209.束の間の平穏
僕はアイがしようとしている事を、何を考えているのかを知らなかった。
まさか、自分を生命樹の為に捧げるなんて…でも話を聞いて分かった。やっぱりアイは自分の為にではなく、誰かの為に動くのだ。
どうして?僕と一緒でいるだけではダメなの?分からない、でもアイは決めてしまったら揺るがない。
だから一緒に行くと言った。アイはダメだと言ったけど僕はもう決めた。
もう離さないから、そしたら納得してくれた。ロルフが良くて僕がダメなんて嫌だよ。
そばにいることを許されて良かった。僕はこんなにも君を想っているんだ。ちゃんと分かってるはずなのにね?
君は、1人でなんとかしようとしてしまう。
諦めて?死ぬ運命だった僕が、その運命を乗り越えて出会った番。僕はその手を離さないよ。
話し合いの後、僕はアイのそばにいる。今すぐ抱きしめたい。ロルフの屋敷の客間に移動する。
そこでアイを抱きしめた。僕の大好きなアイの匂い。柔らかな体。頬を撫でてキスをする。
目を瞑ってされるがままのアイ。受け入れてくれる彼の体は少しほてっていて、アイも僕を求めてくれるの?
たくさん求めて。たくさん感じて…その記憶に僕を留めて。
そのままアイをベットに運んで思いのままにキスをする。白い柔らかな肌も細い腰も全部、記憶に留めたいよ。どれだけ抱いても足りない。もっともっと…。
愛してる、愛してるよアイ。
いつもより積極的なアイは、僕に自分を刻むように僕を抱き寄せる。少し激しいその営みは僕に喜びだけをもたらす。2人で過ごす時間は全て宝物のようだ。
今という時間は2度とかないから。目一杯、慈しもうね、2人で。
やっとイリィが笑ってくれた。良かった。いつだって笑っていて欲しいんだけどな。だいたい自分が泣かせてる。でも笑顔に出来るのも私だから。たくさん笑って?イリィ。
話し合いの後、私はイリィと一緒に客間に移動した。イリィに抱きしめられ、たくさんキスをされる。大好きなイリィの匂いとその柔らかな唇を感じさせて、記憶に留めるために。
その後はね、ベットで仲良くしたよ。今日はなんだか気持ちが昂ってしまって、イリィをたくさんね。だってあんまりにも可愛い顔で見るからさ。
年頃の男子には辛いんだよ?その細い腰を抱きしめて…ついね。
まだまだたくさん愛し合おうね、イリィ。
午前中はそんな感じて2人で甘い時間を過ごした。そろそろアルミの採掘と彼らの住居について考えないと。
「イリィ、イズワットの彼らはここを拠点に暮らしていく予定なんだ。町と取り引きする為に、地中に埋設されている鉱物を採るんだけど。その際に地下に拠点を作ろうかと」
「彼らがそれで良いのなら。普通に暮らすにはやっぱり地上がいいよ」
「そうだよな…材料が問題だな」
「ロルフの家に何人か、使用人みたいに住まわせて、実家の屋敷にも何人か住まわす?」
「ロリィの屋敷は女性がダメだから」
「実家の屋敷ならお母様がいるから女性も大丈夫だよ」
「振り分けようか…」
「そうだね…エリアスとそのシア兄様は…」
「2人とも好意はあるけど…人として、かな。愛情ではないかもしれないけど、共に過ごせば違う絆が出来るかと」
「そうかもね。だって2人が想う人は…」
イリィが言いかけて止まる。ん?
「可愛い顔してもダメだよ」
してないけど…。
「だからそういう所だよ。無自覚天然の、さ」
余計に分からない。
「いいよ、それがアイだから」
いいのか?ま、いっか。だってイリィが優しく笑ってるから。
私も笑ってイリィにキスをする。
「さっきのさ、住む場所の話。エリとロリィにしてくるよ」
「一緒に行くよ」
私たちは連れ立って部屋を出る。
ハクたちは白の森に行ってるよ?色々と確認だってさ。なんだろうね?
ロリィは自室にいた。
部屋に招き入れられると
「イズワットの民の事?」
さすがはロリィだな。
「暮らす場所について。当面はここにも屋敷の掃除とかで数人、おけないかと」
「構わない。若くない男性なら…」
「ありがとう」
ロリィは淡く微笑む。まるで聖母のような笑みだ。
「エリアスも呼ぼう」
ロリィはリベラを呼んで、エリアスに伝言を頼んだ。
「イルはエリアスが、大人しく待つと思ってるの?」
えっ?どういう意味?
「新しい人生をくれた人を、彼が慕うのは当然。イズワットの愛は深い、よ…」
「?」
「君の言う通りに、他の人に自分を与える程度にはね…」
えっ、そんなつもりじゃ…。
「褒めてあげて…」
エリが部屋に入ってくる。私は思わず彼を見つめる。彼はその淡い水色の目で私をジッと見て、優しく微笑んだ。
「そんな顔しないで。ちゃんと分かってるよ」
私の頬を撫でて頭にキスをする。
「でも忘れないで、イズワットの愛は深く強い…」
揺るぎのないその眼差しは、まるで深い雪を溶かす春の日差しのようで。わずかに残る微笑みの名残が口元を綻ばせている。
その顔にみんなの目がくぎづけになった。
氷の彫刻かと思うほどの慈愛に溢れたその顔は、やがて来る眠りの中で私を照らす光となる。そう確信した。
エリは黙ってここに残る気なんてないって分かった。それがエリの選択なら、私は全力でここに帰ろう
私はエリの頬にキスをして
「いい目をするようになった」
「ふふふっ…大切な人が出来たから。僕は強くなれた」
私の頬を撫で、おでこにキスをして椅子に座る。
「驚いた…エリアスも笑うんだ」
「言ったよ?これを引き出したのはイルだって」
「こんなに魅力的なんだな…」
エリは少し恥ずかしそうに目を伏せて
「美形たちに言われても…」
だって。わかるよ!
うんうん頷いていたら
「アイはまた無自覚なの?」
いや、自覚してるが故さ。少しドヤ顔したら
「くふぅっ…」
ロリィか、笑ったのは。そちらを見ると
「くすっ自覚してるからだよって顔だね。君の顔は人を安心させてくれるのにね…」
美形は目に毒だって意味ならその通りかも。美形の中のモブって安心感あるよな。
今度は
「ぐふっ…」
誰だ、イリィか。一番の美形が吹き出すとか失礼な。
「イリィ、誰もが認める超絶美形が笑うとか酷いよ」
口を尖らせて言えば頭を抱きしめて耳元で可愛いだって。
「超絶美形…新しい表現」
「やっぱり隠蔽?アイルの隠蔽は形まで隠すから」
ロリィもエリも追随して来た。ふふふっ。
「アイは体の形を隠してるんだよね?ここで皆にも確認してもらおうか…くすっ」
それはどういう…?
「くふっ…」
次は、ってエリ?お腹を抱えて笑うことなの?
「みんなでアイルの体を確認しよう」
ロリィの手が伸びてきて横からはイリィの手が。エリは立ち上がって後ろから、って。
えっ待って…
「「「お仕置き…」」」
うわぁぁぁーーー。
その日、ロルフの屋敷からは悲鳴が聞こえたとか聞こえなかったとか…。
強制的(脅し?)に隠蔽を解除させられた私はみんなの前で霰もない姿を…でも、イリィに本気で泣かれて恥ずかしいどころではなくなり。
そのままイリィが部屋までお持ち帰りして散々怒られたとさ。
服着ていいかな?
えっ?隠蔽外してこの部屋では服着るの禁止って…えぇそれは困るよ。でもイリィのガチ泣きに思わず頷いてしまった。
ハクたちが帰って来てから凄く後悔したんだけど後の祭りだった。ならテントで過ごせばって思ったらイリィに怒られた。はい、ごめんなさい。
で、イズワットの話は?今からまた集まるって?じゃあ服を着て、待って…イリィ、服を着させて。
はぁ、服って大事。
で真面目な話。ロリィの屋敷に3人、イリィの実家の屋敷に4人(子ども1人含む)、鍛治師の人はテントがいいって言うので当面はテント。
採掘のための拠点が出来たらそこに住んでもらおう。
みんなが暮らしている付近からは西側、森に対して少し離れる方向に地下拠点を作り、その近くから採掘する。難易度はこそまで高くないから働ける男性陣で。
ここで問題なのはダーナムとシグナスをどうするか、だ。私についてはこの先が見通せない。サリーとラドはロリィの依頼だから、本人たちが断らなければ継続だ。
ロリィがこの4人に現状と今後について話をした。
私についてはボカシながらも、年単位で白の森の再生に取り組むかもしれないと伝えて。
ダーナムとシグナスはダナン様の指示待ちではあるけど、基本は私の護衛をするつもりのようだ。
まぁ、ダイヤモンド鉱山の事があるしな。
サリーとラドは楽しいからこのままでもいいって。でもさすがにそこまで長期なら家が欲しいとなり、それはダーナムとシグナスも同じだからと。
やっぱり家はいくつか建てよう。訓練場とかもいるし。
で、ロリィとイリィたちの屋敷を囲むように建物をいくつか作った。材料は主に土。
探索者コンビと軍人コンビの家、鉱物の倉庫、打ち合わせ用の部屋、織物とか楽器作りの部屋、苗を育てる温室も。温室は外と空間を繋げて、持っていた薬草をたくさん植えて…。
そしたらたくさんの精霊や妖精が集まって来た。
(私は森の精霊)
(私は花の妖精)
(私は木の妖精)
(私は生命樹の精霊)
(私は聖虫の蜘蛛)
(私は聖虫の蝶)
(((音楽を聴かせて)))
私はオカリナを取り出す。なんと無くイズワットを見ていて頭に浮かんだあの旋律。物悲しい歌。
〜〜〜♪
コン◯ルは飛んでゆく
オカリナの澄んだ音色が響き渡る。そこに途中から違う音が加わる。ランカかな?エリが拭いている。もう旋律を覚えた?
重なりながら音を奏でていく。
吹き終わると眩しいくらいにたくさんの光が舞い踊る。
(素敵な戦慄)
(素敵な音楽)
(また聞かせて)
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