表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転移 残りものでも充分です〜  作者: 綾瀬 律
第4章 転移の真実

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

238/431

233.お疲れ様

 エリアスは少し微笑んだ。

「エリは立派だよ、まだ若いのに。少ないとはいえ、イズワットの民を導こうとしてる。なかなか出来ないよ」

「アイル、ありがとう」

 本当にそう思ってるよ。良く頑張ったね。


 和やかに夕食が終わってホッとしていた。疲れるよね、ああいう交渉ごとって。

「イルは交渉は疲れるとか思ってるよ」

「アイルが色々するからなのに?」

「無自覚だから…作って丸投げ」

「それはまた…」

「登録に来てるだけマシ」

「ロリィ、それは…ね?目立ちたくないから」

「目立ちたくない人があの機械を作るんだ?」

「それがイル…誰かの為ならば」

「そうだね、それがアイルだ」

 私が慕う…という呟きはエリアスの口の中で消えた。


「お風呂…」

 やっぱりロリィだね。

 そのままエリの部屋でお風呂に入った。こちらのシャワーは細い水が出るだけだ。普通はシャワーが無くてお湯をすくって流す。

 私がレオとルドに作ったシャワーは日本の物に近いけど少し違う。水が出る穴が7箇所と少ないんだ。単に仕組みが分からなかったからね。

 ここのシャワーも同じで細い水が1本だけ出る。もちろん勢いは無くてチョロチョロしてる。


 箱庭のシャワーは正しく日本のザ、シャワーだからね。その感触に慣れないのかなって思ってたんだ。

 実際はそれプラス私の魔力だったけど。

 ここの宿はこちら仕様のシャワーだからね、洗って流して…。今日は疲れてるからか、ロリィも自分がやるとは言わなかったから、私がサクサクと洗って流して湯船につかる。ふぅぅ…。


 出発前にイリィから夜は箱庭でねって言われてるから箱庭で寝るよ。

 で、みんな一緒に寝てて分からなかったけど、例の時間の話。10分の1って寝てる時どうなってるか。

 2晩寝たけど普通に夜に寝て朝起きたんだよね。違和感なく。

 その謎をね?検証。だから今日はイリィとハクたちだけで箱庭で寝るんだ。

 出発までの時間は進んでるからね。たくさんイリィの成分を補給しないと。


「イルもお疲れ様…」

「ロリィもありがとう。話が早いよ」

「慣れてるだけ…たくさん登録したから」

 やっぱりロリィは凄いな、この若さで。

「若いのにな…」

「イルよりも7つ上だから」

「今は16だから6つだよ」

「そうだね…」

 優しく笑ってくれた。


「エリアスは何歳?」

 ロリィが声を掛けたらエリが固まってた。

「アイルは16?」

 そうだけど…何か?

「知らなかった。確かに顔はまだ幼なげだけど、あれだけの知識と能力だから」

「もっと上だと思った?」

 エリは頷く。そして決意を固めた顔で言う。


「イズワットでは18が成人だ。僕は未成年の君を…」

「この国では成人だよ。それに無理やりとかではないし」

「力づくではないが、断れないような状況だったし…」

「それでも合意の上だよ」

「未成年を抱く場合はちゃんとした誓約に乗っ取る必要がある」


 私は困惑してロリィに助けを求める。

「具体的には?」

 ロリィが聞く。

「その人を一生愛して守る」

「なら今でも違わないのでは…?」

「覚悟の問題。アイル、私は君を一生涯愛し続けると、イグニス様の元に違う」

 私の手を取って口付けて言った。お風呂の中なんだけどね?


 困ってまたロリィを見る。頷いて

「イル、彼らの愛は深い、よ。受け止めてあげて…もちろん、その前に僕の気持ちも…だけどね」

 あっ、ロリィに聞こうと思って忘れてた!伯爵の件だよ。

 と、その前にエリだな。

「エリ、私には大切な人がいて。それにこの先、何があるか分からない。同じだけの気持ちは返せないけど…それでもいい?」

「もちろん、返してもらおうなどと思ってない。ただ、僕の存在を認めて欲しい」

 私はエリの頬を撫でて

「認めてるよ、もう充分に…」

 そこにキスをした。良く頑張ってるよ、とてもとても立派だ。

「エリのひたむきな所を尊敬してる。だから自信を持って…」


「イルこそ自信を持って…」

 私?私は無理かな…確かにジョブもスキルも凄いけど、それだけだし。

 何をやっても律には敵わなかった。優秀に成りきれない、それが私だ。

 少し俯くとエリが私を正面から見て

「僕はアイルに救われた。そのことは忘れないで欲しい」

「そうだね、エリ。ありがとう、忘れないよ」

 例え体が消えてしまってもね。


 ロリィが後ろから抱きしめてきた。

「またそんな風に…」

 えっ?

「自分が消えてもとか思ったよね?」

 ロリィは超能力者?


(心話の力が進化したみたい。イルの考えてることがなんと無く分かる)

(え?閉じてても?)

(閉じてても…僕は嬉しい。隠し事は出来ないよ)

(それは年頃の男子としては色々と…)

(僕は気にしない)

 私が気にするよ…もう。ロリィの端正な顔と細い体を思い出したじゃないか。

(くすっ、いくらでも思い出して…僕の事)

 あ、ロリィにはバレてる。

(愛してるよ…イル)

 ドキッとした。ロリィのこういう直接的な言葉は初めてかも?


(自分を抑えていたから。でもそれではイルを守れない…僕を置いていこうなんて、考えないこと)

 私は返事の代わりに振り向いておでこにキスをした。

(そんなことしないよ…もうね)

 ロリィは私の頭を抱き寄せて耳に軽くキスしてから離れた。


 お風呂から上がると着替えて話をする。

「ロリィ、伯爵の件。ずっと聞き損ねてた」

「あぁエバルデルは母の保有する爵位。領地は従兄弟が継いでる。私は侯爵を継がない代わりに…予定通り母の爵位を継承した。母の実家は一代継承としてるから、私は領地も継げる。ただ、ラルフの事もあるから…飛び地の管理をしようと思って」

「飛び地?」

「婚姻した貴族家同士でそれぞれ自領の管理地を置くこと。お母様の屋敷はその飛び地にある…

 あそこはフィフスの領内ではあるけど、お母様の領地だ。カルヴァン侯爵家でも手は出せない」

 そうだったのか。


「お母様の領地はその後どうなるの?」

「私の子が複数いれば、その子が継ぐね…私とラルフの間には、子供を作らないから」

 えっ、そんな。だってラルフ様は…。

「ラルフの生い立ちに関係するから…複雑な出生でね。力のある家から圧力が…ラルフの血は残すな、と」

「そんな、だってあんなにロリィを…」

「侯爵家としてはアイリーンがいるからね、困らない。火種はいらない…お父様はそう判断した」

 火種なんて…。それでラルフ様は屋敷を出でゼクスに向かったのか。


「イル、そんな顔しないで…」

 でも、私とロリィに子供が出来たから…だから。

「違うよ、それは。私もラルフとの子を望んでいなかった」

 えっ?婚姻したのに?

 ロリィはエリを見る。

「私には生まれた時から一緒にいる弟がいてね…でも実の弟では無くて、従兄弟なんだ。彼の強い希望もあって、結婚した。でも、事情があって…」

「…こういう言い方が正しいか分からないが、仕方のない事が世の中にはある。気持ちは自分の意志で変えられない」

「そうだね、エリアス。人を愛する事を知ってしまったから…」


 しばらく沈黙が落ちた。ロリィが

「この話はここまで…で、エリアスは何才?」

「あ、僕は18」

 やっぱりまだ若いな…。

「アイルの方が年下だ」

 確かにね、でも意識は19だからな。

「私が一番年上だね…」

 充分若いけどね。だって22だよ?まだ大学生だよ。こっちの子は凄いよ、本当に。


「だから、かな?イルが可愛くて仕方がない」

「それは僕もだな。目が離せない…」

 落ち着きがないのか?思春期の男子だし?

「「何やらかすかと思うと…」」

 そっちか、ガックリ。

「くふっ…イルが…」

 笑わなくても。なんだかエリは優しい顔して見てるし。まぁ年上のお兄ちゃんだからな。よし、それでいこう。


「2人より子供だからね、お兄ちゃん」

 一瞬2人ともキョトンとしてから一気に真っ赤になって口元を押さえた。

「お、お兄ちゃん…」

「お兄ちゃん…ぐっ、なんていい響き」

 えっ?何でそうなるの?困らせようと思ったのに。


 2人が立ち直って?から解散する事になった。私はいったんロリィの部屋へ。少し話をしたら箱庭に移動だ。私が不在でも箱庭に入れるのか、とかね。イリィが検証してる筈。

 で、箱庭で会えたら私と同じ場所に戻れるのか。戻れたとしてその後に元来た場所にちゃんと帰れるのか。

 それは合流してからの検証。


 で、今はロリィの部屋でソファに座っている。

「ロリィが伯爵家を継いだのは何で?」

 ロリィは私をジッと見ると

「イルを守る為…自分の意志、だよ」

 やっぱりそうか。貴族家は存続の為にも人を場合によっては利用したり切り捨てたりする。それをさせないために、ロリィが当主となって私を正式に後援する。


 侯爵家だとシスティア様が引退するまでは、あくまでも後継者でしかないから。

 でも良かったのかな?

「いいんだよ、僕は色々な事を流されるまま受け入れてきた…初めてかな。自分の意志で決めた。その分の責任はちゃんと負うよ…それが僕の…」

 愛し方だよ…。最後の言葉は口の中でごく小さく囁かれたから、アイルには聞こえなかった。


 ロリィは侯爵家を継がず、私の為に伯爵となってくれた。どう報いたら?

「生きて…ただひたむきに」

 そうだね、頑張ってみるよ。ロリィ。

「僕はいつまででも待つよ…」


 隣に座るロリィの膝に抱き付く。優しく髪を撫でる手が好きだ。しばらく甘えてから起き上がって

「ありがとう、お兄ちゃん…」

 頬を染めたロリィが可愛かった。お互いに笑い合ってからロリィが私のおでこにキスをして

「イーリスの所に行っておいで…」

 私は頷いて箱庭に移動した。





もう少しでやっと今日が終わる


現在投稿中の

「長生き魔法使いは暇を持て余す」に登場するリオノールのイメージイラストを明後日の投稿に載せます…

よろしければこちらも…


※読んでくださる皆さんにお願い※


面白い、続きが読みたいと思って貰えましたらいいね、やブックマーク、↓の☆から評価ををよろしくお願いします♪


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ