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異世界転移 残りものでも充分です〜  作者: 綾瀬 律
第4章 転移の真実

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205.新しい馬車

「アール、実はこちらのアイルがお前たちの馬を助けてくれた。2頭だ」

 アールは驚いた。だって助けられた後に、君たちのだよね?と連れてこられたのは3頭だ。残りはもう助からなかったと思っていたのに。

「アエラも、もちろん」

 俺は涙が出て止まらなかった。ありがとう、見捨てた馬だがもちろん愛情はある。連れて行きたかった…。だから良かった。

 涙を拭う。

「それなら5頭、馬車に3頭使ってもまだ残る」

「案内を兼ねて、お前たちを送り届けてくれた探索者も一緒に来ている。馬車と馬に分乗して、森の近く、拠点に行く」

「はい!東門に準備出来次第、向かいます」


 ちょうどお昼どきだ。まだ少し時間がかかるならとロリィと市場に買い物に行く。

 凄いロリィが浮きまくってた。市民が集まる市場にね、いかにもな貴族が現れて。本人は全く気にせず堂々と歩いてる訳で。

 人を避けることなく歩くんだけど、道が割れるんだよ。お店は見やすくて良かったけどな。

 そばで

「好きなだけ、買っていいよ…」

 って言うから。私を見る目がね、囲われ者みたいで少し居心地が悪かったよ。


 でも、たくさん調味料が買えるたし、食材の補充も出来たよ。良かった。もっともお肉と魚は売れるほど有るんだけどね。

 こうしていい時間になったから東門に向かう。馬車には途中から乗ったよ。

 ふぅ、疲れた。ロリィが

「朝からお疲れ様だったね。馬車では僕に寄りかかって寝ていいよ」

 うん、そうする…秒で落ちた。だってロリィの体温とハクのもふもふとブランのふわふわとナビィのふかふかと…ね?


「…ル、イル…」

 ん…まだ寝る…。

「イル、イル…」

 ロリィ、まだ眠いよ。

「あと少しで着くよ」

 えっ?慌てて起き上がる。何処まで来た?

「あと少し…だから。僕のものなのが、ね。だから起きて」

 寝ぼけてるのか、頭が働かない。ん?僕のもの…

 あっ、そういう。


 ロリィが真剣な目で私を見る。頬に手を当てて優しくキスをする。いつもの柔らかくて温かいキス。一度離れて私を見る。そしてまたキスをする。何度も…しっかりと。私を記憶に止めるように。

 そして抱きしめられる。


 1人で頑張りすぎるから、繋ぎとめておかないとねと言って。

 そのままそっと抱きしめられた。

「着くまではこのまま…」

「ありがとう、ロリィ…」

 拠点に着くまで2人で寄り添っていた。

 ちなみに、エリたちは新しい馬車に乗ってるよ?流石にね、人前ではね。


 馬車が着くかなり前からイリィの気配を感じていた。待ってたかな?伝言は残したけど。

 馬車が止まって扉が開くと御者がロリィを降ろし、ロリィが私に手を差し出す。その手に掴まって降りたらイリィが泣きそうな顔で立っていた。


 イリィ?慌てて駆け寄る。

「…イ、アイ…僕…ぐすっ、ごめ…ぐすっ」

「イリィどうしたの?落ち着いて、大丈夫だから。何があった?気分悪いの?どこか痛い?」

 涙目で聞いたらイリィは泣きながら、だからそういう所だよって。何が?困ってイリィを見ていたら抱きついて来た。私もしっかりと抱きしめる。

 しばらくそのまま泣いていて、ようやく顔を上げると

「アイ…キスして」

 最後は消えそうな声で言う。えっ、ここで?どうしたんだろ…急に。

「いや、なの…?」

 そんな事ないけど急にどうして?

「してくれない、の?ぐすっ」


 えぇ、また泣いちゃったよ。オロオロしながらもイリィの頬に手を当てて唇を重ねる。軽く触れて離れる。イリィを見るとなぜか顔が赤い。

「イリィ、どうした…?」

「もっと…して…」

 良く分からないけどまたキスをする。離れようとしたらイリィがキスをして来た。しっかりと唇が触れ合って、大好きなイリィの匂いがした。泣きながらイリィが何度もキスをする。

 やっと離れると私はその頬を両手で包んでイリィを見る。


 目も顔も赤くて大丈夫かな?熱があるとか…。おでこを合わせる。特に熱くはないか。

「だから、そういう所だよ…もう」

 なんだかイリィが甘えん坊かな。そういえば

「イリィの家族は…どう?落ち着いたかな」

 イリィは顔を上げて頷く。

「うん、屋敷を見てから立ち直って。アイ、本当にありがとう。持ち出してくれて」

「出来ることをしただけだから…」

「あの、アイ。お願いがあるんだ」

「何?」

「ツリーハウスをまた置いて欲しくて」

「いいの?嫌な思い出しかないかと」

「それは違うよ!ごめん…僕たちみんな、アイに頼ってばかりで」


 そんな事は気にしてないけど、やっぱりやめた方がいいような気がする。考えていると

「大きな木だったからその周りに…」

「分かったよ」

 私は歩いていくとツリーハウスを出した。


ドンッ


 本当は自分が作ったものは残したくないけど、イリィがそこまで言うなら。

 それに、それなら私もお願いしようかな。

「イリィ、私もお願いがある」

「何?」

 ポーチからそれを出すとイリィに渡す。


「その花を植えて欲しい。森に向かってたくさん」

 その花が私への手向けとなるなら、嬉しいよ。律との思い出の花。咲くといいな…一面に。

「分かったよ、アイ」

 やっとイリィが笑ってくれた。良かったよ。




 アイが帰って来る。良かった、もう嫌になって帰って来なかったらって思って怖かった。昨日は久しぶりにベル兄様と寝た。1人が嫌で。やっぱりアイがいないと寂しいよ…。

 そして待ち侘びたアイはまだ日が高い内に帰って来た。

 ロルフの手を借りて馬車から降りて来るアイを見て、安心して泣いてしまった。

 アイはすぐに駆け寄ってくれて大丈夫って聞いてくれる。優しい声で心配そうに。良かった、まだ僕のことを心配してくれてる。

 でも色々な感情で上手く話が出来ない。それでもアイはちゃんと待ってくれる。


 思わずキスして、と言っていた。戸惑ったアイはそのままで、だから嫌なの?って。してくれないのって思ってまた泣いてたらそっとキスをしてくれた。

 嬉しくて頬が赤くなる。でももっとして欲しくて、もっとって。そしたらまた優しくキスをしてくれる。我慢出来なくなって自分から激しく求めてしまった。

 アイ、アイ…大好きだよ。




 イリィが落ち着いたから、少しロリィの屋敷で休む事にした。イリィは私が渡した種(市場で買った色々なヤツ)を持って家族の元に行ったから。

 屋敷に入るとロリィが

「イル、エリのことはどうするの?」

「やっぱり私じゃないかなって」

「エリの体は?」

「それは…」

「イル、逃げないで…また痕跡を消そうとしてる」

 あっ…無意識か。

「無意識?」

 多分な。

「ダメだよ」

「そうだね、本当にロリィはなんでもお見通し、だな」

「イルのはことなら…何でも知りたい」


 私はロリィの頬を撫でるとエリの元に向かった。

 扉を叩くとキリウスが開けてくれる。

「エリは?」

 どうぞ、と扉を開けると代わりに出て行った。


 エリはソファから立ち上がると私の方に歩いてきてそのまま私を抱きしめた。

「アイル、色々ありがとう…なんと感謝していいのか」

 何も、出来ることをしただけだ。それに、エリの体は治してない。

「エリの体を治せてない」

「もう、充分だよ」

 そんな訳がない。まだ痛むのだろう、時々、耐えるような顔をしている。


「ただ、どうか君を…」

「エリ、僕がすぐに居なくなったとしても、それでもいいのか?」

「君が僕の記憶に、体に残るなら…だからどうか」

 懇願するように私を見る。そして私に触れるとそっとキスをする。そして私をジッと見る。

 またキスをすると

「本当にダメなら、抵抗して…僕だって、君を抱きたい欲がある。止められなくなるよ」


 私は動かない。決められた運命ならば、限りある命なら、せめて誰かの為に使いたい。

 エリが私を抱きしめるその手は、触れる唇は震えていたから。だから、その背中に腕を回す。

 耳元でいいよ、と呟いて。


 エリは静かに耐えるように目を瞑り、それから私を抱きしめた後にするりと抱き上げた。お姫様抱っこだ。

 私は驚く、エリは力持ち?細いのに…。

「アイルは軽いよ…ちゃんと食べてる?」

 あっそうか、しばらく栄養を摂ってなかったから。


 ベットに降ろされて、ぎこちない手つきで私を抱きしめる。私もキスをするとエリの服を脱がした。紫色の肩に触れる。ビクッとしたエリはされるままだ。

 私はそこにキスをする。呪いが解けますように、と願いながら。

 そしてエリの腕をあげてそこを撫でる。火傷などのキズが無数にある。

「酷いキズだ」

「醜くてごめん…」

 私はそこを何度も撫でる。治れと願いながら…。

「醜くなんてないよ」


 そのまま今度は内ももを撫でる…そこにもキズがあるから。少し恥ずかしそうに身じろぎするが、なすがままだ。優しく撫でながら下腹部へ手をのばす。

「うんっ…」

 体を震わせて…私に体を預ける。

「アイルの肌は気持ちいい」

 良かった、そう言ってその背中を撫でる。手は腰から内股に触れる。治れ…全部、きれいに。

「アイル、君が欲しい…」

 私は優しく腰を撫で、体を重ねていった。

 私の背中に回された手はとても強張っていて…大丈夫だよ、怖くないと宥めながらゆっくりと一つになる。


 エリは涙目で、でも嬉しそうに笑う。素敵、だね。とても…温かいよ。その頬を涙が出て伝う。私はその涙を指で撫でるとより深く…。

 エリは泣きながら私に掴まり、何度も求めてきた。

 疲れて寝る頃には

「こんなに素晴らしいものなんだな…」

 と小さく呟いて春の陽だまりのように笑って目を瞑った。





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