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異世界転移 残りものでも充分です〜  作者: 綾瀬 律
第3章 白の森と生命樹

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189.面白い旅

 俺は今、旅をしている。まぁ正しくは護衛任務中だ。貴族の護衛なんて正直外れだ。威丈高で偉そうで、気を使うし面倒しかない。

 それなのに何で受けたかって?そりゃ面白いからだ!

 実際に貴族の護衛なんだが、その実はアイルって言う探索者の少年のお守りだ。

 と言ってもこちらはなんて言うかな…めちゃくちゃいいヤツだ。いいヤツなんだが色々見境がない。

 もちろん、女癖が悪いとかじゃなくてな。やらかしがな…。


 危なっかしいからってお守りの護衛だ。その割に威圧感のある犬がそばにいてな?訳が分からない。

 俺もゼクスで気に入った女や男とはまぁそれなりに、な。上手くやってたさ。欲望には逆らわないタイプなんだ。

 だからアイルが1人なら正直、結構好みなんだがな。鉄壁の守りがいてよ。無理だな、あれは。俺ですら手を出す気にはならないくらいだ。


 最初は感謝祭までだったが、それが延期されてらさらに遠くの森まで行って欲しいと言われた。マジか、と思ったんだがな、話を聞けば悪くない。

 何よりアイツのそばにいれば美味いものが食えて、何かをやらかすから刺激的だ。


 その選択は間違ってなかった。フィフスで合流する前に魔獣の横断に当たったり、その後も襲撃されたりしたけどな。

 ロルフリート様も言葉は少ないが指示が的確だ。そして、何か驚くことがあっても

「アイル、だから…」

 その説明で全員が納得してしまう。それくらい面白いんだ。


 やっと旅に出て、驚くほど快適で順調な旅は、もうすぐ目的地という所でまた騒動が起きる。

 いや、期待を裏切らないよな。

 で、馬車で襲撃者を運んで欲しいと言われた。俺たちは馬車2台で襲撃者とケガ人を迎えに行く。

 案内は大鷹だぜ?意味分かるか?

 それもアイルだから、で済むんだからな…。


 そろそろ森を迂回して草原に、と思った所で大鷹が森へと誘導する。俺はラドに馬車に残るよう伝えて、ヤンと森に入る。

 大鷹に誘導されて森に入るとか意味不明だけどな、もう気にならない。だってアイルだし。

 少し進むと蹲る馬が3頭いた。近くにはもう動かない2頭の馬がいる。

 大鷹は動かない2頭に触れると、消えた。はぁ?

 ヤンは気にせず馬に駆け寄る。

 そして鬣を撫でる。


「脚をやられているな、立ち上がれない」

「これは仕方ないな…」


 もうこの馬を待つのは死のみだ。

 ところが大鷹が小さくなって(なんでだよ!)俺の腰に付けたポーチを突く。ん?

 また突く。そして思い出した。出発する時にアイルが持たせてくれた薬を。

 ごそごそとして取り出す。大鷹はピィと鳴いた。正解らしい。

 俺は考えることを放棄した。うん、何も知らない。


 そしてその薬を馬の口に試しに一滴垂らす。馬は舐めると体が震わせて、前脚を踏ん張り立ち上がった。

 ぶるぅ…と体を震わせる。何…が?

 いや、考えるな。気にしたら負けだ。言い聞かせて残りの馬にも一滴飲ませる。

 同じように立ち上がる。

 ぶるぅと体を震わせた。その鼻面をいつの間にか俺の肩に止まっていた大鷹に寄せる。大鷹は嘴で軽く突いた。なんか、今凄ぇドヤ顔してない?表情がないのに胸を張っているぞ。


 そうして3頭の馬を助けて馬車に戻る。それから程なく、人が見えた。大きい黒い犬はアイルのだな。

 転がされたヤツラと固まっている人たち。ひとまずホッとした。

 そこまで辿り着くと転がされた奴らを魔力縄で縛り、目隠しと耳栓もして再び転がしておく。


 その間にロザーナとヤンがテントを建てて(開けば組み上がる)食事や用意をし(すでに出来ている)

 机と椅子を出し(簡単に組み立てられる)彼らを座らせる。俺たちの分もちゃんと椅子があるところが彼らしい。


 出来たての(だから何でだよ!)スープを皿によそってパンを配る。

 俺たちの分の用意も出来たから

「温かい内に食べてくれ。俺らを呼びに来た人からの差し入れだ」

 ポカンとしている。それはそうだろう。突然、死んだと思った馬が3頭も元気で戻り、テントが出来て椅子も机もあって。温かい食事まで。

 そら驚くわな。


 しかし、1人が食べ始めれば早かった。

「お代わりもあるが、急に食べすぎるなよ。腹壊すぞ!」

 俺も経験がある。迷宮でまともに食べずに戻り、たらふく食った後に大抵腹痛で苦しむのだ。いくらスープでも同じだろう。

 それでも空腹が勝ったのか、ぱくぱくと食べていた。もちろん、俺たちもお代わりしたぞ?


 そして、箱だ。そう、箱。何だよ箱ってって思うよな。箱だよ…シャワーとトイレの付いた。ごく僅かな荷物しか持っていない様子だからとアイルに待たされた衣服。きっちり8人分だ。

 石けんと体を拭く布も渡す。使い方は簡単だから説明してやると、何人かで入って行った。

 俺たちも自分たち用のシャワーに交代で入る。

 野営は不潔になりがちなんだがな、これで快適そのものだ。頭が痒くなるのは辛いしな。


 そうして出て来た彼らをみて驚いた。いや、本当にアイルといるとマジで面白い。





 遠くに馬の蹄の音が聞こえた。馬車だな。しかし、この音は…まさかな。森で脚を取られて倒れた馬たちを見捨ててここまで逃れて来た。囮に使ったのだ。きっと木の根に躓いて脚をケガしたに違いない。

 許してくれ…子供の頃から一緒に過ごした馬を想う。最後に寂しそうな嘶いた声が忘れられない。

 不覚にも涙が溢れそうになる。

 すると

 ヒヒィーーーーン。

 まさか…この声は、そんなことが…あぁ。涙が頬を伝う。泣いても、いいだろうか?今だけ、どうか…。

 柔らかなしっぽが私の頭をさわりと撫でる。わたしは声を出して泣いた。





 その日、私たちは馬車1台で白の森に向かった。ロリィとリベラとソマリは馬車に乗り、私はハクに、イリィはナビィに乗って歩いて行く。森はかなり遠くから見えていた。そして、ロリィたちの顔色が悪くなってくる。

 イリィ、マルクス、私は平気だ。

 馬車を止めて休憩した。


「やっぱりアイは凄いね」

 ん?何が…?

「この辺りは磁場が強くて、魔力待ちには堪えるんだ」

 マルクスが教えてくれる。白の森の森人たちは大丈夫らしい。なんで私は大丈夫なのかな。

「アイはね、ほら癒しが…」

 あぉ、なるほど。

 でもロリィには効果なかったかな。

「効いてるよ、普通なら起きていられないくらいツライからね。少し気分が悪いくらいなら効果は充分あったんだよ」


 青白い顔で辛そうなロリィは私の膝枕で目を瞑っている。その細い髪を撫でる。ほほをさすって肩を抱く。

 私は思い付いてパウンドケーキを取り出す。

「マルクス、紅茶淹れてくれる?」

 香り高い紅茶が入るとパウンドケーキを切り分けて貰い、皆に配る。

 私は少しだけフォークで取るとロリィの口元に運ぶ。

「ロリィ、食べて。少し楽になる筈」

 目を瞑ったまま気怠げに口を開ける。そっと口に入れると食べた。口が動く。やがて目を開ける。

「紅茶…」

「起きて?」

 首を振る。どうやって飲むの?

「体を支えて…」

 甘えてる?可愛いな、もう。


 少し体を起こしてカップを渡す。何口か飲んでカップを私に返すとまた膝に頭を載せる。

「もっと…」

 くすっ、なんだろうね。年上美形の上目遣いおねだりって。可愛な。

 その後も食べさせたよ?そして少し休むと青白かった顔に色がついた。良かった…。

 自分も食べようとパウンドケーキを見た。


(アイル作 優しさいっぱいのケーキ 磁場の影響を吹き飛ばし回復させる)


 …見なかったことにしよう。うん、美味しいな…



 こうして全員が回復して馬車は進む。そしてお昼過ぎに森はもう目の前という場所まで来た。

 馬車はどうするのかな?

「イル、馬は馬車から外して…馬車はイルが収納してくれる?」

 なるほど、それなら持ち運べるね。

 ここからはマルクスとイリィの先導で進む。微かにファル兄様の魔力を感じるな。


 こうして森に少し入った所で馬車から馬を離す。ダナは馬から降りて歩いて行く。皆が見えなくなったら馬車を収納。そして後に付いて歩き始めます。



 なんだろう?森が騒ついている。嫌な感じ、とまではいかないけど。放置するのは気持ちが悪いというか…上手く言えないけど、いい変化では無さそう。

 マルクスとイリィがどう感じているのか分からないから何ともか言えないけど。


 やがてかなり奥に入った、と思った頃に知った魔力を感知した。そして…




前半はサリナスの独白です



※読んでくださる皆さんにお願い※


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