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異世界転移 残りものでも充分です〜  作者: 綾瀬 律
第3章 白の森と生命樹

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158.フィフスへ

昨日、予約投稿忘れてまして…変な時間に投稿しました

基本は21時30分に投稿します…

 ある朝の事、バナパルト王国の町、ゼクスにて。


 2台の馬車は西門に向けて進んで行く。私が乗る侯爵家の馬車と、もう1台の馬車だ。

 西門の馬車寄せで止まる。そこにはすでにフェリクスとイザーク、探索者ギルドのマスターであるバージニアがいた。


 私は御者が開けてくれた扉から外に出る。

「おはよう」

「「おはよう」」

「おう、ロルフおはよう」

 お互いに挨拶を交わす。


 少し離れた所にいた軍人の2人と探索者の2人が声をかけて来る。

「ロルフリート様、おはようございます」

「おはよう。君たちは、アフロシア軍の…?」

「はい、私は副隊長のダーナム、こちらはシグナスです。旅の間の護衛を」

「私の護衛というか…アイルの、だね。よろしく」

「よろしくお願いします!」

 キビキビと頭を下げる。さすが軍人だ。


 私は探索者の2人を見る。

「改めまして、お会いするのは初めてですね。上級探索者のサリナスと、ブラッドです。俺たちも引き続きの護衛です。ロルフリート様の依頼ですから、ロルフリート様とアイルをお守りします」

「頼んだよ」


 こうして、探索者の2人は使用人たちの馬車に同乗し、軍人の2人は馬に乗り出発することにした。

「フェリクス、イザーク、バージニア…行ってくる…」

「ロルフ、気を付けて。良い旅を」

「ロルフ様、アイルをくれぐれもよろしくお願いします」

「ロルフ、ちゃんと食って寝ろよ!」

 私はしっかりと頷く。


「ダーナム、シグナス。ロルフとアイルを頼んだ」

 フェリクスが軍人2人に声を掛ける。

「「はっ!」」

 勇ましく答える2人。

「ブラッドにサリナス、行ってこい!マメに連絡入れろよ?」

 バージニアの声かけに

「「あぁ、任せろ」」

 探索者の2人が応える。


 こうして私たち一行はゼクスの町を出た。それはちょうど夏の終わりことだった。



 ちなみに、使用人たちが乗っている馬車の御者は探索者ギルド所属の御者でロザーナという男性だ。立派な黒馬が引いている。

 早くゼクスを出たので、夕方より早くフィフスに着けるだろう。近づいたら、イルに念話を入れることになっている。


 元気だろうか?

 イルの手紙は簡潔で、でも線の柔らかな少しクセのある字がとてもイルらしかった。

 使用人の同行は問題ないこと、石の名前についての返事。

 リツとアイリーンをよろしくとも。

 そして、最後にイーリスと結婚したことの報告。良かった、その思いと少しだけ胸がチクリと痛んだ。

 イルの小指には蔦模様が現れたのだろうか?と考えてまた少し切なくなった。



 ちなみに、蔦模様が現れるのは平民だけだ。貴族は届出をするので、蔦模様は現れない。

 代わりに慣例で、左の小指に指輪を嵌める。私たちはまだ用意していないから、嵌めていない。

 今回は時間がないから、また後で用意しよう。

 この時はそう思っていた。



 馬車は順調に進み、死の森近くにあるギルド運営の宿で休憩をすることにした。

 私はユーグ様に会いに行く。


(来たよ)(来たよ)

(ユーグ様)(来たよ)

 ふわりと風が吹く。


『よく来たね、ロルフ。子はどうかな?』

「ユーグ様。はい、こちらに…順調です…」

『リツも健やかかな?』

「はい…」

『ぴぃ(うん)』

『ロルフよ…我が愛し子の、過酷な運命に巻き込んでしまったね』

「…自ら望んだことです…」

『あぁ、君の魂もなんて澄んでいることか。()()()()()()()()()()

「私も、選んだ…だから、ですよね」

『その通りだよ。望んでまた、望まれて…そうしてこの世界に彼も根付いて行く。彼はこの世界で生きることを、()()()()()()()()()()()

「この世界…まだ根付いていない?」

『この世界にまだ、だよ。ロルフ』


 あぁ、そういうことだったのか…。

 イル、君はまた1人で孤独と戦っているんだね。



 ユーグ様は言葉を続ける。

『ある意味、君も神に認められた存在。()()()

「私が、選んだ…それでいい、です」

 まるでその言葉に答えるように…優しい風がふわりと私の頬と唇、そしてアイリーンとリツを撫でて、吹き抜けて行った。

『ぴぃ(気持ちいいー)』


 イル、君は…。君に出会えて、本当に良かったよ。


 私はユーグ様に向かって、胸に手を当てて貴族の礼をする。

(行って来ます)

 そう、心の中で呟いて。


 宿に戻ると食堂で少し休憩をする。もちろん、リベラが紅茶を入れてくれて。

 ふぅ、美味しい。

 リツが起きたので、ハク様の魔力がこもった水晶を渡すとチュパチュパと吸っていた。可愛い。その眉間を撫でて、体もそっと撫でる。そのままアイリーンにも触れた。

 さて、皆も休憩できたかな?

 私は紅茶を飲み干して、トイレに行ってから出発することにした。


 リベラたちが乗る馬車を引く御者はロザーナという名の探索者だ。立派な黒馬がその馬車を引く。

 バージニアの推薦だ。

「こいつの黒馬はな、夜でも走れる健脚だ。度胸もあるし、賢い。ロザーナも今は少しな、体を壊しているがだいぶ元気になった。それでも護衛としてなら充分に強い。お前を任せられる」

 そこまで言って貰えるなら、と雇った。


 アフロシア軍の2人、アイルの護衛として派遣される予定だった2人は結局、護衛としてアイルに付くことはなかった。

 今回、派遣されることになった理由はダイヤモンド鉱山だ。

 ハク様の縄張りということは、イルものとも言える。彼が居なければ、採掘すら出来ない。

 だから、彼を守る為とダイヤモンド鉱山の利益のために、派遣が決まった。


 探索者の2人は、同じ理由で私が依頼を継続した。こうして、旅の護衛が決まったのだ。

 最も、イルのことだけを考えるなら、戦力としてはハク様がいるから万人力だと思うけど。

 イル自体の能力もかなりね、強力だから。


 死の森を出て、さらに順調に進んでいるかと思えたが…何やら外が騒がしい。窓を叩く音がする。小さく開ければダーナムが、

「魔獣です。強い個体が群れているので、外には出ないように!」

 そう言って、足早に馬車から離れて行く。


 私は窓を閉め、緊張して待っていた。

 すると馬車が何かにぶつかられたのか、大きく揺れる。

「馬車から遠ざけろ!」

「追い込め!」

 声がする。私は馬車に捕まってまた来るかもしれない衝撃に備える。


 ドカン!

 馬車が浮いて、そして私の体も宙に浮く。一瞬、イルの名を呼んで目を瞑った…。胸元のポーチを両手で守り、体を硬くして衝撃に備える。

 馬車はそのまま横倒しになった。しかし、あれ?いつまで経っても衝撃が来ない。

 そっと目を開けると…私は透明な幕に包まれていた。膜?これは…イルの魔力だ。

『ぴぃ(アイル…)』

 リツがむにゃむにゃと鳴く。




―「ロリィ。アイリーンとリツをよろしく。それまで、防御を重ねがけしておくよ。

 えっと、対衝撃と対魔力、それから…」―



 そう言えば、なんか呟きながら私の持ち物に付けていたような。

 これだったのか?イル…やっぱり君は。

 胸元のアイリーンとリツは馬車が揺れた事にも気が付かず、もちろん、横転した事すら知らずににすやすやと寝言を言いながら眠っている。まるで何もなかったみたいに。イルの魔力に包まれて、心なしかリツが笑っているようだ。

 私はこんな時なのに、笑ってしまった。

 イル、やっぱり君は凄いよ…。


 私は外の様子を窺う。しばらくすると外から私を呼ぶ声が聞こえた。

「ロルフ様、ロルフ様!」

「大丈夫だ」

「今、扉を開けます」


 私が膜に包まれている、反対側の扉が開く。中を覗きこんだのはリベラだ。

「ロルフ様!ご無事…えっ?」

「ロルフ様、大丈夫…何だこれ?」

 私は笑ってしまった。リベラの後から覗いたダーナムも途中で言葉が途切れた。

 馬車を開けたら透明な膜に包まれた私が、その膜の中で浮いているのだ。それは驚くだろう。


「ロルフ様、これは?」

「アイル…かな?」

「「…!」」

 皆、驚きながらも納得していた。


 私は透明な膜から手を伸ばす。ダーナムがその手を握るとそのまま私の体ごと抱えて、馬車から出してくれた。


 外には魔獣が何頭か横たわっている。こちらにケガ人はいないか?

「ケガ人は?」

「こちらはかすり傷です」

「運悪く、群れの横断に当たったようで」

 答えたのはダーナムとシグナス。そして跪くと

「「申し訳ございません!」」

「ロルフ様の馬車に体当たりを許すなど」

「我々の警戒を掻い潜って馬車へ」

 深く頭を垂れる。


 私は大丈夫だ、と言いかけて考える。私はいわば、イルの名代だ。ここで簡単に許してしまう訳にはいかない。

「気をつけるように…」

 さらに深く頭を垂れた後、顔を上げたダーナムが私を下から見つめる。

 私もダーナムの目を見返す。するとダーナムは破顔して

「ロルフ様はお優しい。言いたくないことを言わせてしまって。我々の為に…」


 やはり、気が付いていたか。明らかに慣れてない物言いだ。私は苦笑する。

 ダーナムは顔を引き締め

「実は、魔法を使う個体がいました」

 私は驚く。

「最初の衝撃は風魔法です。それを警戒して少し離れていた時に、今度は突進して来て…対応が遅れました」

 私は難しい顔をして考え込む。魔法を使う魔獣、それはとても危険だ。ここはまだダナン様の領地。

「ダナン様に報告を」

「はっ!」

 ダーナムが紙に何かを書いて、伝書鳥を籠からだして紙を足に結ぶ。伝書鳥は瞬く間に飛び去った。


「ロルフ様…よくぞご無事で」

 リベラとソマリが私の無事を確認して安堵している。ポーチの中で寝ているリツを見て吹き出していた。

「リベラもソマリも…良かった」

 2人ともケガなどはしていない。私も安堵した。

「それにしても、あの…あれは?」

「私にも分からない。だって、イルだから…」

「その、子の実も大丈夫でしたか?」

 頷く。2人ともホッとした顔をしている。


 馬車は横倒しになってしまったけど、どうしよう。

 ここはどの辺りだ?

「ここは?」

 周辺の警戒から戻ったサリナスが

「死の森からおよそ2時間ほどかと」

 まだフィフスまでは4時間以上ある。




※読んでくださる皆さんにお願い※


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