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異世界転移 残りものでも充分です〜  作者: 綾瀬 律
第2章 感謝祭と諸々の騒動

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149.フィフスのまちで

 カルヴァン侯爵家の領都であるフィフスの町はゼクスと同じくらい栄えている。町の規模はこちらが大きくて人はゼクスが多い。

 それでも十分に活気があって賑やかだ。


 東側が商人街で西はギルドが集まっている。北に宿屋があって南は貴族街。南東辺りがいわゆる庶民街だ。

 急ぎの仕事もないしのんびりと商人街で必要な食材を買ったら中央広場にある時計塔に登ったりして観光する。


 この町は近くに大きな川が流れていて、その周囲は一大農地だ。そこから少し離れると一大牧草地。侯爵家の領地は広くて農業や畜産業が盛んなのだ。

 美味しそうなチーズやバターを見かけて買い込む。牛乳も手に入ったからグラタン作ろうかな。1人ほくほくと私はそんな事を考えていた。


 この町でどうしてもしたいことがあって、昨日から2人でそわそわしていた。凄く大切なこと…。


 隣のイリィもフードで顔は見えないけどワクワクしてるのが分かる。人が多いからと照れながら手を繋いで歩いている。実は今、教会に向かっているのだ。2人の婚姻を届け出る為に。

 平民の場合、成人しているから教会に届け出るだけで婚姻が成立する。恥ずかしくてイリィをまともに見れない。イリィの手から熱が伝わって…照れ臭くてでもとても嬉しい。


 そしてついて教会に着いた。しっかりと手を握り合ったまま教会に入ると神父様が迎えてくれる。

「どのようなご用件かな?」

「こ、婚姻の届出を」

 神父様は和かに微笑むと、こちらにと言って歩き出した。個室に入って扉を閉める。

 私はイリィと顔を見合わせてフードを取る。神父様はほぉと驚いた声を出した。


「長生きはするもんですな…聖なる色を持った2人の祝福を出来るとは」

 机に出した紙に2人で署名をすると紙は虹色に光りやがて人型となった。神父様は目を開いてひれ伏す。

「アフロシア様が顕現なされた…」


『我の子イーリス、そして我が使徒の想い人アイル…そなたたちの婚姻を言祝ぐ(ことほぐ)。末永く幸せに…』

 そう言って2人に虹色の光の雨を降らせた。


 さらにユーグ様が現れた。

『我が愛し子アイル、守り人イーリス…良き出会いを祝福しよう…』

 そう言って2人に緑の光の雨を降らせた。いや、それは精霊たちの光だ。


 アーシャ様も私の目から飛び出て

『2人を祝福しよう…困難を乗り越えて結ばれた2人の…絆を永遠に…』

 そう言って2人に水色の光…精霊たちの祝福が飛び交う。


 神父様はもう目を白黒させている。

「なんと素晴らしい日か…」


 私たちは神様や精霊王、精霊や妖精たちに祝福され、虹色の光が個室を舞ったのだった。それは幻想的で神々しい光景だった。私はイリィと手を繋いでそれに見惚れていた。いや、隣のイリィにも密かに見惚れていた。その美しく幸せそうな横顔はいつまでだって見ていたいくらいきれいで…。

 私を見て微笑むその顔は女神のごとく美しかった。


「お2人が末永く寄り添わんことを…」

 私たちの左手の小指には爪の近くまで伸びる蔦の模様が刻まれた。それは銀色の蔦。でもどうやら神父様には緑の普通の蔦に見えているらしい。後でアーシャ様から聞いた。銀色の蔦なんて珍し過ぎるからね…って。知らなかった。


 こうしてイリィと私は結婚した。教会を出た先の木の下でイリィに抱きしめられ熱いキスをされた。

「やっとだよ…アイ…もう離さない…」

「イリィ…離れないよ…私も」

 お互いに見つめ合ってからイリィが

「今日の夜は…覚悟してね…?」

「う、うん…お手柔らかに…」

「無理…だってようやく僕だけのアイになったんだからね?早く子供欲しいね…アイ」

 私たちはまた抱き合ってキスをして宿に戻った。


 夕食を食べてシャワーを一緒に浴びる。イリィの手はいつもより丁寧に?私の体を洗ってくれて恥ずかしくて…。

「アイ…何で恥ずかしいの?今までだって仲良くしてたよね?今日も…たくさん可愛い顔を見せて?」

 イリィの色気が凄い。いやまぁそうなんだけど。あの、なんで裸の私を眺めてるの?恥ずかしくてもじもじする。

 イリィがそんな私を見て

「可愛い…ねぇ?凄くいやらしいよ…?そんな姿…誰にも見せちゃダメだからね?」

 そのまま私の腰を撫でる。

 あっ…うん…。


「…可愛い」

 イリィの手は私の体を撫でて、腰を抱えて

「結婚して初めての…ふふっ…あぁ可愛いよ…」

 イリィと体を密着させて一つに重なっていく。もう誰にも渡さないからね、そんな呟きが聞こえた気がする。


 こうして2人の結婚した日の夜は甘く激しく過ぎていった。


 目が覚めると淡い金髪。あぁ私の旦那様かぁ…。うわぁ恥ずかしい。こんなに美形で私を大事にしてくれる人…。その淡い金髪を手で梳く。柔らかくて少し冷たくて何より愛おしい。毛先にキスしてその肩を抱く。動く気配がしてイリィが目を覚ます。

 何度か瞬きをしてふわりと微笑む。

「アイ…おはよう」

「イリィおはよう」 

 寝起きなのに美形の破壊力と色気が…凄まじい。


「アイ…何?」

 あぁ、美形の首こてんとか可愛すぎる。私はその頬に手を添えてそっとキスする。目を閉じてされるがままのイリィは

「ふふっ自覚してくれた?僕の旦那様…」

 うわぁ、破壊力…色気…朝はダメだよ。

「何で?今までけっこう我慢してたからね?もう我慢しなくていいよね…」

 我慢してたの?


 そのまま朝から愛し合った私たちだった。イリィの体温は心地よくていつまでも寄り添っていたくなる。そのまま腕に抱きしめてキスして交わって…。

 2人で顔を見合わせて

「心地良すぎて起きたくないね」

「うん、でもお腹すいたね」

「うん…名残惜しいよ」

「うん、今の時間は今しかないからね…」

「そうだよ…結婚した翌日は今日しかないんだよ…アイ…もう少しこうしていたい」


 その気持ちは凄く良く分かる。特に私はイリィをたくさん悲しませたから…。その髪を撫でてキスする。

「もう少しくっついていよう?」

 嬉しそうにイリィは笑うと頬にキスをして私の胸に寄り添って目を瞑る。

 少し震えるまつ毛が可愛い。頬を撫でてキスして腕にまたしっかりと抱きしめて私も目を瞑る。


 イリィ愛してるよ…そう呟いて。



 *****



 昨日やっとアイが僕のものになった。長かったような短かったような…。出会ってからは色々あり過ぎてなんだかもう1年くらいたったみたいだ。

 どうして僕は会ったばかりのアイにあんなに惹かれたんだろう。聖なる色を纏って優しい顔で僕を当たり前に受け入れてくれた人。人と関わることは恐怖しかなかった僕に、僕の顔じゃ無くて僕自身を見てくれた人。

 危うくて脆くて儚くて、手を握っていないと消えてしまいそうだった。アイの存在は今でもまだ危ういと思う。強く生きる意思が無ければ消えてしまう。


 それがアイがこの世界にいる理由なら、僕が引き留めて見せる。もう離さないから。どんなことがこれからあっても…。でももう他の人のものにはならないで。

 アイはその人柄でこれからも人を惹きつけてしまう。だから僕が守らないと。

 でもアイはちゃんと僕を選んでくれて…。僕は小指を見る。2人の小指に描かれた蔦。2人の絆である証。


 そっと見上げるとまつ毛が少し震える。銀色のまつ毛。アイに出会ってから僕が大好きになった色。君の色…愛してるよ。眠るアイの唇にそっとキスする。柔らかくて温かい大好きな人の唇。僕だけのものだよ…アイ。


 その薄い胸に頬を寄せる。滑らかな白い肌はもう僕だけのものだね…。あぁでもハクやブランやナビィはもう仕方ないよね?人じゃないし。僕とナビィの間にも子が出来たって聞いたけど、僕とアイの間にはまだ出来ないのかな?

 ねぇ?たくさん欲しいね…。あ、でも新婚の時間は欲しいからなぁ…。ふふふっ、まさか僕が子供のことで悩むなんてね。アイ…君に会えて本当に良かったよ。

 生きていられて本当に良かった。諦めなくて…。不意に涙が溢れて来た。


 僕は生きてるよね?生きてていいんだよね…?

「もちろんだよ、イリィ」

 僕は驚いてアイを見る。とても優しい顔で

「もちろんだよ、イリィ。たくさん生きて…私と一緒に…」

 僕は涙が止まらなくなってその胸に抱きついて泣いた。

「生きててくれてありがとう、イリィ」

 それは僕の台詞だよ。生きてこの世界に来てくれてありがとう。アイ…。



 イーリスはアイがなぜここに飛ばされたのか、朧げながら予想していた。そしてその予想は当たっている。

 出会う筈がなかった2人は出会い、結婚した。それはもう星の巡り合わせ、奇跡のような出会いだった。

 生命樹に取り込まれ死ぬ筈だったイーリスと異世界に飛ばざれ、試され続ける愛理。

 違う世界の2人が奇跡的に出会い、生きた。小指の蔦、それはその証であった。




後1話でキリがいい所まで進みます…

ちなみに話はまだまだ続きますので


※読んでくださる皆さんにお願い※


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