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異世界転移 残りものでも充分です〜  作者: 綾瀬 律
第4章 転移の真実

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212.ランカが奏でるもの

 エリが考えながら

「そう言えば、昔は国に住んでいた聖獣がランカを吹いた、という言い伝えがある」

「古い文献に音楽の元となったのは、聖獣が奏でる音だと…」

 ロリィも言う。

 私は頷いて

「だから全部で14個。私も手伝うよ?」

「「「ダメだよ」」」

 何で?早く終わるよ?


「イルが作ったら何が出来るか分からない」

「アイがまた無自覚にとんでもないものを作りそう」

「アイルは何もしないで」

 酷いな。言われたら作りたくなる。

「自分の分だけだよ…」

 サッサと作ろう。長さを変えて切って、糸で繋げて縦穴を開けて。せっかくだし全体に表面を磨いてツヤツヤに。あ、口元は少しすぼませて。持ち手の横に私のマーク付けとこ。私専用だよ!

 ほら、普通のランカだよ。


(アイル作のランカ 創世神楽器 ランカオウ《ランカの王様》 

 創世神(この世を作り出した神)が吹いた創世の楽器を再現した一品 神級遺物)


 …ワタシは何もシラナイ…


「さ、ハクのも作る?」

『エリアスに作ってもらうから大丈夫ー』

「ブランは?」

『エリアスに作ってもらうー』

「な、ナビィは?」

『エリアスにー』

「ミストは?」

 しっぽを振りながら目を逸らした。ミアはこっちを見もしない。

 ベビーズは…ハクのもふ毛に埋もれて見えない。リツは?ロリィが隠してる。

 いいさ、別に。ふんだ…。


「アイ…」

 イリィは私が作る?と思って顔を上げたらまた目が笑ってない。

「何を作ったの?」

「ラ、ランカ…?」

 私の腰を抱き寄せて頬を撫でる。ん?それでって聞いてくる。

「だから、ランカをね?」

 性能は?って耳元で。腰を撫でながら。

「少し高め?」

 ついににっこりと笑った…怖いですイリィさん。

「アイは少しの意味を理解してる?」

 首を傾げて聞く。


「も、もちろん?」

「きっと神物とか、遺物とか、そんな感じでしょう?あぁこの世界を創世した神かな?ねぇ?アイ」

 ナゼワカッタの…超能力かな?イリィは。

「イル、説明して…」

 横からロリィが至近距離で囁く。

 はい、ただ今…美形の笑ってない笑顔と真顔怖い。



 引用はビクトル

 アイル作のランカ 創世神楽器 ランカオウ《ランカの王様》 

 創世神(この世を作り出した神)が吹いた創世の楽器を再現した一品 神級遺物



「…」

「…」

「…」

「「「そんなことだと思ったよ」…」」

「エリ、良かったら使う?」

 高速で首を振られ、拒否された。

「イリィ?」

 にこやかに首を振る。

「ロリィさん?」

 真っ直ぐな目で

「無理…」

 はい、自分で使います。


 はぁ、どうしてこうなった…



「「「どうしてそうなると気がつかない!」」」

 3人はそう思った。



「見本のランカは出来たね。ランカウが育ったら作って。後はオカリナだね」

「アイル、作り方教えて」

 作り方、なんて教える?考えたら作れるからな。私は。

 イリィを見る。首を振られた。

「粘土、土の中でも粘性の高いもの。それを使って、中を空洞にした2つを繋ぎ合わせる」

「アイル、全く分からない」

 だよね。


 あ、繋ぎ合わせる前のオカリナを見せたらいいのか。吹く所は後から付けて穴を開けるんだったな。で、横穴も開ける。

 試しに粘土の層から土を少し採取。

 水で捏ねて形を作る。それを重ね合わせて吹く部分も付けて、穴を開けて…完成。

「エリ、吹いてみて?」


 ぴぃーーーーー


 うん、いい音だね。


(神の音色)

(神の音)

(聖なる響き)

(懐かしい音)


 エリが私を見る。首を振る、知らないよ?


(神器 オカリーナ 聖なる音を奏でる)


 何も知らないよ?私は。


「それはエリが使ってな!」

 エリがオロオロする。イリィとロリィはエリを見て頷いた。あれはきっと諦めろって意味だ。

 ふふふっ。

「イリィとロリィのも作ったよ?」

 ジョブでサッとね。お揃いだよ?にこにこして言うと2人とも受け取ってくれた。

 ふふふっ大好きだよ?


「イル、これは?」

「神器 オカリーナ 聖なる音を奏でる」

「「…」」

(アイ、夜が楽しみだね?)

(イル、お仕置きだね…)

「アイル、その…ありがとう」

 エリが笑って言う。

「こんなにも素晴らしいものを…僕なんかに」

「エリ、私は同情で誰かを抱いたりしない。我慢強くて、人の為に動ける人。辛い記憶から逃げずに先へと進もうとする人。そんなエリを私は尊敬している。その楽器を持つのに相応しいよ」


 エリは頬を染めて私を見る。

「「「だから、そういう所…」」」

 えっ、何が?



 イーリスは(アイは無自覚天然人たらし)

 ロルフは(イルは無自覚天然人たらし)

 エリアスは(アイルは無自覚天然人たらし)

 3人の意見が一致したのだった。



 そんな事は知らないアイルはエリってば照れて可愛いなんて思っていた。



「ん、これで楽器も取引に使えそうだね。後は毛織物かな」

「そうだね、小さなものならタペストリーとか」

「タペストリーって?」

「壁にかける装飾だよ」

「なるほど。小さなものなら作りやすく買いやすい」

「エリ、せっかくだしイズワットの伝統か、イグニシアに纏わる紋様とか使えない?」

 エリは少し考えて

「国では羊がシンボルとして使われていた。後は、雪の模様かな」

 なるほど。組み合わせられるかな。


「イリィ、横から見た羊、可愛い感じの。に雪の模様。背景に使って羊か、羊の体に模様を書くか。デザインしてくれる?」

 提案は出来るけど、私はセンスがないから。

 イリィがポーチから紙を出して軽く描いていく。うーんどちら少し違うか。

 私もポーチから紙とえんぴつをだして描いていく。羊はまん丸でもこもこしてて、角は内側にくるん。目は瞑っててまつ毛バシバシ。ちゃんと蹄も。体に雪の模様は違うな…角に小さく。おっ、いい感じ。


 それをみんなに見せる。どう?

「イル、その滑らかな紙は…?」

「アイ、そのペンは?インク要らないの?」

「羊可愛い…」

 絵を見て欲しいんだけど?

「えっと、絵は…」

「絵は文句無しでいい…エリアスはどう?」

「すごく素敵だから、僕も絵はこれでいいかと、エリアスは?」

「こんな素敵な絵、嬉しいよアイル。我が種族の伝統が残せて…ありがとう」

 頬を染めるエリ。可愛い。


「その紙」

「そのペン」

「「説明して…」」

 えっと何て言おうか?

「紙は木の繊維を煮てほぐして薄く伸ばして作る。ペンは中が炭で外は木。炭を木で包んで、こういう風に炭が見えるように削って使う。炭は隙間が多いからそれをギュと圧縮して密度を上げてるよ」

 あれ?反応がないな、分かりにくかったかな。


「木の繊維って?」

「炭って?」

「密度って?」

 そこからか…。

 で、プチ講義をしたよ。驚いてた。特にロリィが

「凄い!凄いよイル…」

 興奮してた。いつもより高いテンションで私の肩を揺すりその後は何やら考え込んでる。


「アイルは物知りだな」

 あちらでは普通の知識だけどね。で、絵はこれで決まり?

「エリ、これでいいかな?ここで作った物にはこのマークを入れる」

「イル、真似できる…」

「羊は外側を刺繍して、それを白蜘蛛の糸にしたら真似されても分かるよ」

 ふふふって顔をしたら変な顔をされた。


 3人は今度は何が出来上がるんだ?と思ったのだった。


「あ、エンブレムも作ろうよ!白蜘蛛の糸を使えば」

「アイ、ダメ」

「イル、めっ…」

「アイル、やり過ぎ」

 ダメなの?沢山あるのに。

「沢山あるとか考えてる?イル…」

「ダメだよ、すごく貴重なものなんだから」

「またとんでもない事になりそう」

「大丈夫だよー」

「「「ダメ!」」」


 いつの間に仲良くなったの?息ピッタリだね。

「じゃあ普通の糸で作ろうよ。服に付けるんだ!

 イズワットの紋様風の白の森近くで作られた特産だよ。それならいいでしょ?」

「まぁそれなら」

「そうだね」

「アイル、ありがとう。本当に嬉しいよ…」

 感動で目を潤ませたエリはやっぱり可愛い。良かった。色んな顔が見れて。少しずつ、普通の生活に慣れてるみたい。


「じゃあ毛織物を織る人も決めて、それも明日…エリアス、イーリスそれぞれ声をかけて」

「うん」「はい」

 これで彼らの生活は安泰だね。安泰か?

「当面は暮らしていける?」

「大丈夫、アルミは特産になる」

「ロリィは長く離れられないよな?いつ戻る?」

「言ったよ?イルのそばにいるって」

「でも…」

「大丈夫だよ…お金はたくさんあるし」

 真っ直ぐにこちらを見て言う。ならいいのかな。

「その話は夜に…」

 頷いた。


「夕食まで少し部屋で休む…」

 ロリィがそう言って解散。もちろん私はイリィと客間に戻ったよ。




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