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異世界転移 残りものでも充分です〜  作者: 綾瀬 律
第4章 転移の真実

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214.神聖の森

 イリィは目を開いてそれからまた泣き笑いのような顔で

「だからアイ、そういう所だよ…もう」

 私の頬を両手で挟んでキスをしてくる。何度も…その柔らかくて温かい唇を感じながら、離れる時間を思ってまた泣きそうになった。


 イリィが私を見つめて

「毎日、念話して…生きてるって確認し、たい…うくっ…ぐずっ…アイ」

 途中から言葉にならなくなって、ついにまた泣き出してしまったイリィ。私はイリィを抱きしめてソファに座る。膝に頭をのせて私にしがみ付くように泣くイリィ。その髪を撫でる。

 少し伸びたね、会った時も後ろは肩ぐらいで耳に掛かる長さで。今はもう少し伸びたね。後ろで結べるかな?想像したらなんだかまた泣きそうになった。


 その髪にキスして自分の少し伸びた髪を見る。イリィの耳を見てから考えた。うーん、気持ち悪いって思われないかな…でも魔力が含まれた髪だから。

 うん、きっと大丈夫。出発までに作ろう。

 ミストとミアとルイにも何か身に付ける物を。後はあちらで着る為の服かな。

 羊毛も手に入れたし、もっかもっかの服とか小物を作ろう。せっかくだしイリィの分も。ぜったい可愛いからな。うん、行く前に着せ替えして目の保養を楽しもう。


 イリィの匂いが付いた物も持って行きたいなぁ。服を交換するか。こっちの服はゆったりしてるから私の服でも着れそう。うん、イリィのエキスを感じないと干からびちゃうよ。

 なんか変態の思考になってそう。でも匂いは大切。うん、間違いない。

 ベビーズも寒くないようにポーチ作るかな?ハク、ブラン、ナビィにも靴とか帽子とかポーチとか。

 それぞれ子どもたちにも万が一に備えて色々と身に付けさせよう。

 イリィにも私の匂いが付いた物を渡したいなぁ。


 ぼんやりと考えていたらイリィが私を見ていた。まつ毛に涙が付いていて、それが光に反射して凄くきれいだ。その頬を軽く撫でる。

「アイ…」

 ん?何、イリィ。

「愛してる…だから必ず僕の所に戻って」

「私もイリィのこと愛してる。だから戻って来るよ」

 イリィは体を起こすとそのまま私を押し倒して…寂しさを紛らわすように私を抱いた。

 たくさん感じてイリィ、たくさん感じさせて…。


 イリィと抱き合った後、その肌から離れるのは名残り惜しいけど起き上がって服を着る前に洗浄する。ふぅ…後15日か。かなり余裕はみたけど間に合わないとか困るからな。でもあと少ししかない。少しでもイズワットの皆の暮らしを安定させて、新しい森を大きくして。

 楽園も出来たから、精霊たちにも協力して貰おう。2人で寄り添って、そこにハクもブランもナビィもミストもミアもベビーズも集まってもふもふに囲まれていた。


 扉が叩かれる。リベラが

「夕食の準備が整いました。食堂にお集まり下さい」

 と声を掛けて去って行く。私はイリィと手を繋いで部屋を出た。

 食堂にはエリとヨナが座っていて、キリウスは給仕だ。私もイリィと椅子に座り、そこはロリィが入ってくる。

「みんな、集まったね…始めて」

 そういう所がロリィは貴族だな。感心して見ていたよ。全てが自然なんだよな。私なら緊張しまくりそう。


「何、イル?」

「ロリィは本物の貴族なんだなって、改めて」

 ロリィは首を傾げる。そんな仕草すら気品がある。

「そう?自分では分からないけど…」

 イリィもお坊ちゃまだし、エリは王族だ。色々あっただろうけど、やっぱり所作がとても洗練されている。

 私だけ普通だな…。

「イルも上品だよ?仕草が」

 それは元が女性だからかも。

「食べ方もきれいだし」

 それはまあ人並みにはね。


 スープと前菜、サラダが運ばれて来る。私考案のスープストックがベースだから味がしっかりしてて美味しい。サラダはお魚の炙り焼きがほぐして入ってる。前菜は燻製したハムと卵にオリーブオイル(私作)に岩塩とバジルのソースがけ。

 これも美味しい。

 サブメインで蒸し魚。ソースはチーズ風味。付け合わせにザワークラウト風のキャベチ。サッパリして美味しい。

 メインはやっぱりお肉。ホエーにつけて柔らかくしたオーク肉で、塩と粗挽きのブラックペッパーにローズマリー。マッシュポテト添え。


 やっぱり本職の料理人は腕がいいな。どれも本当に美味しいよ。

 ロリィが上品にナプキンで口元を拭う。

「リベラ、食後の紅茶は居間に運んで…ヨナ以外はこのまま移動する」

「畏まりました」

 彼らが食器を下げたタイミングでロリィが指示をする。すかさずリベラが準備を整えに居間に向かった。

「行こうか…」


 ロリィの声掛けで食堂を出る。皆で居間に向かった。イリィの手は私の手をしっかりと握っていた。

 居間に着いてソファに座る。ロリィとエリが隣、向かいにイリィと私。

 リベラが淹れてくれた紅茶を飲みながら一息つく。やっぱりハクの報告からだよな。

 私はハクを見る。緩くしっぽをふりふり。うん、説明は任せたって感じかな。分かったよ。


「今日、ハクたちが白の森に行ってたんだ。そこでアリステラ様からの神託を貰った」

「アリステラ様の…」

「神託?」

 ロリィとエリが呟く。

 頷くと

「そう、私に北に行きなさいと…そこに答えがある」

 ロリィとエリが私を見る。私は続けて

「イグニシアの末裔と共に…」

 エリが目を見開く。

「僕…と?」

 ロリィが複雑な顔をした。

「ロリィもだよ」

 パッと顔を上げると

「僕も?」

 頷く。


「では皆で?」

 そこでイリィが俯く。それを見てロリィは察した。

「イーリスはここに?」

 私はその背に手を当てて

「イリィはここで待つよ」

 しばらく誰も口を聞かなかった。するとナビィが

『イーリスはアイが戻るための目印だよ』

「アイが戻る為の…」

『必要なこと』

 ナビィがまん丸な目でイリィを見つめる。イリィは決心したように頷いた。


「僕はここで待つよ」

「出発はいつ?」

「15日後」

『10月10日までに向こうに着かないと』

 エリは驚いて

「無理だよ、馬車で3ヶ月かかる」

 ロリィは考えて

「どうやって?」

『僕だよー』

 ブランが小さな羽を片方上げる。ブラン、可愛いぞ?

「ブランに乗って行けるところまで」

「しかしそれでも…」

『大丈夫ー馬車で1ヶ月の距離なら僕は5日ー』


「えっ?」

 乗れるのって顔だね。ついでにそんなに早いのって。

「ブランは白大鷹だよ。聖獣の」

「白、大鷹…?」

「今は出会った頃の姿だけど、大きくなってね…とても立派な美しい姿の大鷹なんだ」

 私は自慢げに言う。

 エリはとても驚いて

「イグニシアの王宮に掲げられた始まりの王、イグニシアの肩にいる鳥…」

 有名な聖獣らしいよね?こんなに可愛いのに。


「待って、アイル。君はとんでも無い事を…聖獣だよ?」

 そうだね。でもブランはまだ本当に小さな頃に助けた子だし。可愛いだけだよ。

「ちなみにハクは神獣だよ?ミストは霊獣の王だし。アーシャ様もいるよ!」

 ハクは胸を張り、ミストはポーチから頭を出した。そして左目に違和感を感じ…


『じゃじゃーん、僕がアーシャだよぅ』

 アーシャ様、そんなベタな登場…ないわ。じゃじゃーんなんて、ないわ…。

『あれ?反応薄いね?』

 いや、だからその登場方法がね…。

「アーシャ様?神聖国の世界樹、その周りに広がる神聖の森の管理者たる森の精霊のアーシャ様…」

 サッと跪くエリ。登場が陳腐、もといベタな事に驚いたんじゃないのな。

 ほぇー、アーシャ様ったらお偉いさんなの?


『イグニシアの末裔よ、頭を上げて…』

 厳かに告げるアーシャ様。

「はっ」

 顔を上げたエリ。でもアーシャ様を探すように見回す。声は聞こえても見えない?

『イグニシアは初代の王。創世の神、イグニスの子どもだよ。だから代々王の子にはイグニスの祝福がある。だいぶ弱まってるから声しか聞こえないんだね。精霊たち…この子に祝福を』


(祝福なのー)(あげるの)

(森の精霊の祝福)

(弱いけど祝福)


『ありがとう、子どもたち』

 アーシャ様ってばこんなに小さくてきれいなのにね?ド偉いのな…。マジマジと見てるとその小さな顔が近づいて来て唇に当たる。

 私はその小さな頭を指で撫でる。アーシャ様はその指に抱きついて羽をパタパタ。可愛い。

「アイルがアーシャ様を撫でて…アーシャ様のキスを…」

 エリが何かテンパってる?

「見えるようになったんだね」

「アイルが…」

 まだ何か言ってたよ。大丈夫?


「神獣、霊獣、聖獣、精霊…」

「皆、可愛いよね?」

「「…」」


 そう思えるのはアイルだけ、みんなの意見がまた一致したのだった。



※読んでくださる皆さんにお願い※


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