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異世界転移 残りものでも充分です〜  作者: 綾瀬 律
第2章 感謝祭と諸々の騒動

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148.ダイヤモンドと石の名前

 私はダナン様の目を見てしっかりと頷く。

「ダイヤモンド…色付きの、ピンク、青…名前はそのままピンクダイヤ、青はブルーダイヤで」

「それがいいだろう」

「品質は輝きが…等級がつかなくて…」

「ひとまず1等級で登録だな」

「そうですね…後は審査待ちかと」

「異議が出るか?」 

「間違い無く」


 申請した等級に疑義が出れば「異議申し立て」が出される。ただ、通常は実物より高い等級で申請した場合だ。今回はその逆。さて、どう判断されるか…。


「透明度は等級がないので…透過した光との比較では…ほぼ差はなし…。最高品質…」

「…透かして見てもイズの美しさはそのまま…抜群の透明度だな」


 しれっと新婚の惚気を入れ込んでるな…。イザーク、そこで頬を染めるのか?アイ、君ならどんな反応をするのだろうか…。


「大きさは言うに及ばす…価格がつけられないぞ?」

「国に献上するものはほどほどにしましょう…」

「あぁ、それがいい。神獣であることも…言わずにだ。聖獣でいいだろう」 

 私は頷く。その方がいい。もはや神に等しいのだから。


「他にも新しい石があったか?」

「こちらに…」

 私はポーチから針入りの水晶、波模様の石、青いもふもふ入りの水晶、森入りの水晶を取り出す。


「波模様の石以外は水晶の変異種」

「これはまた…美しいな…」

「この青い石…この波模様はまるでダナの魔力が動く時のようで…なんて美しい」

「この深い青の波模様はイズの瞳のようだ…美しいよ」

「うん、この深い青はイズの色だ」


 新婚の惚気再びかな…?銀色の石を探そうかな…アイの色の。少しだけ羨ましくなったロルフだった。


「ん、こほん…こちらは名前は?」

「アイリス…アイルの希望です」

「それはまた美しい響きだな…」

「イズの瞳の色…アイリスか、美しい名だ」

「こちらの針入りは?」

「こちらで決めていいと…」

「候補は?」

「私の希望は…金がロルクォーツ、銀がイルクォーツ」

「なるほど…考えたな。金と銀が入っていたら?」

「ロイアルクォーツ」

「ほほぉ。それはいい」

「この青が入ったヤツは…?」

「悩んでる…」

「青…ブルー、入っている…イン?」

「ブルーインクォーツはどうだ?」

 フェリクスが言う。私も考えたし、イルも候補に挙げていた。私は頷く。

「いい響きだな」


 最後にあの森を閉じ込めた水晶。

「これは?」

「木や苔が内包されてて…」

「なんとまた…」

「珍しいな…どれくらい前の?」

「分からない…何百年か何千年か…」

「歴史が詰まった石か…」

「森…フォレスト、庭…ガーデン、歴史…ヒストリー」

「フォレストクォーツ…かな?」

「どれもいいから迷うな…アイルは何と?」

「彼もフォレストかなと。でも歴史もいいな」

「ヒストリー…ヒストリアとかは?」

「イズ…いいな、それ」

「ヒストリア…別名にしようか?登録名はフォレストクォーツで通称名がヒストリア…」

「なるほど、ロルフ。それはいい案だ」


 ダナン様は

「まとめるぞ。波模様の石がアイリス、針入りがロルクォーツとイルクォーツ、青いのが入ったのはブルーインクォーツで、最後がフォレストクォーツ、通称はヒストリア」

「ロルフ、登録はどうする?」

「アイリスとヒストリアは私で、他はダナン様かフェリクスかイザークと…連盟にしたい」

「ふむ…ブルーインクォーツは名付けたフェリクスと、ロルとイルのクォーツはロルが私と、イルをイザークと連盟でいいかな?」

「はい、構いません」

「ラルフの名前は?」

「ダイヤモンドのブルーに連盟で、父上はピンクに…ダナン様はブルー、フェリクスにピンクで連盟で登録して欲しい」

「そうだな…ダイヤは2人より3人がいいな、よし。では決まりごとに関しては魔法契約を交わそう。実は商業ギルドの登録担当アレストスと探索者ギルドのマスター、バージニアを呼んである」 


 流石だな。魔法契約が必要になると踏んだか…しかも登録担当まで。抜かりはないな。まぁ商業ギルドにこのメンバーで行くのは目立ち過ぎるか。


 部屋の扉が叩かれ、執事が声を掛ける。


「入って貰え」


 扉が開くと緊張したアレストスといつも通りのバージニアが入ってくる。

「領主様にはご機嫌麗しく…商業ギルドで登録の担当官をしておりますアリストスと申します。アレスとお呼び下さい」

「固いぞ、アレス」

「ダナン様…ロルフリート様はお初ですので」

「アレス…普通でいい」

「ロルフリート様、ありがとうございます」


「ジニーも息災か?」

「おぉ、ダナン。相変わらず胡散臭いな…」

「筋肉の塊の君に言われたくないな…」

「ふはっ違いない」

「まぁ2人とも座ってくれ」


 向かい合う私とダナン様から見て横のソファに座る2人。

「まず、登録だが新種の石と新種のダイヤだ」

「新種のダイヤといいますと?」

「…色付き…」

「は…い?」

「アレス、色付きだよ」

 ダナン様が重ねて言う。

「それはまた…分かりました。先に新種の石から」


 私はローブの下からアイリスを取り出す。見た途端、2人が固まった。

「…なんと美しい…」

「こりゃまたとんでもないな…」

 ギルマスの目が私を見る。その目はアイツか?と聞いている。僅かに頷いて

「登録を」

「あ、あぁまず名前は?」

「アイリス」

「効果は?」

「癒しの波動…視覚的な癒しも」

「…癒しの?聖石のような?」

「あらゆる治癒に特化した癒し」

「…公開しますか?」

「いや、限定公開で…」

「対象は?」

「治癒院に…」

「これは…だろうな…」


「採掘難易度は?」

「高で…」

「発見者は?」

「私、ロルフリート・カルヴァン」

 アレスはサラサラと必要事項を紙に記入していく。


「次は?」

 私は次にラルクォーツとイルクォーツを取り出す。

「これは、針…?」

「それも鉱物…」

「また凄いな…ロルフ」

「名前は?」

「金がロルクォーツ、銀がイルクォーツ」

「両方入るものは?」

「ロイアルクォーツ」

「ほほぉ、それはいい。効果は?」

「特に無し」

「採掘難易度は?」

「中で…」

「発見者は?」

「金がダナン様と私、ロルフリート・カルヴァン

 銀がイザークと私」

 アレスはサラサラと必要事項を紙に記入していく。



「次は?」

 私は次にブルーインクォーツを取り出す。

「これは、青い苔…?」

「それも鉱物…」

「これも凄いな…ロルフ」

「名前は?」

「ブルーインクォーツ」

「効果は?」

「視覚的な癒し」

「採掘難易度は?」

「高で…」

「発見者は?」

「フェリクス…と私」

 アレスはサラサラと必要事項を紙に記入していく。


 また次の石を取り出そうとすると

「おい、ロルフ…まだあるのか?」

「これが最後」

 森を閉じ込めた石を取り出す。

「これは…森?これも鉱物?」

「いや、それは木や苔…とても古いもの」

「歴史が見えるな。名前は?」

「登録名はフォレストクォーツで通称がヒストリア」

「ヒストリア…歴史か。これもいい名だ」

「効果は?」

「視覚的な癒し」

「採掘難易度は?」

「高で…」

「発見者は?」

「私と…アイル」


「アイルってあの判の子か?」

 私は頷く。

 分かったとアレスは言って新種の石の登録は終わった。

 誰ともなくふぅと息を吐く。

「ロルフ、またどれも立派な石だな。そろそろ王都がヤバいぞ…」

「それについては私とシスティアが王に謁見するつもりだ」

「国からアイルについて問い合わせが来ている。隠せないぞ」

「だろうな…ジニー、その話はまた後で…ダイヤモンドの登録を…」


 私はピンクダイヤとブルーダイヤを取り出す。

 しばらく息を飲むような静かさがあった。

「それもまた…はぁ…」

「きれいだな…」

「登録…」

「名前を」

「ピンクダイヤとブルーダイヤ」

「輝きは?」

「1等級…」

 また場が静まる。

「1…?」

「私は鉱物博士…鑑定官でもある。間違いない」

「初では?」

 頷く。アレスはため息を付くとサラサラと書いていく。

「透明度は?」

「最高品質…」

「採掘難易度は?」

「最高で…」


「登録者は?」

「ブルーがダナン様とラルフリート・カルヴァン、私。ピンクがシスティア・カルヴァンとフェリクス・アフロシアと私」


 アレスはすべて書き終わるとこちらに紙を渡してくる。署名だ。

「アイルはここにいない…」

「代理署名で大丈夫ですよ、ロルフ様なら」

「分かった」

 私たちはそれぞれ署名した。


「ジニー、魔法契約を」

「あぁ、内容はここでの話について他言無用だな。アレスも…登録名は非公開だろ?」

「ダイヤはどうしますか?」

 私はダナン様に問いかける。

「侯爵家以上の爵位持ち、本人に条件付き限定公開…」

「条件は公開内容を漏らさないこと、だな」

「そうだ」

 ギルマスが主導して魔法契約がなされた。


 ふぅ…。ダナン様がギルマスを見ると

「アレス、俺は少し残る…」

「では私はここで…良き出会いに感謝致します」

「あぁよろしくな…」


 アレスが退出するとギルマスが

「アイルか?」

 私はダナン様を見る。

「だそうだ…ロルフ」

 私はローブの胸元を開いてポーチの蓋を開ける。ギルマスの目がポーチに吸い寄せられる。

「全くな…なんでここなんだよ…」

「ジニーだからだろ、…アイルが知られてもいいと判断した」

「全部アイルか?」

「ダイヤとヒストリアはそもそもハク様の縄張りに入り口がある」

「そりゃ最高難度だな…」

「そもそもアイルとイーリス以外だと私しかハク様の縄張りに入れない」

「そりぁ、最高難度どころか不可だろう。後でアレスに伝えておく」


「私はしばらくここにいない…何かあればバージニアかイザークを窓口に」

「そうだな、システィアと王都に行く際にはジニーとアレスも行くか」

「やめてくれ」

「早いから遅いかの違いだ。どうせ呼び出される」

「まぁそうだが」

「私は4ヶ月ほどここにいない…ギルマス、後はよろしく」

「あぁ、まあ感謝祭の屋台についても問い合わせが来てるからな…仕方ない」

「ご苦労だったな、ジニー。退がっていい」

「あぁ、良い出会に感謝する。ではな」


 ギルマスが出ていき、登録は終わった。うん、疲れたな…。私はリツを撫でる。その柔らかくて温かな体は私を安らかにしてくれる。


「ロルフ、お疲れ様だったな」

「ダナン様も…ご配慮有り難く…」

「いや、こちらがいい所を譲って貰っているのだ。これくらい当たり前だよ」

「しかし、周りへの対応がこれから…」

「それは名誉なことだ。気にすることはない。使えるものは使いなさい。その為の肩書きだ。君の父上もな」

「はい、私は本当に周囲に恵まれて…」

「君の努力と人柄だよ。誇りに思えばいい」


 私は本当に恵まれている。

「これからも精進します」

「あぁ、隣同志だ。これからもよろしく頼む。そちらにはハク様の子がいるのだからな」

「アイリーンもリツ表に出す気はありません」

「だとしても、だよ。結局、君の後ろにアイル君もハク様も…アーシャ様やユーグ様もいるのだから。あぁ、だからと言って何も変える気はないが」

「はい、隣人としてよろしくお願いしたいです」

「あぁ、もちろんだ。フェリクスを頼むよ」


 私はフェリクスを見る。

「フェリクス、よろしくな」

「こちらこそ…ロルフ」

 私たちはそれぞれ握手をした。皆んなポーチの中のリツとアイリーンを撫でてくれた。

「この子たちに心からの祝福を…おめでとう、ロルフ」

「ありがとうございます。では、今日はこれで…」

「あぁ、しばらくこの町を離れるのだな?」

「はい。探索者ギルドには連絡します」

「ならイザークから聞こう。良い旅を…」

「はい、また戻りましたら顔をお見せします」


 こうして私は会合を終えて屋敷に帰った。ふぅ…イル、君の思う通りに出来たよ。さて、出発までに屋敷のことやリベラたちのことを決めなくては。

 今日は早く寝よう。いや、イルに手紙を出そう。リベラたちのことを相談しなくては。




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