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異世界転移 残りものでも充分です〜  作者: 綾瀬 律
第1章 異世界転移?

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19.私利私欲の採取

コメントいただきました件について、

明日投稿の前書きで少し触れています

 私は馬車に揺られている。まだ朝日が登ったばかりの早い時間に…向かう先は30キロル(キロ)先の森。そう、ラベンダーとローズマリー、ジャスミンにバラ。それらを採取するために馬車に揺られている。

 そして向かいには…そっと溜め息をつく。私は穏やかに、なるべく人と関わらずに居たいのに…。


 採取に行くべきか否か、To be or not to be…(シェイクスピア風)結論が出なかったので今日は採取依頼を紹介してもらって帰ろう。椅子から立ち上がって本と図鑑を戻す。すると

「明日の朝、出発する」

 声が聞こえた。関係ないと思ったからそのまま出口に向かうと、横からロルフが腕を引く。

 えっと思う間も無く目の前にはロルフがいて

「ジャスミンの採取…一緒に行く」


 一方的に言われる。はい?思考が追いつかずに固まっているとそのまま腕を引かれて資料庫を出る。ハクは後ろから大人しくついてくる。助けて欲しいのにしれーとしっぽをふりふり。僕はただの犬って顔をして。睨んでも知らん顔。そりゃまぁ子犬に助けを求めるのはどうかと思うよ?

 でもせめて吠えるくらいしてもいいのでは?目がキラキラしてるから絶対楽しんでるな。後でお腹もふもふの刑だ。


 ロルフは軽く掴んだ腕を引いてズンズン歩いていく。それでもこちらを気遣っている速度なのがなんか悔しい。そうしてカウンターに着くと、依頼の窓口に向かう。

 依頼?何で??疑問に思いつつも腕を掴まれているので、一緒に依頼の窓口に行く。

「指名。この子でジャスミンとバラ、後はラベンダーとローズマリーも」

 驚いてロルフを見ると調べてただろ、と。調べてたよ、確かに調べてた。でも何で知ってるの?そう思ってるのが顔に出てたのか、

「図鑑のページ、何が書いてあるかだいたい分かる」

 うっそん。図鑑てかなり分厚かったよ?どこに何が買いてあるとか覚えてるの?植物オタも真っ青なんじゃ…。

 すると窓口の職員がギルドカードと言うので危うく出すところだった。


 ちなみに指名依頼とは受けて欲しい探索者を指名すること。どの級の探索者にも出せるが、普通は実績のある中級以上に出すことが多い。私はまだ見習い期間なんだから無理。焦って

「あの、まだ受けるとは…」

 被せるように

「大丈夫。強制依頼」

 はぁぁ?強制だと??まさか、ロルフはお貴族様…?


 そう強制依頼とは貴族の権限で出来る特殊な依頼だ。その貴族の領地や特産品、研究に必要なもので、指名された人に必ず受けて貰いたい依頼に限定される。最も明らかに分不相応だったり、嫌がらせのようなものは強制指名出来ないが。

 強制依頼は原則断れないので、探索者を守るために依頼内容は吟味される。そう簡単には受理されないはず。

 良かった。冷や汗かいたけど大丈夫だろう。そう思って職員を見ると、カウンターに手を出している。

「ギルドカード出して」

 まさか強制依頼受けるの?

「えっ…」

「ロルフ様の採取依頼だ。もちろん最優先だよ」

 そこまで言われたらもう仕方ない。だってロルフ様って…きごちない動きでポーチからカードを出す。

 職員は手早く受け取ると、何やら操作をしてカードを返してくれる。

「坊主、良かったな!」

「あ、あのまだ見習いなんだけど…」そう職員に訴える。しかし、見習いでロルフ様に指名されるなんて凄いじゃないか、と笑顔で言われる。

 …これもう逃げられないヤツね…


 ロルフ様は淡々と

「西門に朝6時」

 それだけ言うとさっさとギルドを出て行った。なんか周りがざわざわしている。気のせいだよね、と思って振り返ると注目を集めていた。

 慌てて前を向く。何も見てない。何も見えなかった。注目なんて浴びてない…


 取り敢えず窓口の職員にロルフ様についてと採取に必要な道具について聞く。その内容を記憶してギルドを出た。扉に向かう時に

「見習いで指名らしいぞ」

「しかも強制だって」

「あのロルフ様が直々だって」

「見ない顔だな」

「何であんなヤツが」

「貴族にコネでもあんのかよ?」

「なんかムカつく」

「やるなぁ」

「犬可愛い」

 そんな声が聞こえた。最後のは同感だけど。

 だから目立ちたくないのに…なんか人運悪すぎない?などと現実逃避の思考をしながら足早にギルドを出た。


 出てすぐにハクを腕に抱く。そして通りの端に寄ってその首筋に顔を埋める。ふかふかもふもふ…スーハースーハー。あぁ癒される。手でもふりんな背中やお腹で撫で撫で。そうしてやっと落ち着いた。ハクは精神安定剤だ。頬擦りしたまた匂いを嗅ぐ。スンスンスンスン。フハー、よし帰ろう。

 ハクを抱きしめたまま宿に向かう。職員から聞いた話を思い出しながら。


「あぁ、ロルフ様は薬草の研究者で隣領の貴族様だよ。この町で色々と研究しているんだ。滅多に依頼を出さないけど報酬がいいから人気なんだよ。指名なんて初めてじゃないかな」


 ふー知りたくなかった情報だよ。初めての指名依頼とか…まぁ悪い人ではないよな。空気読まないし、言葉は全く足りないし、人の気持ちは全無視だし、強引だし…あれ?いいとこない?でもなんていうか、悪気がないのは分かる。研究者肌っていうのか、夢中になると周りが見えなくなるってヤツ。


 向こうで世界でも変に真面目で手を抜けなかったから、こういう人に振り回されてたっけな。友達にももっと世渡り上手になりなよって良く言われてた。

 そういう友達が一番振り回してたんだけどね。懐かしいなぁ。律、元気にしてるかな。

 懐かしさとともに切なさもやってきて目を閉じる。考えても仕方ない。私はもう帰れない。目を開けて宿へとまた歩き始めた。


 採取に必要な道具はロルフ様が全て準備するそうだ。馬車で向かうから日帰りの予定だけどご飯がどうなるか分からないから携帯食を買って、後は肩掛けカバンに入るくらいの食材を持っていく。お皿とか小さな鍋は余り資材で使ってあるからこれを持って行って。

 とそこで、自分用にも欲しかったんだと気がつく。でも採取するのは花とか葉っぱだから小袋があればいいか。うん、それならあるから大丈夫だな。


 今日はもう帰って宿の主人に明日の朝食はいらないと伝えて…念の為、遠くに採取に行くことも言っておこう。帰れなくても心配されないように。うん、そんなもんだな。

 

 宿に着いて明日の朝早くに出発することを伝える。するとそれならパンと焼いたお肉を持たせてくれると言う。なのでパンにお肉を挟んで、食べやすく切ってくれるようにお願いする。快く引き受けてくれたので有り難かった。やはり、筋肉は裏切らない。

 そのまま夕食を食べ、シャワーを浴びて寝た。ハクは明日、一緒に行けるねと言うと喜んでいた。可愛い。さぁ、もう寝よう。今日はハクを抱っこしたら即落ちした。


※読んでくださる皆さんにお願い※


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