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異世界転移 残りものでも充分です〜  作者: 綾瀬 律
第4章 転移の真実

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237.ベル兄様

なかなか進みません…

 ふふっ、やっぱりベル兄様だ。私は安心して寄りかかって笑った。

 しばらくそのまま甘えさせてもらった。

「ベル兄様…さっきの転送?どうだった?」

「ん?アイル大好きって思ったら目の前にいた」

 えっとそういう事じゃ無くて…もう。

「アイル、ベルって呼んで?」

 兄様はいらないの?

「うん、ベルって」

「ベル?」

「うふっ可愛いね?顔が赤いよ」


 アイルは愛称の呼び捨ての意味を知らない。それはリベールが相手に番として認めて、と伝える愛の告白なのだ。


「もう僕のものだね…」

 ?何で?目をパチパチする。

「大丈夫…イーリスのじゃまはしないよ?」

「あの、ベル。さっきの転移?浮遊感とか、何かなかった?」

「何も?ただ思ったら目の前にいたよ。凄いね!」

 渡した指輪は私の魔力を探してそこまで私が引っ張るという仕組み。魔力依存では無く、ジョブによって作った私にアプローチするという指輪だ。

 ジョブを使うと認識されれば距離ももちろん魔力も関係なく飛べる。

 なんせジョブ絡みなら私の魔力は減らないのだから。


「もう少し離れて試してもいい?」

「もちろん!」

『ハク?』

 シュタッ。

『何?』

 今、何処から来たので?箱庭にいたような気もするけど。

『いつだってどこにいたって、アルの魔力は追えるよ!』

 それはまぁ、頼もしい?

『私を連れてナルダの町の近くまで転移出来る?』

『もちろん』

「ベル、ここから離れるからね。そうだな…3分後に試してみて」

「うん、任せてアイル」


 私はハクに転移でナルダの近くに連れていって貰った。

『リベールは曲者だねーもう、僕のアルなのに』

『?』

『番として愛称を呼ばせるなんて…アルも受け入れてるし』

『どういう事?』

『ベルって呼び捨てにした事』

『番?だって私はイリィの…』

『言ってたでしょ?森人は同じ人を好きになる傾向があるって。へんリベールは始めからアルをそういう相手として見てたよ』

 えーそうなの?どうしよう…。


 ヒュンッ

 目の前にベルが転移してくるとガバリと抱きつかれた。

「見えない場所にいると、少し怖いね。どこに行くのか不安になる」

 あ、そうなのか。少し震えているベルの体を抱きしめる。

「ベル、ごめん。何も考えずにお願いして」

「怖かったから…しばらくこのままいさせて」

 これは私が悪い。ハクもベルの足元に寄り添っている。それに気がついたベルがハクの背中を撫でていている。

 少しして体を離すと正面から私を見る。

「君が居なくなると思ったら凄く悲しくて…ちゃんと戻ってくるよな?」

 私の頬を撫でながら、目に涙を溜めて聞くベル。


 私はしっかりと頷いた。

 ベルはその私を見て淡く微笑むとキスをして来た。甘くて優しいキスだった。その手が私のシャツをまくって私のお腹を見る。

「可愛い」

 ちょうどおへそに付けたへそピ風のアクセサリーの所にキスをした。

 くすぐったいよ…。

「ねぇ、これは何?アイルの魔力を感じる」

「石に魔力を込めてあるから…」

 ベルは上目遣いで私を見ると

「僕にも作って欲しい。協力のお礼に」

 そんなのでいいならいつだって。

「すぐに作るよ」


 なぜか私のお腹に顔を当てたままのベルをそのままにして、ポーチから紫水晶のカケラを取り出す。

 自分の魔力を込めると、金具に固定しておへそに装着出来るように加工した。

『アルー、僕にも』

『ん?ハクにはおへそあった?』

『…』

『しっぽの先端に…』

 もふ毛で埋もれるよ?

『お揃いがいい…』

『分かった』

 ハクの分は輪っかになるように作った。

 それはナビィも欲しいって言うよな。もう全員分作ろう。ベルを抱きつかせたまま聖獣たちの分を作った。


「ベル、出来たよ」

 ベルは起き上がる前にまた私のおへそにキスをすると自分のシャツをまくった。

 細い腰が露わになる。

「着けて…」

 私は屈んでそのおへそに石をつけた。

「んっ…」

 悩ましい声出さないの、もう。

 イリィとは違うさらに細くて華奢な腰。おへそに付けた紫が映える。思わずそこに軽くキスをして、心の中でベルを守ってと唱えた。

「くすぐったいよ…」

「さっきのお返し…」

 もう一度キスをしてからシャツをおろす。


「直して…」

 甘えた目で見るベル。う、仕方ない。シャツをズボンに入れて身なりを整える。

 自分もだ。そして屈むと期待に満ちた目でハクが私を見ている。そのもふもふなしっぽを先端に輪っかになった石を取り付ける。

『やった!お揃いだ』

『お揃いだね』

 この時の私は人型になったハクのどこにこの石が着くのか知らず、後で驚くことになるのだ。


「ベル、魔力も減ってない?」

「減ってないよ」

「もう少し遠くで試してもいい?」

 また不安にさせるかな。

「ちゃんとそばに行けるなら…」

 私は自分の手を見る。


(問題なくジョブに絡めて距離に関係なく飛転移出来る)


 ビクトルによれば大丈夫だ。

「大丈夫だよ、私もベルを呼ぶから」

 嬉しそうに微笑むと

「ならいいよ」

 私はまたハクにお願いする。

『ハク、死の森までいける?』

『大丈夫だよー』

「ベル、待ってるよ」

 声をかけてハクと転移する。そこは温泉施設の外にある温室だった。


(来たよ)

(来たよ)

(可愛い子)

(優しい子)

(ここで休んで)

(休んで)


 妖精たちが賑やかだ。

『凄いね、増えてる!』

 そうなの?自分では分からないけど。

 地面に座ってハクを撫でならベルが無事にここまで来られるようにと思う。

 ヒュンッ

 ベルがいた。私を見て妖精たちを見てふわりと笑う。

「来たよ」

 そのまま私を押し倒した。上から顔を覗き込んで

「凄いね!この距離を…アイルの元まで。愛の力かな?」

 違うと思うよ?でも私は否定しない。ハクも隣でしっぽを振っているしね。


 すると

『リベール、僕と交わろう!』

 ベルに聞こえるように言った。驚いたベルは

「えっ?交わるって…」

「魔力循環だよ」

「ハク様と僕が?そんな恐れ多い…」

『ロルフとエリアスにもしたからね!』

「それなら…」

 ハクは素早く人型になると驚くベルを抱き上げてさっさと休憩室に入って行った。


 そりゃね、目の前で突然ハクが裸の人型になるんだからね。驚くよね。

 それならと私は折角だし1人でのびのびと温泉につかるかな。

 服を脱いで露天風呂に入った。

 うわぁぁぁ…染みるね。ふぅ、温泉は素晴らしい。

 目を瞑っているとぽちゃんと音がした。ん?目を開けると目の前に白銀の長い髪を背中まで伸ばしたきれいな男性が裸で目の前に立っていた。

 はい…?固まった。えっ、どうしよう。怖い。自分の体を抱きしめる。

 その人は私に向かって屈む。

「アイル、僕だよ?アーシャ」


 はい?アーシャ様…?背中の羽は?

「人型になる時はしまえるんだ」

 そうか、大きさを考えると邪魔そうだもんな。ってそうじゃなくって。何で裸なの?

「ん?温泉だから」

 そう言って私の目の前で温泉につかった。

「ふぅ…いいお湯だねぇ。ずっと入りたかったんだ。でもね、色々と制約があってさ」

 そうなの?

「今ならハクがあの子と交わってるから。2人きりになれたしね。いつもお風呂に入る時は誰かがそばにいる」

 それはお世話があったりするから。


 アーシャ様は手を伸ばして私の頬に触れる。ちゃんと温かい。

「僕は全部見てるからね?」

「…」

 とても恥ずかしい。ふふっと笑うと私に優しくキスをした。

「たくさん悩ましてしまったね…可愛い子。でもね、忘れないで。死なせる為に転移なんてしない。そんな風に思わせてしまったのは申し訳ないってアリステラ様が。心配していたよ、とても。でもね、我らはね。干渉出来ない。干渉にならない範囲で話をすることはギリギリ許される。きっとナビィはとても歯がゆいだろうね」

 ふわりと抱きしめられてアーシャ様の腕に包まれる。


 何度も考えたことだ。悪意はなくとも、気が付いてしまった。それを知らなかった事には出来ない。結果的に、どうしたって自分は無傷ではいられないのだ。

「そうだね、気が付いてしまったら君は見ないフリなんて出来ないよね。そこに大切な人がいると感じているのだから余計に」


「でも、本当に偶然なんだよ…言い訳にしかならないけど」

 そうなのかもしれない。私がイリィと出会い、ハクやブランと出会った事で白の森へ。あのタイミングに訪れる事になった。全ては偶然。でも本当に?

 私は律の叫びに聞こえる。生きたいという叫び。

 偶然でも必然でも、私はだからと言ってハクやブラン、イリィと出会わなければ良かったとは思えない。

 どれだけ生きたか、では無くいかに生きたか。それが大切だと思うから。


 私はアーシャ様にそっと抱きついて、大丈夫と呟いた。




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