218.その後
追記 明日の投稿にリベールとネーシアのイラスト載せます…
僕たちはその日1日、一緒に過ごした。彼は本当に優しい。でも仕事とかは大丈夫なのか?
心配になって聞こうと思ったら
「大丈夫だよ」
にっこりと笑って言う。えっ?
「俺のことを心配してくれただろ?仕事とかどうなんだろうって」
「どうして?」
「困ったような顔をしてたから」
くすってそう笑って頬を撫でる。分かるよ、言っただろ?ずっと見てたって。
僕は嬉しさが湧き上がってくる。それと同時に、この関係が続いてはいけないことも分かっていた。
突然、黙った僕を見て
「終わらなくていい。終わらせないよ?」
どうして考えてることが分かるの?驚いていると
「だからずっと見てたって言った。とても良く分かるよ、ラルは…俺の事、気になってるよな?」
僕は顔が赤くなる。
「だってあんなに気持ちよさそうな顔で…俺にしがみついてきて。欲しいんだろ?俺が…もっとそばにいたいんだよな」
愛おしそうに頬を撫でてキスをされる。離さないよ?
僕は何故こんなにも満たされているんだろう。彼のそばはとても心地よくて。それはハウラが僕の欲しい言葉を言ってくれるから。僕の欲しい温もりで包んでくれるから。
「言って、俺のことどう思ってるか」
えっ…どうって。そこで気が付いた。僕はハウラを…ずっとそばにいた兄様より慕っている?
そんなこと…。動揺した。そんなに簡単に人を好きになったりするのか?僕は。
ギュッとハウラが抱きしめてくる。その逞しい体はとても安心出来て、でもまだ知り合ったばかりだ。ドキドキする。そんなに簡単に落ちるような男だと思われた?
「好きになって。俺を、君の1番に。時間なんて関係ないさ…まぁ俺は5年ごしの想いだけどな」
顎に手がかかりハウラの見上げる。青い目は軽い口調とは裏腹にとても真剣で。張り詰めたような顔をしていた。僕はハウラを。でも…。
「言って…俺の事どう思ってるか」
唇が触れるくらいの距離で僕を見る。言って、囁く。息がかかる。頭が真っ白になって僕は喘ぐように一言
「好き…」
ハウラは目を見開き、一瞬泣きそうな顔をして笑った。とても嬉しそうに。あぁ、僕はこの人が好きなんだ。そう思った。
「今はそれでいい。俺はラルのことを愛してる」
軽くチュッと口付けをされ、頬を撫でられてさらに激しくキスをされた。僕は彼の背中に手を回して抱きついて、キスに応える。その柔らかな唇をもっと感じたくて…もっと、もっと。
「我慢してるのに、ラルは俺を煽るのか?」
笑いながら言う。
「ハウラなら、いいよ」
甘い笑顔で僕の腰を撫でると、止まらなくなるよ?と言う。僕は何も言わずにキスをする。
「ラルが可愛すぎる…たくさん感じてな?」
腰から太ももを撫でられ、唇は耳から首筋を愛撫して舌が鎖骨をなぞる。
手は下腹部へと伸ばされ、優しく撫でられる。
うん、ハウラ…も気持ちよくなって。彼の腰から手を撫で下ろす。
「ん、ラル…煽らないでくれ。壊してしまいそうだ」
「壊れないから、大丈夫」
「激しくして欲しいのか?ふふっ本当に可愛いな」
僕の腰を掴むと、一緒に気持ちよくなろうと呟いて僕たちはまた一つになった。
ハウラ、ハウラ…一緒に。
心も体も満たされてまどろんでいたらハウラが切なそうに
「明日は仕事に行かなきゃならん。ラルも戻らないとな」
「僕は誘拐されて…」
「ははっ、大丈夫だ。君の家には公爵家でしばらく預かると連絡してある」
「えっそうなの?」
「そういう事にした」
にやりと笑う。そんな顔もカッコいい。どうした?と聞かれたから
「そんな顔もカッコいい」
ハウラは口を手で覆うと、ヤバイな。と呟いた。
「一瞬たりとも離したくなくなる」
僕は真っ赤になった。可愛い、と言いながらまたハウラにキスをされた。
「一緒に職場に行こう。うん、実験の手伝いとでも言えば大丈夫だろう」
「ハウラは何の仕事を?」
「ん?俺は魔塔で働いている」
魔塔?凄い!魔術師の最高峰じゃないか。
「たいしたことない。俺が入れるくらいだからな」
そんな事ない。だって学院でも憧れの職場だ。僕は次期侯爵だったから関係なかったけど。
「俺は貴族と言えるのか分からないくらいの立場だからな。親は貴族の子だが、俺は貴族の孫だ。王族の血が流れているから学院には通えたがな」
だとしても、だ。凄いんだなぁ。改めてハウラを見る。男っぽいその風貌はさぞかしモテるだろう。女性にも男性にも人気があるはずだ。
なんだか心がざわざわする。何だろう?
「だから出自のしっかりした人間なら入れる。離したくないから、一緒に行こう。決めた」
朗らかに言う。あれ、ならここは。
「王都の公爵家の屋敷、その離れだよ。俺が使っている」
王都?そんなに移動したのか。
「明日は一緒に仕事場な。でも煽るなよ?研究室で押し倒したら大変だ」
「何で?」
「1人になってラルを抱いたことを思い出したら仕事にならないだろ?」
ハウラは平然と言ってるけど、本当に僕のことが好きなんだな。
でも公爵の後継とかどう思ってるんだろう。
「俺は何も。貴族に拘りはないからな。あ、無くはないか。ラルと一緒になりたいからな」
あ、僕は…もう結婚している。そして侯爵を継ぐことも決まっている。どうしよう、なんて伝えたら。
「ラル、そんな顔するな。言ったろ?見てたって。当然知ってるさ、結婚したことだって。新婚なのに、君のお兄様は君を置いて出かけた事も。俺なら絶対に離さないのにな。だから、どうしても話がしたくてラルが1人になる機会を伺ってたんだ」
知っててもまだ僕を思ってるのか?
「結婚する前に行動を起こせば良かったと思ったが、俺も簡単には王都から離れられないからな。機会が無くて」
「そうだったのか」
「ラルに手を出すようなヤツがいたら困るからな。見張も付けてる。公爵の孫でも他のヤツらは何か行動を起こすかも知れないから。
大方、次男か長女の子どもたち、俺の従兄弟だな。ヤツらは貴族に拘ってる。ラルが侯爵を継いで、かつラルとの子どもを自分たちとの間に授かれば公爵は間違いない、と思ってるんだろう」
バカらしい、と言う。ハウラは本当に貴族に興味が無いのか。
「俺自身は男爵だ。研究で叙爵されてな」
凄い、この若さで?
「凄いよ、ハウラ」
笑ってありがとうと言う。
「だからな、俺は貴族ではあるんだ。領地も無いし気楽だぞ?」
優秀なんだと改めて思う。それに比べて僕は何もない。不安になってその体に抱きつく。暖かくて逞ましい体は守られているようでとても安心する。
おでこにキスをされ
「また煽るのか?俺の可愛いラルは」
僕は満たされて溶かされてハウラのそばで心地よくその体温を感じていた。
不貞行為ではある。兄様の時とは違う。いや、攫われたから不可抗力とは言えるかも知れないが。
これからどうなってしまうのか、一抹の不安がよぎった。
「大丈夫だ。要は後継ぎさえいれば、な。ラルの侯爵家も、公爵の爵位も。ラルを守るためには一度、爵位を継いで欲しいんだがな。そうすれば保留の公爵は継げない」
そこで言葉を切ると不安そうな僕を見て
「悪いようにはしないしないさ。君の実家は力がある。敵対はしないさ」
ウインクする。そんな所もサマになっていてカッコいい。
僕は見惚れてしまった。自然な仕草で髪をかきあげる様子も、考える時は口元に手を置くところも。
粗野な話し方をしていてもどこか上品だ。やっぱり育ちだろうか?
ハウラから目が離せない。ジッと見ていたからか、ハウラはため息をつく。
「そんなに見つめられたら落ち着かないだろう」
あ、ごめん嫌だよね。慌てて目を逸らす。
ハウラは僕の腰を抱き寄せると
「違うよ、我慢出来なくなるから。俺の事もっと好きになって欲しいからな、見られるのは嬉しい反面、嬉しすぎて色々な反応がな?ほら…」
ハウラの下腹部に手を誘導される。僕は一気に赤面した。すると耳元でこれが俺の気持ちの現れだよ?
その激しい主張をするものを前にドキドキした。どうしよう、僕は少し変になってしまった?体が火照るし、なんだか落ち着かない。
ハウラの手が僕の体を撫でる。
ラルも感じてるんだな…。その言葉に僕は恥ずかしさで俯く。頭にキスをされ、本当に止まらない。と苦笑したハウラにまたキスをされ…。
またその腕の中で眠った。
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