておけなかったんだよな」
『聖なる力を感じたから、アルの為になると思って』
私はハクを抱きしめる。ありがとうと呟いて。
この首はいつも通りもふもふだ。耳を揉んで鼻にキスする。
「私は怒ったりしないよ?」
『うん…』
「こんなに可愛くて優しい子なんだか。自慢の子だ。ふふっ、子供たちもきっと自慢のパパだって思ってるよ」
『むふん』『まふん』『わふん』『ぐぅ…』
最後のはルイだな。
大好きだよ、ハク。チュッ。
さで、ナビィ?こっちにおいで。
『アイリー、ごめんね』
「やっぱり知ってたの?」
『うーん、なんかね…いるなって。でもハクと同じでよく分からなかった』
「そうなのか」
『アイリの為になるかもって私も思った』
「ならいいよ。分かってるから。ハクもナビィもいつだって私の事を大切に思ってるって」
『素敵ね。私を見つけたのがアイルで良かったわ…』
「仲間も沢山いるし、ね」
『そうね、さぁ帰りましょう』
私はおかしくなった。ユニミからしたら帰るでは無く行くなのにね。
すっかり仲間だ。なんだか嬉しくなった。
ハクの背中に乗ろうとしたらユニミが
『私に乗って!』
ハクを見ると頷くのでユニミに乗ろう、としたけどどうやって乗るの?
だってユニミは体高が2メル(m)ほどある。
『大丈夫よ、ほらねっ』
私の体がふわりと浮いてユニミに跨った。えっ今の何?
『風魔法よ?浮かせたの。後は少し体を動かして…』
体を動かす?
『そうねぇ遠隔操作みたいな感じかしら?ごく簡単な動作だけよ。今みたいに跨るとかね』
にしても凄いよ!
さすが321才だね。
ユニミに跨って見る世界は目線が高くて不思議な感じだ。
『帰ろー』
ハクの声で一斉に走り出す。そしてユニミは浮き上がって空を翔けた。うわぁ凄い!ナビィよりも高い。翔けるっていうか、もう飛んでるだね。
拠点がすぐそこに見えて、短い空の旅は終わった。
ユニミに跨った私を見てみんなが驚いている。
サリナスが走って来て
「アイル、その白くて神々しい馬…いや違うな。もしかして伝説の幻獣、ユニコーンか?」
「まさか…でもこの美しい姿」
ブラッドも驚いている、ら
「なんとも美しいお姿…」
「それは素晴らしく勇ましい」
ダーナムにシグナスも二の句が告げない。
ロリィが屋敷から顔を出すと素早くそばに来る。
「なんと美しいのだろうか…幻獣ユニコーン。古い書物にある絵姿の通り…」
流石だな。
「これはユニコーン様…」
エリは胸に手を当てている。
『おや、イグニシアの末裔だね?王家の匂いだ。イグニスに会いに行くんだろ?イグニスの護り馬だったユニコーンがよろしくって言ってたと伝えてな』
……忘れてって言ってなかった?バラしていいの、それ。
エリがイグニス、護り馬…ユニコーン。ブツブツいってる。
『あ、なんでもないさ』
誤魔化したな?ユニミ。
「王家の間に飾られているイグニス様と寄り添う馬は真っ白な額に角のあるお姿だ」
ん?でもユニミは321才。イグニシアはこの世界が出来た時からある国。合わないよ?
『時の数え方が違うんだ』
ハクが言う。
「どういうこと?」
『アルたちの年とは違うんだよ』
箱庭とここの時間の流れが違うようなもの?
『そう、だいたい100年で1才くらいかな。幻獣の中でもユニコーンだけ特別なんだよ。空間や時を操る力があるからね』
それはまた凄い。って事はユニミは3210才?ひぉーそれはまたもうじじいを通り越してヨボヨボなんじゃ?
『失礼ね!ぴちぴちよ』
ない、それはない。
「アイル、不敬だ。早く降りて」
珍しく焦ったエリに言われる。いや、降りられないんだよ。高くて。ユニミは真円の目で私を見ると
『降ろしてあげるわよ』
ふわりと体が浮く。そして優しく地面に足が着いた。
「ユニミ、凄いな!」
「「「「「「ユニミ!」」」」」」
((クソダッサ))
((それは無いだろ))
((流石にそれは…))
分かってるよ!私だってもう少しね、カッコいい名前が良かったよ?
でもさ、ユニミになっちゃったんだよ。仕方ないじゃないか。
「とにかく、幻獣のユニミだよ。契約したからね。私がここを離れている間はユニミがイリィを守ってくれる。ミストとミアとルイもだよ」
「ユニミ様と契約…」
エリがよろめく。慌ててキリウスが支える。
「成り行きでね」
「「成り行き…」」
ユニコーン、イグニス様を知っていてしかも護り馬だったと言う。それだけの格があるユニコーンになんとも珍妙な名前を付けて契約したとは…もうエリアスのキャパを超えていた。
「エリアス、考えても仕方ない。イルだから」
「ロルフ…」
ふぅと息を吐いた。確かに、目の前の真実そこが現実なのだ。あるがままに受け入れるしか無いのだろう。
ふと自分とアイルが出会ったことは偶然では無いのかもしれないと思った。
まるでイグニシアに導かれるかのように。全てが向かっている。
自分のかつての国を思った。
エリアスが黄昏ている頃、アイルはユニミの首をたんたんと叩きながら撫でていた。
「ユニミ、えっと聞きにくいんだけどね?その…排泄とかはどうなるの?」
『んまぁ、失礼なオスね。魔力に回させるから排泄物なんで出ないわよ!』
やっぱりか…。まぁ良かった。ほらね、歩きながらするからさ。衛生上の問題とか大丈夫かなって。
「「「幻獣に排泄物のこと聞く人はいないよ!」」」
周りの意見は一致した。
「どこで寝る?」
『箱庭に行きたいわ!』
あぁ契約者だから行けるのか。
『あら?その前に坑道に連れて行って』
?何でだ?
「アイ、どうしたの?」
「ユニミが坑道に行きたいって」
『連れて行けばいいよー』
ハクがしっぽを振る。うん、ふさふさだね。
「行こうか」
『嬉しいわー』
ぞろぞろと移動する。今はイズワットとロリィとサリナスにブラッド、ダーナムとシグナスたちがいる。
イリィの家族は森かな?
坑道の上に着いた。階段を降りて…ユニミは飛んでた。地下に着くとわらわらと
『アイル様だー』
『アイル様ー』
『アイル様、待ってたよ』
ノームたちが迎えてくれる。
走り寄ってきたイアンを抱き上げる。周りにも魔力を散布すると
『アイル様の魔力ー』
大喜び。
『やっぱりノームたちね?良かったわぁ。消滅したかと思ってたのよ』
消滅?
『あまりにも長い間、力を蓄えられないと消滅するんだ…あと少し。危なかった。そんな時だよ?アイルがここを掘ってくれたのは』
『気にしてたの。彼らの存在は地中の安定に繋がるから。消滅したら終わりだったわ』
ん?他にもいるんじゃ?
『いないわよ』
『僕たちが最後。というか、僕だね』
えっ?イアンが消えたら…ノームという種族がいなくなるの?
『地中は繋がってるからね…全大陸で僕だけ』
イアンの種族は増えるの?
『アイル様と魔力が交われば増える。出会ってから数日だけど、魔力を貰ったからね。僕ももう交われるよ!』
魔力だけ?
『そうだよ、魔力が交わればそれが即ち交尾となるんだ』
ハクはよく知ってるね?
『神の知識があるからね!』
…聞かなかったことにしよう。うん。
『だからアイル様が出発する前に一度だけ、魔力を交わらせて欲しい』
『あたしからもお願いするわ。とても大切なのよ』
他の人ではダメなの?
『大丈夫よ、でもアイルの魔力が一番いいわ。他にも森人なら大丈夫だから、協力してもらいなさい。まずは100人まで増やさないと』
『はい、ユニミ様。名をもらったのですね!おめでとうございます。僕らのことも気にかけてくれて』
『当たり前だわ!幻獣と精霊は交われないから。はがゆかったの』
私にぴたりと抱きついて甘えるように頭をもたれさせるイアン。まさか最後の一人なんて…寂しいよね。
その髪の毛をとかして軽くキスをした。
たくさん仲間が出来たら仲間だけで増やせるのかな?
お手伝いするからね。
よく頑張ったね、イアン。
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