240.そして温泉へ
そろそろいいかな?みんなを箱庭に呼びに行く。
「外で待ってたんだ?」
「楽しみで」
「待ち遠しくて」
「嬉しくて」
そうなのか。
『アイリー今日は一緒にね!』
「ナビィ分かってるよ」
その首を抱きしめて撫でる。柔らかい耳もさわさわ。
可愛い。
「もう行くよ?」
みんなが頷いたので温泉に行く。
シュン
はい、着いたよ。また賑やかだなぁ。外と繋がった空間は。
(来たよ)
(来たよ)
(聖なる子)
(優しい子)
(音楽を聴かせて)
(聞かせて…)
光が舞い踊る。
「これは…なんて幻想的な」
夜空に精霊たちの光が舞っていてきれいだ。
「こんなにもたくさん…」
「アイだから」
「イルだから…」
なぜかハクとナビィがドヤ顔だ。
「エリ、音楽が好きなんだよ、彼らは。一緒に演奏して」
神妙な頷くエリ。私はオカリナを、エリはランカを取り出す。私の演奏に乗せて、エリがランカを奏でる。
切ないその音調は夜空に響き渡った。
曲が終わると
(きれいな音)
(優しい音色)
(素敵な演奏)
(イグニシアの楽器)
(懐かしい)
(ありがとう)
(ありがとう、アイル)
(ありがとう、イグニシアの子)
(祝福をあげる)
(祝福をあげる)
光が飛び交って私とエリ、イリィやロリィにも降り注ぐ。ここはいつでも穏やかで賑やかだ。
みんなが笑顔になって、建物に入った。休憩所を抜けて脱衣室へ。
いつも通りロリィとエリが脱ぐのを手伝い私も脱いで浴室に入る。
「今日は各自で髪と体を洗ってな!」
「背中は洗えない…」
「そこは手伝うよ」
相変わらずロリィとエリは覚束ないが、なんとか自力で洗い終わった。もちろん、イリィと私はさっさと洗って仲良くお湯につかってるよ?
眺めてたらなかなか面白かった。
みんなでお湯につかる。夜の露天風呂っていいよね?虫?もちろん弾いてるよ!
嫌いなんだ、都会っ子だから。
温まったから先に出る事にした。立ち上がるとみんなが私を見上げる。ん?私は昼間にも入ってるからね。
「ゆっくりして」
そうしてお風呂から上がって魔法で出した冷たい水を休憩室で飲む。
ぷはぁ、美味しいね。つい腰に手がいっちゃうよ。
休憩室に寝転がっているとハクとナビィがやって来た。
上から顔をペロペロするはく。隣でナビィも待ってるね。ハクが終わるとナビィは前脚で私を顔を固定して目を瞑って顔中をペロペロ。相変わらず激しいね?
やっと離れてくれた。垂れ耳が顔に当たって柔らかくて嬉しいよ?でもね…大きさね。大きくなったからね、手加減をして欲しいよ?
取り敢えず、顔はきれいにしてふぅと息を吐いてまた目を瞑る。
横にハクとナビィを感じた。
その頃、浴室では…
「温泉って凄いな」とエリアス。
「イルだからね…建物もお湯を引き込んだのもイルだって」とロルフリート。
「露天風呂だって楽しそうに作ったらしいよ?」とイーリス。
「「「相変わらずだね…」」」
意見が一致した。
「イーリスは、その…みんながアイルを気にいるのはやっぱり嫌か?」
エリアスが聞く。
イーリスはどう答えようか考えてから
「僕だけのアイでいて欲しいとは思う。でも、アイだから。仕方ないって想う部分もあって。精霊王の愛し子で、神獣に聖獣に霊獣に…高位精霊の加護にたくさんの精霊や妖精たち。独り占めは出来ないなって」
「「…」」
「ロルフとの事を知った時に、凄くショックだったよ。命を優先したのだから仕方ないって分かっても、受け入れたくなかった。でもね、アイは僕のそばにいる為なら許さなくていいって言ったんだ。そばにいる理由にしたかったのは僕なのにね…」
「イーリス、それは…申し訳ない」
「ロルフはアイを助けてくれた。分かってるよ…」
「何があったのか分からないが、色々と事情があるのだな。でも、イーリスがいると分かっているのに惹かれてしまうんだ彼に。なぜだろうか…」
「イルのそばでは自分でいられるから、かな。僕が貴族でなくても、研究者じゃ無くても。きっと彼は有りのままを受け入れてくれる」
「そうだね、僕が普通の見た目だったとしても変わらない」
「そうだな、わたしがイズワットであろうと、元王族であろうと…彼には関係ないんだろう」
「ハク様も言っていた。僕を僕として見てくれると」
なんと無くアイルがいる休憩室の方へ目線をやる。きっとのんびりと寝てるんだろうな。お互いに目を見合わせると頷いてお湯から上がった。
服を着て休憩室に入るとアイルは聖獣様と使徒様に挟まれて目を瞑っていた。
ふと目を開ける。瞬きすると
「お湯はどうだった?」
「凄く良かった」
なんと無くドヤ顔してそうだ。あまり表情が動かないのに考えていることが分かるって凄いな。
3人は顔を見合わせて笑った。
「ふふふっアイってば」
「くふぅっ…イル」
「くすくす、アイル」
「「「大好きだよ」」」
私は、お湯はどうだったってお風呂から上がったみんなに聞いたら急に笑い出して大好きだよ、と言ったから。少し驚いて、でも笑って
「私も…温泉いいよね!」
と言った。あれ?凄く残念な子を見るような目で見られた。なんでだろ。
みんなに冷たいお水(聖水 byビクトル解説)を渡した。美味しいよね?聖水とか知らないし。普通のお水だよ、ちょっと健康になるだけのね。うん、美味しいね。
「イル、このお水は?」
ん?ただのお水だよ?
「イル、言ったよね?考えてる事が何となく分かるって…」
うん、だからただのお水だよー。
「僕は鑑定が使えるんだよ?きっと聖水とか命の水とかだよね?」
な、なんのことかなぁ?スッと目線を逸らす。ハクをモフッとくかな。うん、良きもふもふだね。
『聖水だってー』
ハク…どうしてバラしちゃうの?全力で誤魔化してたのに。
「「「全く誤魔化せてなかったから」」」
えぇ…ショック。
しょんぼりしてたら
「アイだし」「イルだから…」「アイルだしな」
「「「何でもありでしょ」」」
ち、違うと思うよ?多分、きっと。
さて、そろそろ寝ような!
と思ったらナビィが人型になって飛びついて来た。あれ?成長してる。13才くらいかな?
「アイリの13才だよー」
やっぱり、うわぁ懐かしい。この頃はまだ髪の毛が短かったんだ、ボブだね。
ナビィの中身だと凄く甘えた顔が可愛い。私はそんな表情しないからな。
「えっ?誰…」
あ、エリは初めてか。
「ナビィだよー、アイリの13才の頃の姿」
黒髪に黒目だからね。
「えっ、えっ…」
「また機会があれば話するよ」
驚きながらもナビィをガン見しているエリ。そしてポツリと可愛い、と呟いた。
うん、確かにナビィの甘えた様子は可愛い。
私はそのおでこにキスをする。
「今日は添い寝だな!」
「うん!」
「じゃあみんなは箱庭経由で帰ってな。また明日」
「「「おやすみ」」」
さて、部屋に行くかな。と思ったら
ヒュン
ベルが飛んで来た。
「アイル!来たよ」
「ベル、いらっしゃい。お昼ぶりだね」
「ベル、待ってたよ」
だからハク、服!もう…ほらベルが真っ赤だよ。
あ…もうハクがベルを抱えて奥に消えた。どれだけ好きなの?
「アイリー、私たちも早くぅ」
「分かったよ」
抱っこをせがむナビィを抱き上げて自分の部屋に行く。灯を消してナビィとベットに並んで横たわった。
「アイリ、お休みのキスして…」
頬にキスをするとナビィは拗ねた顔でくちびるにキスして来た。
「アイリの意地悪…」
何度もキスをしてくるナビィ。そこは犬でも人でも変わらない。私はナビィの髪を撫でながら満足するまで好きにさせた。
私の胸に顔を寄せて目を瞑るナビィを腕に抱きしめて私も目を瞑った。
その温かい体は心地よくて…ナビィの魔力と私の魔力が交じり合って…すぐに眠ってしまった。
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