224.ものづくり
私は箱庭の自室でイリィと自分の髪の毛を取り出した。その2つ、金と銀の髪を半分ずつにして白蜘蛛の糸で編んでいく。金の中に銀をくるんで。この組み合わせは淡くてきれいだ。イリィを守ってくれるように、私も守ってくれるように、また2人が会えるように…心を込めて編んでいく。長さの3分の1まで編んだら毛先は整えて流す。
編み終わったら金具を付ける。これはピアスだ。片方ずつのピアス。お互いに引き合うように…その絆を確かめるように。
出来上がったピアスを手にくるみ、魔力を流す。すると水色に光った。これで私たちはいつでも一緒だよ。イリィ…必ず戻るからね。
作り終えて部屋を見回す。押入れを開けると布団が入っていた。イリィの匂いを残して欲しいな。後でお昼寝しよう。あ、それならせっかくだし…あれを作ろう。喜んでくれるかな?ふふっ。
よし、出来た。さて、居間に降りようかな。
階段を降りていくとイリィが作業の手を止めてこちらを見る。ちょうど何かを作り終わったみたいだ。
私を見ると嬉しそうに笑う。
私の作品は出発の時に渡すんだ。
「アイ、これ…」
イリィが渡してくれたのは私とイリィの髪の毛を束ねて根本を樹脂で固めた物だ。何だろう?
「ポーチに付けて」
あぁ、バックチャームみたいな感じか。凄いな。樹脂で固めたのは髪の毛だけでは無くサファイヤもだ。
普通に作品としてもきれいだ。
「ありがとう…」
凄くうれしい。ここでも私たちは一緒だね。イリィに抱きついてその柔らかな体を抱きしめる。やっぱり離れたくない。でも決めたことだから。必ずここに戻らなくちゃ。
頬にキスをして
「私の部屋に案内するよ」
イリィは嬉しそうに頷いた。
小さなその部屋には勉強机と布団が畳まれて置いてある。珍しそうに見てから
「これは?」
布団を指す。私は畳んである布団を敷く。
「寝る場所だよ」
驚いたイリィが
「ベットのベットがないやつだ」
笑ってしまった。結局、ベットが無くなってるよ?
それに気がついたのか顔を赤くして軽く睨む。だから可愛いだけだよ。
「一緒にお昼寝しよう?」
また顔が赤くなるイリィ。可愛い。
私は枕元にある物を差し出す。受け取ったイリィが広げて困惑している。
「これは?なんかとても開放的だね」
そうだろそうだろ、だって浴衣だからね。
「お風呂上がりに着る服だよ。着てみるね?」
私は服を脱いで下履きだけになり、浴衣を着て帯を腰骨辺りで締める。少し胸元ははだけさせて。
イリィは目をまん丸にして驚いている。
「えっ…それだけ?」
ん?そうだよ、浴衣だし。頬を染めて私を見る。
「僕も着たい…」
もちろん用意したよ?絶対に可愛いから。紺地の浴衣。服を脱いだその白い体に後から着せかける。そのまま後から袂を合わせて帯を締める。
前に回って襟元をくつろげ、胸元を少しだけ開く。ちょいワル風だ。
あれ?全くちょいワルになってないな…。顔を真っ赤にして俯いてるから。どうしたのかな?
「やっぱり凄く開放的な服だね」
慣れないとそうかも。締め付けがない分ね。
赤い顔のまま私の腰を抱き寄せるとキスをされる。
「もう、こんなに薄くて心許ない服を着せて…何をしたいの?」
何って和を感じて欲しい、かな。ってイリィの目が潤んでいる?あれ…開放的、薄くてっていやいやいや、違うから。そういう方向じゃなくて。
うっとりと頬を染めてさらに体を密着させる。お昼寝しようか?と耳元で囁くイリィ。そうだね、寝よう。とにかく寝よう!
その答えをどう捉えたのか。結局、昼寝は出来なかったのだった。だってね、イリィがね?裾を広げて胸元をさらにくつろげて、可愛いよといいながらあんなことやこんなことをね。
私も少し裾をまくって白い太ももを堪能したりね。
仕方ないよね…ってそういうつもりじゃ無かったんだけど…文化の違いって難しいな。
イリィが頬を染めながら
「アイのいた世界は確かに色々と進んでるね」
と囁いて昼間のトイレとかシャワーを思い出した私だった。
何か激しい誤解があるような?
気を取り直して服を着る(浴衣は封印)と、また物作りだ。
まずは防寒着。これは絶対に必要。それから帽子に手袋、ブーツ。その辺りは前にも作ったよ。
でもさらに温かくなるように帽子は耳当て付き。手袋もブーツも中に羊毛を入れて保温性を上げた。
肌着は全て白蜘蛛の布で、体の熱を逃がさない仕様だ。
他には魔石カイロとか七輪。七輪は暖房としても料理用としても使える。
ハク、ナビィ用にはもちろん靴だ。後はやっぱり帽子。お耳も寒くないようになってるよ。
動きを阻害しないような防寒着も作ったよ。これで寒さも平気な筈。
ブランには頭に載せる帽子。これはスピードスケートの選手みたいに頭にピッタリしたもの。風圧を受けても大丈夫だし、飛行にも影響しないから。
飛んでない時には体をすっぽりと覆うマント。もちろん内側は羊毛付き。
ベビーズにもハクに背中に固定する入れ物を作ったよ。中は羊毛と白蜘蛛の糸。魔石カイロ付きでポカポカだよ。
さて、性能を確認だ。
以下ビクトルの解説
(防寒着 魔獣の皮の内側に羊毛を施した大きさ自動調整機能付きの寒さを防ぐ上着
これがあれば氷河でも大丈夫 常に最適な体温に保つ
魔法や対衝撃機能付き
エスキモー帽子 羊毛からアイルが毛糸にして編んだ耳当て付き帽子 外側は魔獣の皮で寒さを感じない
常に最適な温度に調整 耳当ては音を増幅させて拾う
魔法や対衝撃機能付き
手袋 魔獣の皮の内側に羊毛を施した大きさ自動調整機能付きの冷たさを防ぐ手袋
これがあれば手は常に凍えることなく温かい
魔法や対衝撃機能付き
ブーツ 魔獣の皮の内側に羊毛を施した大きさ自動調整機能付きの冷たさを防ぐ膝下までのブーツ
これがあれば足は常に凍えることなく温かい
魔法や対衝撃機能付き
肌着 白蜘蛛の糸から織られた布製の肌着 別名クモシルク 肌に近い感触で肌と温度に同化する逸品
魔法や対衝撃機能付き
魔石カイロ 魔石に火魔法を封じ込め熱を発する仕様にしたもの 熱くないが温かい 遠赤外線
魔法や対衝撃機能付き
七輪 土で作られた素焼きの炭入れ 中には常に熱せられた炭が入っている 暖房にもなるし網を載せれば料理にも使える どんな環境でも炭の熱は消えない 魔法や対衝撃機能付き
靴(ハク、ナビィ用) 魔獣の皮の内側に羊毛を施した大きさ自動調整機能付きの冷たさを防ぐ足首までの靴 これがあれば足は常に凍えることなく温かい
魔法や対衝撃機能付き
防寒着 魔獣の皮の内側に羊毛を施した大きさ自動調整機能付きの寒さを防ぐ上着
これがあれば氷河でも大丈夫 常に最適な体温に保ち関節の動きを阻害しない
魔法や対衝撃機能付き
頭に載せる帽子(ブラン用) 頭にピッタリした魔獣の皮で作られた帽子 風圧を受けても大丈夫
魔法や対衝撃機能付き
マント(ブラン用)飛んでない時には体をすっぽりと覆う用の魔獣の皮で作られたマント もちろん内側は羊毛付き
魔法や対衝撃機能付き
ポーチ(ベビーズ用) ハクに背中に固定する入れ物 中は羊毛と白蜘蛛の糸 魔石カイロ付きで常に温かい
魔法や対衝撃機能付き
全てがこの世界で初の技術を詰め込んだ作品
値段が付けられないほどの逸品
またやってしまったね!)
…ビクトル、最後の解説はいらなかったかな?見えてないからね。私は何も。
だいたいさ、なんで七輪に魔法や対衝撃機能付きとかなってるの?要らないよね?
百歩譲って服は分かる。でも七輪にいるの?
食事、食事ですか?守りたいのは。なんだかなぁ…
作業をしていたイリィが手を止めて私を見る。
「アイ、出来たの?」
「えっ、うん。出来たよ。イリィ、着てみてくれる?」
ここはイリィを着せ替え人形にして目の保養をするぞ。ビクトルの解説は無視だ、無視。
「もちろん」
私はイリィにまず肌着を渡す。イリィはそれを見て私を見て頬を染める。
「アイ、そんなに僕を…」
いや、違うから。
「ち、違う。いや違わないけどこれは暖かい肌着で…」
「そうなの?またそっち系かと」
…どっち系ですかね?
イリィは服を脱いで肌着を着る。
「その上から普通に服を来てみて」
頷いてシャツとズボンをはく。驚いた顔で
「凄く肌触りがいいし暖かい?適温って言うのかな。肌に吸い付くみたいだよ。これは何の布?」
「白蜘蛛の糸で織った布だよ」
イリィが顔を上げて私を見る。えっ?
「うん?だから白蜘蛛の糸?」
「アイ…聖虫の白蜘蛛だよね?」
それ以外にはいないよね?
「肌着…白蜘蛛の糸の肌着…あり得ない」
だってさ、温泉の所にいつの間にやらたくさん住んでてね?糸をさ、直接私のポーチに転送してくるんだよ。溜まりまくっててね?着物を作るのに一反ってあるでしょ?あれがね、300反くらいはあるんだ。
あ、因みに糸から布にするのはポーチにそういう自動織り機の機能を組み込んだからね。
糸のまま残す分以外は布にして保管してるんだ。
「沢山あるからね!」
「アイそういう問題じゃ…白蜘蛛の糸の肌着…」
「イリィに着て欲しくて。だってその肌がさ、きれいでいて欲しいから…」
「だからアイ、そういう所」
ん?首を傾げる。
「服を送るのは…その、脱がすためって聞いたから」
はい?誰に?誰に聞いたの?イリィ。
「誰がそんなこと?」
「ベル兄が…」
あの儚げ美人さん、何てことを教えてるの?
「違う、いやその完全には違わないけど違うよ」
チラッと頬を染めた美形が上目遣いで見てくる。だから破壊力…
「違わないんだ…?」
くぅ、可愛いぞ。
「そ、それはそのイリィのそのきれいな肌を見たいのはね…仕方ないよ。だってこんなに可愛いんだから」
私まで赤くなってしまう。
相変わらずやり過ぎのアイルだった…
浴衣は開放的
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