179.お昼ご飯
ユーグ様…ありがとうございます。生きてみます。ひたむきに。ありがとうみんな。
神様、私をここに転移させてくれてありがとうございます。
この世界に来て初めて…来たことを心から感謝した。
そう、その時は思っていた…
イリィもロリィも顔を上げて順番にキスしてくれた。
「イリィ、子ども…」
「アイ…凄く嬉しいよ。僕は、僕も生きていていいんだね…」
「イリィ…もちろん」
イリィの胸に手を当てる。トクン、トクン…確かなリズムを刻んでいるその音はとても懐かしく感じる。
「どんな美形が生まれるのかな?あ、でも私に似たら普通か…」
「くすっ…アイに似たら僕が困るよ。手放したくなくなるから」
「イリィに似たら外に出せないね?可愛い過ぎて」
「ふふふっ」
「まだ生まれてないけど…おめでとう。アイリーンの兄弟だね」
「うん、いつ子の実を受け取るのかな?」
「ユーグ様が抱いてるなら戻ってからだね」
「楽しみだよ…アイリーン、弟が妹が出来るよ?」
皆で顔を見合わせて微笑む。
『アイリー私の子も!私との子も!凄くすごく嬉しい』
体ごと上からのしかかって顔中を舐める。
「ちょっ、待って…ナビィ…」
唾液まみれだよ、もう。
その垂れ耳が顔に当たって気持ちいいけどな。胸毛もふわふわで首毛ももふもふで…どこを触っても柔らかいナビィ。
世界を渡ってまで追いかけて来てくれてありがとう。大好きだよ。
だから体中くまなく、もちろんお尻もね、たくさん撫でた。
『ご主人ー僕との子も!大好きで大好きなご主人との子だよ。凄く嬉しい。大好きで大好きだからね!』
その胸毛が首元に当たって柔らかくてふわふわだ。
何回も大好きと言ってくれるブラン。可愛い。
その小さな頭を撫でる。
『大きくなってもいい?』
「もちろんだよ、ブラン」
ダンッ。うん大きいね?
その翼を広げて私を包む。大きなくちばしで私の口を軽く突き、頭を頬にすり寄せる。短い頭の毛はやっぱりふわふわで撫でれば嬉しそうに目を細める。
ブラン、私を選んでくれてありがとう。大好きだよ。
ハクはベットの端で大人しくしてたけど次は僕の番!と言って飛び乗って来た。だから前脚で顔を押さえない。顔を舐めない、あっこら、だからナツもハルも耳を舐めないよ。リリとルイは服の中に潜り込まない。
リツは…何で寝てるの?
銀狼集団は自由だね?
それを見て
「くふっぅ」
「くはっ」
美形集団が引き出していたよ。私も笑って…泣いた。優しい手が頭を撫でてくれる。
そんな優しくて穏やかな時間が過ぎて…
部屋の扉が叩かれた。
「お食事をお待ちしました。ワゴンごと置いておきますので、落ち着いたら召し上がって下さい」
リベラの声だ。もしかして…
ロリィを見ると苦笑している。
「中の会話は聞こえない…でもリベラは気配察知が」
それはそれで凄いな。気を使わせてしまったか。
ロリィが扉を開けて開けてワゴンを中に入れる。加減が分からずワゴンが暴走したけど、料理は大丈夫?
「リベラが保存の魔法を…」
出来る執事は凄いな…そこまで先読みしてたとは。
皆が落ち着いた所で昼食。お腹空いた。
…でも残念ながら料理を口に出来なかった…トラウマだね。
はぁ…食べたいのに食べられない。辛い…でも自業自得だから。はぁ…
その後、ロリィから侯爵家の騒動について話を聞いた。ラルフ様も大変な宿命を背負っているのだなぁと思ったけれど、ロリィをそれに巻き込んで欲しくなかった。
あの時なんで毒の入った食事を食べようと思ったのか、深く考えたわけではなく、必要なことだと判断したんだけれど。
それが結果的にロリィの助けになったのであれば良かったのかな?いや、たくさん泣かせてしまったのなら、もっと他にやり方があったかもしれない。
厨房に出入りする人間が雑菌がついたボールをわざと用意したり、毒入りの食材や腐った食材を用意していたことが、本当に許せなかった。
いかにこの世界で人の命が軽かろうとも、やってはいけないことがある。あの時の私はきっと冷静ではなかったんだろう。
あの食事をもしイリィが食べていたら?ロリーが食べていたら?システィア様やルシアーナ様があの食事を食べて苦しんでしまったら。
そう思ったら頭に血が昇ってしまって、分かっていたのについ食べちゃったんだよなぁ。
でも彼らは今後どうしたいんだろう。私は跡継ぎとか爵位とかそういったことにとらわれず、ただ幸せになってほしいとそう思った。
お昼を皆は食べて、もっとも私は食べられずレモン水だけを飲んで休憩。私はイリィの膝枕でお腹に小さくなったナビィを抱えている。小さくて可愛い。その頭にキスをする。良くこうやって一緒に寝たね?ナビィ。
うとうとしていたみたいだ。扉を小さく叩く音で目が覚めた。
「ルシアーナ様が尋ねたいと言われていますが、いかがでしょうか?」
リベラだ。
「大丈夫…」
「では、声をかけて参ります」
「イル…大丈夫?」
頷いてイリィの膝から起き上がる。
間も無く扉が叩かれるとロリィが扉を開ける。
「お母様、どうぞ…イルが目覚めました」
「お邪魔するわね。イル、良かったわ。心配したのよ…もうあんなことはしないで」
「はい、ご心配おかけしました。お母様」
「イル…はまた、お母様と呼んでくれるのね」
頷く。お母様は私を力一杯抱きしめた。その体は震えていて、耳元で良かった…そう呟いた。
「また、失うかと…」
また?
「お母様は、私の1年後に生まれた子を病で亡くしてる」
そうだったのか。
その目に涙を溜めて
「でもありがとう。ロリィを助けてくれて」
それは結果論だ。私はそんなつもりはなくて、ただ許せなかっただけ。自分たちが何をしたのか、分からせたかっただけ。
幼稚な正義感で皆を心配させた。申し訳なくて俯いてしまう。
「顔を上げてイル。忘れないで、あなたのことを大切に思っている私たちがいることを。忘れないで」
「はい、お母様。みんなに怒られました」
「そうよ、たくさん心配させて…もう、お仕置きが必要ね?」
えっお仕置きって、えぇ…。
それはそれはとても濃密なキスだった。固まっていると
「まだ調子が悪いでしょうから、私が膝枕をしてあげますわ。もちろん拒否権はないわよ?イル」
こうしてお仕置きという名の膝枕をお母様にされたのだった。私の髪を梳きながら
「細くてきれいな髪ね…不思議な色だわ」
そして私の顔を上から覗き込んで
「その目の色も…なんてきれいなのかしら?まるで虹彩が透けているような澄んだ目をしているのね」
そのまま頬を撫で唇をなぞり肩から胸へと手が動き…私の鼓動に耳をすます。
トクン、トクン…優しく私を見つめる目はどこか遠くを見ていた。
そのまま目を瞑っていたら寝てしまったようだ。なんだか小さな子供に返ったようでお母さんの温もりを思い出していた。
アイリ…可愛いアイリ…あなたは生きてるの?
お母さんの声が聞こえた気がする。
目を覚ます。ん?ここは…。私はベットで寝ていたようだ。隣にはイリィがいて背中にはハク、足元にはナビィがいる。
「アイ、目が覚めた?」
「今何時?」
「そろそろ4時かな」
「あれ?お母様の膝枕で…記憶がない」
くすっイリィは笑うと
「小さな子供みたいに体を丸めて寝てしまったんだよ」
えっ…?恥ずかしい。
「ルシアーナ様があら?って嬉しそうに言ってた」
ますます恥ずかしい。
ソファに座っていたロリィがそばに来る。
「どう?」
「だいぶいい、かな」
「お母様が喜んでた」
「そう?」
「子供たちにはしたことがなくて…初めてだから嬉しいって」
「ロリィはしたことないの?」
頷く。
「僕もアイが初めてだよ?」
「じゃあまたしてあげるよイリィ。ロリィもして欲しかったら言ってな」
上から美形を見放題なんて眼福だからね。
扉が叩かれる。リベラが
「ロルフ様、夕食についてお話がございます」
ロリィが扉を開ける。
「ノエル様がルシアーナ様とロルフ様をお誘いです」
「お母様は?」
「受けると」
「なら私も…受けよう」
「畏まりました」
扉が閉まると
「私はお母様と本館に行くから」
私は思わず
「大丈夫?」
「ここは安全だよ」
頷く。ロリィはそばに来て頭にキスを落とすと
「お風呂は一緒にね」
「うん、待ってるよ」
ロルフは話もあるからと、着替えて出て行った。私は夕食までまたイリィたちとごろごろして過ごした。
さぁ夕食だ!
…
やっぱりまだ食べられなかった。
ハクはなぜか少し嬉しそうに
『魔力循環すれば大丈夫だよ?』
交わるのはなしな!と念を押して、でも循環させるだけでも服は邪魔だから脱いでってさ。
ダメなの?ブランやナビィを見る。
『ダメだよ…素肌が触れ合わないと』
人型になったハクに嬉々として服を脱がされて…体を触れ合わせた。
あっこら、ハク…循環させるだけって…あっ待ってダメだよ…ハク、だから。あっ…。
耳元で
『裸で抱き合って…我慢できるはずないよ?』
確信犯か…。
えっなんでブランも?ナビィも何して…だから待っ…まだ体調が。えっ整えるため?いや、その。
うん…、あっ、だから…まだ(魔力循環)下手だしね?
イリィ、止めて…何で?そんな声聞いて我慢出来ないって?でもほら、体調が。もう整ったでしょって?
まぁ確かにいや、でも…えっあ…。
疲れたから寝ていいかな?みんなは顔もツヤツヤだね…。
ベットに疲れ切って横たわっているとロリィが帰って来た。
良かった、何もなかったみたい。
「ロリィおかえり」
「ただいま…イル?」
ベットに近づくと毛布を捲る。うわぁ、慌てて毛布を押さえるけど少し遅かった。私の裸を見て
「イリィと?」
頷く。
ナビィが
『ハクとブランとイーリスと私と!』
ロリィは驚いてそうなんだね?なら体はもう大丈夫だね…イル。
そんな姿を見せられて、僕だってね?
お風呂に入った後に運動をすることになったのだった。寝たいよ…。
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