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異世界転移 残りものでも充分です〜  作者: 綾瀬 律
第1章 異世界転移?
23/419

23.晶洞

名前の間違いがあったので修正しました

「なるほど…」と言ってロルフ様はジオードを持って考え込んでしまった。


「これはこの辺りの塊から?」

「はい」

 ロルフ様は手近な塊を手に取ってハンマーで叩く。あ…塊は細かく割れてしまった。眉間のシワが濃くなる。何故だ…そう言ってこちらを見る。

 別の塊を取って真ん中辺りにノミを当てる。そしてロルフ様を見る。

 その塊を渡すと真ん中辺りにノミを当ててハンマーで叩く。すると綺麗に割れた。うむ…手に取って唸っている。


 私は天然石が好きで集めていた。はじめは丸玉と呼ばれるビーズ。次に丸い形のスフィア。そしてジオードや笑瑪瑙。家にはそういう天然石の母岩に付いた結晶を飾っていたくらい。

 だからジオードを見ても特別驚きはしない。でもロルフ様の様子を見るとこちらでは知られていないのかな?鉱物も研究しているって言ってたし。


「君といると新しい発見があって楽しいな」

 ロルフ様は嬉しそうに言うけど…嬉しくない。私のスローライフが遠ざかって行くみたいだ。

 

 それからロルフ様は落ちている塊を集め始めた。私は壁をハンマーで叩きながらその音を聞いていく。もちろん、洞察力全開で。

 叩いた音が少し高い壁があった。わたしが手を伸ばしてやっと届くくらいの高さだ。その高さではノミを当ててハンマーで叩くのは無理だ。

 壁を見上げて考えていると後ろからロルフ様の声がした。

「どうした…?」


 振り返るとすぐ上にロルフ様の顔がある。仰け反りそうになった。近い近い。

 慌てて前を向きあの辺りの壁、裏側に空洞がありそうですと言う。背後からロルフ様の手が伸びてきて高い音がした辺りにノミを当ててハンマーで叩く。するとやはり裏側は空洞になっていた。


 灯りを…と言ってロルフ様がポーチを探る気配がしたので魔法で照らす。火魔法の応用で熱くない灯だけを出す。ぽわんとした光に照らされた空洞には見事な大きさの水晶が生えていた。そう、生えていたというくらい立派な結晶だったのだ。


 ロルフ様は私の肩に手を置いて背伸びをする。これは…そのままの体勢でしばらく固まっていた。そして我に返ると、

「採取しよう」

 ん?無理でしょ?その高さ。脚立とか無いし。

「大丈夫。私が肩を貸すから、私の肩に座って採ればいい」

 肩車?ロルフ様に??無理無理無理!何言ってやがるんですか。


 おもむろにロルフ様が屈む。拒否権なしですね…?

 もう色々諦めてその肩に跨る。ロルフ様、細いけど私の体重支えられるの?

「大丈夫だ。スキルがある」

 やっぱり心読めますよね?

「読めない」

 ………。


 私の足を掴んで危なげなく立ち上がる。細いのに意外としっかりした肩だ。安定している。

 そのまま壁に近づいたので、なるべく大きな結晶の根元にノミを当てる。そこからは筋肉痛との戦いだった。大きな結晶が7つほど取れたところで漸くラルフ様が軽く足を叩いて壁から離れて屈む。


 思わず座り込んだ。腕を上げ続けるのキツい。

 少し先に置いてある肩掛けカバンまで這って行って水筒を取り出し飲む。ふぅ。もう終わりだよね?

 ロルフ様を見ると結晶を真剣に眺めている。大きいもので長さ50cmくらいか、太さは10cm以上あるかな。

 一通り眺めて満足したのか、ポーチに仕舞う。そしてもう少し採掘したら戻ろうと言う。

 まだ採るんだ。ここまで来るといっそ潔いな。よし、あと少し頑張ろう。少しは持って帰れそうだし。


「戻るか」

 もう腕が上がらない…そう思った頃にロルフ様が言う。返事する気力もなく頷く。

 2人とハクは帰り始める。

 半分ほど戻ったところでふと何か気になって立ち止まる。ロルフ様も立ち止まり、つと手を伸ばした。


「ッ!」

 慌てて駆け寄る。ロルフ様の指には蛇が噛みついていた。ポイズンスネーク。ハクが唸ると牙を抜いて逃げていく。

 ロルフ様は崩れるように倒れる。地面にぶつかる前になんとか頭を抱える。目を閉じていて、その顔は真っ白だった。

 ポイズンスネークはハクが仕留めている。ロルフ様に自分の力を見せたくない…そんなことを一瞬考えてしまってすぐに助けられなかった。

 目の前で危険な状態の人がいるのに…保身を優先するなんて。自己嫌悪に落ちいる。


『アル、毒を抜かないと!』

 ハクの声で我に帰る。すぐにロルフ様の指を口に加えて毒を吸い出し、吐き出す。何度か繰り返してロルフ様を見ると体内に毒は残っていない。

 その後、念の為水の玉を出して消毒液で満たし、ロルフ様の指をそこに入れる。これで傷口の消毒が出来るはず。少しおいてから汚れた水は離れたとところに捨てる。


 ふぅ…安心して力が抜ける。そして、うわぁ…初めて人の能力を見てしまった。


ロルフリート・ハウゼント 22

ジョブ 研究者

スキル 鑑定、調合、創薬、体力上昇、毒耐性、睡眠耐性

状態  衰弱


 凄いなぁ。体の状態を見たら色々見えてしまった…ごめんなさい。

 ロルフ様て22才だったんだ。若いなぁ。ただ鑑定って私の能力も見れるんだろうか?

『見れないよー。人の能力は鑑定スキルの対象じゃないから』

 そうなんだ!良かった。

 でもロルフ様の状態は宜しくない。空を見上げる。そろそろ陽が落ちる。

『毒は抜けてるけど、まだ動かさないほうがいいよ。今日はここで夜を明かそう』

 だよね。私がロルフ様を背負って帰るわけにもいかないし。それに…。




 夢を見ていた。まだ幼い頃の…。

 私は領地持ち貴族の長男として産まれた。次期領主となるはずだったが、私は圧倒的に無口で人と話すのが苦手だった。

 それでも両親はロルフはロルフのままでいい、と言って慈しんでくれた。私が産まれた4年後に()が出来た。てとも小さくて可愛い弟だ。


 しかし弟は生まれつき体が弱かった。すぐに熱を出し寝込んでしまう。弟のために何かできないか…?

そう思って家の図書室で薬草について調べ始めた。


 その頃、薬草は組み合わせて使うという考え方がなかった。もっと効果を出すために組み合わせられないか。

 組み合わせのの研究をして、近くの治療院で使って貰った。そして効果があったものを弟に飲ませる。

 そうしている内に、やがて弟は少しずつ元気になっていった。年齢とともに体が出来上がったこともあるのだろう。


 もう私の薬は必要なかった。

 しかしその頃には薬草の研究自体が楽しくなっていて、そのまま研究にのめり込んでいった。


 弟、ラルフリートは賢い子だった。私と違って、そこにいるだけでその場を明るくするようなそんな子。やがて周囲も次期領主はラルフにと言い出す。

 長男はまるで社交が出来ず、領主には向かない。そんな陰口も言われた。


 両親も私が領主として領地を治めていくよりも研究を続けさせたいと思ったようで、私が15の時に正式に次期領主はラルフに決まった。

 私は申し訳なさで心が痛んだが、ラルフは兄様は私をその研究で支えて下さいと言って笑った。


 ラルフは間違いなく賢い子だ。でも社交が得意なわけではないし、ましてや領主になりたかったのではない。私のためなのだ。

 思っていることを口に出すのが苦手で、圧倒的に言葉が足りない私のために…あの子は努力して人付き合いが得意だと見せかけたのだ。


 そのことに私と両親は気がついていた。しかし気がついていることをラルフに悟らせないよう最新の注意を払った。

 賢いあの子のことだ、私たちが気がついていると分かったらもっと自分を追い詰めてしまう。

 そうして私は領地のために薬草の研究に没頭していく。

 ラルフはそんな私をいつも笑顔で見ていた…。




ジオードの成り立ちは想像で書いてるので事実とは異なります


※読んでくださる皆さんにお願い※


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