表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転移 残りものでも充分です〜  作者: 綾瀬 律
第4章 転移の真実

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

206/429

201.バレた

最近、投稿時間がぶれぶれですみません…


 ロリィには色々と分かってしまった。でも安心している自分もいる。どこかで気が付いて欲しかったのかな?そんな自分が嫌になる。

 ロリィが一人で行かないでと言ってくれたのが嬉しい。嬉しいのに、喜んでいる自分は嫌いで。

 なんだか不安定だな、私も。

 そうだ、ツリーハウスももう要らないよね?回収しておこう。きっとイリィの家族にとっては嫌な思い出だろうから。


 またロリィと一緒に森を出て拠点に戻る前に食事。ロリィがちゃんと食べるのを見るよって言うから。

 だから久しぶりに料理。ホワイトシチューにオークのステーキだよ。いきなりガッツリは無理だから私はシチューと一口だけステーキ。

 ハクやブラン、ナビィにミストとミア、ベビーズはおお肉をたっぷりね。

 久しぶりに体に摂りこんだ栄養は染み渡るようだった。


『ロルフが一緒に来てくれて良かった』

『うん、アイリってばいくら言っても栄養はもう要らないからって、食事を口に入れるだけでポーチに捨ててたから』

『ちゃんと食べてって言っても聞いてくれなくて』

 いや、告げ口はどうかと思うよ?

「イル、メっだよ?」

「だって、私たちが転移したのは死ぬ為で。だから毎日は死に向かってる。なら味わうだけでいいと思って」

「それは違うと思う。ユーグ様は神の温情だと言った…死にゆくための転移だとは思えない」


 ロリィは言葉を選びながら言う。

「イル、何かを見落としているように思う。僕の力が必要。イルの楔…僕の役割を見落としてる、気がする」

 ロリィの役割?温情そして楔…何かが今引っ掛かったような?

 ダメだ、分からない。

「だから早まらないで…僕は意外としつこいよ?」

 どういう意味?

「離さないから」

 私は驚いて、そして笑った。

「ありがとう、ねぇ、ロリィ。一緒に町に行かない?」

「彼らを迎えに?」


 さすがだな…私は頷く。

「エリアスもキリウスもヨナも連れて行こう」

「彼らは自分の馬がある。ロリィは馬に乗れる?」

「貴族の嗜み…」

 やっぱりお貴族様は凄いな。

「彼らの馬に乗れたら、私も乗せて」

「でも、エリアスたちがいるなら、馬車がいいかな。私の馬車なら…貴族の紋章を掲げられる」

「あぁ、入るのが問題だったな。なら馬車で」

「案内がいるから、サリーとラドにも…」

「そうだね」


 拠点に戻るとエリアスに声を掛けてサリーとラドにも話をする。

「そろそろ行かないとヤバいと思ってたんだ。ここに帰ってくるか?」

「イル、町にしばらく滞在しよう。イーリスとは別行動になるけど…」

「そうだね」

 エリアスたちの今後についても、ある程度決めないと。すぐには難しいだろうし。

 こうしてエリアスたちを連れて、町に行くことにした。行きはラドとサリーは馬に乗って行く。あの蘇生させた馬だ。


 ナムとシグ、リベラとソマリにも声を掛けて出発した。馬車と馬だが、夕方までには町に着くだろう。

 馬車には私とロリィが隣り合って。向かいにエリアスとキリウスとヨナはエリアスの膝の上だ。

 床にハクが寝そべり、ナビィは小さくなって私の膝。ブランは肩でミストとミアは腕のポーチだ。

 ベビーズはナビィと一緒に私の膝で、リツはロリィの膝。アイリーンはロリィのポーチの中で収まっている。

 少しずつ暮れていく空を馬車から見上げた。





 シア兄様は打ちひしがれて蹲ってしまった。でももう言葉は戻せない。兄様の体を起こして屋敷に戻る。

「ご飯を食べよう」

 と言ってもアイが渡してくれた食事だ。

「これもアイル君が…」

 しんみりとしながら食事を終えて、居間に移動する。

 紅茶を静かに飲みながら、ゆっくりとした時間は過ぎていった。


 シア兄様が立ち上がって

「森を作ろう。ツリーハウスの周りに植物を植えて」

「そうだな、少しだけでも植えよう」

「そうね、私たちは森と共に生きる種族」

 良かった。これでアイも喜んでくれる。そう思って屋敷を出た。そして、あっ…。


 ツリーハウスは無くなっていた。始めから何も無かったように。そうか、アイは僕たち家族には辛い記憶になると思ったんだ。

 枯れた木も草もしまっていたじゃないか。どうしていつも僕は気が付かないんだろう。


 アイは…?見つからない。ロリィの屋敷を訪ねる。するとリベラが出て来て

「ロルフ様はお出かけです。助けて町に送り届けた彼らの保証人の件で、アイル様と」

 そうだった。僕たちはエリアスの事すら放ってしまった。助けた人たちも、だ。

「エリアスは?」

「ロルフ様とアイル様が」

 まただ。僕たにはまたアイに負担をかけて、ぜんぶアイがやってくれる。なのに僕たちはアイを傷付けるばかりで。


 アイがどんな想いでツリーハウスを片付けたのか。どんな気持ちでここを離れていたのか。何も分かっていなかった。

 僕はロルフの屋敷を後にした。アイが傷付いてここを離れた時に、そばにいたのは僕じゃない。

 アイがエリアスの為に町に行く時に、そばにいるのも僕じゃない。

 僕が辛い時はアイがそばにいるのに…僕は。何もしてあげてない。

 小指の蔦模様を見る。僕たちは家族なのに。


 またしても皆が呆然としていた。

「アイル君は…?」

「町に…エリアスと」

「あっ…」

 シア兄様が口ごもる。忘れていたのだ、彼らの事を。

「森を作ろう、一から自分たちの手で」

 ベル兄様が言う。

「そうだな、自分たちでやらなければ意味がない」

「そうよね、無意識に頼ろうとしてたのね…」

 僕たちは頷き合うと持っていた種を植え始めた。もう、それしか無い。自分たちの森なのだから。




 アイルは本格的に暮れはじめた空を見る。もう少しかかるかな?

「町が見えたぞ!」

 サリーの声だ。なんとか暗くなる前に着けそうだ。

 やがて門に着いた。貴族の紋章を掲げたこの馬車はフリーだ。サリーやラドは探索者だし、問題なく通れる。衛兵には探索者ギルドに連絡をして貰う。


 馬車は町中を進んで行く。仕事から帰る人や買い物客が帰るところか、たくさんの人が行き交っていた。

 馬車が止まる。外で何かやり取りをする声が聞こえた。

 やがて

「探索者ギルドのマスターです」

「開けて…」

 こういう時のロリィは貴族然としている。いや、まあ貴族なんだけど。

 御者が扉が開くとそこには頭を下げた男性がいた。

「お初にお目にかかります。ハウゼント子爵。ここナルダの町で探索者ギルドのマスターをしておりますノーベルと申します」


「ロルフリート・エバルデル、だよ。今は母の爵位を継いで伯爵だね」

「そうでしたか、存じませんで失礼しました」

「つい最近のこと、知らなくて当然だから…」

「寛大なお言葉、ありがとうございます」

「話がある、中に…」

「承知しました。中へご案内します」

 こうしてギルマスに着いて中に入る。やっぱり行き先は会議室。

 奥にロリィと私そしてエリアスたち。ヨナはエリの膝でキリウスはエリの後ろに立っている。ハクは私の膝に飛び乗り、ナビィはロリィの膝の上だ。

 もちろんブランは肩の上だよ?


「少し前、ここに来た人たちのこと…」

「8人、探索者が連れて来た者たちですな」

「ゼクスのギルマス、バージニアの口ききでひとまず町に入れて貰ったと聞く」

「はい、今はギルドの提携宿に監視付きで」

「助かった、よ。彼らの保証人に私がなるよ…」

「エバルデル伯爵様が、ですか?」

「そう。あ、彼がアイルだよ」

 ロリィが私を紹介する。なんで私?

 ギルマスが体を乗り出す。

「この町にも何か…?」

 ?何?

「発明品とか…」

「それがあれば、彼らは受け入れられる?もしくは…この先の空白地帯を占領したら、町と取引が出来る?」


 少し考えて

「商業ギルドと相談になると思いますが、多分」

 ロリィが私を見る。えっ?そしてふと思い付いた。

「この辺りも牛や羊を放牧しているけど、食肉にはしてない?」

「牛は牛乳用で、羊は毛を刈る」

「死んだ羊とかは?」

「不味くて食えん」

「工夫して食べられたら?」

「食えるなら助かるが…」

「それと刈った毛はどうしてるの?」

「冬用布団の綿に…」

「毛織物は?」 


「イル、待って…」

 ロリィがギルマスを見て

「少し相談…」

 頷くと席を外す。

「外にいます」

 と言い置いて。

 私はエリを見る。彼が身に付けていた服は毛織物が使われていた。

「毛織物」

 しっかりと頷くと

「女性の仕事…」

「糸を紡ぐことから出来る?」

「機械があれば…」

「多分、作れる」

「それを産業に?」

「それだけじゃ弱いから…染色しよう。糸にするか、製品まで仕上げるかはギルドが考える。でもエリの故郷の技術を継承出来る。それはとても大切な事。途絶えたらその伝統の技は失われてしまうから」

 エリはハッとした。そしてその目は強く輝く。


「一つはそれ、かな。肉は?」

「羊、特に成羊の肉は硬くて臭みがある。それを香辛料に浸けて…臭みを消す。それと、寒い貴様は香辛料で体も温まる」

「イル、出来る?」

「多分、ね」

「他には?」

「アルミニウム、かな」

「前に話してくれた鉱物だね?」

「磁場の影響を受ける場所にたくさん」

「ならエリアスたちが」

 そう、なぜかエリアスたちは磁場の影響を殆ど受けない。魔力の少ない人が多いって訳でもなく。エリは魔力がそれなりにあるけど、大丈夫だって。

 種族の問題かな?


「イルが作ったものに囲まれてたから、とか?」

「それだとサリーたちもだけど、辛そうだったよ」

「大丈夫ならその場所に住めばいい…彼らが望むのなら」

「我らには行く場所も、戻る場所もない。受け入れてもらえるのなら…」

「まずはアルミニウムと羊肉。この2つで町と取り引き、身分証の発行を持ち掛けよう。毛織物はまだ先…」

 頷いてギルマスを呼ぶ。




面白いと思って貰えましたらいいね、やブックマークをよろしくお願いします!

励みになりますので^^

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ