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異世界転移 残りものでも充分です〜  作者: 綾瀬 律
第4章 転移の真実

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213.ハクの報告

 イリィと客間に戻る。そこでソファに座って一息ついた。リベラさんが用意してくれた紅茶セットで紅茶を淹れる。ふわっと漂う匂いに癒されるな。

 口に含むとまた香りが広がる。うん、美味しい。

 足元からハクがソファに飛び乗ってきた。紅茶の匂いを嗅いでこちらを見る。

「飲むの?熱いよ?」

『大丈夫ー』

 横からペロペロ飲んだ。ナビィも顔を突っ込んで来る。はいはい、どうぞ。


『アル、報告があるよ』

「何?ハク」

『うん、あのねーアリステラ様から神託?』

 はいっ…何て言ったの?神託?

 イリィと顔を見合わせる。

『神託だよーアイリ』

「えっと、何て?」

『北に行きなさい。イグニシアに答えがある』

『そうそう、そう言ってた。でね、イグニシアの末裔と共にだって、ご主人』

 エリと?

『イーリスは留守番で、ロルフは行くの』


「イリィが留守番?何で…」

『分からないよ、アイリ。でもアリステラ様の伝言だから』

 イリィが泣きそうな顔をする。

「アイと離れるなんて…」

 私もだよ、だってイグニシアは遠いよね?

『イグニシアはここからまだまだ遠いよ。でも僕とブランがいるから…』

『イーリス、待ってて…アイリを。ここで』

『僕がいるからアルは大丈夫』

「子供たちは?」

『ルイをイーリスのそばに残すようにって』

 一番個性的な子だね。リツ以外では。


「イリィここで待ってて」

「アイ…ぐすっ…アイ…」

 イリィを抱きしめる。その柔らかな体を撫でながら、大丈夫だよと声をかける。泣きじゃくるイリィを抱いてその背中をトントンして。

 頭にキスをしてまた抱きしめる。私のイリィは本当に可愛い。その匂いを嗅いで首にキスをして…。

 泣き顔を上げたイリィがキスをしてくる。何度も激しく。そのままソファに押し倒されてギュッと抱きしめられた。

 イリィは私の胸に耳を付けて目を閉じる。


「アイの音。忘れないように…」

 トクン、トクン…

 いつもより少し早いその音が静かに部屋に響いた。


『ご主人さま、僕はここに残るよ』

『私もにゃの』

 最後は誰?しっぽがゆらゆら。ミア?

 すると声の無いニャー。話が出来るようになったのか。

 しっぽを高く上げてご機嫌で私に頭を擦り付けると最後にしっぽで頬を叩く。そのままイリィの背中に着地して香箱座りをする。

「イリィの側にミストとミアとルイが居るから。待ってて」

「毎日、想ってるよ」

 背中にミアを乗せたままキスをする。イリィと離れるのは凄く寂しいけど、でももっと生きたいと思ってしまったから。


 その為なら…でも凄く凄く寂しいよ。イリィ。涙が溢れてきて、止まらなかった。泣き出した私を今度はイリィが優しく抱きしめて背中をゆったりとさすってくれる。

 私はその体に抱きついて甘えた。

 今度は私がイリィの胸に耳を寄せる。

 トクン、トクン…

 あぁ大好きだよ、イリィ。離れたくないけど、今少し離れたら、その先はずっと長く一緒にいられるなら…我慢する。

 イリィの手が私の髪を梳く。少し伸びた髪はまたイリィに会うまで伸ばそう。そのまましばらくくっついていた。


 イリィが身じろぎしたので、体を起こす。

「ハク、出発はいつ?」

『まだ少し先。あちらに10月10日に着くようにここを出るよ。冬はあちらで過ごして、春には戻る感じだね』

「そんなに長く…」

 イリィと知り合ってからの期間と同じくらい離れてるなんて。また涙が出て出てきた。

「僕の19才の誕生日までには帰ってきて」

「いつ?」

「6月3日だよ」

 なら大丈夫そうだ。


 こちらの世界は1年が10ヶ月で、春が3.4.5月、夏が6.7.8月、秋が9.10月で冬が1.2月だ。

 私がここに来たのが6月はじめ、イリィに出会ったのも6月。感謝祭が8月14.15.16で今は9月のはじめ。


「ここからブランとハクでどれくらい?」

『馬車で3ヶ月って聞いたよ』

『馬車で2週間分の距離なら僕は3日かからないよ』

「馬車1ヶ月分の距離を5日として15日か。ブランがもし飛べなくなったら?吹雪とかで?」

『僕とナビィが走るよ!でもブランよりは時間がかかる。転移を繰り返せば、馬車1ヶ月分を7日かな』

「待った、ナビィは転移が…」


『大丈夫。アイリの元になら飛べる』

「あ、そういえばなんかユーグ様に貰ってたっけ」

『そうだよー』

「最後はハクで移動するとして、17日。余分を見て23日くらいか?」

『そうだね、だから15日後ぐらい?』

「後でロリィとエリにも相談しよう。ねぇ、ハク。何でさっき言わなかったの?みんないたのに」

『アルもイーリスも受け止める時間がいると思って。だから2人の時に話した』

 ハク…そうなのか。ありがとう。


 その首に抱き付く。頭にキスしてわしゃわしゃする。大好きだよ、ハク。

 イリィも横からハクを撫でてる。あ、しっぽで顔を撫でられてる。私も!

 バシバシ…ありがとうハク。


 そうだ、夕食後にまた集まって欲しいって、ロリィに伝えないと。


(ロリィ聞こえる?)

(イル、聞こえるよ…嬉しい)

(夕食の後にエリも入れて話がある。ハクの報告なんだ)

(夕食は軽めにして6時からにしよう。その後そのまま居間で話をしよう)

(お願い。エリには伝えておくよ)

(分かった…イル?)

(何?)

(こうやって話が出来て嬉しいよ)

(私もだよ…また夕食でね)


 私はイリィに

「エリに伝えてくる」

 と言ってナビィと部屋を出た。

「ナビィはどう思う?」

『アイリは死ぬ為にこの世界に来たんじゃない。だって私がここまで渡って来たんだから。死ぬ人に私を送り届けたりしない』

「ナビィ…」

『アイリは思い込むと周りが見えなくなる。もう少し周りを見て、頼って。いつだって、アイリの役に立ちたいってみんな思ってるよ』

「そうだね、ありがとう。ナビィ」


 エリの部屋に着いた。扉を叩く。

 キリウスが扉を開けて開けてくれる。

「アイル、中に…」

「いや、予定を伝えに来ただけだから」

「僕から話しがある」

 ナビィを見るとしっぽを緩く振っている。頷いて部屋に入る。キリウスはエリの後ろに控えた。


 ソファに向かい合って座る。

「僕のかつての国。イグニシアの事だよ。少し話をしたけど、この世界が創られた頃からある古い国だ」

 頷く。

「ごく一部の人しか知らない事。王宮に離れがあって、そのさらに奥。小さな森がある。鎮魂の森と呼ばれていて、王族のみが出入り出来る。そこに一本の木があるんだ」

「まさか…?」

「そう、イグニシアの生命樹だよ」

 私は驚く。国が崩壊してその生命樹はどうなった?


「僕も詳しい事は。ただ、逃げ出す時にこう叫ぶ声が聞こえた。「森が閉じてしまった」と」

 森が閉じた?まるで今の白の森じゃないか。

 私もロリィも、もちろんハクたちは凍った森に、人を拒む森に入れる。ならば…私たちなら入れる?

 それがアリステラ様の言うイグニシアに行けの意味?

 私は考えて

「その話はどこまで広げられる?」

「アイルに話ししたからイーリス、そしてロルフリート様までかな」

「ちょうど良かった。夕食の後に話しがある。食べ終わったらそのまま居間に」

「うん、また後で。アイル、君が鍵だよ…きっと」


 エリは真っ直ぐに私を見つめてからふわりと笑った。

 その顔を斜め後ろから見たキリウスが驚いてから泣き笑いの顔でエリを見た。

 どうしたのかな?ナビィが扉に向かったのでわたしもソファから立ち上がる。

 扉を開けてくれたキリウスは

「ご主人のあんな柔らかい笑顔は、初めて見ました。アイル様、ありがとうございました」

「そうか、良かったよ」

 私は手を振って部屋に向かって歩き始めた。


 部屋に戻るとイリィが迎えてくれる。ギュッと抱きしめられる。私も抱きしめてからその頬にキスをする。

「エリから少し話があって、後でロリィにも話するけど先にイリィに伝えておくね」

「何?彼らの国に関わること?」

「そうだよ。かの国の王宮の一角に小さな森があるんだって。王族しか入れない森。その森に生命樹があって、国が滅びる時に()()()()()()


「それって」

「うん、この世界が創られた時からある最古の国の生命樹…それと若木の再生。何か意味があるのか」

「それならロリィが詳しいかもね。どちらにしても、イグニシアへという神託と関係しそうだね」

「エリにはまだ神託は話してなくて、でもエリが教えてくれた。閉じた森、王族でもない私が入れるのか…まだ生命樹があるのか」

「そうだね…アイ、気を付けて」

「うん、ここに帰って来ないとな」

 私はイリィの胸に手を当てて言う。


 イリィは目を開いてそれからまた泣き笑いのような顔で

「だからアイ、そういう所だよ…もう」

 私の頬を両手で挟んでキスをしてくる。何度も…その柔らかくて温かい唇を感じながら、離れる時間を思ってまた泣きそうになった。




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