243.お出かけは楽しいな
山裾までやって来た。そこでハクから降りる。ベビーズはまだハクの背中だよ。
ここはさらに冷んやりしてるけど、それがなんとも心地良い。
ゆっくりと木々の隙間を歩いて行く。
久しぶりに薬草とか、何か変わった野菜とかあれば獲りたいかな。もうね、ダイヤモンドとかは間に合ってるからね?
普通のでいいよ、普通ので。銀とか金は欲しいけどね。あ、こういうのフラグって言うんだっけ。
やめやめ、何も考えないよ。
そう言えばハクとブラン、ミアに会ったのは森だったなぁ。ここは山だから大丈夫だよね?
引き寄せるものとかいう称号は関係ない、断じて無いのだ。
歩いて行くと足元に何かが落ちている。あれ、これは…来たね?来ましたね。
ふふふっ採るぞ、ひとつ残らず…いや少しは残すか。
『アル、それが欲しいの?』
「うん、まだ木にも成ってる」
『任せてー』
ハクが前脚を木に向かって振り抜く。ドンッ、バラバラバラ…。避けてて良かった。上から刺さる所だったよ?ハク。
前にも拾ったけどね。また拾うよ。だって凄く大きいからね。
私とハクやブラン、ミストにミア。さらにベビーズたちまで果敢に攻めている。いやね、チョンチョン触ってそのまま亜空間に収納とかさ。チート過ぎない?聖獣とか霊獣とかってほんと能力高いよね?
私も風魔法で集めて収納。するとあら不思議。ちゃんとイガと栗を分けてくれる。
秋の味覚と言えば、栗!栗ご飯に、栗おこわ、焼き栗、マロンケーキに栗の渋皮煮、マロングラッセ、モンブラン。
たくさんは食べないけどね。ちなみに渋皮煮とかマロングラッセって凄く時間がかかるんどけど、時間促進のポーチ部分に入れたら簡単に出来ちゃう。チートだよ、うん。
みんなの協力もあって大漁だよ。ふふふっ、モンブランたくさん作ってイリィに渡そう。
他には何か山菜かな?詳しくないんだよね。都会っ子だし。ビクトル頼りかな。
さあ、松茸さんはいないかな?まだ少し残ってるけど、欲しい。土瓶蒸しがしたい。
松茸やーい。ん?
(最高級の松茸の群生地)
なんですと?どこ?ビクトルどこだ?
(少し先にあるよ!)
よし、いざ行かん!勇んで進む。うわぁ夢見たいだ。松茸、左も松茸、右も松茸。輝いて見えるよ。
採るぞ、おー!一人妙なテンションで採ったよ。ビクトルがね、これがお勧めとか教えてくれるのさ。
ヤバいよね?今夜は松茸パーティーだね。
栽培出来ないのかな?天然物がいいけど、養殖でもありだよ。
後で考えよう。今日は栗ご飯に松茸焼き、土瓶蒸しだな。
ふう、一息つく。そろそろ朝食を食べよう。
夢中で採ってたらもう7時だ。みんなで固まって私がポーチから出したパンとスープを食べる。
早々と食べ終わった私は少しやりたい事があるからそこでゴソゴソとポーチを漁る。
手に取った物をそっと取り出してみる。やった、成功だ。
実は箱庭に植えているお米。あそこでは食べられるけど、お米自体は持って来れなかった。
でもね、もしかしてポーチに入れたら取り出せるんじゃ無いかなって。
そしたら取り出せた。これなら箱庭で育てば取り出し放題。もしくは種籾とかを持ち出せば、こちらで栽培出来る。ジョブの出番だ。
大豆を作れれば、味噌や醤油も夢じゃない。うん、やっぱり無事に帰らないと。
私はやりたい事がまだまだあるんだから。お米を握りしめて改めて思ったよ。
『アイリ、いい顔。なんだかしばらく気配が薄くて心配だった』
そんなに?
『ご主人、そうだよ。とても寂しくて怖かった』
ふかふかの頭で頬ずりするブラン。
ミストもポーチから頭を出して
『うん、凄く寂しかったよ』
『僕もだよ…』
そっか…って最後の誰?えっ、もしかしてミア?
『そうだよー』
そのもこもこな姿を見る。ミアはおんにゃの子だよね?
『聖獣は性別がないから…僕は男型』
マジか…ナビィに続く女子だと思ってミアって名前にしたのに。男子だったか…。
地味にショックだ。
『もう、アイリってば…聞いてる?みんな心配してたんだよ』
『そうだよ、アルってば僕たちを置いていなくなろうなんて…親の風上にも置けないよ』
えっとハルかな?辛辣だね。
『当たり前だよ、一応親なんだし』
『そうだよ、一応なんだから』
『眠い…』
『お外気持ちいい』
眠いって誰?あ、やっぱりルイか。で最後のはリツだね。君たち自由だね?それとね、一応は酷いかと。
『だって一緒に寝てくれないし』
『構ってくれないし』
『ご飯食べさせてくれないし』
『ラジバンダリ…』
だから最後の誰?ルイか、古いお笑いの台詞を何で知ってるのさ?
『いい風…』
やっぱり律は自由だね。
確かに子育てはハクに任せきりだもんな。
『だから旅に出たら毎日一緒に寝るの』
みんな…そうだね。いつも一緒にいようね。
『アル、もっと奥に行こう!』
しっぽをブンブン振ってハクが言う。そうだね、行こう。それからも薬草や野菜、キノコや果物を採取しながら奥へと進んで行く。
魔獣も出たけどみんながね、瞬殺してて。私の出番は皆無だったよ。
そうしてお昼ご飯も食べて少し休憩。長閑だな…。あ、これもフラグっぽい。無だ、無になろう。今日は何も引き寄せないぞ。
それこそがフラグだった。
そろそろ戻ろうかと山を降り始めた時、何かが引っかかった。みんなも同時に足を止める。
禍々しい気配と…。
慎重に進んで行く。そこには黒い馬がいた。いや、馬なのか?額から立派な角が生えている。馬の親戚とか。
私たちを見ると前脚を蹴って威嚇する。
『これは…』
ん?ハク、何?
ハクは黙ってしまった。私はその馬?を見る。
(呪われたユニコーン 全身を呪いに包まれている)
また呪いなの?そしてユニコーンで白い?真っ黒だよこの子。
(アイルの完全解毒剤で解呪が可能)
最早解毒剤では無く解呪剤では?もう考えても仕方ない。でもどうやって?飲ませるのは無理だよ。
(霧状に散布して、呪いが弱まったら近づける)
それしかないか。私はポーチから完全解毒剤を出してファル兄様にしたみたいに散布する。ゆっくりとユニコーンに向かった霧はユニコーンに当たると水色に光った。うん、効いてるね。
やがて黒かった肌が白くなった。あれ?白いや。
『ユニコーンよ、なぜ呪われた?』
ハクが呼びかける。
『仲間が助けを呼ぶ声に飛んで行ったら捕獲されたの。首に何かを嵌められて、どうすることもできなかったわぁ』
確かに首に何かある。あれは、魔力吸収の?いや違うか。まぁ、壊してしまえばいい。
パキン
ユニコーンはブルリと震えると
『助かった!』
少し浮かんだ。凄い!浮いてるよ。
でも呪いは完全に解けてない。
「呪いはまだ残ってるよ。これ飲んで」
私は完全解毒剤を見せる。
『なんと、呪いを解けるのね。有難いわ、小さな子』
小さくないけどね?私はそれを近づいてきたユニコーンに蓋を開けて渡そうとする。
『口に入れてくれるかしらん?』
なんだろう?独特の話し方だな。
口を開けるので瓶を傾けて口に入れる。ゴクリッ。
ピカン…眩ゆい光が溢れたので目を瞑る。そっと目を開けるとそこにはキラキラと白く輝く白銀の鬣のユニコーンがいた。ほぇ…これはまた神々しい。
『我は幻獣のユニコーンだ、礼を言うよん。小さき子よ』
「小さくない、もう成人してる」
『何才なの?』
「16」
『まだ、子どもよ。我の20分の1しか生きてないもの』
はい?16の20倍って320才?もうおばあちゃんじゃないか。
『失礼よ、まだまだ若者なのん』
へー320才で若者って長生きなんだな。
『して小さき子よ、名をくれる?』
何で?契約する訳でもないのに。
『名がない幻獣は狙われやすいのだよん』
何で名前が無いの?
(小さな頃に郷から出されて彷徨っている
普通は郷の長老から名をもらう
名のないものは定着せず狙われやすい)
よく分からないけど、名付け希望ね。ユニコーン、ユニコーン…ユニ子、ユニ恵…。
いやいや、ダサいな。ユニから離れよう。
うーん、ユニナ、ユニミ…ダメだ。ユニが頭を駆け巡ってる。ユニ以外で、コーン?これもまんまだしなぁ。
あーユニしか思い浮かばない。どうしよう。
『むっ何ですって?それは酷いわ』
えっ?何か。
『ぶふっもう名前ついてるよー』
ハクが笑う。どゆこと?
『アル、ビクトルで見てみなよ』
なるほどね、ユニコーンを見る。
(種族 幻獣ユニコーン
名前 ユニミ
年齢 321才)
………うわぁ、ごめんて。ユニユニ考えてたら名付けが終わってた。ユニミって…ふふふっ、いやごめんてば。
『酷いよ?男型なのにぃ…』
えぇーーー、その話し方で?もしかしておねえ?
『何よーそれ』
ハクを見る。あ、目を逸らした。耳をかいて誤魔化してるな。
『よろしくねん、ご主人』
なんて?
(ユニミ アイルと契約済)
待て待て待て、契約?何でやねん!
『幻獣は名付けイコール契約よ』
片目をつぶるユニミ。聞いてないし!
『言ってないわよ、ふふふっ』
ハクさん?知ってたの?あっ聞こえないフリしてるわ。ナビィも耳をかいて誤魔化してる。ブランは羽繕いしてるし、ベビーズは必殺の寝たふり。
なんかイリィの顔が思い浮かぶ。今度は何を引き寄せたの?ねぇアイ…ってね。目が笑ってない笑顔で。怖っ。無理無理。無理だから!
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