229.料理は楽しい
少しは進む筈
出発は13日後
ロリィの屋敷に戻ると少ししてリベラが朝食の準備が出来たと教えてくれる。
今日はキビパンのサンドだ。ハムとレタスにトマティにチーズも入っている。
ハンバーガーも作りたいな。BLTサンドと揚げた玉ねぎを挟んだ淡路島バーガーだね。
食事を終えるとソマリに声を掛ける。イリィやロリィには伝えてあるからね。
イリィもロリィも、もちろんエリも料理は出来ない。イリィは作れるんだけどね、個性的な味でなかなかね。
って事でロリィは昨日採取した石の鑑定。イリィは家族と森作りで、エリはランカとオカリナ作り。
それぞれ出来ることをする事に。
厨房に入る。
「アイル様、よろしくお願いします」
「うんよろしくね」
「まずは何を?」
「鍋料理を教えるよ」
「鍋料理?」
「そう、この鍋だよ」
私は大きめの土鍋を出して言う。ソマリはしげしげと見て触って持ってみる。
「重いですな」
「土だからね、でも保温性があるからね」
ソマリは不思議そうに見ている。作る前にまず出汁作り。私はポーチから乾燥させた魚の身と骨を取り出す。
「それは?」
「魚の身と骨を乾燥させた物だよ。ソマリ、魔法は?」
「属性は火魔法だけですが一通りは使えます」
火魔法だけが上級か、でも使えるなら大丈夫かな。
「水魔法で水分を抜いて風魔法で乾かす」
私はお手本を示す。ソマリにも乾燥していない魚を渡す。何度か繰り返して凡そは出来た。
「これから寒い季節になるから、ある程度まで乾燥できたら後は日干しでもいいよ」
「はい」
ソマリはメモを取りながら聞いている。
「これを薄く削る」
身の方だけを風魔法で削る。これはソマリもすぐに出来た。
土鍋に水と魚の骨を入れて沸騰させる。そこに削った身を投入。踊るようにふわりと広がったのを確認して布で濾す。一番出汁だ。次にまた水を入れて沸騰させて布で濾して二番出汁。残った骨と身はまた乾燥させて砕いたらパンに掛けてもいいし、スープに入れてもいい。そのままお湯を注いで飲んでもいい。万能出汁だ。
ソマリは味見をして驚いていた。
「味がこんなに違うんですな」
まぁね、凄いよね?どうやって使うかはプロに任せるよ。
私は二番出汁を沸騰させ、そこに野菜を投入していく。その傍でお肉を引いてジンジャーとネギを入れて、下味に塩とさっきの出汁の残りを砕いたものを入れて捏ねる。しっかりと混ざったら一口大に丸める。
野菜がしんなりしたらお肉を投入。味付けは岩塩だけだ。野菜は葉物野菜のキャベチとニラっぽいもの、根菜の山芋にキャロッテ(人参)と芋だ。ちなみに芋は茹でて潰してこちらも扁平な一口大の丸にしてある。
煮えたかな?そう、肉団子塩鍋だよ。お肉を取り出して割ってみる。中まで火が通ってるね。
味見に一口…うん、ホクホクして美味しい。
ソマリにもよそって食べて貰う。口にしたソマリは熱さに目を白黒させてたけど
「美味しいです…なんて温かい」
「寒い季節にいいよ?家族とか親しい人となら鍋を囲んで一緒に食べるんだ」
「でも火はどうやって?」
「あぁ、簡易コンロで大丈夫だよ。土鍋は直火でいける」
ここの厨房は魔石コンロが組み込まれていて、天板が熱くなる仕様だから直火では無い。IHみたいなもんかな。仕組みは全く違うけど。
「鍋を囲んで…それはいいですな」
私は頷いて
「鍋は味付けとか具材が変えられるからね、それこそ無限に組み合わせられるよ」
「無限に…腕が鳴りますな」
だよね、楽しいよ。一応、基本的なレシピはいくつか教えておいたよ。水炊きとしゃぶしゃぶね。すき焼きは醤油がないから諦めた。後は牛乳鍋とかチーズ鍋とかね。そして〆にはあれだよね?小麦粉があるから作れる。こっちのはほぼ強力粉。本当は中力粉がいいけどまぁね、もっちりするけど作れるから。
そう、うどん。混ぜて捏ねて寝かせて…の時間がかかる過程は魔法ですっ飛ばしてね?
で、切るよ。きっとかなりもっちりだから少し細めにね。
別の鍋で茹でてから残り汁の想定で作ったお出汁に投入。卵を溶いて回しかければ卵とじ風うどんの出来上がり。芋から片栗粉を作る方法を伝えないとな。だってさ、餡かけの料理が出来たら応用がきくからね!
さぁうどんの実食って思ったら何か気配が…。振り向くとイリィとロリィ、エリにリベラ、キリウスにヨナまでいたよ。
「いい匂いが…」
「堪らない匂いだね」
「食欲をそそる匂い」
口々に言う。えっと味見する?って聞けば全員が即頷いた。もう少しうどんを茹でて、その間にさっき作った鍋も出す。先にロリィとイリィとエリに。
続いてリベラ、ヨナ、キリウスとソマリと私の分をよそう。
追加で茹でたうどんを今度は肉団子鍋の残りに投入。そしてほんの少しだけ、前に作っておいた片栗粉でとろみをつける。
食べ始めたロリィ、イリィ、エリはふうふう言いながら食べている。
「美味しい…」
「温かい」
「ふわふわ…」
感想が違って面白い。
食べ終わった3人の器にうどんを入れる。私たちは2つの器にお鍋と〆のうどんだ。
ふうふう、はふっ…うん、美味しいね。芋はホクホクだし山芋はほかほかだし、肉団子はやわやわだし、野菜とお肉の旨みが滲み出たスープも絶品。
さて、うどんはどうかな?ツルッ…美味しい!もっちりだけどこれは味が滲みてていいね。ほんの少しとろみがついてるのもうどんに汁が絡んでいいよ。
はぁ、やっぱり寒い季節はお鍋だね。
みんなも食べ終わってボーっとしてる。どうしたのかな?ロリィが
「体だけじゃ無く心まで暖まるね」
嬉しいな。
「その鍋の製法と料理の作り方も登録して」
これもなの?
「土で鍋を作るなんて画期的だよ」
イリィにも言われた。まぁ仕方ないか。
「その前にその道具ね」
あ、簡易コンロも自作だった。でも私は魔石使ってないからな。ロリィと相談だな。
「お昼ご飯になった…」
確かにもうそんな時間か。ロリィたちは居間にいるというので、ソマリに片栗粉の作り方だけ教えて私も居間に向かった。
「イルお疲れ様」
居間に入るとロリィに声を掛けられる。
「アイ、凄く美味しかったよ」
「アイル、革新的だね」
みんな褒めてくれる。嬉しいよ、故郷の味だからね。
「エリ、イズワットの食材って何かある?特徴的なもの」
少し考えてから
「魚をすりおろした?物を固めて…」
すりおろした?つみれかな。あれって練り物って呼ばれてたよね。生の魚を練る?で、固めて揚げるか茹でるのかな。すり身ともいうか。網とかでこす感じか?分からないけど、誰か出来るだろう。
「それも鍋に入れたら美味しいよ」
目を開いて私を見て、そして少し目に涙を溜めて
「ありがとう」
と呟いた。私が故郷の味を忘れたくないのと同じだからね。だって魚のすり身は私にとっても故郷の味だ。
「これからの旅にはとても貴重だよ、あの料理は」
「味付けとか食材はソマリに任せたから、ある程度は作り置きしてもらって保管しておくよ。みんなの持ち物にも入れておくからね」
「みんなの持ち物に入れておくとは?」
「エリアスは知らないよね、イルはね…空間拡張をアクセサリーに付けられるんだ」
そう言ってロリィが自分の耳を見せる。そこには私が渡したイヤーカフがあった。
「この中にはね、1人になっても困らないようにテントや毛布、着替えに食事まで入ってるよ…」
「はっ、えっ…テントや毛布に食事?」
「時間遅延が付いててね…」
エリが驚きすぎて口を開けて私を見る。私は肩をすくめるだけだ。
「ほら、アイは色々とね。やり過ぎだから…無自覚にやらかしてるんだよ」
「それはまた盛大なやらかしで…」
そこでやらかしやらかし言わないの。だってあったら便利だなってさ。ほら、防災グッズだよ。ね?
ニコッと笑ってエリを見たら
「やらかし…」
「安心してな、ちゃんとエリの分も作ってあるから!」
笑顔で言ったら何故か引かれた。ロリィとイリィに肩を叩かれているエリ。何それ?
「だから食材も持っていける…大丈夫。慣れるよ」
ロリィ、何が大丈夫なの?もう。むくれているとロリィが話を変えてくれた。
「午後は坑道に行って、アルミの採取と試作品の確認かな。エリはランカ作りと毛織物の確認を」
「はい、ロルフ様」
こうして少し休んでから屋敷を出た。
ちょうど淡路島に行ってて、食べ損ねたんですよね…淡路島バーガー
くぅ食べたい
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